骨髄検査|血液・造血器系の検査
『看護に生かす検査マニュアル』より転載。
今回は、骨髄検査について解説します。
高木 康
昭和大学医学部教授
〈目次〉
骨髄検査とはどんな検査か
骨髄検査とは、末梢血液像に異常を認め、血液疾患あるいは血液疾患の疑いと診断された場合に、骨髄を穿刺して血液を採取し、造血能力や血液の成熟度、異常細胞の有無をみる検査である。表1に正常骨髄像を示す。
末梢血の3系統(赤血球系、白血球系、血腫板系)はリンパ球を除いてほぼ骨髄で産生されている。造血組織である骨髄の異常は血液病態に直結する。原因不明の血球減少や血球増加があるとき、末梢血中に異常な細胞が出現したときは、骨髄検査の適応となる。治療方針の決定や治療効果の判定のために繰り返し行う場合もある。
体幹部は造血巣比較的保たれる傾向があることから、穿刺部位として胸骨や腸骨(図1)が選択されることが多い(医療事故のリスクや患者の希望から、最近では腸骨が選択される傾向にある)。
骨髄検査の目的
骨髄穿刺
骨髄生検
骨髄穿刺の際にドライタップ(dry tap;骨髄の線維化等により骨髄血が採取できない状態)であった場合や腫瘍の浸潤が疑われた場合、骨髄細胞密度の正確な評価のために行う。
骨髄検査の実際
骨髄検査の必要物品
・術者の滅菌ガウン ・滅菌手袋 ・キャップ ・マスク ・滅菌覆布 ・滅菌穴あき覆布 ・処置用シーツ ・局所麻酔薬(1%キシロカイン) ・ノボヘパリン注1000(5000U/5mL) ・ドライヤー ・砂のう(0.5~1Kg) ・タイマー
骨髄検査の手順
- ①検査伝票発行のほか、臨床検査部門の予約を行い、前日までに臨床検査技師と検査時間の打ち合わせを行う。
- ②検査前に排尿を済ませ、ベッドに処置用シーツを敷き、胸骨採取の場合は仰臥位、腸骨採取の場合は側臥位または腹臥位として固定を行う。
- ③穿刺部皮膚を消毒後、皮下から骨膜表面に十分な局所麻酔を行う。
- ④骨髄穿刺針の先端を骨髄腔内まで押し進め、内筒を抜去してシリンジを取り付ける。
- ⑤骨髄内の血液0.3~0.4mL程度を瞬時に吸引採取し、時計皿に吐き出して手早く有核細胞・巨核球数カウント用に採取し、次いでスライドグラスに引きドライヤーの冷風で乾燥させて、塗抹標本を必要枚数分作成する。
- ⑥凝固した残血は骨髄クロットとして剥離回収し病理組織検査にまわす。
- ⑦染色体検査・遺伝子検査やフローサイトメトリが必要なときは、続けて新しいシリンジで3~5mL程度を吸引する。
- ⑧骨髄生検は類似の手法で、より大型の針を用い、穿刺部の骨片をそのまま削り取る(侵襲が大きい)。
- ⑨終了後、穿刺針を抜去しすみやかに圧迫止血を行い、ハイポエタノール液で皮膚消毒後の余分なイソジン液を拭き取り、穿刺部位を消毒してガーゼで圧迫固定を行う。
- ⑩胸骨で採取した場合には、仰臥位で穿刺部の砂のう固定を行い、腸骨で採取した場合には穿刺部を下にして臥床とする。
- ⑪30分〜1時間ベッド上安静とする。
〈基準逸脱と考えられる疾患〉
- 有核細胞数の増加・減少:著減している場合(骨髄低形成)は再生不良性貧血、著増している場合(骨髄過形成)は骨髄増殖性疾患など。
- 骨髄芽球の増加:急性白血病やその類縁疾患。
- 特定の細胞の減少:無顆粒球症、赤芽球癆など。
- 血球形態異常:巨赤芽球性貧血、骨髄異形成症候群など。
- 異常細胞の存在:悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、癌細胞、血球貪食症候群、先天性代謝異常に伴う異常なマクロファージ系細胞など。
- 感染微生物の検出:結核、骨髄炎など。
- 骨髄線維化:dry tap になることが多く、骨髄生検標本で判定。
骨髄検査において注意すべきこと
- 患胸骨から採取する際に、まれではあるが穿刺針が骨を貫通して大動脈損傷・心タンポナーデを引き起こすことがある。腸骨穿刺は安全性が高い。
- 患局所麻酔時の疼痛は他の侵襲的検査と変わりはないが、骨髄内血液を吸引するときは独特の疼痛を伴うため、十分な説明を行うとともに、吸引時は患者に合図を送り呼吸を止めるよう指導する(呼吸を止めると疼痛が緩和する)。また、検査中に反射的に患者の手が術野にいかないよう固定が必要である。
- 患骨髄血は凝固しやすいため、塗抹標本作成時などには迅速な作業が求められる。臨床検査技師の協力が望ましい。
- 患出血傾向がある場合、血小板減少が原因であるときは検査後の止血確認に留意すれば検査自体は施行可能であるが、凝固因子異常が想定される場合は原則禁忌である。穿刺部位近辺に炎症がある場合も禁忌である。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版