臨床試験データマネジメント
データ管理の役割と重要性
臨床試験データマネジメント業務に携わる人の必携書
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臨床試験データの品質向上に不可欠な臨床データマネジメントの本質を明らかにし,系統的に何を行うべきかを明示した,臨床試験におけるデータマネジメント業務に携わるすべての人にとって必読の書!
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目次
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第1章 臨床試験と薬の開発
第2章 臨床データマネジメントの役割と業務
第3章 品質管理と品質保証とは何か?
第4章 施設での品質管理と品質保証の現状
第5章 データを取り扱うためのデータモデルとデータの階層
第6章 臨床試験データを収集する方法
第7章 症例報告書と関連書類の準備・作成
第8章 コンピュータデータベースの利用
第9章 臨床試験データ管理のためのシステム設計
第10章 コンピュータへのデータ入力と症例報告書のチェック
第11章 データの修正とモニタリング
第12章 集計・解析のための準備とデータ処理
第13章 臨床試験データの品質の確認
第14章 データ構造の標準化の持つ意味
第15章 ニューテクノロジーによる新たなデータ管理手段
参考文献
参考ホームページURLアドレス
付録1 市販の臨床試験データ管理システム
付録2 プロセスマップの一例
索引
第2章 臨床データマネジメントの役割と業務
第3章 品質管理と品質保証とは何か?
第4章 施設での品質管理と品質保証の現状
第5章 データを取り扱うためのデータモデルとデータの階層
第6章 臨床試験データを収集する方法
第7章 症例報告書と関連書類の準備・作成
第8章 コンピュータデータベースの利用
第9章 臨床試験データ管理のためのシステム設計
第10章 コンピュータへのデータ入力と症例報告書のチェック
第11章 データの修正とモニタリング
第12章 集計・解析のための準備とデータ処理
第13章 臨床試験データの品質の確認
第14章 データ構造の標準化の持つ意味
第15章 ニューテクノロジーによる新たなデータ管理手段
参考文献
参考ホームページURLアドレス
付録1 市販の臨床試験データ管理システム
付録2 プロセスマップの一例
索引
書評
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本邦初の系統的な「臨床データマネジメント」の教科書
書評者: 福田 治彦 (国立がんセンター臨床情報研究室長/JCOGデータセンター長)
◆データマネジメントの認知度はまだ低い
EBMの普及に伴い,近年わが国でも「研究者主導臨床試験」の重要性の認識が高まり,学会においても臨床試験の発表が増えてきた。製薬企業の治験でのデータマネジメントは,本書の著者である辻井敦先生や監修の大橋靖雄教授のご尽力で急速に欧米のレベルに追いつきつつある。しかし,研究者主導臨床試験においてはまだまだデータマネジメントの認知度は低く,ようやく学会で“言葉”として登場するようになってきたばかりである。これは欧米での1980年前後に相当し,日本は“20年遅れ”と言える。その現状を反映してか,わが国の臨床試験関連書で「データマネジメント」は以下のように説明される。
「データマネジメントは,
・製薬企業やCRO(開発業務受託機関)が行う,治験データの処理業務
・SOP(標準業務手順書)に従って行う業務
・CRF(症例報告書)に記入漏れや不整合がないかをチェックし,施設に問い合わせ,データベースを作成し,解析担当者にデータを渡す業務」
最後のものは幾分マシであるが,それでもデータマネジメントの一部を表したに過ぎない。
「データマネジメント」の重要性が「統計」以上に理解されにくいのには理由がある。統計手法の誤りは論文から読み取ることができるが,適切にデータ管理されたかどうかを論文から読み取ることはできない。やっかいなことに,“汚い”データはそれを“きれい”にしてみないと“汚い”ことはわからず,かつデータを“きれい”にするにはそのための知識・技術が必要であるため,論理的必然として「知らぬが仏」になる。さらにやっかいなことに,データを“きれい”にすると,有効性のデータは悪くなり,毒性は増えることが経験的に知られており,“汚い”データのまま解析すると有効性を過大評価し毒性を過小評価する傾向がある。リスク/ベネフィットの判断がデータ管理の質によって覆り得るのである。
「臨床データマネジメント(Clinical Data Management)」は,英文の教科書ですらまだ数えるほどしかない発展途上の学問・技術体系であるが,「臨床医学」,「生物統計学」,「情報工学」の3つの学問を背景に持つ応用科学・実践科学と位置付けられ,工業分野で発展した「品質管理」,「品質保証」の医学への応用とも言える。臨床研究において「正しい結論」を導くために,治療薬・治療法の有効性・安全性に関する「正しい解析」を可能にする「正しいデータ」を確保することが目的であり,単に得られたデータの記入漏れや不整合(データエラー)をチェックするのみならず,データエラーを最少化する予防策としての,症例報告書のデザインや,計画段階でのプロトコル検討も含む臨床試験の全プロセスが守備範囲である。
◆データマネジメントの全体像がわかりやすく示される
本書は,日本人の手になるものとして本邦初の系統的な「臨床データマネジメント」の教科書である。英文の教科書の多くが分担執筆のためか全体感に欠ける印象があるのに対し,本書は著者の幅広い知識と明快な理論構築を反映して,データマネジメントの全体像がわかりやすく示されており,質的にこれまでの英文教科書を凌ぐ。また,大橋教授の「序」で語られる「わが国のデータマネジメント草創期」を担った著者ならではの「現場感覚」にあふれる記述がちりばめられた,まさに今の日本でデータマネジメントに携わる者向けの書である。例えば,治験に携わる臨床医なら一度は耳にする「私もこんな些細なことは聞きたくないのですが,うちの臨床データマネジメントを担当する者が言うものですから」というモニターの言い訳を著者は厳しく批判する。
本書の内容は,薬剤開発の全体像と品質管理・品質保証の基本的な説明に始まり,「臨床データ」に対していかに品質管理・品質保証を適用していくかの解説が,実際のプロセスに沿って,「臨床データの発生」→「データ収集」→「症例報告書」→「データベース」→「コンピュータシステム」→「モニタリング」→「標準化」と展開される。また,多分野にわたる応用科学であるがゆえに拡散しがちなデータマネジメントの各プロセスの解説を,読者が全体像を失うことなく読み進められるよう,各章の扉には「本章の位置づけ」がマップとして示されている。
想定読者は主に製薬企業の治験に携わる人のようだが,解説されている原理原則は治験に限らず,手術や放射線治療,集学的治療等の研究者主導臨床試験にも共通であり,それらに携わる臨床医やCRCの方にも是非読んで欲しい。いかに臨床的意義の高い仮説に基づく臨床試験であっても“汚い”データからは正しい臨床的結論は得られない。統計家やデータマネジャーの人的基盤整備が“20年遅れ”のわが国で,臨床医が自ら臨床試験を率いるには,欧米では不要のさまざまな努力が必要だが,その努力を無駄にしないためにも,正しい結論を導くヒントを少しでも多く本書から得て欲しい。
「盲点」になっていた臨床試験データマネジメントが初めてまとめられた
書評者: 開原 成允 (国際医療福祉大教授・医療福祉情報システム)
◆データマネージャの養成に期待
臨床試験のデータマネジメントは,これまで日本では,いわば「盲点」になっていた。「盲点」であった理由は,それがあまりにも日常的な業務であるために,それをまとめて考えることがなかったためであろう。しかし,データマネジメントが重要であることは今さら言うまでもなく,その成否が臨床試験の質を左右する。
欧米諸国にはデータマネジメントを専門とするデータマネージャが存在し,養成コースもあることを大橋靖雄教授は早くから指摘し,日本でも必要であることを説いてこられた。その大橋教授の監修と辻井敦氏の実務経験からこの本が生まれたことは正に時機を得たものであり,本書の出版を心から喜びたい。
本書は,「臨床試験データマネジメント」を初めて1つにまとめて展望し,解説したものである。まとめてみると改めてその重要性が理解できるが,同時にその関係する領域,人,組織,技術などの複雑さが浮かび上がってきて,データマネジメントの難しさを感じさせる。データマネジメントの概念を示すために,その業務を本書から引用すると,データマネジメントとは,1)企画・立案,2)プロトコルおよび症例報告書の作成,3)施設との契約,薬剤配布,4)モニタリング,5)症例報告書の回収・確認,6)データ入力前のチェック,7)データ入力,8)データ固定,9)データ集計・解析,10)総括報告書作成,といった臨床試験の流れの中のすべての段階で良質なデータが得られるように,データ収集,確認,コンピュータによるデータ管理などを行うことである。このために必要な知識は,カルテを読むことにはじまり,品質管理手法,コンピュータデータベースの設計,国際的動向の把握にまで及ぶ。本書の記述は囲みの解説(Info Navi)を入れた工夫もあり,すべての業務にわたって非常によく整理されているが,その中心となる考え方を「臨床試験の質の保証」としているのも大変よい。日本では,これらの業務は複数の人がばらばらに行っていたのであろうが,全体を統括する人を置くことによってのみデータの質が保証されるからである。
今後は,本書が契機となって日本でも臨床データマネジメントの重要性が認識され,データマネージャの養成が進むことを期待したい。すでに大橋教授らも関係したコースが企画されたり,実施されたりしているようであるが,問題が多岐にわたるだけに,さらに多くのコースが必要となるであろう。私の奉職している国際医療福祉大学においても,本年から「臨床試験研究」の大学院修士コースを開設してCRCを養成していくことになっている。ここでもデータマネジメントは重要な科目となるが,将来はこれを独立させたデータマネージャ養成コースも必要になるかもしれないと思っている。
◆日本のデータマネジメントを先導する本に
最後に,私の専門とする医療情報学の立場から著者に対し希望を述べておく。データマネジメントは,今後臨床試験に情報技術が導入される中で急速に変化していくと思われる。こうした新しい技術については,最後に「ニューテクノロジーによる新しいデータ管理手段」としてまとめられているが,この中の一部は数年もたたないうちに日常のこととなるであろう。特にリモートデータエントリー技術は注目しておく必要があり,それに伴いセキュリティ技術がますます重要になる。こうしたことを考えると,本書は今後も時代の変化に応じて改訂されていく必要がある。こうした改訂によって本書が常に最新の知識を提供し,日本のデータマネジメントを先導する本であり続けることを心から願うものである。
書評者: 福田 治彦 (国立がんセンター臨床情報研究室長/JCOGデータセンター長)
◆データマネジメントの認知度はまだ低い
EBMの普及に伴い,近年わが国でも「研究者主導臨床試験」の重要性の認識が高まり,学会においても臨床試験の発表が増えてきた。製薬企業の治験でのデータマネジメントは,本書の著者である辻井敦先生や監修の大橋靖雄教授のご尽力で急速に欧米のレベルに追いつきつつある。しかし,研究者主導臨床試験においてはまだまだデータマネジメントの認知度は低く,ようやく学会で“言葉”として登場するようになってきたばかりである。これは欧米での1980年前後に相当し,日本は“20年遅れ”と言える。その現状を反映してか,わが国の臨床試験関連書で「データマネジメント」は以下のように説明される。
「データマネジメントは,
・製薬企業やCRO(開発業務受託機関)が行う,治験データの処理業務
・SOP(標準業務手順書)に従って行う業務
・CRF(症例報告書)に記入漏れや不整合がないかをチェックし,施設に問い合わせ,データベースを作成し,解析担当者にデータを渡す業務」
最後のものは幾分マシであるが,それでもデータマネジメントの一部を表したに過ぎない。
「データマネジメント」の重要性が「統計」以上に理解されにくいのには理由がある。統計手法の誤りは論文から読み取ることができるが,適切にデータ管理されたかどうかを論文から読み取ることはできない。やっかいなことに,“汚い”データはそれを“きれい”にしてみないと“汚い”ことはわからず,かつデータを“きれい”にするにはそのための知識・技術が必要であるため,論理的必然として「知らぬが仏」になる。さらにやっかいなことに,データを“きれい”にすると,有効性のデータは悪くなり,毒性は増えることが経験的に知られており,“汚い”データのまま解析すると有効性を過大評価し毒性を過小評価する傾向がある。リスク/ベネフィットの判断がデータ管理の質によって覆り得るのである。
「臨床データマネジメント(Clinical Data Management)」は,英文の教科書ですらまだ数えるほどしかない発展途上の学問・技術体系であるが,「臨床医学」,「生物統計学」,「情報工学」の3つの学問を背景に持つ応用科学・実践科学と位置付けられ,工業分野で発展した「品質管理」,「品質保証」の医学への応用とも言える。臨床研究において「正しい結論」を導くために,治療薬・治療法の有効性・安全性に関する「正しい解析」を可能にする「正しいデータ」を確保することが目的であり,単に得られたデータの記入漏れや不整合(データエラー)をチェックするのみならず,データエラーを最少化する予防策としての,症例報告書のデザインや,計画段階でのプロトコル検討も含む臨床試験の全プロセスが守備範囲である。
◆データマネジメントの全体像がわかりやすく示される
本書は,日本人の手になるものとして本邦初の系統的な「臨床データマネジメント」の教科書である。英文の教科書の多くが分担執筆のためか全体感に欠ける印象があるのに対し,本書は著者の幅広い知識と明快な理論構築を反映して,データマネジメントの全体像がわかりやすく示されており,質的にこれまでの英文教科書を凌ぐ。また,大橋教授の「序」で語られる「わが国のデータマネジメント草創期」を担った著者ならではの「現場感覚」にあふれる記述がちりばめられた,まさに今の日本でデータマネジメントに携わる者向けの書である。例えば,治験に携わる臨床医なら一度は耳にする「私もこんな些細なことは聞きたくないのですが,うちの臨床データマネジメントを担当する者が言うものですから」というモニターの言い訳を著者は厳しく批判する。
本書の内容は,薬剤開発の全体像と品質管理・品質保証の基本的な説明に始まり,「臨床データ」に対していかに品質管理・品質保証を適用していくかの解説が,実際のプロセスに沿って,「臨床データの発生」→「データ収集」→「症例報告書」→「データベース」→「コンピュータシステム」→「モニタリング」→「標準化」と展開される。また,多分野にわたる応用科学であるがゆえに拡散しがちなデータマネジメントの各プロセスの解説を,読者が全体像を失うことなく読み進められるよう,各章の扉には「本章の位置づけ」がマップとして示されている。
想定読者は主に製薬企業の治験に携わる人のようだが,解説されている原理原則は治験に限らず,手術や放射線治療,集学的治療等の研究者主導臨床試験にも共通であり,それらに携わる臨床医やCRCの方にも是非読んで欲しい。いかに臨床的意義の高い仮説に基づく臨床試験であっても“汚い”データからは正しい臨床的結論は得られない。統計家やデータマネジャーの人的基盤整備が“20年遅れ”のわが国で,臨床医が自ら臨床試験を率いるには,欧米では不要のさまざまな努力が必要だが,その努力を無駄にしないためにも,正しい結論を導くヒントを少しでも多く本書から得て欲しい。
「盲点」になっていた臨床試験データマネジメントが初めてまとめられた
書評者: 開原 成允 (国際医療福祉大教授・医療福祉情報システム)
◆データマネージャの養成に期待
臨床試験のデータマネジメントは,これまで日本では,いわば「盲点」になっていた。「盲点」であった理由は,それがあまりにも日常的な業務であるために,それをまとめて考えることがなかったためであろう。しかし,データマネジメントが重要であることは今さら言うまでもなく,その成否が臨床試験の質を左右する。
欧米諸国にはデータマネジメントを専門とするデータマネージャが存在し,養成コースもあることを大橋靖雄教授は早くから指摘し,日本でも必要であることを説いてこられた。その大橋教授の監修と辻井敦氏の実務経験からこの本が生まれたことは正に時機を得たものであり,本書の出版を心から喜びたい。
本書は,「臨床試験データマネジメント」を初めて1つにまとめて展望し,解説したものである。まとめてみると改めてその重要性が理解できるが,同時にその関係する領域,人,組織,技術などの複雑さが浮かび上がってきて,データマネジメントの難しさを感じさせる。データマネジメントの概念を示すために,その業務を本書から引用すると,データマネジメントとは,1)企画・立案,2)プロトコルおよび症例報告書の作成,3)施設との契約,薬剤配布,4)モニタリング,5)症例報告書の回収・確認,6)データ入力前のチェック,7)データ入力,8)データ固定,9)データ集計・解析,10)総括報告書作成,といった臨床試験の流れの中のすべての段階で良質なデータが得られるように,データ収集,確認,コンピュータによるデータ管理などを行うことである。このために必要な知識は,カルテを読むことにはじまり,品質管理手法,コンピュータデータベースの設計,国際的動向の把握にまで及ぶ。本書の記述は囲みの解説(Info Navi)を入れた工夫もあり,すべての業務にわたって非常によく整理されているが,その中心となる考え方を「臨床試験の質の保証」としているのも大変よい。日本では,これらの業務は複数の人がばらばらに行っていたのであろうが,全体を統括する人を置くことによってのみデータの質が保証されるからである。
今後は,本書が契機となって日本でも臨床データマネジメントの重要性が認識され,データマネージャの養成が進むことを期待したい。すでに大橋教授らも関係したコースが企画されたり,実施されたりしているようであるが,問題が多岐にわたるだけに,さらに多くのコースが必要となるであろう。私の奉職している国際医療福祉大学においても,本年から「臨床試験研究」の大学院修士コースを開設してCRCを養成していくことになっている。ここでもデータマネジメントは重要な科目となるが,将来はこれを独立させたデータマネージャ養成コースも必要になるかもしれないと思っている。
◆日本のデータマネジメントを先導する本に
最後に,私の専門とする医療情報学の立場から著者に対し希望を述べておく。データマネジメントは,今後臨床試験に情報技術が導入される中で急速に変化していくと思われる。こうした新しい技術については,最後に「ニューテクノロジーによる新しいデータ管理手段」としてまとめられているが,この中の一部は数年もたたないうちに日常のこととなるであろう。特にリモートデータエントリー技術は注目しておく必要があり,それに伴いセキュリティ技術がますます重要になる。こうしたことを考えると,本書は今後も時代の変化に応じて改訂されていく必要がある。こうした改訂によって本書が常に最新の知識を提供し,日本のデータマネジメントを先導する本であり続けることを心から願うものである。
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