先週水曜の発表された8月31日付ビルボードジャパンアルバムチャートは米津玄師『STRAY SHEEP』が圧倒的な強さで3連覇を達成、そして集計期間の前日に放送された『関ジャム 完全燃SHOW』で取り上げられた藤井風さんのアルバム『HELP EVER HURT NEVER』が6位に入り、9週ぶりにトップ10返り咲きを果たしました。
【ビルボード】米津玄師『STRAY SHEEP』3週連続で総合アルバム首位 藤井 風/Vaundyが大きく上昇 https://t.co/mCQt0c374V pic.twitter.com/gQVEWOG95G
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2020年8月26日
CDセールスは26→11位、ダウンロードは14→3位そしてルックアップは48→21位となり、総合でも16ランク上昇しています。無論これは『関ジャム完全燃SHOW』効果と言えますが、一方で気になったのはルックアップ指標の順位、およびチャート構成比に占める同指標の割合の高くなさ。ロングヒット作品のチャート構成比に『HELP EVER HURT NEVER』が合致しない理由がルックアップ指標の高くなさにあり、その原因がレンタル店における展開の不十分さにあるのではと以前記載しましたが、最新週のデータをみるにどうもこの点は解決されたとは言い難いと思うのです。
ルックアップはパソコン等に取り込んだ際にインターネットデータベースにアクセスされる回数を示します。CD購入者の取り込み、そしてレンタルの取り込みも加算されることから、ルックアップはアルバムチャートにおける唯一の接触指標となるのです。CDは基本的に発売から17日後にレンタル解禁され、CDセールスがチャートに初めて加算されたその2週後に解禁直後2日間のレンタルがルックアップに加算されます。注目度の高い作品はその2週後のルックアップがより上昇する傾向にあり、またメディアで話題になれば2週後に限らず…なのですが、『HELP EVER HURT NEVER』はレンタル在庫が(仮に増やしたとしても)十分ではなくニーズを満たせなかったためにルックアップ指標が伸びなかった可能性もあります。
さて、先程は注目度の高い作品という文言を用いましたが、ここからは今年度の年間アルバムチャート上位進出が予想される作品の、初登場から3週分における傾向を見てみましょう。
Official髭男dism『Traveler』については昨年度に初登場を果たしていますが、CDセールスは今年度のほうが勝り、アルバムチャートではこれまで一度としてトップ10から陥落していません。特にルックアップの強さは象徴的で、登場2週目に4位に落ちた以外は常にトップ3をキープ。登場3週目は先述したようにレンタル解禁に伴うルックアップ加算が起こることから、この指標でトップに返り咲いています。これはKing Gnu『CEREMONY』も同様です。
無論、米津玄師『STRAY SHEEP』の強さは言わずもがなであり、売上的にも全指標制覇という面でも、そして他の作品と比較しても圧勝と言えます。そしてルックアップについて、チャート記事から関連する記述を引用すると『2位に5倍以上の差』(8月24日付)、『前週よりもポイントが高く、2位のおよそ9倍のポイントを獲得』(8月31日付)とあります(日付のリンク先は各記事につながります)。それぞれの日付におけるルックアップ2位作品の数値には違いがあるでしょうが、同指標において2位との差を5倍以上→9倍へと拡げたその一因にレンタル解禁があることは間違いないでしょう。
ちなみにルックアップではBTS『MAP OF THE SOUL : 7 ~ THE JOURNEY ~』が、レンタル初加算にも関わらず登場3週目に同指標の順位を落としているのが特徴的。他の2指標についても、表で取り上げた4作品の中で前週比が最も低くなっています。これは所有指標、それもダウンロードよりCDセールスへの集中という状況が見て取れます。
全体的には米津玄師『STRAY SHEEP』の強さが際立つものの、所有指標の売上前週比ではOfficial髭男dism『Traveler』が勝っていることに注目。米津玄師さんも前作を大きく超えるセールスを記録していますが、メジャーファーストアルバムでありいわば”見つかった”的な注目度の高さと内容の良さ、さらに相次ぐ新曲投入等で話題が絶えず歌手のもしくは歌手への熱が持続したことが、『Traveler』のロングヒットに繋がったと言えるでしょう。もしかしたら売上堅調の一因には、一度レンタルしたもののやはり買いたいという、接触から所有への行動変化を採る方が少なくなかったこともあるのではと感じています。