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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ビルボードジャパンでのKing & Prince「ツキヨミ」チャート動向を読む…特筆すべき点、そして勿体ないと感じる点

ビルボードジャパンソングチャートの動向から、気になる曲を追いかけます。今回紹介するのはKing & Prince「ツキヨミ」です。

King & Prince「ツキヨミ」は、メンバーの平野紫耀さんが主演を務めたドラマ『クロサギ』(TBS)主題歌に起用。メンバー脱退発表のアナウンス後にリリースされたフィジカルシングルは初週61万枚以上を売り上げ、昨年11月16日公開分のビルボードジャパンソングチャートにて首位に登場します。実はその前から、主に動画再生指標が牽引する形で通算2週に渡り100位以内にエントリーを果たしていました。

上記は最新1月18日公開分におけるKing & Prince「ツキヨミ」のCHART insight、そしてこれまでの動向を表にまとめたもの。2023年度に入りルックアップおよびTwitter指標が廃止された後も2週に渡り7千ポイント台をキープしていた「ツキヨミ」は、しかし12月21日公開分でフィジカルセールスが急落し、ポイントも前週の半分以下となっています。

 

フィジカルセールスについては、前週1月4日公開分までの1年間においてKing & Prince「ツキヨミ」が首位に立ったことをビルボードジャパンが報告し、その販売動向について分析されていますが、フィジカルセールス6週目以降の伸びが鈍化していることが解ります。一方で「Lovin' you」「TraceTrace」と比較すると「ツキヨミ」の伸びが突出していることも理解できます。

(なお「ツキヨミ」には過去2作にはない"Dear Tiara盤"というファンクラブ会員限定盤が新たに用意されていますが、ビルボードジャパンでは加算対象外となります。これは昨年リリースの二宮和也『○○と二宮と』のチャート動向からも解ります。なお個人的には加算したほうがよいのではとビルボードジャパンに対し提案しています。詳しくは以前のブログエントリー(→こちら)をご参照ください。)

King & Prince「ツキヨミ」は最新1月11日公開分までのビルボードジャパンソングチャートにて975,248枚のフィジカルセールスを記録していますが、他方オリコンでは12月4日のデイリーランキングにてミリオンセールスを達成したとアナウンスされました。

オリコンにおける昨年12月4日付は、ビルボードジャパンにおいては12月7日公開分の集計期間最終日に該当。そしてそのビルボードジャパンにおいても、12月7日公開分に向けて2週連続で売上が上昇していたことが解ります。そして翌週も8万枚を超える売上を記録していますが、その後は2万枚割れの状況が続いています。

この売上動向を踏まえれば、コアファンを主体にミリオンセールスを目標として掲げた購入行動が「ツキヨミ」ヒットの大きな支えとなり、目標達成に伴い売上が下がったと考えるのが自然かもしれません。ドラマ人気が売上に大きく寄与したならば、『クロサギ』最終回が放送された昨年12月23日を集計期間に含む12月28日公開分にて売上が上がったのではと考えるに、コアファン主体の行動が推測されます。

 

一方で、King & Prince「ツキヨミ」では動画再生指標が好調に推移しています。CHART insightでは赤で表示されるこの指標はフィジカルセールス加算の1ヶ月前に首位に登場すると以降5位以内をキープし、直近では6週続けて首位を獲得しています。

YouTubeGYAO!(ただし後者にはミュージックビデオの存在は確認できず)の再生回数から成る動画再生指標ですが、YouTubeでは1日に何回再生してもすべてカウントされるわけではないため、たとえばコアファンの方がチャートを意識して再生を繰り返してもその効果は高くないと言えます。それでもコアファンの方々によるチャート意識の高まり、またライト層への拡がりについても、この指標の推移から感じることは可能です。

 

動画再生指標をどう捉えるかについてですが、ロングヒットにつながる指標として有効であることをレコード会社、そして所属芸能事務所側はきちんと学ぶべきと考えます。ビルボードジャパンではフィジカルが強くともデジタル未解禁作品が不利なチャートポリシーに成っていますが(しかしこのチャートポリシー変更は社会浸透度に即したものとして信頼に足ると考えます)、ジャニーズ関連曲は動画に強い曲がきちんと年間チャートに入っており、またアルバムセールスにも反映されるため、動画の影響度は重大です。

この動画再生指標は、同じく接触指標であるサブスク再生回数等に基づくストリーミング指標と比例する傾向にあります。最新1月11日公開分ビルボードジャパンソングチャートにおけるストリーミング指標5位までの作品はいずれも動画再生指標10位以内に入っていますが、チャート構成比(ポイント構成)をみれば5曲すべてがストリーミング指標でポイント全体の過半数を獲得。そして総合順位とも一致しているのです。

仮にKing & Prince「ツキヨミ」がサブスクを解禁し、上記に挙げた5曲のようにポイント全体のたとえば半数をストリーミングが獲得して(最新チャートにおけるポイントに上乗せされて)いたならば、少なくとも最新ソングチャートで20位以内に入り、トップ10入りも狙えたことでしょう。ロングヒットした可能性も高く、年間チャートへのランクインにもつながり、5名時代のヒット曲としてその名を残せたはずです。

ジャニーズ作品についてはTikTokの人気も動画再生指標に寄与していますが、TikTokの人気は動画再生のみならずストリーミング指標にも波及するゆえ、デジタル未解禁はその意味でも勿体ないと感じています。

 

 

King & Prince「ツキヨミ」では特筆すべきチャートアクションもみられた一方、デジタルの未解禁はロングヒットに至りにくいと言わざるを得ないというのが自分なりの結論です。ロングヒットし5名ないし6名時代の足跡を残すべく、コアファンの方々はジャニーズ事務所側にデジタル解禁を掛け合うことが必要ではとも考えます。ビルボードジャパンソングチャートが社会的ヒットの鑑となっているゆえ、尚の事です。