脳の機能解剖とリハビリテーション
エビデンスに基づく脳と臨床のつなげかた
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脳の機能解剖の基礎知識に加え、「観察ポイント」と「臨床へのヒント」を通じて、臨床症状をどう観察して同定し治療するか、豊富なイラストや図表で分かりやすく解説します。また、脳画像の読み方を40時間のYoutube講義動画で学ぶこともできます。大脳・小脳から脳幹・脊髄まで網羅し、明日からの臨床に活かしたくなるノウハウも満載。新人から中堅まで脳神経リハビリテーションに関わる医療従事者必携の一冊です。
著 | 金子 唯史 |
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発行 | 2024年10月判型:B5頁:408 |
ISBN | 978-4-260-05715-8 |
定価 | 4,950円 (本体4,500円+税) |
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序
「STROKE LAB」では,脳の機能解剖の基礎知識を学べる講座をセラピストに向けて長年提供してきており,その経験を通じて脳の機能解剖の臨床応用に関する豊富な知識と技術を蓄積してきました.この蓄積されたノウハウを本書に集約し,単なるアイデアでは終わらない,カタチとして世に送り出せたことに大きな充実感を覚えています.本書の執筆には約1年半を費やしましたが,当初のビジョン通りの内容を実現できたと思っております.
本書は,脳の機能解剖の基礎知識と臨床現場のギャップを埋めることを最優先に考えて構成しました.私自身,新人1年目から脳の機能解剖に深く没頭しましたが,5年目頃になると臨床への応用に限界を感じ,不安になりました.
ギャップの原因は次のように考えられます.
1. 脳の機能解剖に関する知識に偏りがちで,実際の臨床場面を想像する学習スタイルが確立されていない.
2. 大脳皮質や大脳基底核などの勉強が中心で,脳幹などの細かな部位や神経ネットワークを十分に考慮していないため,点と点の知識が線や面につながっていかない.
3. 臨床では,特定の症状(半側空間無視や痙縮など)が多く,脳の機能解剖の基礎知識が後回しにされる.結果的に知識が曖昧なまま年月が経ってしまう.
4. 脳の機能解剖とリハビリテーションを統合した内容を一冊で完結させる書籍が少なく,複数の教科書を参照する必要があるため,学習するには非効率であり,臨床での迅速な利用も限られてしまう.
5. テキストでの学習は疲労時に継続できず,記憶に定着しない.
上記5点を解決すべく,本書では各セクションの冒頭に脳の機能解剖の基礎知識を配置し,それに加え,臨床の課題解決の糸口となるような観察ポイントと臨床へのヒントなどを,なるべく見開きとなるよう配置しました.特に観察ポイントは,まさに臨床実践の源泉のため,アイデアの捻出に苦労しました.また,大脳皮質や大脳基底核にとどまらず,脳幹や脊髄に至るまで,脳神経全体を網羅することに努めました.各領域を神経ネットワークで結びつけながら解説することにより,患者の損傷部位にとどまらず,各領域との結びつきを知ることができ,臨床アイデアを広げることにつながると考えます.この各領域の結びつきを解説するうえでは,大学病院勤務時代に,脳幹や脊髄障害まで幅広く患者を担当してきた経験が大きいです.
本書では,多数の最新論文から選び抜かれたトピックを交えて解説しています.難解な情報でも理解しやすいよう明瞭な要約と豊富なイラストを活用しています.また,臨床現場に役立ててもらえるよう具体的な描写に努めました.さらには,前作『脳卒中の機能回復』に引き続き,各セクションでは2次元コードから「STROKE LAB」のYouTube動画が視聴できるようになっており,紙幅の都合で説明しきれていない部分を補完しています.動画ではより直感的に理解を深めることができます.
近年,学習の方法として動画を視聴するスタイルが広まりつつありますが,テキストでも動画でも,それが臨床に役立つのであれば,どちらの学習方法も推奨します.特に疲れているときでも気軽に視聴できる動画で学習を続けられれば,臨床実践を深める助けになると信じています.
脳の機能解剖の基礎知識をおろそかにしたままで,特定の技術分野を細かく追求する勉強スタイルにはリスクが潜んでいます.「木を見て森を見ず」とのことわざもあるように,まだ森(全体像)を把握できていないのに,木の細かな状態(部分)に固執することは自身の視野を狭めてしまうからです.私もかつては特定の技術に囚われがちでありましたが,臨床経験を積むうちに,全体を把握するための精確な知識と観察こそが,真に力を発揮するための不可欠な鍵であると感じるようになりました.一方で,時間に追われ「なんとなく森(全体)を知っているけれど木の詳細までは追求できてこれなかった」場合もあるでしょう.本書でもう一度脳の機能解剖の基礎知識とエビデンスに触れ,ご自身の技術や知識の振り返りにも役立てていただきたいと願います.
最後に,お忙しいなか,本書を査読してくださった脳神経専門の医師の先生,多くの助言をいただいた研究者の大松聡子先生,モデルを快く引き受けてくださった成松美沙氏,前作『脳卒中の機能回復』に引き続きデザインを手掛けてくれたSTROKE LABスタッフの郡司友輔氏,動画編集で力を貸してくれたスタッフの西坂拳史朗氏,片平雅大氏,山川翔太郎氏,川上智頌氏,小菅由介氏,原野智樹氏,赤松 翔氏,そして編集を支えていただいた医学書院の川村真貴子氏,富岡信貴氏に,心からの感謝を申し上げます.皆様のご支援があってこそ,この書籍がカタチになりました.
本書が,セラピストだけでなく,医師,看護師,介護士,そして何より患者とその家族にとっても,理解しやすく,実用的なガイドになると確信しています.この一冊に込めた私の想いとともに,心より読者の皆様にお届けします.
2024年8月
STROKE LAB 代表取締役 金子唯史
目次
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はじめに
1 前頭葉
一次運動野
補足運動野
運動前野
前頭前野
Broca野
前頭眼野
2 頭頂葉
体性感覚野
上頭頂小葉
下頭頂小葉
楔前部
3 側頭葉
上側頭回
中側頭回
下側頭回
側頭葉内側部
島
4 後頭葉
一次視覚野
二・三・四・五次視覚野
5 大脳基底核
内包
尾状核
被殻
淡蒼球
視床下核
黒質
側坐核
直接路/間接路
6 大脳辺縁系
扁桃体
海馬
帯状回
乳頭体
脳梁
7 間脳
視床
視床下部
松果体
8 中脳
中脳蓋
中脳被蓋
腹側被蓋野
中脳水道
中脳水道周囲灰白質
赤核
脳神経核III・IV
大脳脚
脚橋被蓋核
楔状核
9 橋
橋被蓋(橋背部)
橋底部(橋腹部)
橋核
脳神経核V・VI・VII・VIII
縫線核
青斑核
結合腕傍核
10 延髄
延髄背側
延髄腹側
下オリーブ核
孤束核
疑核
延髄錐体
薄束核/楔状束核
脳神経核IX・X・XI・XII
11 小脳
前葉
後葉
片葉小節葉
虫部
小脳半球
室頂核
栓状核/球状核
歯状核
前庭小脳,脊髄小脳,大脳小脳
脊髄小脳路/上・中・下小脳脚
12 脊髄
脊髄神経
頸神経(C1~C8)
胸神経(Th1~Th12)
腰神経(L1~L5)
仙骨神経(S1~S5)
おわりに
索引