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新・栄養塾

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好評書『栄養塾』が10年ぶりにリニューアル。栄養サポートチーム(NST)に携わる上での必須事項を押さえつつ、栄養学の理解と適切な栄養管理に必要十分な生化学の知識を網羅。さらには、代謝・栄養に関係する消化器の解剖と機能についても分かりやすく記述している。令和時代の栄養管理の決定版!
大村 健二 / 濵田 康弘
発行 2020年01月判型:B5頁:288
ISBN 978-4-260-04135-5
定価 3,740円 (本体3,400円+税)

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まえがき

 21世紀に入り,医学の進歩が加速しています.がんの化学療法では免疫チェックポイント阻害薬の登場,再生医療ではiPS細胞の臨床応用,外科領域では手術支援ロボットの普及が進んでいます.このような華やかな医療が行われるなか「縁の下の力持ち」を演じているのが適切な栄養管理だと思います.音楽にたとえれば,主旋律をしっかり支える低音部分にあたるでしょう.病気が治っても,栄養状態の悪化から不可逆的な身体機能の低下をきたし元の生活に戻ることができなければ,医療行為の価値は大きく損なわれてしまうのです.
 医療を支える医学は,さまざまな学問の集合体です.生理学,生化学,解剖学,病理学などの基礎医学,公衆衛生学,法医学といった社会医学,それに内科学,外科学,耳鼻咽喉科学などの臨床医学が加わります.全体を見渡すと,医学を構成する学問の中で,いわゆる自然科学と呼べる学問はそう多くありません.自然科学の粋を集めたのが医学と思われがちですが,そうではないのです.特に,医療の実践を担う臨床は「理屈ではなく結果」の世界になっています.
 しかし,適切な医療を遂行するために,ヒトの体内で何が起こっているかの理解は大切です.ヒトの身体は,多数の臓器・器官の集合です.それらが全体として恒常性を維持し,1秒たりとも途切れることなく生命現象が営まれています.そういった生命現象,代謝を解き明かす学問が生化学です.1つひとつの細胞に着目すると,その働きや内部で行われている代謝について,分子レベルまで解明が進んでいます.生化学,分子生化学がもたらした成果といえます.そして,その無数の細胞で営まれている代謝の総和,つまり1人の人間,患者さんの代謝も,生化学的な知見の集合として営まれます.
 患者さんのエネルギー代謝,たんぱく代謝をより好ましい状態に導くのは,臨床栄養に課せられた任務です.その遂行には,純粋な自然科学である生化学の知識が欠かせません.栄養学は,生化学という基礎に立脚していることを忘れてはなりません.本書では,栄養学の理解と適切な栄養管理に必要十分な生化学の知識・知見を網羅しました.また,代謝・栄養に関係する消化器の解剖と機能についてもわかりやすく記述しました.
 好評をいただきました『栄養塾』を超える本を作ろうと,徳島大学・濵田康弘教授とともに執筆いたしました.本書の向こうに,ヒトの身体とそこで営まれる代謝がはっきりと見えてくることを確信いたします.

 令和元年12月
 大村健二

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まえがき

I 栄養管理に必要な基礎知識
 1 消化器の解剖と機能
 2 栄養素の消化と吸収
 3 糖質の代謝
 4 たんぱく質とアミノ酸の代謝
 5 脂質の代謝
 6 水・電解質
 7 ビタミンの吸収,生理活性と欠乏症
 8 微量元素の吸収,生理活性と欠乏症および過剰症
 9 食物繊維
 10 腸内細菌叢
 11 侵襲と飢餓
 12 TCAサイクル,ミトコンドリアと酸化的リン酸化
 13 核酸と葉酸の代謝(一炭素単位の代謝)

II 臨床栄養 実践編
 1 栄養評価
 2 検査値の解釈
 3 栄養管理のプランニング(投与量の算出)
 4 経腸栄養
 5 静脈栄養

III 臨床栄養 病態編
 1 周術期
 2 上部消化管手術の退院後
 3 短腸症候群
 4 重症症例
 5 肝疾患
 6 腎疾患
 7 呼吸器疾患
 8 褥瘡
 9 サルコペニア・フレイル

IV 栄養管理のスキルアップ
 1 特殊病態用栄養剤のエッセンス
 2 電解質異常
 3 Refeeding症候群
 4 カテーテル関連血流感染(CRBSI)
 5 胃瘻

補講
 トランス脂肪酸
 コレステロール制限の意義
 がん細胞のエネルギー代謝
 ゲノム・遺伝情報とたんぱく質の合成

あとがき
索引

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「PPNの合併症=静脈炎」だけでなくそのメカニズムまでわかる教本
書評者: 矢吹 浩子 (明和病院看護部長)
 臨床栄養管理の重要性は,いまや医師や看護師だけでなく多くの医療職種に認知され,栄養サポートチームのみならず,現場の看護師も栄養管理の知識を深めています。看護師の場合,栄養管理の知識を習得するには基礎教育では限界があり,働き出してから研修会や書籍などによって習得しなければなりません。しかし,書籍もさまざまなため選び方は難しいでしょう。そこで「これは頭に入りやすい」というのが本書ではないかと思います。

 本書は10年前に出版された『栄養塾―症例で学ぶクリニカルパール』を進化させた内容ですが,編集に一層の工夫がなされました。冒頭から生化学を中心とした「栄養管理に必要な基礎知識」の章が約100ページに大幅に増ページされていたこととその内容の細かさに,一瞬「これは難しいかも」という印象がありましたが,読んでみると説明記述の直後に関連する解説があり,「なるほど」とうなってしまいます。もちろん生化学の項には臨床現場ではなじみの少ない単語がたくさん登場するので,看護師が生化学を理解し習得するには,ここからさらに「自分で調べる,学ぶ」という一歩を踏み出す必要があります。ですが各項,箇条書きにまとめてあるので,その一つひとつを順にみていけばよいでしょう。わかりにくい単語が少なからず出てくると思いますが,それを自身で調べて理解していくことで確実に知識として身についていきます。

 説明記述に関連事項の解説を加えているのは「臨床栄養 実践編」,「臨床栄養 病態編」「栄養管理のスキルアップ」といった章も同様で,これが本書の特徴だと思います。例えばPPNの合併症に静脈炎を教えるのはどのテキストでも同じですが,実はそのメカニズムを説明できる看護師は多くはないでしょう。またメカニズムまで解説している書籍も多くはありません。しかし本書では,静脈炎とpH,浸透圧の関係や,ビタミンと細菌性静脈炎の関係などが説明記述直後に併記されています(pp.132-3)。また,褥瘡症例への総エネルギー投与量に関しても,「傷害係数をいくら」にとか,「たんぱく投与量を体重あたりどれくらい」というような説明だけではなく,そのエビデンスとなる研究結果なども併記して解説されてあります(pp.209-10)。ふに落ちるように理解しやすい内容になっているし,ガイドラインのように客観的な根拠を知ることができます。

 一つひとつの説明に根拠や関連データなどを加えながら教えていく授業のような本書の構成は,「塾」というタイトルに実によく合っており,表紙のエンブレムも「塾」にふさわしくカッコいい。ペガサスと王冠を使ったエンブレムは著者の大村健二先生,濱田康弘先生の本書に対する自信とこだわりでしょうか。このエンブレムにまったく遜色がない本書は,今私が最もお薦めしたい栄養管理の教本です。
動的な栄養学の世界を第一線の臨床医が解説
書評者: 佐々木 雅也 (滋賀医大教授・基礎看護学/滋賀医大病院栄養治療部長)
 もう10年以上前の話である。日本臨床栄養代謝学会(旧:日本静脈経腸栄養学会)のNST専門療法士にかかわる委員会に初めて参加した際に,外科系の先生方の熱心な議論に圧倒された記憶がある。その議論の中心におられた先生方のお一人が,大村健二先生であった。小生は,内科系の医師が少ないとのことで委員に加えていただいたのだが,先輩の外科の先生方の前で,なかなか声があげられなかったのを覚えている。中でも大村先生は,専門とされる消化器外科学はもちろんのこと,生化学の知識が豊富であることに驚かされた。臨床医としての多忙な日々の合間を縫って,生化学の教科書を精読されているように感じられた。

 その後,その委員会の委員長を小生が引き継ぐことになった。その際,新しく委員に加わっていただいたのが濱田康弘先生であった。私と同じ内科系であったが専門領域が異なり,濱田先生は腎臓病学を専門とされておられた。濵田先生も生化学や生理学の知識が豊富であり,また当時から仕事の正確さが際立っておられた印象がある。

 大村先生と濱田先生は,いずれも私が尊敬する医師である。そして,そのお二人が執筆されたのが本書『新・栄養塾』である。

 栄養学という学問は,ダイナミックな,動的な学問である。そしてその基礎になるのは,生化学であるのは言うまでもない。したがって,栄養アセスメントにおいても,血液学的な数値を単純に評価するだけでは意味がない。そこには,動的な栄養代謝病態が考慮されなければならない。また,栄養代謝には複数の臓器が巧妙に関連し,一つの生命体を成立させている。さらに近年では腸内細菌叢も,新たな臓器としての意義が論じられている。栄養学は,実に奥深い学問である。

 本書は,「I.栄養管理に必要な基礎知識」,「II.臨床栄養 実践編」,「III.臨床栄養 病態編」「IV.栄養管理のスキルアップ」の4章から成る。特に,基礎知識としての解剖・生化学・生理学の解説が充実している。しかも,単なる栄養学の成書に留まらず,まさに動的な観点から栄養代謝を解説されているのが特徴である。また実践編は,実際に臨床の第一線で活躍されている医師ならではの目線で解説されている。補講として,「トランス脂肪酸」など4項目が取り上げられ,いま知っておきたい項目が追加解説されている。

 このように,本書はひとりで読んでいても,教科書を読んでいる時のような飽きがこないし,むしろ楽しい気持ちになる良書である。
栄養サポートの専門職として高いレベルをめざす人の必携書
書評者: 西岡 心大 (長崎リハビリテーション病院人材開発部副部長・栄養管理室長)
 本書は2010年に発刊され多くのファンを生んだ『栄養塾――症例で学ぶクリニカルパール』の著者である大村健二先生が,その発展版として濵田康弘先生と共に執筆された名著である。大村先生は外科医,濵田先生は内科医で,かつ栄養サポートの第一人者であり,評者も先生方の講演や著書から多くを学ばせていただいた。

 本書は「I.栄養管理に必要な基礎知識」「II.臨床栄養 実践編」「III.臨床栄養 病態編」「IV.栄養管理のスキルアップ」の4章から構成されている。「栄養塾」の名のとおり,両先生から直接講義を聴いているかのような気分になる筆致である。教科書的な記載にとどまらず,随所に先生方の実体験から得られたTipsがちりばめられている。

 「I.栄養管理に必要な基礎知識」では消化器の解剖生理やマクロ・ミクロ栄養素の機能・消化・吸収・代謝,侵襲や飢餓時の栄養代謝など,栄養管理を行う上でまず身につけておきたい知識が網羅されている。特に「水・電解質」や「TCAサイクル,ミトコンドリアと酸化的リン酸化」の章などはお2人のご専門に基づく”こだわり”の項と見受けられ,詳細かつわかりやすくまとめられている。

 「II.臨床栄養 実践編」「III.臨床栄養 病態編」はそれぞれ栄養サポートの基礎知識と病態別のアプローチを扱っている。いずれも優れた内容であるのはもちろんだが,特にお勧めしたいのは「周術期」「上部消化管手術の退院後」の項である。優れた外科医である大村先生の豊富な臨床経験に基づく記載は臨床現場で即座に役立つことに違いない。また腎臓内科医である濵田先生が担当された「腎疾患」の項では,Protein-energy wastingの診断基準や欧州臨床栄養代謝学会(ESPEN)による血液透析患者への栄養療法アルゴリズムなど,レベルアップをめざす栄養専門職なら必ず知っておきたい知識が余すところなく網羅されている。

 さらに「IV.栄養管理のスキルアップ」の章では,特殊病態栄養剤の組成,電解質異常,Refeeding症候群などのトピックについてより深く掘り下げた内容が記載されている。例えば,栄養療法を行う上で最も避けなければならない致死的合併症であるRefeeding症候群についてはその歴史や代謝変動の機序にも触れられ,まさに塾で講義を受けている気にさせられる。

 本書を特にお薦めしたいのは栄養サポートに関わる医師や研修医,さらには栄養サポートの専門職として高いレベルに到達したい管理栄養士,看護師,薬剤師,セラピスト,歯科衛生士などのコメディカルである。日ごろから繰り返し通読することによって,「なぜこのような栄養管理が必要なのか」を理解した上で適切な栄養サポートを実践することができる。ひとりで読むだけでなく,栄養部門や栄養サポートチームで1冊は備えておき,勉強会の資料として活用することも薦めたい。栄養管理の実践力の向上に大いに寄与するだろう。

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