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フィジカルアセスメント ガイドブック 第2版
目と手と耳でここまでわかる

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なぜ患者さんの右側から診察を行うの? なぜ背中側からの呼吸音聴取が大切なの? フィジカルアセスメントの「なぜ」を解決しながら、基本的知識と技術を解説するガイドブック。目的と根拠がわかれば、フィジカルアセスメントは看護につながる。
山内 豊明
発行 2011年12月判型:B5頁:224
ISBN 978-4-260-01384-0
定価 2,640円 (本体2,400円+税)

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    2022.08.16

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はじめに

 皆さん,毎日の看護の場面でこんなことはありませんでしたか。たとえば患者さんに「右手を握ってください」と伝えたのに,その通りになされなかった,などの場面です。
 その時にはどう判断したらよいでしょうか。(1)聴力が衰え,聞き取りにくかった,(2)右手が認識できずに左手を握っていた,(3)握力が足りなかった,などなど,たくさんのことが考えられるでしょう。
 このように,感覚系・中枢神経系・運動系は,それぞれ別個の機能でありながら,それらを別々に把握することは不可能なのです。
 しかし,もしその患者さんに「右手を握ってみてください」と書いた紙を見せた時に,患者さんが正しく右手を握ったとしたならば,(1)の聴き取りにくさが原因であったことが判明します。
 一方,呼吸音聴取のように聴診器を当てただけで呼吸の様子が細かく判断できるものもあります。慣れないうちは多少の難しさを感じるかもしれません。しかし,一旦できるようになったならば,そこから先は非常に役に立つものです。
 フィジカルアセスメントは,何を,どうみるのかを「考える」過程があってはじめて成り立つものなのです。
 この第2版では,初版をもとにアセスメントという思考過程をさらに深めていけるように,フィジカルアセスメントの進め方,呼吸循環を統合した章を新たに設け,項目の順序を工夫し,心不全の考え方の項の追加などを行いました。
 行うことに適切な取捨選択ができることも大切なことです。そのため本書では決して多くの項目を取り上げてはいませんが,看護実践で不可欠なフィジカルアセスメントを厳選してあります。
 この第2版をまとめるにあたって医学書院看護出版部の品田暁子さんには,初版に増して大変お世話になりました。素晴らしい編集者との出会いが本書を育ててくれたものと思っています。
 本書を日々の看護の中のあらゆる場面で活用していただければ幸いです。

 2011年11月
 山内豊明

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 はじめに
 本書を読む前に フィジカルアセスメントの組み立てと階層性

Part 1 症状・徴候からのアセスメント
 症状・徴候からのアセスメントの考えかた
  1 頭が痛い
  2 胸が痛い
  3 お腹が痛い
  4 息苦しい
  5 ドキドキする
  6 咳が出る
  7 むくみがある
  8 口から血が出た
  9 気を失った
  10 フラフラする
  11 しゃべりにくい
  12 見えにくい
  13 身体を思ったように動かせない
  14 おしっこの調子が悪い

Part 2 身体機能別のアセスメント
A 基本技術
  1 視診
  2 触診
  3 打診
  4 聴診
B 呼吸系と循環系
 呼吸系と循環系のフィジカルアセスメントの進めかた
  1 胸部における「場所」を表す(1) 水平位置(肋骨・肋間)の同定
  2 胸部における「場所」を表す(2) 垂直位置の同定
  3 チアノーゼの有無を確認する
  4 ばち状指の有無を確認する
C 呼吸系
 呼吸系のフィジカルアセスメントの進めかた
  1 視診により呼吸の観察をする
  2 胸郭の拡張性をみる
  3 触診により呼吸の観察をする
  4 触覚振盪音(音声伝導)を確認する
  5 横隔膜を同定する
  6 胸壁と肺との関係を捉える
  7 呼吸音を聴取する(1) 異常呼吸音の性質を把握する
  8 呼吸音を聴取する(2) 異常呼吸音の種類を判断する
  9 呼吸音を聴取する(3) 正常呼吸音の種類を整理する
  10 呼吸音を聴取する(4) 聴診の原則に沿って,呼吸の聴診を行う
D 循環系
 循環系のフィジカルアセスメントの進めかた
  1 脈を触知する
  2 血圧を測定する
  3 末梢循環不全を評価する(1) 動脈の循環を確認する
  4 末梢循環不全を評価する(2) 静脈の循環を確認する
  5 心臓の大きさを推定する 左心拡大を見抜く
  6 頸静脈により中心静脈圧を推定する
  7 心音を聴取する(1) I音とII音の成り立ちを理解する
  8 心音を聴取する(2) 収縮期と拡張期を区別する
  9 心音を聴取する(3) 心雑音を評価する
  10 心音を聴取する(4) 過剰心音とII音の分裂の有無を確認する
  11 心音を聴取する(5) 心音の正常・異常を判断する
  12 心不全のサインを見逃さない
E 消化系
  1 口から食物を摂取できるかを評価する
  2 咽頭反射をみる
  3 腹部のアセスメントを行う
  4 腹部を視診する
  5 腸蠕動音の消失・減少を判断する
  6 肝臓の大きさを推定する
  7 腹水の有無を判断する
  8 腹部を触診する
F 感覚系
  1 眼位の異常の有無をみる
  2 外眼球運動を確認する
  3 視力・視野をスクリーニングする
  4 聴力をスクリーニングする
  5 伝音性/感音性難聴を鑑別する(1) リンネテスト
  6 伝音性/感音性難聴を鑑別する(2) ウェーバーテスト
  7 皮膚知覚(痛覚・触覚)をみる
  8 深部知覚(振動覚)を評価する
G 運動系
  1 ADL・歩行を観察する
  2 関節可動域を測定する
  3 筋力をスクリーニングする
  4 筋力を測定する
  5 小脳機能を評価する
  6 平衡機能を評価する
H 中枢神経系
  1 意識状態を測る
  2 呼吸パターンを確認する
  3 瞳孔および対光反射を確認する
  4 脳幹反応をみる
  5 高次脳機能を評価する(1) 認知症のアセスメント
  6 高次脳機能を評価する(2) 失語のアセスメント

 参考文献
 索引

PLUS ONE
 モニターよりも,自分の五感を活用しよう
 サチュレーションモニターでわかること,わからないこと
 「深くゆっくりと呼吸して」と言う理由
 胸郭を打診する
 胸郭の中には何がある?
 異常呼吸音の正しい伝え方 「肺雑」「ラ音」を使うのは危険
 背中を出せない患者さんにこそ,背部からの聴診を
 フィジカルアセスメントは左右差がカギ
 腹部の血管雑音からわかること
 女性へのX線検査の前に確認すべきこと
 視神経の構造から障害部位を推測する
 脳神経は「エサ獲り」で覚える
 MMTを看護に活用する 重力に逆らわないナースコール
 日常生活に必要な筋力をみる 便座に座ることができる?
 関節可動域の測定法を応用する 「がに股」を正しく伝えられますか?
 筋トーヌス亢進肢位 患者さんの姿勢から緊急事態を見抜く

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書評 (雑誌『訪問看護と介護』より)
書評者: 角田 直枝 (茨城県立中央病院・茨城県地域がんセンター看護局長)
 本書は、2005年の初版から6年目に発行された第2版である。2005年当時は、フィジカルアセスメントの重要性が指摘され始めた時期であり、これを学ぼうとした人なら一度は初版本を手に取ったことがあるのではないだろうか。私自身も、本書の初版に出会って、その魅力にとりつかれ、今でもすぐ手が届く場所に置いている。

 私が初版を購入したとき、もっとも気に入ったのは「構成」であった。当時、私は訪問看護師にフィジカルアセスメントの教育するためのテキストを探していた。そして、同書の「Part 1 症状・徴候からのアセスメント」に感激した。

 一般的なフィジカルアセスメントの本は、まず身体各部のフィジカルイグザミネーション(身体診療)が解説されているものが多い。しかし、「胸が痛い」「フラフラする」といった患者の言葉から始まる構成は、まさに看護師が日常出会う場面が示され、「Part 2 身体機能別のアセスメント」への学習とつながり、もっとも使いやすい、役立てやすいテキストとして、私の大切な一冊になっていった。

◆看護師がフィジカルアセスメントを行なう意義がわかる!

 さて今回、第2版では、どこが変わったのか。嬉しかったのは、「本書を読む前に」と題された冒頭の部分。とかく混同しやすいフィジカルアセスメントとフィジカルイグザミネーションの違いをすっきりと解説し、看護師がなぜ学ばなければならないかが要約されている。この4ページを読んだだけでも、「そう、そう、そう」と納得の連続だった。

 また、Part 2には、いくつかの変更がある。Part 2の最初に「基本技術」として視診・触診などの技術がまとめられ、初版よりもずっと読みやすくなった。それに続いて、新たに呼吸系と循環系をまとめて解説する項ができた。初版でも著者はこのことを述べていたのだが、項目として独立させることでより著者の考えが伝わり、「だって、胸には心臓も肺もあるものね」と共感する。

 細かい点では、循環器系の「心不全のサインを見逃さない」という項目に「やったぁ」と拍手したい気分だった。「見逃さない」って、なんてぴったりの言葉だろう。急性期病院でも、施設・在宅でも、高齢者が多くなり、心不全を発症する患者が、それはそれは多い。療養上の世話をしながらしっかりとこの徴候をとらえ、診療の補助として医師や患者・家族に速やかにわかりやすく自分の判断を伝え、そしてQOLの低下を防ぐ医療へつなげる。これこそ、看護師がフィジカルアセスメントを行なう意義だと思う。

 第2版は、イラストや見出しの工夫で、看護学生や新卒ナースにもよりわかりやすく親しみやすい印象になった。もちろん、学生時代にフィジカルアセスメントを学習しなかった熟年世代の訪問看護師には、必須図書として手元に置いてほしい。

 本書の装丁は、真っ白の綺麗な表紙。初版の焦げ茶色に比べると、手あかの汚れが目立つのが気になるけれど、汚れてグレーになるまで使われれば、本も嬉しいか。

(『訪問看護と介護』2012年8月号掲載)
日本におけるフィジカルアセスメントのスタンダードとして (雑誌『看護教育』より)
書評者: 水戸 優子 (神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部看護学科准教授)
 フィジカルアセスメントは,1990年代後半にアメリカから日本に入り,普及してきた知識と技術といえます。私もこの時期にアメリカへ研修に行く機会を得て,その後,学生たちにフィジカルアセスメントを教えるようになりました。ところが,何年かやっているうちに,アメリカでのフィジカルアセスメントの知識・技術の枠組みでは,日本の臨床現場や看護基礎教育にフィットせず,学生たちに身に付いていない印象を受けました。そして,それはアメリカと日本で,看護師に求められるアセスメント能力の質の差があるためではないかと思いました。

 アメリカでは,ナース・プラクティショナーが,患者の全身状態を系統的にアセスメントし,スクリーニングするためにフィジカルアセスメント能力が求められています。一方,日本の看護師は,病院あるいは在宅看護のなかで,その患者の年齢や生活環境,既往歴を踏まえて,症状や徴侯などの少しのサインから病状の緊急性や疾患を見抜き,早急に必要な処置・ケアにつなげる能力が求められているように思います。つまり,日本の医療・看護の場面では,「幅広く・浅い」フィジカルアセスメント能力ではなく,「厳選して・深く」アセスメントする能力が必要なのです。

 前置きが長くなりましたが,本書では,まさに臨床現場や在宅の場でよく見受けられる症状や徴侯,身体機能別のフィジカルアセスメントが厳選され,その判断に必要な知識と技術が,細やかに深く紹介されています。患者の訴え,症状・徴侯から推測される身体状態や疾患について,病態生理からの根拠や理由づけが明確で,わかりやすく,しかも看護師が行うアセスメントの範疇において述べられております。そこはさすが医師の資格と看護師の資格の両方をもつ山内豊明先生だからできることだと思います。

 今回の第2版では,アセスメントの思考過程を重視して整理されており,初学者である看護学生にも,理解しやすい構成になっていると思います。その構成は,【アセスメントの目的】【HOW?】【CHECK】から始まり,その合間に【MEMO】【PLUSONE】など,関連する知識やちょっとしたアセスメントのノウハウが紹介されています。それらは,私が10年間のフィジカルアセスメントの教育のなかで「ここがポイント!」「この知識があるとより理解しやすい」と思っていた事柄であり,ここも「さすが!」と思ってしまいます。

 このような点からみて,本書は,日本のフィジカルアセスメントのスタンダードといっても過言ではありません。臨床看護師のみならず,看護基礎教育に携わる方にもお勧めできると考えます。

(『看護教育』2012年4月号掲載)
フィジカルイグザミネーションを通してフィジカルアセスメントをどう捉えるか
書評者: 高階 經和 (臨床心臓病学教育研究会理事長/ライプチッヒ大客員教授/近大客員教綬/高階国際クリニック院長)
 このたび,山内豊明先生の『フィジカルアセスメント ガイドブック 第2版』を一読した印象は,素晴らしいの一語に尽きる。

 初版の『フィジカルアセスメント ガイドブック』(医学書院,2005)の出版に際して,先生のご講演を聴く機会に恵まれた。先生は日本の内科医師であり,またアメリカの看護師としての資格を取得され,看護大学院を卒業された日本ではただ一人の稀有なマイスターである。その経歴に裏打ちされた豊富な知識と,そして何よりも先生のソフトで卓越した経験を通した語り口に魅了された。

 今回の第2版は装丁も新たに,第1版よりも実にシンプルでスマートである。内容はPart 1の症状・徴候からのアセスメント(総論),そしてPart 2の身体機能別のアセスメント(各論)の2つに大別されているが,何よりも山内先生の「フィジカルアセスメント」と「フィジカルイグザミネーション」の違いについての考え方が明確に示されている点が,従来の医師だけの目線で書かれた教科書との大きな違いである。そして「生きている」ことと「生きていく」ことの意味をさり気なく定義しておられることを私は高く評価したい。

 Part 2では,基本技術から始まり,人間が生きていく上で最も大切な呼吸系,循環系を最初に取り上げられ,そして消化系,感覚系,運動系,中枢神経系と人体が生理的にバランスのとれた健常状態から,各系統の疾患によって,身体所見がどう変わっていくかを克明にHow,Why,Check,Memoなどのコラムの形でまとめられた読者への細かな配慮は,心憎いほどである。

 私が1972年に提唱した医療概念として『臨床における三つの言葉』がある。第一の言葉は「日常語」,第二の言葉が「身体語」そして第三の言葉が「臓器語」である。医師のみならず,医療に携わる者すべてが理解し,マスターして欲しいと考えていた。この三つの言葉の意味が,本書では表現を変えて見事に描かれていることに少なからず驚かされた。医師と患者が対等の立場でコミュニケーションができなければ,真の医療はない。

 長年,敬愛する山内豊明先生を知るものとして,私は今回の『フィジカルアセスメント ガイドブック 第2版』の出版に改めて敬意を表するとともに,看護師のみならず,広く医療関係者にも読まれることをお薦めする次第である。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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