(※追記(11月16日20時41分):MISAMO「NEW LOOK」におけるSpotifyの当週順位を当初10位と記載していましたが、正しくは8位でした。つきましては訂正後の表に差し替えております。心よりお詫び申し上げます。)
3月まで記載していたこちらのエントリーを、内容を少しリニューアルした上で夏以降再開しています。先週の内容はこちら。
ビルボードジャパンソングチャートの動向を分析する者として、真の社会的ヒット曲とはロングヒットする、年間チャートで上位に進出する作品と位置付けています。週間単位で上位に入ることも素晴らしいですが、他方で所有指標が強い曲は加算2週目、また所有指標的な接触指標をなぞる曲(主にLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲)はキャンペーン終了後に指標が急落し、総合でも大きくダウンすることが少なくありません。
この急落は毎週のようにみられます。ソングチャートのトップ10は5曲近くが毎週入れ替わり、ロングヒットする(その可能性を持ち合わせている)かそうでないかが極端に分かれる状況です。ロングヒット曲は主にライト層の支持が反映されるストリーミング指標が強い一方、急落する曲はコアファンとライト層との乖離が大きいのですが、これらを1週分のチャートから判断することは現状では難しいといえます。
ゆえにこのブログエントリーでは上記提案をビルボードジャパンに対して行っていますが、すぐに叶うことはないかもしれません。ならば、あくまで自分なりであると前置きしつつ、チャートの見方を提示したいと考えたのがエントリー復活の理由です。
ビルボードジャパンは9月下旬、CHART insightが完全な形でリニューアルを果たしています。3月のリニューアル時には円グラフを累計ポイントの構成比(ソングチャートの構成指標にはないTop User Generated Songsチャートも含む)に切り替えるとしていましたが、実際は当週(最新週)における構成比が表示され続けていました。それが累計ポイントに切り替った形です。ゆえに、当週(最新週)の指標構成は見えにくくなっています。
<2024年11月13日公開分 ビルボードジャパンソングチャート
前週初めてトップ10入りした作品の、前週および当週におけるCHART insight>
※CHART insightの説明
[色について]
黄:フィジカルセールス
紫:ダウンロード
青:ストリーミング
黄緑:ラジオ
赤:動画再生
緑:カラオケ
濃いオレンジ:UGC (ユーザー生成コンテンツ)
(Top User Generated Songsチャートにおける獲得ポイントであり、ソングチャートには含まれません。)
ピンク:ハイブリッド指標
(BUZZ、CONTACTおよびSALESから選択可能です。)
[表示範囲について]
総合順位、および構成指標等において20位まで表示
[チャート構成比について]
累計における指標毎のポイント構成
・INI「WMDA (Where My Drums At)」
11月6日公開分 1位→11月13日公開分 13位
・THE RAMPAGE from EXILE TRIBE「Endless Happy-Ending」
11月6日公開分 4位→11月13日公開分 34位
・22/7「YESとNOの間に」
11月6日公開分 6位→11月13日公開分 100位未満
・ aespa「Whiplash」
11月6日公開分 7位 →11月13日公開分 7位
当週におけるストリーミング等動向表はこちら。
INI「WMDA (Where My Drums At)」については前週紹介しています。
INIの前作(フィジカルセールス指標加算対象曲)「LOUD」は7月3日公開分で首位を獲得した翌週、前週比41.7%となる7,689ポイントを獲得し総合5位に。一方で今作「WMDA (Where My Drums At)」は前週比28.3%となる3,443ポイントを獲得し総合13位に後退しています。
注目は「WMDA (Where My Drums At)」において、ストリーミングは加点対象となるもダウンロードは300位以内に入っていないという点。CHART insightでは各指標の21~100位が可視化されない代わりに101~300位は確認できるのですが、ダウンロード指標の基となるDownload Songsチャートで100位以内に入っておらず、またCHART insightでも加点が確認できないことから、同曲は300位未満と捉えることが可能です。
社会的ヒット曲はフィジカルが発売されても、所有の選択肢が増えることでダウンロードも安定する傾向にあります。INI「WMDA (Where My Drums At)」ではデジタル初加算週および2週後のフィジカルセールス初加算週にダウンロード指標が加点された一方、当週および2週前は加点されないという極端な状況が発生しています。この曲の支持がコアファンの域をあまり越えていないのではということを、この点から感じます。
なお、NHKはINI「WMDA (Where My Drums At)」のテレビパフォーマンス動画をYouTubeで発信しています。
(※動画の期間限定公開に合わせてXのポストも消える可能性を踏まえ、キャプチャしたものを貼付しました。問題があれば削除いたします。)
しかしながらこの発信を勿体ないと感じています。ポスト発信の前日の段階で既に公開されていること、NHK関連のYouTubeアカウント発でありブログ貼付等において融通が利かないこと、期間限定であること、そして歌手側のYouTubeチャンネルから発信されればビルボードジャパンソングチャートの動画再生指標に加算される可能性があったこと…これらがNHKの発信そして姿勢に違和感を抱いた理由です。
NHKにおいては米津玄師「さよーならまたいつか!」の『虎に翼』オープニング映像フルバージョン動画を米津さん側の公式YouTubeチャンネルに提供したことが、同曲のソングチャートトップ10内復帰の一因となっています(米津玄師「さよーならまたいつか!」が19週ぶりのトップ10ヒットに…5指標すべて上昇の背景とは(10月4日付)参照)。『NHK紅白歌合戦』間近のタイミングで、局側には動画ポリシーの見直しを願います。
さて、前週初めてトップ10入りした曲で当週最も高い位置につけたのはaespa「Whiplash」でした。この曲については、LINE MUSIC再生キャンペーンを採用しています。
(※キャンペーン終了後に掲載ページが消える可能性を考慮の上、キャプチャしたものを貼付しました。問題があれば削除いたします。)
「Whiplash」はLINE MUSICのみならずApple MusicやSpotifyでも人気となり、ビルボードジャパンソングチャートのストリーミング指標で12→4→5位と好調に推移しています。LINE MUSIC再生キャンペーンに関係なくストリーミングで人気を得ることの重要性を、この曲のチャートアクションから理解できるはずです。キャンペーンが反映されなくなる次週11月20日公開分のソングチャートでも、急失速はほぼないと思われます。
LINE MUSIC再生キャンペーンに伴いストリーミング指標でもポイントを獲得しながら、他のサブスクサービスと順位が乖離する曲は少なくありません。そのような作品はキャンペーン終了後に総合ソングチャートでも急落する傾向にあることから、以前紹介した【ヒットの7段階】表にて第2段階に位置付けています。
たとえば昨日のエントリー(→こちら)で紹介した超特急をはじめとするスターダストプロモーション所属の男性アイドル/ダンスボーカルグループはこのキャンペーンの採用率が高く、実際にストリーミング指標で300位以内に入ることが多いのですが、しかし第2段階にとどまることが大半です。彼ら(の運営側)に限らず、社会的ヒットに至るにはどうすべきかをaespa「Whiplash」から探るのもいいかもしれません。
最後に。THE RAMPAGE from EXILE TRIBE「Endless Happy-Ending」はラジオでの強さが続き、総合40位以内にとどまっています。
このブログでは「Endless Happy-Ending」でのラジオ指標の動向(前作でもみられた傾向)を踏まえ、ヒットの第2段階にあると記しました(上記参照)。仮に今後この指標が急失速するならば、ビルボードジャパンのチャートポリシー(集計方法)見直しも必要ではないかと考えます。