本日からの1週間がビルボードジャパンにおける2022年度最終週に。そして2023年度より、ビルボードジャパンはルックアップおよびTwitterの2指標を廃止します。
Billboard JAPANチャート、ルックアップ&Twitter指標を2023年度チャートより廃止 https://t.co/sUmiTGOexU pic.twitter.com/esKzvqNHUc
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) October 26, 2022
特にソングス/アルバムの両チャートに加算されるルックアップ指標の意味するところは大きく、今回は最新アルバムチャートの動向からこの指標の意義をあらためて記載します。なおルックアップとはパソコン等インターネット接続機器にCDをインポートした際にインターネットデータベースのGracenoteにアクセスする数を指し、売上枚数に対する実際の購入者数(ユニークユーザー数)やレンタル枚数の推測を可能にしています。
今回の紹介等にあたり、今年度のアルバムチャート首位作品一覧を以下に記載します。
最新11月16日公開分(11月21日付)ビルボードジャパンアルバムチャートはSEVENTEEN『DREAM』が制しています。
【ビルボード】SEVENTEEN『DREAM』が総合アルバム首位を獲得 ジェジュン/RADWIMPSが続く https://t.co/sVOzMVtlaB pic.twitter.com/r6AZarOAj0
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) November 16, 2022
SEVENTEENのEP『DREAM』はフィジカルセールスが621,426枚を記録。総合およびフィジカルセールス2位のジェジュン『Fallinbow』(28,883枚)に大差をつけています。
しかしSEVENTEEN『DREAM』はルックアップが7位となり、フィジカルセールスと大きな乖離が発生。『DREAM』販売形態や特典内容(→こちら)を踏まえれば、ユニークユーザー数が多くないのではと考えられます。このことは、表題曲のソングスチャートにおける動向からも推測可能です。
「DREAM」は最新11月16日公開分(11月21日付)ビルボードジャパンソングスチャートで27位に初登場。ストリーミング指標は17位ですが、LINE MUSIC再生キャンペーン(→こちら)の影響が大きいと考えます。Spotifyでは1回再生で待ち受け画像がもらえるキャンペーンが用意されていますが(→こちら)、11月9日付デイリーチャートで95位に登場したその3日後には200位圏外に脱落し、ストリーミングで人気とは言い難いでしょう。
ビルボードジャパンアルバムチャートに話を戻すと、ルックアップ指標はSnow Man『Snow Labo. S2』(当週フィジカルセールス4,153枚)が初登場から8週連続で首位に。この指標での首位獲得週数がAdo『狂言』(通算6週)を抜き今年度最長となっていることは、歌手やアルバムの人気を示すに十分です。ただしデジタル未解禁ゆえ、レンタル人気が牽引しているとも考えられます。
ルックアップ指標は2023年度から廃止されますが、この廃止により”フィジカルセールスとの乖離に伴うユニークユーザー数”や”レンタルでの人気作品”を把握することができにくくなると懸念しています。尤もルックアップ指標の廃止はデータ提供元の事情ゆえやむを得ないのですが、廃止に伴いこれら意義が消えることで真の社会的ヒットアルバムが見えにくくなると懸念します。
そこで弊ブログでは、ルックアップやTwitter指標の廃止がアナウンスされた直後にアルバムチャートへのストリーミング指標導入を提案しています(上記リンク先参照)。ルックアップはレンタルCDの取込分加算という接触指標的意味合いがあったこと、ソングスチャートでヒットした曲を含むアルバムがヒットしにくいという問題の解決にもつながること等が提案の理由ですが、これにより先述した内容も解決できると考えます。
たとえばアルバムがグッズ的な意味合いが強いことを理由に売れたとして、収録曲がストリーミングでヒットに至れていない場合には総合アルバムチャートでの上位進出や安定にはつながりにくくなります。そしてそもそもデジタル未解禁作品は解禁を迫られ、日本の音楽業界全体の改善にもつなげられる可能性があるでしょう。
個人的にはビルボードジャパンに対し、ルックアップ指標は加算対象から廃止してもデータ自体が提供元から発信される限りは参考資料として提示することを希望します。そして米ビルボードに倣った(しかし問題点の解決は必要ですが)ストリーミング指標の導入を積極的に議論してほしいと願っています。