【ビルボードジャパン最新動向】Creepy NutsとSnow Man、双方ともポイントを伸ばせただろうことについて - イマオト - 今の音楽を追うブログ -

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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【ビルボードジャパン最新動向】Creepy NutsとSnow Man、双方ともポイントを伸ばせただろうことについて

最新2月21日公開分(集計期間:2月12~18日)のビルボードジャパンソングチャートでは、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が4連覇を達成。Snow Man「LOVE TRIGGER」が2位に初登場を果たしています。

今回のソングチャートは2位までが1万2千ポイントを突破したこと、そしてSnow Manがフィジカルセールス指標初加算週に総合首位を獲得できなかったことにおいて、特筆すべき週と捉えています。尤も複数週の動向を踏まえて真の社会的ヒットに成るかを見極める必要があるのですが、まずはCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が2024年度を代表する曲に昇華したと言って過言ではないでしょう。

 

まずは、2023年度以降の週間ソングチャートにおける1位および2位の表を掲載。2023年度以降はチャートポリシー(集計方法)の変更がほとんどないため(GYAO!のサービス終了に伴い、昨年3月に同サービスを動画再生指標のカウント対象から外した程度)、純粋に比較可能と考えます。

上記表をみると、最新チャートを制したCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」、そして2位のSnow Man「LOVE TRIGGER」のポイントはいずれも高いのですが、双方においてポイントをさらに伸ばし、より高い次元で接戦を繰り広げることができたのではないかという思いを抱いています。

 

 

「LOVE TRIGGER」はフィジカルセールスが初週ミリオンを突破し、Snow Manは日本のアイドルやダンスボーカルグループの中でとりわけ勢いのある歌手であることがあらためて証明されました。しかしながらデジタル未解禁ゆえにロングヒットの要たるストリーミング指標、テレビパフォーマンスがより大きく影響を及ぼすダウンロード指標が加点されないことは非常に勿体ないと感じています。

(上記CHART insightにおいてストリーミング指標は青、ダウンロード指標は紫で表示。これら指標が加点されていないことが解ります。)

たとえば昨年大晦日YouTube生配信は記録的な同時接続者数を達成していますが(上記参照)、デジタル未解禁ゆえに曲を気になった方が即座にダウンロードできない、配信後ストリーミングでチェックできないという機会損失が生じます。数字からはライト層の視聴も多かったと推測可能であり、コアファンへの昇華の意味でもデジタル解禁は必要と考えます。TikTok等で過去曲がフックアップされる可能性も高まるゆえ尚の事です。

ダブルAサイドシングルは1曲のみにフィジカルセールス指標が加点されるのですが、加点対象外の「We'll go together」は「LOVE TRIGGER」より動画再生指標が高く、総合100位以内に入ったことも。デジタル解禁すればダウンロード等の加点に伴い「We'll go together」も上位進出を果たせたはずで、先行配信され総合首位を獲得したBE:FIRST「Boom Boom Back」(「Smile Again」のカップリング)の形もなぞれたと考えます。

 

ジャニーズ事務所所属歌手については、初週20万枚以上のフィジカルセールスを見込めるグループの大半が未だデジタル解禁を行っていません。この点については、事務所側に”勝てるところでだけ勝てればいい”という意識が背景にあり、それがメディアの対応も相まって醸成されてしまったものと考えます(下記エントリー参照)。チャートにおいて、ビルボードジャパンではなくオリコンを重視し続けた理由ともいえるでしょう。

(ビルボードジャパンが社会的ヒット曲の鑑であるという自負をより広く流布し、自身の認知度や信頼度を高めて歌手側やコアファンを意識させることも必要です(そのためのマーケティングが弱いということを、厳しい物言いですが痛感しています)。その弱点が解消されれば、旧ジャニーズ事務所所属歌手のみならずデジタルをあまり意識してこなかった歌手の認識を改善させることができるはずです)

Snow Manが今回のフィジカルシングルをデジタルでもリリースしたならば、当週のチャートにおいて「LOVE TRIGGER」の2万ポイント前後の獲得、ならびに「We'll go together」の上位登場も可能だったと考えます。無論ロングヒット、さらには年間チャートでの上位進出も十分あり得たでしょう。

 

 

他方、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」は総合首位をキープ。ストリーミングが堅調に伸びているのみならず、ダウンロード指標でも上昇を続けています。しかしながら動画再生指標は未だ加点されていません。

(上記CHART insightにおいて動画再生指標は赤で表示。同指標が加点されていないことが解ります。)

アニメのノンクレジットオープニングムービーは再生回数を大きく伸ばしながらも、上記動画はアニメ制作会社側のYouTubeアカウント発ゆえ動画再生指標のカウント対象となるISRC(国際標準レコーディングコード)が付番できず、この指標が未加算という状況が続いています。この点については以前も紹介しています。

Creepy Nuts側が公式動画をアップしていないことで米ビルボードによるグローバルチャートでも加点を逃し(動画再生分はストリーミング指標に加算)、最新2月24日付Global Excl. U.S.で狙えたはずの首位の座を逃したといえるかもしれません。せめて公式オーディオが、そしてリリックの楽しさを踏まえればリリックビデオもあれば尚好いはずです。元来、YouTubeで音楽を聴く方にとって公式動画の不在は機会損失といえます。

日本市場でのヒットの延長線上に世界でのヒットがある(日本での盛り上がりを世界に伝えることでコアファンを世界中で醸成することが可能)という前提に立てば、公式動画の用意は日本でのヒットの安定且つ世界でのさらなる躍進につながります。公式動画に限らず音楽の接触/購入環境の充実について、今回のチャート動向から日本音楽シーンの課題があらためて浮き彫りになったと捉えるのは、決して大袈裟ではないはずです。

 

仮にCreepy Nuts、そしてSnow Man両者がその環境を充実させたならば、「Bling-Bang-Bang-Born」および「LOVE TRIGGER」は昨年5月3日公開分のビルボードジャパンソングチャートにおけるYOASOBI「アイドル」とBE:FIRST「Smile Again」クラスでの戦いとなっていたのではないでしょうか。ビルボードジャパンはこの週について『超ハイレベルの首位争い』と形容していたことは、実に興味深いのです。