毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点をソングスチャート中心に紹介するのですが、今週はソングスチャート首位曲に注目し、その他の点については明日紹介します。
最新10月28日付ビルボードジャパンソングスチャートを制したのはOfficial髭男dism「Pretender」でした。100位以内に登場してから27週目、半年以上を経て遂に頂点に立ちました。
【ビルボード】Official髭男dism「Pretender」「イエスタデイ」が総合ワンツー・フィニッシュ https://t.co/WjaHrlZbKl pic.twitter.com/fEuNDVMt8K
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) October 23, 2019
前週アルバムチャートを制した『Traveler』(今週4位)の影響もさることながら、集計期間中に放送された『ミュージックステーション』(テレビ朝日)で今夏のサブスクリプションサービス再生回数ランキングが発表され、Official髭男dismのサブスク人気(且つ彼らのサブスクに対する良好な捉え方)が紹介されたことでも、彼らの楽曲が躍進した要因かもしれません。とりわけ、番組で披露した「イエスタデイ」(今週2位 最高位更新)以上の伸びを示したのが「Pretender」でした。
#ビルボードジャパン最新チャート速報
— Kei / ブレストコナカ (@Kei_radio) October 23, 2019
ソングスチャート2~4位のポイントはすべて上昇。2位の #Official髭男dism「#イエスタデイ」は前週比100.8%、3位の #米津玄師「#馬と鹿」101.5%、4位のヒゲダン「#宿命」は111.1%。#Mステ 効果で「イエスタデイ」が伸びると思っていたゆえいい意味で意外です
「Pretender」のチャートアクションをみると、非常に安定していることが解ります。
※各指標について
・P:総合ポイント
・前週比:総合ポイントの前週比。前週および当週共に50位以内にランクインした場合のみ計算(50位未満は総合ポイントが表示されない)
・上記の理由により50位未満、総合ポイントで比較不能時は?で表示
・各指標について
(詳細はビルボードジャパンの自問自答 | Special | Billboard JAPANをご参照ください)
CD:シングルCDセールス
DL:デジタルダウンロード
ST:ストリーミング
RA:ラジオエアプレイ
LU:ルックアップ
TW:Twitter
MV:動画再生
KA:カラオケ
・各指標毎順位において
[-]:ランク圏外(101~300位)
[ ]:(ブランク):ランクインせず(カウント対象前を含む)
[?]:未表示もしくは計算不能
※これらはCHART insight | Billboard JAPANから曲名をクリックすると確認可能
しかしながらこの曲は今週まで首位に立つことはありませんでした。
その理由を見る前に、今週ライバルになると思われたONE N' ONLYの動向を見てみましょう。前作「Dark Knight」で首位を獲得した彼らですが、今作「Category」は5位にとどまっています。
シングル・セールスではONE N' ONLYの「Category」が59,868枚を売り上げて1位となった。それでも、他指標ではルックアップ66位、Twitter 50位、ラジオ80位と振るわず、総合5位に。
・【ビルボード】Official髭男dism「Pretender」「イエスタデイ」が総合ワンツー・フィニッシュ | Daily News | Billboard JAPAN(10月23日付)より
ONE N' ONLYについては、前作「Dark Knight」が首位を獲得したものの他指標が振るわなかったこと、および翌週には100位圏外となってしまった事態について、似た事例と共にまとめています。
さすがにONE N' ONLYの動向は極端ではあるものの、とはいえ「Pretender」が今週まで首位を獲得出来なかったのは、この"シングルCDセールスのみに特化"した楽曲の相次ぐ登場に因るものが大きいと考えられるのです。
それを裏付けるのが、今年度(2018年12月10日付以降)の首位曲の動向をまとめた下記の表。[前週]は前週の順位、左の[P]は首位獲得週の総合ポイント、[CD]は同週のシングルCDセールス指標の順位、[翌週]は翌週の順位、右の[P]は翌週の総合ポイント、そして[前週比]は翌週におけるポイント前週比を示します。
これをみると、アイドルおよびK-Popアクトの楽曲が大半を占めていることが解ります。一方、それら以外の楽曲では米津玄師さんが『NHK紅白歌合戦』効果で「Lemon」が年末年始のチャートを席巻し、元号の変わり目且つ連休中ゆえリリースの少なかった5月13日付(集計期間は4月29日~5月5日)であいみょん「マリーゴールド」が首位を獲得したのが目立つくらいです。
今年度首位を獲得したアイドルやK-Popアクトの楽曲群ついて、いくつか特徴がみられます。まずは【前週の順位が低い】こと。これは前もって段階に解禁していない可能性があります(逆に言えば、前週トップ20内に入っている乃木坂46は見事だと言えます)。次いで【翌週の順位が低い】こと。坂道グループがトップ10内に残っているのはアイドルの中でも特筆すべきですが、他方ジャニーズ事務所所属歌手で今年度首位を獲得した楽曲はすべて、その翌週にトップ10から姿を消しているのです(なお、9月23日付で米津玄師「馬と鹿」に敗れ2位となった嵐「BRAVE」は翌週5位となり、同事務所所属歌手の中で存在感を示しています)。そして最後の特徴が【首位を獲得した翌週のポイント前週比が低い】こと。坂道グループは10~30%、ジャニーズ事務所所属歌手は10~20%内である一方、AKB48は5%未満に。さらに先述したONE N' ONLYや祭nine.、ラストアイドルそしてSTU48「大好きな人」は翌週100位未満となり計測が出来ません(51位以下のポイント数は公表されていないため)。K-PopアクトにおいてはBTSが4割を超え、TWICEも坂道グループ並の数字となった一方、IZ*ONEはAKBグループ程度にとどまっているのも特徴といえます。
一方、アイドルやK-Popアクトの楽曲に共通するのが【シングルCDセールス指標の高さ】。2位の楽曲もあれど、そのほとんどが首位をマークしているのです。しかし前週の順位、翌週の順位、首位を獲得した翌週のポイント前週比という3つの低さを踏まえるに、シングルCDセールス以外に弱くない指標があったとしてもチャート構成比の大半をシングルCDセールス指標に頼っていることが、アイドルやK-Popアクトの楽曲が急落し且つロングヒットに至れない要因と言えるでしょう。一方で米津玄師「海の幽霊」はデジタルのみのリリースでありシングルCDセールス指標は未カウント、またあいみょん「マリーゴールド」は首位獲得週における同指標が71位と高くありません。さらにOfficial髭男dism「Pretender」は今週のシングルCDセールス指標が100位未満。「Pretender」が次週どうなるかは判りかねますが、これらの作品の大半は前週の順位や翌週におけるポイント前週比も高いことから、シングルCDセールス指標に頼らない作品がきちんとヒットしていることが解ります。
(あと、強い私見と前置きして書きますが、シングルCDセールスが強い作品が同週リリースという形でバッティングすることはないのが不思議です。坂道グループとAKBグループ、AKBグループとジャニーズ事務所所属歌手等。流石に何かしらの取り交わしがあるとは思いませんが、スケジュールがうまく出来ているという印象があります。)
「Pretender」が首位を獲得するとしたら今週しかなかったというのが私見。昨日はSexy Zone「麒麟の子」がリリースされ、この曲が次週確実にトップを獲得するでしょうからなおのことです。しかし「麒麟の子」もトップを獲得した翌週に急落するのであれば、首位曲がとっかえひっかえとなる今のビルボードジャパンソングスチャートはまだまだ不健全と言わざるを得ないでしょう(2018年度よりシングルCDセールス指標に係数の概念が用いられ、アイドルやK-Popアクトの楽曲がかなり是正されることにはなったとはいえ)。となると、やはりシングルCDセールス指標のウェイトを下げることを検討してほしい…ビルボードジャパンに対してそう強く唱えたいと思います。特に今年度首位楽曲の動向一覧表は、先日のエントリーの補足資料として十分な説得力を帯びるものだと思うゆえ尚更です。