商品説明
現代宗教文化研究叢書 2
カルト問題と公共性 ― 裁判・メディア・宗教研究はどう論じたか
櫻井義秀 著
定価:5,060円(本体価格4,600円+税)
判型:A5 上製
頁数:368
ISBN:978-4-8329-6798-4
Cコード:C3014
発行日:2014-02-10
●本書の特徴
カルト問題が認識される過程のなかで、精神の自由や人権をどう考えるか、宗教理念と社会秩序の関係をどう調整するかといった高度に公共的な問題が問い直されている。著者の実証的研究『統一教会』と対をなす理論的研究の成果。
●目次
はじめに
カルト問題とは何か
信教の自由とカルト批判
本書の構成
〔第1部 カルト論の構図〕
第1章 カルト論の射程
1 終わらないカルト問題
2 カルトとは何か
3 カルト論の諸相
4 カルト論の現代的射程
第2章 カルト問題におけるフレーミングとナラティブ
1 宗教調査の困難
2 入信の理論と社会的フレーミング
3 ナラティブの構築性と社会的争点
4 脱会カウンセリングと信教の自由
5 カルト問題研究者の当事者性
第3章 カルトと宗教のあいだ
1 宗教と倫理
2 カルト問題の社会的構築
3 教会のカルト化
4 教勢拡大のための布教体制と信仰のあり方
5 カルトと宗教を分かつもの
〔第2部 カルト問題の構築〕
第4章 マスメディアによるカルト、マインド・コントロール概念の構築
1 マスメディアとカルト問題
2 カルトの用例
3 マインド・コントロールの用例
4 まとめ
第5章 麻原判決とオウム真理教報道
1 オウム真理教事件の報道
2 東京地裁での麻原判決および弁護側書面の特徴と論点
3 麻原判決報道の特徴
4 報道の嵐の後に
〔第3部 マインド・コントロール論争と裁判〕
第6章 「宗教被害」と人権・自己決定
1 カルト問題と人権
2 マインド・コントロール論争における宗教的自己決定
3 霊感商法被害から違法伝道訴訟へ
4 札幌地裁判決
5 違法伝道訴訟の展開
6 宗教と公共性
第7章 強制的説得と不法行為責任
1 違法伝道批判とマインド・コントロール論
2 説得と統制の詐欺的・間接的技術に関する専門調査部会報告
3 法廷助言書をどう読むか
4 臨床・実践の方法と認識の方法
〔第4部 宗教研究がひらく公共性〕
第8章 宗教社会学とカルト問題研究
1 宗教社会学の研究動向
2 真如苑調査におけるナラティブ研究の進展
3 統一教会調査におけるトライアンギュレーション
4 研究の実践性
第9章 カルト問題と公共性
1 本書第八章までの要約
2 現代社会における公共性
3 社会秩序と宗教
4 カルト批判運動が参画する公共空間
引用文献
あとがき
初出一覧
オウム真理教報道資料(2004年)
1 麻原判決関連の新聞(全国紙)特集記事
2 麻原判決関連の雑誌記事一覧
索引
●著者紹介
櫻井 義秀(サクライ ヨシヒデ)
1961年 山形県生まれ
1987年 北海道大学大学院文学研究科博士課程中退
1987年 北星学園女子短期大学講師
1992年 北海道大学文学部講師
2004年より 北海道大学大学院文学研究科教授
〈単著・共著〕
『東北タイの開発と文化再編』北海道大学図書刊行会,2005年.
『「カルト」を問い直す』中央公論新社,2006年.
『東北タイの開発僧――宗教と社会貢献』梓出版社,2008年.
『霊と金――スピリチュアル・ビジネスの構造』新潮社,2009年.
『死者の結婚――祖先崇拝とシャーマニズム』北海道大学出版会,2010年.
『統一教会――日本宣教の戦略と韓日祝福』(中西尋子と共著)北海道大学出版会,2010年.
〈主要編著〉
『よくわかる宗教社会学』(三木英と共編)ミネルヴァ書房,2007年.
『カルトとスピリチュアリティ――現代日本における「救い」と「癒し」のゆくえ』ミネルヴァ書房,2009年.
『社会貢献する宗教』(稲場圭信と共編)世界思想社,2009年.
『現代タイの社会的排除――教育,医療,社会参加の機会を求めて』(道信良子と共編)梓出版社,2010年.
『越境する日韓宗教文化――韓国の日系宗教 日本の韓流キリスト教』(李元範と共編)北海道大学出版会,2011年
『日本に生きる移民たちの宗教生活――ニューカマーのもたらす宗教多元化』(三木英と共編)ミネルヴァ書房,2012年.
『大学のカルト対策』(大畑昇と共編)北海道大学出版会,2012年.
『アジアの宗教とソーシャル・キャピタル』(濱田陽と共編)明石書店,2012年.
『タイ上座仏教と社会的包摂――ソーシャル・キャピタルとしての宗教』明石書店,2013年.
(本書刊行時の情報です)