きれいな歯並びで幸せに生きる!大人の矯正歯科治療の魅力とは?
整った歯並びは魅力的な人生の第一歩!
■矯正歯科治療に大人の女性は興味津々?
2013年11月8日、日本経済新聞社大阪本社の大会議室には、仕事帰りの女性たち53名が集まっていました。その目的は「自分らしく、いきいき働く~大人の歯の矯正を知る~」と題して行われた、矯正歯科医会が協賛する「丸の内キャリア塾スペシャルセミナー」を受講するため。
早めに会場についた受講者の皆さんは、配布された矯正歯科医会監修の本『ハロー! スマイル 今からはじめる おとなの矯正歯科治療』を熱心に読み込んでいます。
治療の流れが書かれたページ、費用について書かれたページ……。歯並びを整える治療とはいったいどんなもので、どんなメリットがあるのかをきちんと知りたいという思いが、その姿から感じられました。
『ハロー!スマイル 今からはじめる おとなの矯正歯科治療』
(小学館スクウェア/952円+税)
午後6時。いよいよスペシャルセミナーの始まりです。幕開けは、富永雪穂先生(矯正歯科医会 会長)の基調講演から。 富永先生は、スライドを見せながら、歯並びが悪いと歯周病になりやすいだけでなく全身疾患や健康への障害につながる可能性もあること、そして口もとのコンプレックスから社会生活への障害にもなりかねないことを指摘。その上で、「矯正歯科治療で歯並びを整えることで、よく噛めるようになるのはもちろん、口もとのバランスが改善することでセルフイメージが向上し、人に与える印象もよくなります」と解説すると、あちこちでメモを取る姿が。
噛むという機能性と、見た目の美しさという審美性の改善を図る矯正歯科治療は、身体と心の両面に、よい影響を与えることができるのです。
また、矯正歯科治療を受ける場合、クリニックの選び方として
①そのクリニックに、常勤の矯正歯科医がいるか?
②治療中に転居などでクリニックを変わる場合の対応はどうか?
③知人や地域での評判はよいか?
…などをチェックすることがすすめられました。
そして最後に、「ご自分で治療先を選ぶことに不安がある場合は、信頼できる一般歯科の先生から矯正歯科を紹介してもらうか、矯正歯科医会や日本矯正歯科学会のホームページなどで情報を収集するのがよいでしょう。豊富な経験に裏付けられた高い医療技術を備えた矯正歯科の専門開業医のもとで治療を受けることをおすすめします」と話し、講演をしめくくりました。
★次のページでは「口もとのコンプレックスを解消する5つのポイント」をご紹介!
きれいな歯並びで幸せに生きる!大人の矯正歯科治療の魅力とは?
ゲスト講演
口もとのコンプレックスを解消する5つのポイントとは?
■治療を受ける前に、知っておきたい5つのこと
続くゲスト講演は、「なりたい自分への一歩、大人の女性におすすめする矯正歯科治療の実際」と題し、 宮崎晴代先生(東京歯科大学歯科矯正学講座 講師)が壇上へ。
宮崎先生は、矯正歯科専門医としての立場から、よりよい矯正歯科治療を受けるためのポイントとして5つの点を挙げ、 それぞれの説明がなされました。その要点は次のとおりです。
歯並びの治療を通して理想の自分に近づくには、治療する前にまず、正しい歯並びの基準を知っておきましょう。その上で、前後・左右・上下のバランスはどうか? 歯間のスペースは? 口もとのかたちは? 歯や歯周組織の状態は? 咀嚼(そしゃく)や会話などの機能に問題があるか? など、自分の歯並びの状態を知っておくことが大切です。
あごの発育が終わった大人の治療に用いられるのは、主にマルチブラケットという矯正装置。また、症例によっては矯正歯科治療用のアンカースクリューという金属製の小さなネジをあごの骨に埋め込み、歯を動かす際の固定源として用いることもあります。ほかにも矯正装置を歯の裏側につける方法や、マウスピースのような取り外しができる装置を使う方法など、いくつかの治療法が。
なお、矯正歯科治療では、よく噛める美しい歯列にするために、必要に応じて抜歯を行う場合もありますが、それは残った歯を健康で長持ちする状態をつくるために行われるもの。そして、矯正歯科治療で歯を動かした後は、「リテーナー」と呼ばれる保定装置を用いて、定期的に歯科医のもとでメンテナンスを受けることも大切です。
●マルチブラケットとは?
歯の表面に歯科用接着剤でブラケットという器具を貼り付け、その溝にアーチワイヤーを通して3次元的に歯を移動させるための装置。ブラケットには目立ちにくいセラミック(左)やプラスチックのほか、金属製(右)のものなどがあります。
●矯正歯科用アンカースクリューとは?
矯正歯科治療用に開発されたチタン合金製の小さなネジのこと。アンカースクリューを使った治療法とは、そのネジをあごの骨に埋め込み、歯を動かす際の固定源として用いる方法をいいます。矯正歯科治療用アンカースクリューは直径1.5 ミリ前後、長さは6 ~10ミリ程度。
写真提供:日本歯科矯正器材協議会
●歯の裏側につける装置とは?
一般的に、歯の表側につける矯正装置を歯の裏側につけることで、まわりの人に気づかれずに行えます。1970 年代、世界に先駆けて日本で実用化され、その後、世界中で用いられています。
写真提供:カボデンタルシステムズジャパン
●マウスピースのような装置を使う治療法とは?
マルチブラケットの代わりに、上下の歯に透明な薄いマウスピースのような装置をつけて歯並びを改善。歯の重なり具合があまり多くなく、歯を大きく動かす必要のない人などに用いられます。
写真提供:アソインターナショナル
80歳で20本以上、自分の歯がある高齢者のことを「8020達成者」と呼びます。この達成者の方々は咬み合わせや歯並びが整っている場合が多く、自立して生活できるなど、心身ともに健康でQOL(Quality of Life/生活の質)が高い傾向にあります。つまり、よく噛める自分の歯があることは、健康長寿の秘訣でもあるのです。このことから、矯正歯科治療は未来の健康をつくるための治療だといえます。
治療期間として数年間かかる、顎変形症などの場合を除いて健康保険が適用されないなど、矯正歯科治療にはデメリットもあるものの、整った歯並びによって笑顔に自信が持てたり、何でもしっかり噛んで食べられたりするなど、治療を受けるメリットはそれ以上に多いもの。咬み合わせが安定することで、身体のバランスがよくなったり、横顔が整ったりと、アンチエイジングの効果も期待できます。
人生には、仕事、留学、転勤、結婚、出産、育児といった、さまざまなライフイベントがあります。矯正歯科治療は、それらのライフイベントと両立できるため、始めたいと思ったときに矯正歯科医のもとを訪ね、相談してみるのがおすすめです。
ライフイベントを治療とともに過ごす、明るい笑顔の受賞作があります。
山崎梨津子さんの作品
宮崎先生の話からわかるのは、歯並びをきれいにすること=なりたい自分にすぐなれる、というわけではなく、その前に自分の歯並びや治療に関する正しい知識を持ち、この先の人生をより豊かにするための処置として、矯正歯科治療を据えることが大切だということです。そうすることではじめて、治療期間や費用の高さなどのデメリットを超えるメリットを実感できるのかもしれません。
★次のページでは、「なごやかにトークが弾んだパネルディスカッション」の様子をご紹介!
きれいな歯並びで幸せに生きる!大人の矯正歯科治療の魅力とは?
パネルディスカッション
それぞれの立場からなごやかなトークが花咲きました
ゲスト講演の後は、宮崎先生、富永先生に、白石真澄先生(関西大学 政策創造学部 教授)と コーディネーターの八木早希さん(フリーアナウンサー)を加えてのパネルディスカッションが行われました。
テーマは、「~あなたの疑問にお答えします~ 大人の歯の矯正を知る」。
ちなみに、白石先生も八木さんもかつて矯正歯科治療を受けたという経験の持ち主。
それぞれの立場からのトークは終始なごやかで、おおいに盛り上がりました。
ここではその様子をダイジェストでご紹介します。
大人がよく噛める状態を保つことは、高齢社会に備えるうえでも重要
八木:私は子どもの頃、上の前歯が2本、目立つような状態で、中学のときに矯正治療を受けました。実は、うちの母によると、私が矯正治療を受けることは生まれたときから決まっていたそうなんです。というのも、誕生したばかりの私を見て、母は「この子は顔で勝負できないから、将来、せめて歯だけでも治してあげないと」と思ったんだそうです(笑)。
おかげでアナウンサーになることができましたが、なってからまわりを見ると、ほとんどの人が矯正治療を受けていました。理由は、アナウンサーとして発音がキレイにできるように。聞いてみると、治療期間を見込んで、大学3年くらいに矯正装置がはずせるように治療を受けたケースが多いようですね。
白石:私は今から20年ほど前に、コンプレックスを感じていた下の歯並びを矯正治療で治しました。今も毎年、自分の誕生月には歯科医院に行って、歯のクリーニングを受けるようにしています。今や女性の一生は長いのと、よく噛める歯並びは健康の第一歩なので、大人になってからでも、自分の歯並びを整えることは、これからの高齢社会に備えるために大切だと思いますね。
八木:そうですね。私は矯正治療を終えた今も、週1回、下の歯列にリテーナーをつけて眠るようにしています。 ところで富永先生、矯正治療を受ける場合、健康な歯を抜歯することがあるんですよね? 抜歯の選択って少し勇気がいる気がしますが……。
富永:はい。確かに患者さんにとっては負担に感じる部分だと思いますが、咬み合わせが悪い場合、我々は慎重に判断して抜歯を選択することがあります。なぜなら、1本抜いたほうが残りの歯が長持ちする場合があるからです。例えば、きちんと咬み合っていない歯があると、その部分に食べカスなどが溜まりやすくなり、結果的にむし歯や歯周病になるリスクが高まります。その状態を放置して複数の歯にリスクが及んでしまうのを避けるためにも、抜歯をして、よく噛める安定した咬み合わせをつくったほうがよいことになります。 要は、歯を抜くデメリットより、よく磨ける口の中をつくるメリットのほうが高いと判断した場合には、抜歯をおすすめすることになるわけです。ちなみに、この抜歯によって、残った歯の寿命が縮まるということはありませんので、そこはご安心いただきたいと思います。
疾患として認められると、健康保険が適用になることも
八木:矯正治療に健康保険が適用される場合もあるそうですね?
宮崎:そうです。歯科疾患として認められると、健康保険の適用となります。成人ですと、例えば顎変形症の方が受ける外科矯正などが該当します。この場合、治療期間の真ん中あたりで10日ほど大学病院などの口腔外科に入院して外科手術を行いますが、保険が適用される医療機関で矯正治療を受けた場合は、矯正費用と外科手術・入院費用を合わせて50万前後の支払いで済む場合が多いといえます。
富永:健康保険の適用になるもっとも多い疾患が顎変形症ですが、ほかに唇顎口蓋裂(しんがくこうがいれつ)や生まれつき6本以上の歯がない患者さん、または約30種類の先天性疾患に起因する不正咬合が挙げられます。健康保険が適用されるのは、これらに該当する方が都道府県から認可を受けた医療機関で治療する場合となります。
●顎変形症
上あご、もしくは下あごが、上下・左右・前後に変形している状態。ものがしっかり噛めないだけでなく、発音が不明瞭、あごの関節に痛みがあるといった障害を伴ったり、あごの形がコンプレックスとなって積極的になれないなど、人知れず悩みを抱える場合も多くあります。
●都道府県から認可を受けた医療機関
先天疾患の矯正歯科治療に健康保険が適用される医療機関が「障害者自立支援医療機関」、顎変形症の矯正歯科治療に健康保険が適用される医療機関が「顎口腔機能診断適合医療機関」。
指定医療機関のリストは、日本矯正歯科学会のホームページ http://www.jos.gr.jp/facility/から確認できます。
聞けば聞くほど奥が深い矯正歯科治療。ここまで読んで、「自分の場合はどうなんだろう?」「もっと知りたい」と思った方は、専門のクリニックに相談してみてはいかがでしょう。矯正歯科専門クリニックの場合、初診・相談は予約制で、初診にかかる時間は30分から1時間程度。相談では遠慮せず、歯並びに関する悩みや疑問点などを先生に伝えることが大切です。
★次のページでは「矯正歯科治療に関する、よくあるQ&A」をご紹介!
きれいな歯並びで幸せに生きる!大人の矯正歯科治療の魅力とは?
矯正歯科治療に関する、よくあるQ&A
セミナーの最後は、あらかじめ寄せられた質問に壇上の3名が答えるコーナーです。
宮崎先生と富永先生は矯正歯科専門医としての立場から、白石先生はかつて治療をした患者の立場から、 それぞれコメントされました。
Q.治療費の目安と患者さんの年齢について
「矯正治療のほとんどは自費診療のため、平均すると60~100万円くらいとなります」(富永)
「矯正治療に年齢制限はなく、健康な歯と歯ぐきがあれば、いくつからでも治療できます。実際、68歳の患者さんもいらっしゃいますよ」(宮崎)
Q.仕事と矯正歯科治療の両立について
「私は働きながら矯正治療を受けましたが、さほど不便は感じませんでした。治療後の通院も月1回のペースでしたから、困難ではありません。気になったのは、食事のときワイヤーに食べ物がからまりやすくなるのと、矯正装置があたって口内炎ができやすくなることくらいでしたね」(白石)
Q.ワイヤー調整後の痛みについて
「痛みは個人差があります。平均すると、子どもより大人のほうが痛みを感じやすいかもしれません。矯正治療中は月に一度、通院してワイヤーの調整をするのですが、その後に少し痛みを感じることがあるので、大切な仕事の前日などは調整を避けるとよいでしょう。1週間くらい調整を遅らせても大きな問題はありませんから、ご自分でコントロールしていかれるとよいと思います」(富永)
Q.目立たない治療法について
「大人の矯正治療に使うマルチブラケットも、メタル(金属)からクリア(セラミック)タイプへと主流が変わってきているので、意外に目立ちません。歯の裏側につける治療法は、歯の表側につける方法より難易度が高いので、習熟した矯正医を選ぶことが大切だと思います」(宮崎)
Q.妊娠中の矯正歯科治療について
「これまで妊娠期間中に矯正治療をしていた患者さんは何人もいらっしゃいました。妊娠中はレントゲンや薬、歯科処置などに制約は生じるものの、妊婦さんが矯正治療を受けることは可能です。出産後3か月くらいはワイヤー調整の通院に来れなくなりますが、それを見込んで治療計画を立てていけば大丈夫です」(宮崎)
Q.歯周病がある場合の矯正歯科治療について
「かつては歯周病があると矯正治療は無理だと言われましたが、今は歯周病がコントロールされていれば大丈夫とされています。コントロールするには、クリニックで歯周病の治療を受けていることが大切です。重度なら無理な場合もありますが、歯周病治療を行うドクターと矯正治療を行うドクターが連携して治療を行えば、可能な場合もあります。まずは専門のドクターに相談してみるのがよいでしょう」(富永)
Q.睡眠中、歯をくいしばるクセについて
「食いしばりや歯ぎしりを続けると、奥歯などがすり減ったり、顎関節を痛めたりしがちです。予防するには、就寝前にナイトガードをつけること。いろんな種類のものがありますが、自分の歯列に合ったものをつくってもらうことが大切です。こうした予防策をとらずにいると、歯に亀裂が入って神経を傷つけることもあるので、健康維持の意味で入れてみることをおすすめします」(宮崎)
「眠っている間の食いしばりや歯ぎしりは、情報ストレスがいちばんの原因とされています。ナイトガードを使用するとともに、歯や歯を支える歯周組織によくない影響を与えるストレスをコントロールしていくことも大切ですよ」(富永)
Q.海外の矯正歯科治療の実情について
「アメリカでは、成長期にメタルタイプのマルチブラケットをつけるのが当たり前で、歯並びの悪さを放っておくのは恥ずかしいことという認識です。ですから、本人もまわりも矯正治療や矯正装置のことは、まったく気にしていないのが現状です」(宮崎)
キレイな歯並びは、その人自身を語るもの
フリーキャスターとして大人気の八木さん。中学の頃の矯正歯科治療を通して養われた、口もとに対する意識とは?
セミナーの中で出た彼女のトークをまとめてご紹介します。
私はアメリカの小学校に通っていましたが、20年以上前でも、クラスの9割はマルチブラケットをつけて矯正治療をしていました。ハリウッド映画を観ても、主人公になるのは歯並びのキレイな人ばかり、悪者は歯並びが悪いですよね(笑)。そこにアメリカの階級社会の縮図があるんだと感じます。もちろん、マドンナのようにすきっ歯をよしとしたり、レディ・ガガのように出っ歯をよしとするなら別ですが、整っていない歯並びがコンプレックスに思うのなら、治療して治したほうがいいと思います。
私のまわりには、30代になってから矯正治療を始めた人が2人います。1人はメイクさん、もう1人はスタイリストさんです。そのうちの1人が裏側に矯正装置をつけて治療をしているんですが、話すたびに装置が舌に触れて「話しづらい」みたいです。一方、表側から治療を始めた人は、装置のことをまったく気にしていない様子。それを見て、裏側からの治療はまわりの人には気づかれないかもしれないけれど、本人は治療していることを常に意識しなきゃいけないんだな、大変そうだなと思いました。矯正装置に抵抗があるという方もいるかもしれませんが、今のものは本当に目立たないので、そこは気にしなくてもいいんじゃないかなと個人的には思いますね。
こうしたトークを交えつつ、無料セミナーが終了したのは午後8時。
受講者の皆さんからのアンケートを見ると、 「矯正について、歯の大切さについて、参考になった」「矯正について大変考えてみたくなった」「歯科矯正は特別なことでなく、より良く前向きになる治療だとわかった」「8020を目指そう!と思った」
……といった前向きな感想が多く寄せられました。
今回ご紹介した無料セミナー開催のほか、矯正歯科医会では、治療中の笑顔の写真コンテスト「ブレース スマイル コンテスト」の主催や、矯正歯科治療に関する啓発本の監修、歯並びに関する意識調査結果の公開など、矯正歯科の専門団体として、広く歯科全体に向けて矯正歯科治療の情報を発信しています。くわしくは、ホームページにてご確認ください。