商品説明
現代宗教文化研究叢書 6
国家と上座仏教 ― タイの政教関係
矢野秀武 著
定価:6,380円(本体価格5,800円+税)
判型:A5 上製
頁数:418
ISBN:978-4-8329-6830-1
Cコード:C3014
発行日:2017-02-28
●本書の特徴
タイでは、なぜ宗教と国家が密接な関係を作り上げているのか、それがなぜ世俗重視の近代国家として大きな問題にならないのか。タイにおける上座仏教について、国家の道徳教育と一体化した仏教の諸実践に注目し、行政の宗教関連事業という面から論じる。
●目次
序 章
1 本書の問いと対象
2 問いの始まり
3 本書の視点と方法
4 本書の調査方法とその問題点
5 本書の構成
〔第1部 タイの政教関係〕
第1章 タイ政教関係論の諸相
1 はじめに
2 タイの宗教概説
3 タイ政教関係論の視点
4 石井米雄のタイ政教関係論に見る統治の仏教道徳の位置づけ
5 まとめ
第2章 国教・公認教論の問題点
1 はじめに
2 国家体制理念におけるタイの政教関係
3 タイ国憲法における宗教関連条項
4 行政組織と宗教行政事業
5 仏教の国教明記運動
6 国教明記についての見解
7 国教明記論争から見えてくるもの
8 国教・国家仏教・公認教論・協同型政教関係
第3章 二重の政教関係――国家と宗教,国王と宗教
1 国家の公定宗教と3つの型(公設型・公認型・公営型)
2 公営型の公定宗教の特徴
3 公定化の背景
4 公定宗教制と権威主義的統治体制
〔第2部 タイの行政と宗教〕
第4章 宗教関連行政の広がり
1 はじめに
2 宗教関連事業に係る国家行政機関とその活動
3 まとめ
第5章 国家仏教庁および文化省宗務局の事業と予算配分
1 はじめに
2 宗教行政基礎資料の概要
3 資料解説
4 全体的な特徴
〔第3部 タイの宗教教育〕
第6章 教育省のプロジェクト――仏教式学校
1 はじめに
2 仏教式学校プロジェクトへの注目理由
3 仏教式学校の活動内容
4 プロジェクトの成り立ち
5 仏教式学校プロジェクトの周辺
6 まとめ
第7章 外郭団体の宗教教育活動――善徳プロジェクト
1 善徳プロジェクト
2 ソーシャル・キャピタル形成の思想
3 まとめ
第8章 文化省宗務局のプロジェクト――道徳教育僧侶の学校派遣
1 はじめに
2 「道徳教育僧侶の学校派遣プロジェクト」の概要
3 活動内容
4 同種のプロジェクトと道徳衰退言説
5 学生向け仏教教育プロジェクト展開の背景
6 まとめ
第9章 宗教科目教育制度と仏教の教科書
1 はじめに
2 タイの教育制度
3 公教育における宗教教育
4 宗教科(仏教)教科書――近代初頭から1980年代初頭まで
5 2001年基礎教育カリキュラムと教科書
6 宗教科(仏教)教科書・中学3年(2001年基礎教育カリキュラム版)
7 宗教科(仏教)教科書・中学3年(2001年基礎教育カリキュラム版)の特徴
第10章 権威主義的統治と仏教教育
1 はじめに
2 「王とは」から「王制による統治とは」へ
3 近現代タイにおける王制の変容過程
4 ハイパー・ロイヤリズムと仏教道徳の変容
5 仏教道徳と王制・民主主義
〔第4部 タイの宗教研究〕
第11章 タイにおける宗教研究と「宗教」
1 はじめに
2 宗教学関連の研究における制度化過程
3 まとめ――宗教学関連研究の制度化とその特質
第12章 宗教概念とタイの比較宗教
1 はじめに
2 タイの宗教学関連テキストにおける「宗教」概念
3 なぜ「比較宗教」が行われたのか
4 なぜ「宗教学」が不在なのか
5 タイ国家の体制理念に組み込まれた宗教(サーサナー)
6 まとめ
第13章 タイ人研究者による政教関係論
1 はじめに
2 社会秩序の基盤となる仏教という視点
3 国家がサンガ管理に関わる理由
4 タイ的な政教分離の議論1――国家によるサンガの政治的利用
5 タイ的な政教分離の議論2――サンガ改革のジレンマ
6 仏教市民社会論とその他の見解
7 まとめ
終章
参考文献
あとがき
索引
●著者紹介
矢野 秀武(ヤノヒデタケ)
生年 1966年
現在 駒澤大学総合教育研究部教授
専門 宗教学、タイ上座仏教研究、宗教社会学
〈主著〉
『現代タイにおける仏教運動――タンマガーイ式瞑想とタイ社会の変容』東信堂、2006年(単著).
『アジアの社会参加仏教――政教関係の視座から』北海道大学出版会、2015年(櫻井義秀・外川昌彦・矢野秀武共編著).
(本書刊行時の情報です)