商品説明
北海道開拓者精神とキリスト教
白井暢明 著
定価:7,700円(本体価格7,000円+税)
判型:A5 上製
頁数:354
ISBN:978-4-8329-6733-5
Cコード:C3016
発行日:2010-03-25
●本書の特徴
明治維新以降、国策により北海道に多数の開拓移住者が入殖した。その際、住み慣れた郷里を離れて全く未知の世界、しかも厳しい気候を持つ北辺の地に身を委ねる決意をすることには大きな精神的なエネルギー、即ち、ある種の「開拓者精神」が必要であったと考えられる。
本書成立の基本的動機は、団体移住者たちの北海道移住の動機や目的、そして苦難を耐え忍び、克服して開拓の実を挙げた人々を支えた精神的基盤がなんであったのか、また、このような精神と実際の開拓実績、コミュニティ形成の成果との関係がどのようなものであったのかという歴史的な関心である。
本書が考察の対象としたのは、なんらかのキリスト教的な意図や動機を持って明治期に北海道に集団移住して未開地の開拓に従事し、現在の自治体の基礎を築いた全ての団体、「赤心社」(明治13年、神戸から現浦河町)、「インマヌエル団体」(明治25年、京都、埼玉から現今金町)、「聖園農場」(明治25年、高知から現浦臼町)、「北光社」(明治31年、高知から現北見市)、「北海道同志教育会」(明治31年)、新潟、山形から現遠軽町)である。
本書の主題は、これらの団体の移住動機や移住の経緯、そして移住後のコミュニティ形成のありようを、研究過程で新たに発見、解読した古文書を含めた一次史料の精査と、より正確な史実の再構成に基いて精神史的、宗教社会学的観点から考察、解明することである。
●目次
凡例
序章 主題設定と方法
第一節 対象と方法
第二節 北海道開拓者精神と宗教との一般的関係
第三節 「開拓者精神」の意味
第四節 クラーク精神および札幌独立教会(札幌バンド)との関連
第五節 教派性および上部組織(親教会、ミッション)との関係
第六節 明治期の政府の北海道開拓・殖民政策との関連
第七節 史料について――自治体地方史との関連
第一章 浦河・赤心社――その成果とピューリタニズム
はじめに
第一節 赤心社設立の経緯
第二節 赤心社事業の概要と特色
第三節 赤心社の成功・存続の要因とキリスト教
第四節 赤心社におけるピューリタン的エートスと資本主義の精神
結び
第二章 今金・インマヌエル移住団体――異教派間の連帯と確執
はじめに
第一節 移住開拓の経緯
第二節 移住の動機
第三節 信仰上の葛藤と教会分裂
第四節 コミュニティ形成と地域発展への貢献
結び
第三章 天沼家文書と今金・インマヌエル団体北海道移住の経緯――一次史料の解読による通説の修正・補完の試み
第一節 問題提起
第二節 移住動機
第三節 移住団体組織の立ち上げ時期とその実態
第四節 第一回北海道探検・調査旅行
第五節 第二回北海道探検・調査旅行
第六節 八月帰省の理由、志方之善との出会い、「手続書」、「懇願書」の提出
第七節 志方之善宅訪問と犬養毅との開墾契約
第八節 山崎家移住と集落の形成
第九節 聖公会グループの団体的特性
結び
補遺
解読文一 天沼恒三郎「吾か生立ちの記憶」
解読文二 檜山外五郡役所大場第一課長より太櫓郡太櫓村外三ケ村戸長中島榮八宛文書
解読文三 北海道團結移住開懇志願ニ付其準備手続書
解読文四 北海道移住開墾事業企望ニ付懇願書
解読文五 團体成業規約書
第四章 浦臼・聖園農場(高知殖民会)――武市安哉のカリスマ性
はじめに
第一節 聖園農場創立の経緯
第二節 聖園農場創立の動機
第三節 聖園農場の特色と開拓者精神史的意義
結び
第五章 北見・北光社――坂本直寛の開拓思想との関連を中心に
はじめに
第一節 「北光社」設立と北海道移住の経緯
第二節 坂本直寛の拓殖思想
第三節 キリスト教的理想郷建設の挫折とその原因
第六章 遠軽・北海道同志教育会(学田農場)――遠軽教会との関係とその特質
はじめに
第一節 北海道同志教育会設立の経緯
第二節 遠軽教会設立の経緯と学田事業との関係
結び
略年表
あとがき
人名索引
●著者紹介
白井 暢明(シライ ノブアキ)
1943年6月19日、室蘭市生まれ
北海道大学大学院文学研究科博士課程中途退学
北海道大学文学部助手、旭川工業高等専門学校教授などを歴任し、
名寄市立大学教授、旭川工業高等専門学校名誉教授
〈著書〉
『未来を拓く北海道論』(ぎょうせい 1996).
など
〈主論文〉
「天沼家所蔵文書と今金・インマヌエル団体北海道移住の経緯」『旭川工業高等専門学校研究報文』第43号、2006.
「今金・インマヌエル移住団体におけるキリスト教的開拓者精神」『基督教學(北海道基督学会)』第39号、2004.
「「北光社」農場・坂本直寛のキリスト教的開拓者精神史におけるその特色と限界」『旭川工業高等専門学校研究報文』第37号、2000.
「マックス・ウェーバー「宗教社会学」における“カリスマ”と“非合理性”」『宗教研究』No.212、1972.
など
(本書刊行時の情報です)