平成22年11月26日
出版倫理協議会
議長 鈴木富夫
私たち、出版4団体【(社)日本雑誌協会、(社)日本書籍出版協会、(社)日本出版取次協会、日本書店商業組合連合会】で構成する出版倫理協議会は、本年3月、条例改正案に対する緊急反対声明を発表しました。6月の都議会でこの改正案は反対多数で否決され、マンガ・アニメーションへの不当な表現規制を阻止することができたと認識しています。ところが都当局は都民への情報公開も十分な議論もないまま、来る11月30日に開会予定の次期都議会に、再度改正案を提出しようとしています。
新たに提出される改正案では、最大の問題であるマンガ・アニメーションへの「規制強化」という点ではまったく変わっていないだけではなく、さらに曖昧で危険な条項が加えられています。
一例をあげれば「著しく不当に賛美・誇張」「著しく社会規範に反する」等の記述は、きわめて抽象的で、行政当局の恣意的解釈・運用によって、規制の範囲をいかようにも拡大することができます。また、前改正案にあった「18歳未満として表現されていると認識されるもの」という描写人物の年齢が削除されていますが、これは逆に規制の範囲を広げることになる、と強い懸念をもちます。
漫画家をはじめとする多くの表現者が、これらの規制によって、性に関する表現に際して逡巡・躊躇を余儀なくされる事態が容易に予期され、その「萎縮効果」は計り知れないものがあります。
さらに、携帯電話端末の規制に関しても、機能等をチェックした上で「携帯電話端末等で、青少年の健全な育成に配慮していると認めるものを、青少年の年齢に応じて推奨することができる」としており、これは家庭教育への行政の介入を招きかねません。
青少年の健全育成はきわめて重要な課題であり、私たちの責任が重いことも十分認識しています。しかし、その責任は私たち出版人が自主的に負うべきであり、現に第三者機関であるゾーニング委員会を設け、月2000万冊に及ぶ雑誌に小口シール止めを施すなど、青少年を守るためのさまざまな自主規制を実施しているところです。再度提出された改正案は、私たちのこうした自主規制の努力を踏みにじるもので、到底認めるわけにはいきません。
なお、青少年の健全育成というならば、性暴力等で現実に人権を侵害されている児童の救済こそ行政の急務であり、これらに関して何ら有効な方策を出さぬまま、コミック規制ばかりを進める都当局の偏った姿勢には、極めて大きな問題があることも、付言しておきます。
以上