医学界新聞プラス
[第4回]病院がSNSを始めるために
SNSで差をつけろ! 医療機関のための「新」広報戦略
連載 町田詩織
2024.11.01
第2回,第3回では日本国内で利用率の高い6大SNSの特徴と選び方を紹介しました。では実際にSNSを始めるに当たって,どこから手をつけたら良いのでしょうか。SNSはおろか広報に注力したことすらない施設も多いと聞きます。
今回は,前提となる土壌が院内に全くない状態からのSNSの始め方を考えていきたいと思います。
SNS活用のメリット,デメリット
最初にSNS活用の意義を考えていきたいと思います。以下はSNS活用におけるメリット,デメリット(私見)です。
デメリットだけを考え,炎上リスクを嫌って利用しないという判断を下している施設も多くあるようです。しかし,より多くの人から選ばれる存在になるには,多少のリスクを負ってでもメリットを享受することが得策かもしれません。
ただし,広報誌,ホームページ,SNS全ての運用を担当した筆者の経験から考えると,SNSが最も手間がかかり,最も運用が難しいと言えます。SNSは受け手側として利用する分には気軽なツールですが,運用し発信する側にとっては決して気軽なものではないのです。
施設内ルール整備と医療広告ガイドライン
SNSは炎上やクレームなどのリスクを伴うものです。リスクを回避するため,そしてトラブル発生時に適切に対処できるようにするため,アカウントを開設する前にあらかじめ施設内ルールを整備しておくことが肝心です。
施設責任者からの許可
前述のとおり,SNSはリスクを伴います。施設名を用いて発信するのであれば,施設の責任者の許可は必須だと筆者は考えます。担当者が勝手に始めるのではなく,しかるべき会議や稟議を通して責任者から決裁を得ましょう。
SNS運用規定(対施設外)
免責事項・削除方針・禁止事項など,医療機関としてSNSを利用する際の規約をホームページ等に掲載し,ユーザーに向けて明示します。トラブルが発生した時に,「あらかじめ断っておいた」と主張するためのツールにもなります。
(例) 医療法人 徳洲会 湘南藤沢徳洲会病院 SNS運用規定
SNSガイドライン(対施設内)
医療機関としてのSNS利用,職員のSNS利用に関する指針・目的・ルール等を定めます。投稿作成時のルールや手順,炎上やクレームなどトラブル発生時の対処方法などを明示します。
医療広告ガイドライン
医療機関が情報発信する際に遵守すべき内容をまとめた厚生労働省が示している医療広告の指導方針です。正式名称は「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」と言います。読み手に誤解を与えないために,多くの禁止事項が挙げられています。
実は,SNSを伸ばすテクニックとして一般的に実施されている手法には医療広告ガイドラインの禁止事項に該当するものが多くあります。そのため,運用者はガイドラインの内容をしっかり把握しておく必要があります。
目的の明確さが明暗を分ける
SNSは,ホームページや広報誌以上に,目的の明確さが成果の明暗を分けます。病院広報の目的は大まかに「集患」または「採用」が大半だと思いますが,両方を目的にしてしまうと発信内容がどっちつかずになります。ボヤけた発信はアルゴリズムに認知されず,残念ながら成果に結びつきません(アルゴリズムについては後の回で触れます)。
病院広報の目的に「ブランディング」を挙げる方もいますが,そもそもブランディングは何のためにするのでしょうか。ブランドとは成果の積み重ねにおのずと付いてくるものであり,目的→成果→ブランドの順で構築されていくという前提を理解しておかなくてはなりません。めざしたい「ブランド」の要素を細分化して,達成すべき成果を具体的に突き詰めてみましょう。
担当者に求められる能力とは
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町田 詩織(まちだ・しほり)氏 湘南藤沢徳洲会病院マーケティング課 主任
製薬会社MR,フリーランスを経て,2013年湘南藤沢徳洲会病院に入職する。マーケティング課で広報誌を担当後,21年2月に同課責任者に就任。24年4月より現職。21年6月から職員採用を目的に開始したInstagramは開始3年間でフォロワー数1万人超えを達成。看護師,研修医,薬剤師などの採用に成功。病院広報アワード2023SNS部門最優秀賞受賞。医療従事者向けの雑誌記事の執筆,院内外での勉強会講師,メディア施策等で幅広く活動中。
X ID:まっちー@病院広報(@MACHY_pr )
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