「アイドルなんかじゃなかったら」トップ10返り咲きの背景を踏まえたビルボードジャパンへの提案 - イマオト - 今の音楽を追うブログ -

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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

「アイドルなんかじゃなかったら」トップ10返り咲きの背景を踏まえたビルボードジャパンへの提案

最新11月29日公開分のビルボードジャパンソングチャートでは、AKB48「アイドルなんかじゃなかったら」が10位に登場。前週100位未満だったこの曲が再浮上した形です。一方で今回のチャートアクションを踏まえ、今週このブログで提案したチャートポリシー変更の必要性を、強く感じています。

最新11月29日公開分のビルボードジャパンソングチャートにおいて、AKB48「アイドルなんかじゃなかったら」が獲得した指標はフィジカルセールスのみであることが、CHART insightから解ります(フィジカルセールス指標は黄色で表示)。同指標の基となるフィジカルセールスは58,173枚を売り上げ、前週の44位(フィジカルセールス569枚)から3位に急上昇したことが総合での急上昇の理由と捉えていいでしょう。

「アイドルなんかじゃなかったら」のCHART insightから黒で示される総合順位を除いたものを上記に。同曲はフィジカルセールス初加算週(7週目)に初めて総合100位以内に登場しながら、翌週に圏外へ。これは他指標との乖離が要因ですが、フィジカルセールス以外においてはダウンロード(紫で表示)が1~2週目および7週目に、動画再生(赤)が5週目に、ラジオ(黄緑)が5週目、7~8週目および11週目に加点されたのみとなっています。

 

ビルボードジャパンソングチャートにおいてロングヒットする曲はいずれもストリーミング(CHART insightでは青で表示)がポイント全体の過半数を占めています。接触指標群の強さは、歌手のファンというわけではないが曲が気になるというライト層の人気を示しており、コアファンほどではないにせよ彼らの熱量には持続力が伴い、そしてストリーミングでのヒットが社会的ヒットと比例する傾向については常時お伝えしています。

ゆえに、ストリーミング指標が一度も300位以内に入っていないAKB48「アイドルなんかじゃなかったら」が社会的ヒットに至っているとは言い難いというのが私見ですが、この曲については前作「どうしても君が好きだ」と同様に、発売から2ヶ月が経過した後もフィジカルセールスが100位を割り込んでいないことを興味深く捉えています。

 

おそらくは前作「どうしても君が好きだ」にてAKB48がレコード会社を移籍したことが、フィジカルセールス強化という施策(の変化)につながったといえるかもしれません。その前作では他指標が乏しかったことからフィジカルセールス指標に沿う形で総合順位が推移しながらも、総合トップ10に返り咲いたことはありませんでした。それが今作「アイドルなんかじゃなかったら」にて達成したという形です。

しかしながら、施策の実行はコアファンの熱量を高める一方でライト層との温度差にもつながります。このことは接触指標群(ストリーミングおよび動画再生)のほぼ未加点や、リリースから時間が経過するほどフィジカルセールス以外の指標を加点できなくなっていることからも明らかであり、このような形で総合チャートを駆け上がりながら急落する(可能性が高い)作品を真の社会的ヒット曲と呼ぶことは厳しいと考えます。

 

 

ビルボードジャパンに対してはこのブログにて今週月曜、2024年度の集計期間初日にチャートポリシー(集計方法)等の変更提案を行っていますが、そこでも記したソングチャートにおけるフィジカルセールス指標のウエイト引き下げについて、今回の事例を踏まえれば必須ではないかと強く感じています。

複合指標から成り、ストリーミングでのヒットが重視される現在にあって、【1週間分のチャートだけをみて真の社会的ヒット曲が判明可能】なのがチャートの理想形と考えます。極端な形容かもしれませんが、しかしフィジカルセールスだけが突出した曲の急落が毎週の観測から明らかになっている以上、見直しは検討すべきと強く思うのです。

 

尤も、フィジカルセールス指標が不要だとは全くもって考えていません。米ビルボードソング/アルバムチャートではフィジカルセールスを活用した施策も行われています。重要なのはコアファンそしてライト層双方に愛される作品の登場であり、そのような作品は爆発力と持続力の双方を伴うことで確実にロングヒットに至ることができるはずです。