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日本語仮訳:グローバルな研究エコシステムにおけるインテグリティとセキュリティ OECD科学技術産業ポリシーペーパー(130号)
エグゼクティブサマリー
本報告書は、経済協力開発機構(OECD)のグローバル・サイエンス・フォーラム (GSF)が実施した国際的な調査検討プロジェクト「Integrity and security in the global research ecosystem」の成果をとりまとめた提言書である。
科学研究における自由と国際協力は科学の進歩の基礎となるものである。また、パンデミック、気候変動等のグローバルな課題に取り組むには国際的な研究協力が不可欠である。しかし、このオープンな研究環境を自らの利益のために不当に利用しようとする動きが一部の政府や非国家主体の間で広がっており、多くの国は、公的研究に対する外国の干渉は、国家安全保障と経済安全保障に対する重大なリスクと捉えるようになっている。
このような認識を受けて、GSFは、研究の自由・開放性・無差別性を確保しつつ、国家安全保障と経済安全保障上のリスクを低減するための実用的な情報と推奨事項を各国に提示することを目的として、2020年10月から「グローバルな研究エコシステムにおけるインテグリティとセキュリティ」に関するプロジェクトを開始し、我が国を含む13か国の専門家が参画した定期的な専門家会合、2回の国際ワークショップでの検討を踏まえ、2022年6月にその成果を取りまとめた報告書を公表した。
本報告書では、研究インテグリティとセキュリティの確保について、各国政府・研究資金配分機関・研究機関・大学・学協会・政府間組織の優れた実践例と、それらを踏まえた各国政府等への政策提言が示されている。
政策提言:
1.グローバルな研究エコシステムの重要な要素として、科学研究の自由と国際協力の重要性を強調する
2.研究セキュリティへの配慮を、研究インテグリティに関する国家的・組織的枠組みに組み込む
3.研究におけるリスク管理に向けた相応で体系的なアプローチを推進する
4.利益相反又は責務相反に関する開放性と透明性を促進する
5.明確なガイドラインを作成し、手続きを合理化し、不要な事務手続きを抑制する
6.より統合された効果的な政策を展開するために、部門や機関を越えて協力する
7.研究インテグリティとセキュリティに関する国際的な情報交換を強化する
本報告書で紹介されている各国政府等の実践例や政策提言は、今後我が国において、研究インテグリティとセキュリティに関する取組を推進していくうえで、有益な示唆と知見を提供するものと考えられる。
※本報告書は、GSFにおけるプロジェクト“Integrity and security in the global research ecosystem”(グローバルな研究エコシステムにおけるインテグリティとセキュリティ)の成果を取りまとめた報告書について、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)が、OECDの許諾を受けて翻訳し、公表するものである。
※本文記載のURLは2022年11月時点のものです(特記ある場合を除く)。