理学療法ジャーナル Vol.58 No.11
2024年 11月号
特集 Multimorbidity and Multiple Disabilities(MMD) 多疾患重複時代がやってきた!
ISSN | 0915-0552 |
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定価 | 2,090円 (本体1,900円+税) |
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EOI : essences of the issue
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Multimorbidity and Multiple Disabilities(MMD)──多疾患重複時代がやってきた!
世界一の長寿国である日本では,多疾患を併存し(multimorbidity),重複した能力低下(multiple disabili-ties)をもつ高齢患者が増加し,新たな課題に直面している.理学療法分野においてもこれまでの疾患別・病期別のモデルから,全身・全体像を把握するモデルのさらなる構築が求められている.まさに,「疾患を診る疾患別理学療法」から「人を診る総合理学療法」への転換を求められている.
本特集では, multimorbidity and multiple disabilities(MMD)の定義,特徴,現状を整理し,MMDに対する理学療法(士)の役割について展望する契機としたい.
多疾患・重複障害(multimorbidity and multiple disabilities:MMD)とは 上月正博
リハビリテーション現場では,単独疾患・単独障害の患者よりもMMDの患者が多いが,MMDリハビリテーションのエビデンスに関しては十分に示されていない.経験が浅いあるいは自信のないリハビリテーション医療従事者は,リハビリテーションの提供に慎重になりすぎて,十分量のリハビリテーションを提供していない.今後,さまざまな事例や研究を通してMMDガイドラインの早急な作成が望まれる.MMDリハビリテーションでは,「より広く,早く,密に,そしてつなげるリハビリテーション」が重要になり,リハビリテーション医療従事者の研鑽と連携が必要である.
代表的疾患の理学療法とMMD──脳卒中の理学療法とMMD 佐藤陽一,他
近年,脳卒中と循環器疾患との関連に大きな注目が集まっている.特に心不全は,脳卒中に合併することで死亡や再発のリスクが高まる.心不全合併脳卒中患者への理学療法では,病前の心不全管理の状況や発症後の心不全症状の推移と管理について,情報収集しておく必要がある.また,脳卒中の再発や合併症の重症化を予防する視点も重要となる.本稿では,実際の心不全合併脳卒中患者を提示し,入院中の理学療法や退院後の予防について紹介する.
代表的疾患の理学療法とMMD──運動器疾患の理学療法とMMD 久郷真人,他
運動器疾患では消化器疾患やメンタルヘルス不調,心血管疾患を併存することが多い.運動器疼痛の管理に苦慮することも多く,適切な内服管理とともに非薬物療法として運動療法に認知行動療法技法や睡眠衛生指導などを併用し,多面的にアプローチを行うことも必要である.また,医療機関と介護福祉機関との密な連携による継続的なフォロー体制の構築が重要である.
代表的疾患の理学療法とMMD──がんの理学療法とMMD 阿部真佐美,他
日本において,がん罹患者数,特に高齢のがん患者が増加している.がん患者は併存症やがん治療の影響でMMD(多疾患重複障害)に陥りやすい.特に高齢がん患者では,がんロコモ,フレイル,サルコペニアが重複し,そのリスクが増大する.本稿では,がん患者のMMD,それに対する理学療法について紹介する.
代表的疾患の理学療法とMMD──心不全の理学療法とMMD 花田 智
近年,multimorbidityを有する高齢心不全患者が増加している.本来の心不全で生じる症状に多疾患併存が加わることで状態の捉え方にさらに難渋する.よって,患者像を捉えるには,それぞれの併存症がどのように循環や呼吸に影響を与えるのかを考えていく必要がある.そして,その情報をもとに起こり得るリスクを考慮しながら個々に運動療法を実施していくことが求められる.
代表的疾患の理学療法とMMD──慢性呼吸器疾患の理学療法とMMD 加賀屋勇気
慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)を代表とする慢性呼吸器疾患では,MMDの適正管理が予後改善をめざすうえで重要である.身体活動性の低下が全身性炎症と関連し,これが併存症の発症・増悪をもたらす一因と考えられている.MMD例への理学療法では,幅広く併存症のリスク管理に留意するとともに,身体活動性の維持・向上を意識してアプローチをすることが重要となる.
代表的疾患の理学療法とMMD──認知症の理学療法とMMD 國枝洋太
認知症は循環器疾患や脳神経疾患,肺炎,転倒による骨折と併存することが報告されている.入院認知症患者の精神状態や身体機能を多職種で効率的に情報共有するためには,多職種カンファレンスを利用してリアルタイムに認知症患者の状況を共有できる環境づくりが望まれる.併存疾患に対する理学療法治療を円滑かつ効果的に進めるためには,認知症患者からの不同意メッセージを意識して認知症患者とのコミュニケーションに生かし,信頼関係を築きながら理学療法を実施していくことが重要である.
急性期加療における新たなMMD発生予防対策 篠原史都,他
集中治療をはじめとした急性期医療の発展により,患者の救命率が飛躍的に改善した現代では,新たなMMDが顕在化した.それが,入院関連能力障害/入院関連身体機能低下,そして集中治療後症候群である.これらに陥らないようにするためには予防的理学療法と栄養療法の両立が重要である一方,その障害が長期に及ぶため,地域医療を含めた枠組みで解決すべき課題である.本稿では,急性期医療で合併しやすい病態や障害を整理し,その対策について解説する.
地域・訪問理学療法でのMMD対策 大沼 剛
地域・訪問理学療法の臨床においてMMD対策は重要である.超高齢社会を迎える本邦では,利用者を総合的に判断してMMDのリスク管理を行う必要がある.また,他職種連携も重要である.MMDにおけるリスクを把握し,情報共有を行うことで利用者の安定した在宅生活の手助けをすることが,われわれ理学療法士にも期待されている.本稿では,地域・訪問理学療法でのMMD対策について,臨床現場での実態やアセスメントについて述べる.
MMDに対する理学療法のエビデンス 岡村正嗣
日本における65歳以上の高齢者人口は総人口の29.1%を占め,超高齢化が進行中である.このなかで,多疾患および重複障害を抱えるケースが増加している.著者は日本の大学病院などで勤務後に,ドイツで研究に従事しており,ドイツにおける理学療法の見聞を紹介する.高齢者のMMDに対する理学療法のエビデンスは少なく,早急な研究の蓄積が求められている.ドイツでは実践重視の教育が行われ,理学療法士の研究発表は少ないが,より「人」を診る理学療法が行われている.今後,日本でもMMDに対する全人的な理学療法のさらなる実践,エビデンスの構築,多職種との協働が重要である.
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特集 Multimorbidity and Multiple Disabilities(MMD)──多疾患重複時代がやってきた!
多疾患・重複障害(multimorbidity and multiple disabilities:MMD)とは
上月正博
代表的疾患の理学療法とMMD──脳卒中の理学療法とMMD
佐藤陽一,他
代表的疾患の理学療法とMMD──運動器疾患の理学療法とMMD
久郷真人,他
代表的疾患の理学療法とMMD──がんの理学療法とMMD
阿部真佐美,他
代表的疾患の理学療法とMMD──心不全の理学療法とMMD
花田 智
代表的疾患の理学療法とMMD──慢性呼吸器疾患の理学療法とMMD
加賀屋勇気
代表的疾患の理学療法とMMD──認知症の理学療法とMMD
國枝洋太
急性期加療における新たなMMD発生予防対策
篠原史都,他
地域・訪問理学療法でのMMD対策
大沼 剛
MMDに対する理学療法のエビデンス
岡村正嗣
■Close-up いま学んでおきたいCOVID-19
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の最新知見
高野知憲,他
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のこれからの課題──COVID-19罹患後症状におけるリハビリテーション
髙瀬了輔,他
●とびら
チャンスをつかむ 村木孝行
●視覚ベースの動作分析・評価⑦
肩関節──体幹機能の改善が肩甲骨機能改善につながった症例
千葉慎一
●運動療法に活かすための神経生理(学)⑤
完全頸髄損傷患者の損傷レベル付近の筋力は,どのようなメカニズムで回復し得るのか?
正門由久
●今月の深めたい理学療法周辺用語⑪
メタ可塑性(metaplasticity)
山口智史
●理学療法士のための「money」講座⑪
うちは仲が良いから大丈夫! が悲劇の入り口──相続・贈与の基礎知識
細川智也
●臨床実習サブノート
「どれくらい運動させていいかわからない」をどう克服するか⑧
パーキンソン病患者に対する協調性改善運動
中山恭秀
●報告
歩行支援ロボットを用いた脳卒中亜急性期患者の歩行可否に影響する因子の検討
宍戸健一郎,他
●症例報告
大動脈弁置換術後の運動耐容能の低下に対して訪問リハビリテーションを行い改善につながった一症例
竹本潤季,他
●私のターニングポイント
いつもと違う選択
備前梨穂
●My Current Favorite
情熱を注ぐ──コーヒードリップとリハビリテーション
田村正樹
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