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オープン化、国際化する研究におけるインテグリティ
エグゼクティブサマリー
各国が従前にも増して科学技術イノベーションとそれを支える研究への取組を強化していく中で、オープンイノベーションやオープンサイエンスといったオープン化と、国際的な共同研究の増加や頭脳循環の強化などの国際化が進展している。国内的にも国際的にも開かれていることが、活力ある研究システムのために不可欠であることが今や広く認識されている。
その一方で、オープン化、国際化に伴うリスクに関する懸念が世界的に高まっており、リスクに対処するための議論や具体的な対応が進展している。オープンな研究システムが不当に利用されることにより、技術流出等を通して国家安全保障に悪影響が及ぶとともに、研究システムの健全性が損なわれているという認識が共有されつつある。
研究者や研究機関からなる研究コミュニティにおいては、これまで、研究の自由や開放性を基盤とする科学の進歩のために主体的に研究インテグリティを発展させてきた。また、近年、社会における研究の重要性が高まり、研究と社会との関わりが深まるに応じて、ふさわしい研究インテグリティのあり方が模索されるとともに、研究コミュニティの取組を政府・資金配分機関が支えてきた。
上述のオープン化、国際化に伴うリスクに関する懸念の背景には、これまで研究の分野で共有されてきた価値観とは異なる価値観が登場して現行のシステムを揺るがせつつあり、規範やルールを再確認あるいは再構築する必要があるのではないかという世界的な問題認識があると考えられる。このような環境の変化を踏まえて、研究インテグリティのあり方を見直し、強化していくことが、新たな状況の下で研究の自由と開放性を重視しつつ研究システムの健全性を確保していくために必要であり、そのことは問題のある事案等を生じにくくすることを通して国家安全保障上の懸念への対応にも資するものと考えられる。また、そのような取組について社会に示し説明責任を果たしていくことにより、社会の信頼を得ていくことが重要である。
この問題について、研究インテグリティの強化を中心として、研究の側からどのように主体的に取り組んでいくのか、研究コミュニティを始め、関係するステークホルダーにより、活発な議論が行われることが望まれる。その際に、本報告書が参考資料の一つとして活用されることを期待している。 本報告書の構成としては、第1章1において、研究インテグリティおよびその確保に関する内外の経緯等を概説するとともに、続く2において、昨今のオープン化、国際化に伴うリスクに関する議論や対応等に関する内外の動向を説明した上で、これらの情報を基に、3において我が国の研究コミュニティにとっての課題と求められる取組を整理した。続く第2章では、第1章の整理の基になるオープン化、国際化に伴うリスクと研究インテグリティを巡る動向を国ごとに詳述した。なお、本報告書は昨今の新型コロナウイルス禍の状況下、主に公開情報を可能な限り収集し、これを基に整理、検討したものである。
※本文記載のURLは2020年10月時点のものです(特記ある場合を除く)。