標準形成外科学 第7版
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第7版 序
形成外科はplastic surgeryの訳語であり,「形を作る外科」という意味をもつ.二つの領域があり,一つは先天性に欠損していたりケガなどで失われたりした組織を形作って再建し,形態的,機能的快復を図るものであり,再建外科(reconstructive surgery)と呼ばれる.もう一つは病的ではないが,よりよい形を作るという意味で,美容外科(aesthetic surgery)と呼ばれる.
麻酔が本格的に導入されるまで,外科治療の対象はもっぱら体表の組織・臓器であり,キズの手当てや腫物の処置が主であった.しかし麻酔の技術が確立されると,対象は腹腔や胸腔,頭蓋腔など,より深部の組織・臓器へと拡がり,腫瘍の摘出なども行われるようになった.その結果,一人の外科医がすべての手術をこなすということが不可能になり,外科も消化器外科,心臓血管外科,脳神経外科,整形外科などへと細分化,専門化せざるをえなくなった.形成外科もそのような細分化,専門化の中で役割を規定された外科の一分野である.
しかし現在の形成外科の役割は,特にわが国においては大きく変化してきている.当初,形成外科に課されたのは主として体表の組織,臓器の再建であった.それゆえ形成外科医には体表の解剖学的知識が要求され,これが経験を通して蓄積された.また,組織欠損の修復ということで創傷治癒に関する知識も不可欠であり,主たる研究領域もそこにあった.ただこれらの知識は,変形・欠損の再建に限らず,新鮮外傷や難治性潰瘍,皮膚・皮下腫瘤など,体表における損傷,外科的疾患すべての治療に共通の要件である.そのような経緯から,近年,これらの治療も形成外科医が担うことが多くなってきている.
一方で,社会の医療需要も大きく変化している.作業機器や車の改良により労働災害や交通事故による外傷が激減した.また少子高齢化により,先天異常の症例が減少し,加齢に伴う疾患が増加した.形成外科の臨床においても退行性眼瞼下垂,糖尿病性足潰瘍,褥瘡などの患者が急増してきている.
本書は第6版の刊行から7年が経過した.今回の改訂にあたっては,乳房再建やリンパ浮腫など,その間の進歩,変化が著しかった分野の更新に加え,上述したような形成外科が担う役割の状況を踏まえて記載内容を再検討した.また,視覚的に理解しやすいように全面的にカラー化を進めた.本書が医学生の教科書として,読者の将来における医療活動の礎となれば幸いである.
2018年11月
平林慎一
形成外科はplastic surgeryの訳語であり,「形を作る外科」という意味をもつ.二つの領域があり,一つは先天性に欠損していたりケガなどで失われたりした組織を形作って再建し,形態的,機能的快復を図るものであり,再建外科(reconstructive surgery)と呼ばれる.もう一つは病的ではないが,よりよい形を作るという意味で,美容外科(aesthetic surgery)と呼ばれる.
麻酔が本格的に導入されるまで,外科治療の対象はもっぱら体表の組織・臓器であり,キズの手当てや腫物の処置が主であった.しかし麻酔の技術が確立されると,対象は腹腔や胸腔,頭蓋腔など,より深部の組織・臓器へと拡がり,腫瘍の摘出なども行われるようになった.その結果,一人の外科医がすべての手術をこなすということが不可能になり,外科も消化器外科,心臓血管外科,脳神経外科,整形外科などへと細分化,専門化せざるをえなくなった.形成外科もそのような細分化,専門化の中で役割を規定された外科の一分野である.
しかし現在の形成外科の役割は,特にわが国においては大きく変化してきている.当初,形成外科に課されたのは主として体表の組織,臓器の再建であった.それゆえ形成外科医には体表の解剖学的知識が要求され,これが経験を通して蓄積された.また,組織欠損の修復ということで創傷治癒に関する知識も不可欠であり,主たる研究領域もそこにあった.ただこれらの知識は,変形・欠損の再建に限らず,新鮮外傷や難治性潰瘍,皮膚・皮下腫瘤など,体表における損傷,外科的疾患すべての治療に共通の要件である.そのような経緯から,近年,これらの治療も形成外科医が担うことが多くなってきている.
一方で,社会の医療需要も大きく変化している.作業機器や車の改良により労働災害や交通事故による外傷が激減した.また少子高齢化により,先天異常の症例が減少し,加齢に伴う疾患が増加した.形成外科の臨床においても退行性眼瞼下垂,糖尿病性足潰瘍,褥瘡などの患者が急増してきている.
本書は第6版の刊行から7年が経過した.今回の改訂にあたっては,乳房再建やリンパ浮腫など,その間の進歩,変化が著しかった分野の更新に加え,上述したような形成外科が担う役割の状況を踏まえて記載内容を再検討した.また,視覚的に理解しやすいように全面的にカラー化を進めた.本書が医学生の教科書として,読者の将来における医療活動の礎となれば幸いである.
2018年11月
平林慎一
目次
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第I編 総論
第1章 形成外科総論
形成外科の概念
形成外科と形態学
形成外科患者の精神病理と患者対応
損傷・創傷治癒
第2章 形成手術手技
皮膚外科基本手技
皮膚表面形成術
マイクロサージャリー(微小外科)
組織移植術
ティッシュエキスパンダー法(組織拡張法)
クラニオフェイシャル・サージャリー(頭蓋顔面外科)
組織工学と再生医療
第II編 先天性疾患
第3章 先天異常
先天異常概論
皮膚(母斑・母斑症)
血管腫・血管奇形・リンパ管腫
頭蓋・顔面
眼瞼
耳介
口唇・口蓋
頚部
躯幹
四肢
第III編 後天性疾患
第4章 外傷
損傷および創傷
熱傷
その他の外傷
第5章 皮膚および皮下疾患
皮膚皮下腫瘍
瘢痕とケロイド
脈管系疾患
リンパ浮腫
炎症性疾患・感染症
第6章 難治性潰瘍・変性疾患・膠原病
難治性潰瘍
褥瘡
糖尿病性足潰瘍
膠原病・変性疾患
後天性眼瞼下垂・その他の眼瞼疾患
第7章 再建外科
頭頚部
顔面神経麻痺
躯幹
乳房
殿部・陰部
性同一性障害
四肢
第IV編 美容外科
第8章 美容外科
皮膚の美容外科
顔面の美容外科
躯幹,四肢の美容外科
和文索引
欧文索引
第1章 形成外科総論
形成外科の概念
形成外科と形態学
形成外科患者の精神病理と患者対応
損傷・創傷治癒
第2章 形成手術手技
皮膚外科基本手技
皮膚表面形成術
マイクロサージャリー(微小外科)
組織移植術
ティッシュエキスパンダー法(組織拡張法)
クラニオフェイシャル・サージャリー(頭蓋顔面外科)
組織工学と再生医療
第II編 先天性疾患
第3章 先天異常
先天異常概論
皮膚(母斑・母斑症)
血管腫・血管奇形・リンパ管腫
頭蓋・顔面
眼瞼
耳介
口唇・口蓋
頚部
躯幹
四肢
第III編 後天性疾患
第4章 外傷
損傷および創傷
熱傷
その他の外傷
第5章 皮膚および皮下疾患
皮膚皮下腫瘍
瘢痕とケロイド
脈管系疾患
リンパ浮腫
炎症性疾患・感染症
第6章 難治性潰瘍・変性疾患・膠原病
難治性潰瘍
褥瘡
糖尿病性足潰瘍
膠原病・変性疾患
後天性眼瞼下垂・その他の眼瞼疾患
第7章 再建外科
頭頚部
顔面神経麻痺
躯幹
乳房
殿部・陰部
性同一性障害
四肢
第IV編 美容外科
第8章 美容外科
皮膚の美容外科
顔面の美容外科
躯幹,四肢の美容外科
和文索引
欧文索引