学校案内学校長あいさつ
報恩感謝/伝統と革新
1927年、政治家、実業家として茨城の近代化に大きな足跡を残した飯村丈三郎は、その生涯最後の大事業として、社会のリーダーたり得る有為な人材の育成を目指し、現在の茨城高等学校・中学校を創設しました。建学の精神は「報恩感謝」。飯村が生涯の信条とした、たった四文字のこの言葉を、私たちは100年近く大切に受け継いできました。私たちの日常は、目に見えない多くの人たちとの関係性、「恩」によって支えられている、そのことに感謝し、他者や社会のために役立つ生き方をすべきだ、というのがその考え方です。
世界情勢が覇権主義、排他主義の傾向を強める一方、SDGsが提唱する「誰ひとり置き去りにしない持続可能な社会」の実現が求められています。そのためには、世界を単一の秩序でくくるのではなく、互いの差異に注目するまなざしが必要です。多様性を尊重し、異なる価値観を認め合う、その第一歩には他者理解が欠かせません。「報恩」も「感謝」もそのベクトルは他者へと向かいます。他者に支えられて生きる自分に気づくとき、はじめて人は自分の役割や使命に思いを致し、生涯をかけるに足る一事と出会うのだと思います。「報恩感謝」の教えは、100年の時を経てなお、私たちの進むべき道を照らし続けています。
21世紀も4分の1が過ぎようとする現在、人工知能の飛躍的な進歩、ポリクライシスと呼ばれる複合的な世界危機などかつてない変化が、子どもたちの未来を見えにくくしています。不確かな未来を生きる子どもたちに、私たちが手渡せるものは何でしょうか。
茨城高等学校・中学校は、それを本物の学びの力であると考えています。それは、大量の知識を暗記する能力でも、定められた正解に素早くたどり着く能力でもありません。答えのない問いを前にして、思考停止に陥らず、自己更新を続け、新たな価値を生み出す力です。
その力を育てることができるのは、大学ではありません。子どもたちが生涯の中でもっとも大きな変化を経験する中学、高校時代にこそ、学ぶ力は最大の成長を遂げるのです。
本校は、長い歴史と伝統を有する一方、常に革新へのたゆまぬ挑戦を続けてまいりました。2024年、本校は、医学コース、国際教養コースに続く第3の教育改革の矢を放ちます。学力向上にきわめて高い実効性が証明されている、AI教材atama+の導入です。全国で予備学校、塾を展開する駿台とパートナーシップを結び、生徒たちに質の高い最先端の学習を提供してまいります。
中学、高校時代は、長い人生の中で見ればほんのわずかな期間に過ぎません。しかし、それは人生の土台を築くかけがえのない時間です。茨城高等学校・中学校には、生徒を信頼し、その成長に寄り添う風土があります。生徒たちが互いに支え合い、高めあう環境があります。生徒たち一人一人にとって、本校で過ごす日々が、未来に夢を馳せ豊かな成長を遂げる時間となることを願ってやみません。
茨城高等学校・中学校
校長 梶 克治