医療者のスライドデザイン
プレゼンテーションを進化させる、デザインの教科書
プレゼンテーションに悩む、すべての医療者・学生へ
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デザイナー兼現役医師による、医療系スライドをデザインの視点から徹底的に解説する指南書。
伝わるデザインにはルールがあり、ポイントを押さえることで医療のプレゼンテーションは大きく改善します。
デザインの理論だけでなく、幅広い職種に応じた多くの実例スライドを紹介し、BEFORE / AFTER形式で具体的に理解することができます。
演習問題や実例スライドを特設サイトからダウンロードし、手を動かすトレーニングが可能です。
スライドの他にも、研究ポスター、チラシ、オンラインプレゼンテーションなど、医療者が直面するデザインを見やすく、伝わりやすくするためのテクニックを多数紹介します。
あなたのスライドには、まだまだ改善の余地があります。共にデザインを学び、医療のプレゼンテーションを進化させましょう!
著 | 小林 啓 |
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発行 | 2023年02月判型:B5変頁:200 |
ISBN | 978-4-260-04773-9 |
定価 | 3,740円 (本体3,400円+税) |
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- 目次
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序文
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はじめに
スライドをデザインできますか?
この本は、デザインの専門家ではないすべての医療者と学生を対象に、伝わりやすく美しいプレゼンテーションのスライドデザインを解説しています。幅広い診療科、職種の人が学ぶための豊富な実例をそろえ、読むだけではなく手を動かして学ぶ機会も設けています。
臨床や研究の現場では日常的にプレゼンテーションが求められますが、デザインについて体系的に学ぶ機会はほとんどありません。医療で扱う情報は特有のものが多く、縦社会で独自に発展した“スライドのお作法”も存在します。これまでの医療者視点の慣習から離れ、改めてデザインの視点からスライドの作り方を見直すことで、医学の知見をより広く、より高い品質で届ける新しい方法が見つかるはずです。
とはいえ、“デザイン”とは何をすればよいのでしょう? スライドの見た目をかっこよくおしゃれに整えることは、その本質ではありません。大切なことは“ユーザーを理解し、課題を解決すること”です。プレゼンテーションにおけるメインユーザーは観客です。プレゼンテーションは自己満足やノルマを果たすためではなく、観客と自分の知見を共有し、新たな行動を促すために行うものです。そのためには観客があなたのプレゼンテーションに何を求めているのかを理解し、最も伝わる形で情報を提供する必要があります。また、プレゼンテーションを作るあなた自身も一人のユーザーです。優れたプレゼンテーションで評価を高めたい、忙しい中で効率的にきれいなスライドを作りたい、そんなニーズの解決もデザインは助けてくれます。
優れたデザインを作ることは簡単ではなく、私自身デザインの専門家となった今でも、より良いデザインを求めて日々格闘しています。しかし、情報を適切に伝えるデザインには基礎となるルールやテクニックがたくさんあり、知識として身につけることが可能です。「私にはセンスがないから」と諦めず、ルールを理解し考えながら手を動かしていくことで、あなたのスライドデザインは磨かれていきます。
ここはデザインの入り口です。あなたのスライドにはまだまだ改善の余地があります。デザインを知ることでプレゼンテーションに新しい視点が生まれ、未来の医療コミュニケーションがより優れたものになることを願っています。
2022年12月 小林 啓
目次
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Chapter 1 準備をする
01 プレゼンテーションをデザインする
02 メッセージを考える
03 シンプルを極める
04 認知をデザインする
Chapter 2 整える
01 位置を整える
02 ガイドと配置
03 流れを整える
04 文字を整える
05 バランスを整える
EXERCISE1:整列の練習
Chapter 3 余白
01 余白をコントロールする
02 マージンを設定する
03 強調する
04 グループに分ける
05 行間を意識する
06 タイトルをデザインする
EXERCISE2:余白の練習
Chapter 4 配色する
01 色の考え方
02 コンセプトカラー
03 色を決める
04 影をつける
Chapter 5 画像にする
01 できるだけ画像にする
02 アイコンを使いこなす
03 写真のレイアウト
04 インターネットで画像を探す
05 グラフをデザインする
EXERCISE3:配色と画像の練習
Chapter 6 時間を操る
01 時間をデザインする
02 アニメーションの基本
03 シンプルなアニメーション
04 ダイナミックなアニメーション
Chapter 7 デザイン実例集
01 症例の概要
02 検査値の表
03 円グラフ
04 時間を表すグラフ
05 図で説明する
06 経過グラフ
07 フローチャート
08 画像のレイアウト
09 アニメーション
10 病院紹介
11 タイトルスライド
12 目次スライド
13 先行研究の紹介
14 グラフをトレースする
15 データからグラフを描く
16 複雑な模式図
17 色の使い方
18 研究ポスターのデザイン 1
19 研究ポスターのデザイン 2
20 チラシのデザイン
Chapter 8 オンラインプレゼンテーション
01 オンラインプレゼンテーションの難点
02 シンプルとリッチ
03 ストーリーをシンプルにする
04 トークをリッチにする
05 スライドをリッチにする
06 環境を整える
07 オンラインプレゼンテーションの利点
08 新しいプレゼンテーションツール
Chapter 9 医療とデザインの可能性
01 デザインを考える
02 医療とデザインの可能性
Column
ゲシュタルト心理学とデザイン
フォントの互換性に注意!
どうすればデザインは上手くなる?
参考文献
おわりに:感謝の言葉
Index
書評
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伝わるプレゼンテーション 医療者のためのデザインガイド
書評者:吉橋 昭夫(Designship Do全体監修)
本書は,プレゼンテーションを効果的に行うためのデザイン手法を誰にでもわかりやすく紹介したものである。プレゼンテーションは受け手と知見を共有し新たな行動を促すものであり,そのためには適切なデザインが必要である。私は「情報デザイン」の分野で長く教育研究に携わってきたが,本書は情報デザインのエッセンスを凝縮してスライドデザインに投入したものであり,伝えたいメッセージや情報をスライドとして具体化するために必要な内容が存分に盛り込まれている。
以下は,各Chapterの概要である。
スライド作成はプレゼンテーションで伝えるべき明確なメッセージと情報を組み立てていくプロセスであり,スライドの表現のテクニックだけを追っても良いプレゼンテーションにはならない。著者は,「Chapter 1 準備をする」において,いきなりスライドのデザインを始めるのではなく準備が重要であると述べ,プレゼンテーション全体をデザインすること,明確なメッセージを考えること,認知特性を考慮することなどについて解説している。
続くChapter 2~4では,視覚伝達(ビジュアル・コミュニケーション)のテクニックを用いて情報を効果的に伝える方法を紹介し,「Chapter 2 整える」,「Chapter 3 余白」,「Chapter 4 配色する」,と順を追ってプレゼンテーションで情報を的確に伝えるために必要な考え方とテクニックを解説している。医療情報を扱ったスライドの例を使って説明しているためそれぞれの表現テクニックが理解しやすく,この点で本書は一般向けのいわゆるビジネスプレゼンテーションやグラフィックデザインの解説書とは一線を画していると言える。
「Chapter 5 画像にする」では医療者のプレゼンテーションで使われることの多い画像の効果的な使い方や医療データの見せ方,グラフ表現などについて留意点とテクニックについて述べ,「Chapter 6 時間を操る」はアニメーションの適切な使い方を解説する。
「Chapter 7 デザイン実例集」は,すぐに使えるスライドデザインの事例集である。本書のQRコードからダウンロード可能な事例集は改善前と改善後のデザインを比較できるため,スライドデザインの意味や改善による効果がわかりやすい。
「Chapter 8 オンラインプレゼンテーション」は,オンラインでの講演や講義,プレゼンテーションの準備や注意事項,効果について述べておりこれらの知識もすぐに活用できるだろう。
「Chapter 9 医療とデザインの可能性」では,日本におけるデザインの認識の変化を紹介した上で,医療とデザインの可能性について考察しデザインに対する新たな視点を示している。
著者は,医療者に向けてプレゼンテーションの効果を高めるための多くの知見を提供する。受け手の認知負荷を減らすためのデザイン技法や,情報を伝えるための基本的な考え方が詳細に解説されており,医療者が自身の知識や経験を他者に向けてわかりやすく伝えるための指針となる内容である。事例集を参照しながら自身のスライド作成に応用することで,デザインの効果を実感できるだろう。さらに,オンラインでの情報伝達が重要になっている現代において,適切なデザインを通じて受け手とのコミュニケーションを円滑に行うための助けとなる。
本書は医療者がプレゼンテーションを通じて情報を的確に伝えるための実践的なガイドとなり,知識を深めるだけでなくそのスキルを生かすことができる一冊である。また,得られるスライドデザインの知見とスキルは,プレゼンテーション以外にも市民や患者・家族への医療情報の提供や説明などにも生かすことができ,さまざまなコミュニケーションの場面への応用が期待できるものである。