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- 2024
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荷さばき所のストックマネジメントのガイドラインが改訂されました
はじめに
令和2年12月に「荷さばき所のストックマネジメントのガイドライン(案)」(以下「ガイドライン」という。)が公表され、令和3年度には高度衛生管理型荷さばき所がストマネ事業の補助対象に追加されました。
今回改訂されたガイドラインは、施設管理者による荷さばき所のストックマネジメントの実施を促進させるにあたり、モデル地区を選定し、機能保全計画の作成例を示しながら、現行のガイドラインをより実用性が高く、分かりやすい内容へ改訂したものとなります。
ストックマネジメントの流れと実施概要
⑴ ストックマネジメントの流れ
ストックマネジメントによる機能保全のプロセスは、荷さばき所の日常的な管理、施設の状態を継続的に把握するために行う定期的な機能診断調査、施設の機能を保全する費用低減を考慮した適時・的確な対策の実施等を継続的に行うことになります。
図1にストックマネジメントの標準的な流れを示します。
⑵ ストックマネジメントの実施項目
荷さばき所のストックマネジメントの内容は図1に示したように、現状の施設老朽化状況を判断し将来にわたる荷さばき所の保全・維持管理の方法を立案する機能保全計画策定とその後の定期的な見直し・更新、一定の間隔で実施する施設の日常点検や定期点検等の日常管理、これらを基に状況に応じて行う機能保全対策工事の実施などに分類され、これらを段階的、継続的に行うことが重要になります。
ストックマネジメントの実施手順
⑴ 機能診断の実施
機能診断調査は、対象となる荷さばき所の機能全般について全容を把握するとともに、施設の老朽化予測や機能保全対策工法の検討等に必要な事項について調査を行うものであり、簡易調査、詳細調査を必要に応じて組み合わせて実施します。
⑵ 老朽化度の評価
調査の結果を踏まえ、部材ごとの老朽化状態を評価します。荷さばき所の老朽化度評価は、荷さばき所を構成する建屋、設備を対象として、各々の部材・設備ごとに老朽化状態を判定し、4段階に評価するものです。
老朽化度の評価については、陳列スペース、冷蔵室、冷凍室、休憩室、手洗い・足洗場、トイレ等が壁やカーテン等で物理的にエリアが仕切られている場合には、その仕切りごとのエリアを単位とし、物理的な仕切りがない場合には、選別、陳列、仕立て等の利用目的ごとにエリア分けを設定して、そのエリアを単位として評価を行います。
なお、エリア内に同一の部材が複数ある場合(例えば、柱が複数本ある場合等)は、表1に示す通り、最も老朽化状態が深刻な部材の老朽化度を選択するものとします。
老朽化度評価の例を表1に示します。
→右にスライドできます
No. | 個々の柱の 老朽化状態 |
水産物陳列エリアの 柱の老朽化度 |
---|---|---|
柱① | 老朽化度「c」相当 | b |
柱② | 老朽化度「c」相当 | |
柱③ | 老朽化度「c」相当 | |
柱④ | 老朽化度「c」相当 | |
柱⑤ | 老朽化度「c」相当 | |
柱⑥ | 老朽化度「b」相当 |
⑶ 健全度の評価
健全度は、部材・設備の種類ごとに施設全体について評価するものであり、老朽化度評価結果を基に、A、B、C、Dの4段階で評価を行います。
評価の方法は、各エリアの部材・設備毎に評価した老朽化度から、最も深刻な評価を、その部材・設備の健全度にすることを基本とします。
健全度評価の例を表2に示します。
→右にスライドできます
評 価 | エリア区分 | 部材の種類 | ||
---|---|---|---|---|
柱 | 床 | 建具 | ||
老朽化度 | 水産物搬入エリア | a | b | c |
水産物陳列エリア | c | b | c | |
サニタリーエリア | c | b | c | |
事務・休憩エリア | c | b | c | |
機械室 | c | c | c | |
健全度 | A | B | C |
⑷ 機能保全対策の検討
部材及び設備ごとに機能保全対策の要否、ソフト対策や代替エリアでの対応等の一時的な対応策の適用の可否、機能保全対策工法とその実施時期の組合せ(以下「シナリオ」という。)を検討します。
個々の施設の変状に対して技術的に適用可能な機能保全対策は、実施時期と工法の組合せにより様々な対策が存在します。このため、機能診断結果に基づく部材及び設備の老朽化予測を踏まえ、技術的・経済的に妥当であると考えられる対策の組合せを、検討のシナリオとして複数仮定します。
⑸ ライフサイクルコストの経済比較
ライフサイクルコスト(LCC)の経済比較は、施設機能を保全するために必要なすべての経費について、比較検討を行います。LCCは、機能保全対策工法の検討により作成された複数のシナリオについて算定し、経済比較を行い、最適なシナリオを選定します。
おわりに
荷さばき所の管理者等のストックマネジメントを行う際に必要となる技術的知見の理解の促進とともに、荷さばき所の適切な機能保全とライフサイクルコストの最適化に資することが期待されます。
なお、本ガイドラインは水産庁ホームページで閲覧できます。
(第1調査研究部 葛西 隼平)