水素ガス吸入療法
実施診療科 | 救急科 |
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承認年月日 | 2016年12月1日 |
適応症 | 心停止後症候群(院外における心停止後に院外又は救急外来において自己心拍が再開し、かつ、心原性心停止が推定されるものに限る。) |
主な内容
先進性
水素吸入療法は水素ガスを酸素とともに吸っていただく画期的な治療法です。これは全世界で初めての治療法です。 これまで、水素ガスは様々な病気や病状に対して効果のあることが動物実験で示されてきました。しかし、ヒトに対して、本当に効果があるか否か、これまで全く試されてきませんでした。また、水素ガスは酸素ガスと反応して爆発する危険があることは広く知られていますが、その危険のない範囲で用いることができるようになりました。 今回の水素吸入療法が確立されれば、様々な場面で水素吸入を行うことができるようになります。水素吸入自体には、大掛かりな装置は不要ですので、簡便で効果的な治療が行うことができます。大きな病院以外でも、大きな医療機器がなくても施行可能な画期的な治療なのです。
概要
今回、水素吸入療法を行うのは、心停止後症候群と言われる状態を対象にしています。心停止後症候群とは、病院の外で、突然に心停止(心室細動と呼ばれるような不整脈が突然発生することによっておこります)になり、救急蘇生術によって心臓の鼓動が再開したけれども、脳をはじめとした臓器の機能が損なわれた状態です。心停止後症候群になると、一部は、完全に回復して後遺症をほとんど残さずに社会復帰を果たされますが、高度の障害が残って、寝たきりの状態や、いわゆる植物状態のような状態になられることがあります。これに対して、従来、低体温療法(現在は体温管理療法と呼んでいます)と呼ばれる集中治療を行って、脳のダメージを最小限に食い止める努力を行ってきましたが、それにも限界がありました。 今回の水素吸入療法は、この体温管理療法に加えて、水素ガスを酸素に加えて吸入していただくものです。爆発の危険のない、2%水素を18時間だけ吸っていただきます。心停止後症候群の社会復帰がさらに増えることを期待しています。 なお、水素吸入療法は、まだ確立された治療法ではありません。この先進医療技術は、水素吸入療法が有効か否かを確かめるために行われます。有効か否かを確かめるには、水素が入っている酸素と窒素を吸っていただく場合と水素の入っていない酸素と窒素を吸っていただく場合とで比較を行う必要があります。さらに、科学的に最も精度良く検証するために二重盲化と言って、この吸入を行う医師も吸入する患者さんも、水素が入っているか否かがわからない状態にします。このようにして、本当に水素吸入療法が治療法として優れているのかを確かめることになります。
効果
水素ガスは体内で様々な有害物質を無毒化できるのではないかと期待されています。今回の心停止後症候群では、主に脳の機能に焦点を当てて、心停止になった時の脳の酸素不足のダメージを水素によって軽減しようとするものです。これによって、心停止後症候群から回復して社会復帰を果たす方が増えることを期待しています。 また、水素吸入療法は世界初の治療法です。この技術が確立されれば、心停止後症候群以外の病状にも応用が容易になります。水素吸入自体には、大掛かりな装置は不要ですので、簡便に効果的な治療が行えるようになります。まさに画期的な治療です。