【ビルボードジャパン最新動向】「Subtitle」が「恋」を抜き最長首位記録達成、そこで「恋」の動向を振り返る - イマオト - 今の音楽を追うブログ -

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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【ビルボードジャパン最新動向】「Subtitle」が「恋」を抜き最長首位記録達成、そこで「恋」の動向を振り返る

毎週木曜以降は最新のビルボードジャパン各種チャートについてお伝えします。

1月16~22日を集計期間とする最新1月25日公開分のビルボードジャパンソングチャートでは、Official髭男dism「Subtitle」が8週連続、通算12週目の首位を獲得。ビルボードジャパンが2008年にソングチャートを新設して以降最長首位獲得記録を保持していた星野源「恋」を抜き、「Subtitle」が単独での最長記録を達成しました。

Official髭男dism「Subtitle」は米津玄師「KICK BACK」と同日リリースされ、2曲共にビルボードジャパンソングチャートで初登場して以降常にトップ3入りを続けています。その「Subtitle」の強さについては前週、同曲の初登場以降にトップ3入りした曲と比較する形で紹介しました。

(なお今回のブログエントリーの最後に、最新週における表を掲載しています。)

 

今回Official髭男dism「Subtitle」は星野源「恋」を抜いた形ですが、今回はその星野源「恋」のチャート推移を振り返ってみます。トップ3入りは100位以内登場4週目となる2016年10月12日公開分以降、2017年3月29日公開分まで続いています(2017年2月22日公開分および3月15日公開分では4位)。

上記は星野源「恋」のビルボードジャパンによるCHART insight。順位やチャート構成比は最新1月25日公開分のものを、期間は2016年9月14日公開分から2017年4月5日公開分までの30週分を示しています。

(CHART insightでは総合順位が黒で示され、各指標はフィジカルセールスが黄色、ダウンロードが紫、ストリーミングが青、ラジオが黄緑、ルックアップがオレンジ、Twitterが水色、動画再生が赤、カラオケが緑で表示。「恋」のリリース当時はカラオケが指標がなく、またルックアップおよびTwitter指標は2023年度に廃止されています。)

星野源「恋」がトップ3内に在籍していた際の週間ソングチャート1~3位の動向、ならびに各週のフィジカルセールス首位曲における総合順位についてもチェックします。

(上記表においては、当時のチャートポリシーを踏まえて週間3万ポイントを超える曲をオレンジで、フィジカルセールス週間30万枚以上を記録した曲を黄色で表示しています。前週のブログエントリー掲載分や巻末に掲載した表とは水準が異なりますのでご注意ください。)

星野源「恋」はフィジカルセールス指標初加算に伴いソングチャートで初めてトップ3入りを果たしましたが、その週(2016年10月12日公開分)はHi-STANDARD「ANOTHER STARTING LINE」がフィジカルセールスで上回っており、「恋」はフィジカルセールス指標では一度も首位に立てていません。「恋」が年末年始の7連覇を含む11度の首位を獲得した要因はデジタルの強さにあることが、上記表からはっきり見て取れます。

 

さて、前週のブログエントリーにて掲載した2022~2023年のソングチャート、そして今回紹介した2016~2017年のそれとではポイントの水準が大きく異なります。これは当時、少なくとも2016年度まではフィジカルセールスに係数処理が適用されていなかったことが大きいと言えます。

係数処理は、週間フィジカルセールスが一定枚数を超えた場合にその超えた分に施されるもので、これによりフィジカルセールスがそのままポイント化されなくなりました。フィジカルセールスがコアファン向けアイテム化している傾向を考慮し、またデジタルに強い曲のヒットを可視化することを目的としています。導入段階では30万枚(推定)だったものが、その後10万→5万(共に推定)と推移しています。

2016年11月公開分と2017年3月公開分ではAKB48乃木坂46のシングルがミリオン前後のセールスを記録していますが、総合ポイントは大きく異なります。仮に2016年度以前から30万枚以上のフィジカルセールスに対する係数処理が導入されていても星野源「恋」に勝った曲は多かったかもしれませんが、それでも未導入の段階で「恋」が週間30万枚を超えるフィジカルセールス曲に総合で勝っている週もあることに驚きます。

 

他方、星野源「恋」はストリーミング指標も強かったのですが、星野源さんがサブスクを解禁したのは2019年8月末。「恋」のリリース当時、ストリーミング指標では歌詞表示サービス”プチリリ”のストリーミングサービスにおける歌詞表示回数をカウント対象としており、サブスクサービスの再生回数をカウントし始めたのは2017年度以降となります(なおプチリリは2017年度第3四半期以降、加算対象外となりました)。

自分がビルボードジャパンソングチャートに注目をしたのは2017年以降のため当時に関する解釈は誤っているかもしれませんが、ともすれば当時サブスク未解禁歌手による作品の中にはプチリリの歌詞表示がカウント対象だったことでストリーミング指標を獲得した曲も少なくなかったかもしれません。星野源「恋」はそれが際立っており、上位安定の大きな礎になったと言えるでしょう。

 

 

星野源「恋」は当時のストリーミング指標におけるカウント方法を味方につけることができたと言えます。フィジカルセールス指標では一度も首位に至らず、またリリース当初はフィジカルセールスに係数処理が適用されていませんでしたが、デジタルの強さにより総合で逆転する週が多く、それらが通算11週首位獲得の要因と考えられます。

 

その後ビルボードジャパンはチャートポリシー(集計方法)を変更し続けています。ストリーミング指標では対象デジタルプラットフォームの拡充や有料会員と無料会員とによる1回再生のウエイト差適用、フィジカルセールスでは係数処理適用枚数の引き下げのほか、カラオケ指標の導入、ルックアップやTwitter指標の廃止等、時代の変遷に即した改革がその都度行われてきました。

この結果、デジタルのみのリリース曲やデジタルに強い曲が週間単位でも首位を獲得しやすくなりました。Official髭男dism「Subtitle」が100位以内登場15週目にして12週首位という単独最長記録を成し遂げたのはチャートポリシー変更も大きい一方、デジタルでここまでの大ヒット曲が生まれることは稀です。他方星野源「恋」はフィジカルセールス係数処理適用前に記録を成し遂げており、双方共に素晴らしい成績と言えるのです。

 

ビルボードジャパンには今回のOfficial髭男dism「Subtitle」の偉業達成について、客観性を保ちつつ、もっと大きく取り上げてほしいと願います。今回の記録達成は、複合指標から成るチャートの重要性やチャートポリシー変遷について訴求する最良の機会でもあると考えるゆえです。

また以前も提案しましたが、オールタイムチャートの作成も希望します。ポイント面では以前の作品のほうが強くなるため、チャートポリシー変遷を考慮した米ビルボードのオールタイムソングチャートのような形で作れば、Official髭男dism「Subtitle」や星野源「恋」の大ヒット、またどちらがより強いかが判明するでしょう。できればフィジカルセールスの勢いが弱まってきた2000年頃までに遡り、作成することを願います。