この記事では、不動産売却にかかる税金を支払うタイミングを解説します。
一戸建てやマンション、土地などの不動産を売却した時は、さまざまな種類の税金が発生します。また、税金の種類によって支払うタイミングや方法が大きく異なるので、事前にしっかりと押さえておかなければなりません。
ここでは、不動産を売却した時の税金について、節税方法や相談先も分かりやすく解説します。 売却は成功したものの、税金をいつ払うのか分からないという人は、ぜひ最後までお読みください。
この記事で分かること
- 不動産売却にかかる税金を支払うタイミング
- 不動産売却にかかる税金の節税方法
- 税金について相談する場合の窓口
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もくじ
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不動産売却にかかる税金はいつ払う?
不動産売却の際に課税される可能性がある税金は、主に以下4種類が挙げられます。
税金 | 支払うタイミング | 納付方法 |
印紙税 | 売買契約締結の日 | ・売買契約書に収入印紙を貼付し消印する |
登録免許税 | 抵当権抹消登記時 ※所有権移転登記日もしくはそれ以前 |
・司法書士へ抵当権抹消依頼する ※個人が法務局にて抵当権抹消登記することも可能 |
譲渡所得税 | 翌年の確定申告受付期間 ※2/16~3/15 |
・翌年の確定申告で譲渡所得を申告して支払う |
住民税 | 翌年6月以降の住民税支払い時 | ・給与所得者は翌年の6月以降に給与から徴収 ・普通徴収の場合は6月・8月・10月・翌年1月に分割で支払う ※一括で支払うことも可能 |
上記はすべてが必ず課税されるというわけではありません。それぞれの支払いタイミングや、方法について詳しく紹介していきます。
印紙税を支払うタイミング
印紙税を支払うタイミングは、不動産売買契約の締結時です。
税額は契約価格によって異なりますが、税額分の収入印紙を契約書に貼付し印鑑などで消印することで納付となります。
仮に、収入印紙を貼らなかったり、消印を忘れたりすると過怠税を課されることがあるので注意しましょう。
不動産会社が用意している場合もありますが、個人でも郵便局や法務局で購入できます。
2014年4月1日から2024年3月31日までの間に作成される契約書は、印紙税の軽減措置の対象になります。契約金額に対する通常の印紙税と、軽減税率による印紙税は以下の通りです。
契約金額 | 通常の税率 | 軽減税率 |
10万円を超え50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え100万円以下のもの | 1,000円 | 500円 |
100万円を超え500万円以下のもの | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え1千万円以下のもの | 1万円 | 5,000円 |
1千万円を超え5千万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5千万円を超え1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
登録免許税を支払うタイミング
登録免許税を支払うタイミングは所有権移転登記の日、もしくはそれ以前のタイミングです。
登録免許税とは、不動産登記する際にかかる税金であり、所有権移転登記の費用は売買契約書にも定められています。これは、通常不動産の慣行により買主が負担します。
売主が支払うとすれば、抵当権抹消や住所変更登記のための登録免許税になります。したがって、登記内容に変更がなく抵当権が設定されていない場合は発生しません。すでに抵当権が抹消済みの場合は、その際に支払っていることになります。
不動産売却に伴い抵当権を抹消する場合は、所有権移転登記の際に司法書士へ依頼するケースが多く、これは住所変更登記も同様です。
住所変更登記とは、その売却する不動産の登記名義人(所有者)の住所に変更があった場合に、住所変更する登記を指します。つまり、不動産購入時と売却時の登記名義人の住所が異なる場合には変更登記が必要です。また、苗字などが変わった際も同じように変更登記が必要になります。
以前は、住所や氏名が変更になった場合でも、所有権移転登記まで変更しないケースが多くありました。しかし、2021年4月に成立した不動産登記法の改正により、2026年までに変更登記の申請が義務化されています。
登録免許税は、1つの不動産に対して1,000円です。
戸建てであれば土地に対して1,000円、建物に対して1,000円かかり、合計すると2,000円です。司法書士へ依頼する場合は、10,000〜20,000円の報酬が別途必要になります。
※参考:登記されている住所・氏名に変更があった方へ (住所変更登記・氏名変更登記の申請手続のご案内)|法務局
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譲渡所得税を支払うタイミング
譲渡所得税を支払うタイミングは、不動産を売却した翌年の確定申告時です。暦によって多少異なる年もありますが、一般的な確定申告の受付期間は2月16日から3月15日までの期間です。
譲渡所得税は不動産を売却して利益が発生したときにかかる税金であり、原則として売却によって所得が発生していないときはかかりません。
また、所得が発生していても3,000万円の特別控除などを利用できる場合は、所得額を圧縮できるため、税金はかからない可能性があります。
一般的に譲渡所得と呼ばれているのは、譲渡所得に対して課税される所得税と住民税の合計額です。所得税に関しては翌年に確定申告を行ない、その期限内に納付します。
収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額=課税譲渡所得
実際の税額は、上記の計算式で算出した課税譲渡所得に対し、不動産の所有期間に応じて税率をかけて求められます。
譲渡した年における、1月1日現在の所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」となり、税率は合計で15.315%、5年以下は「短期譲渡所得」となり30.63%です。
所有期間 | 所得税 | 復興特別所得税 | 合計 | |
長期譲渡所得 | 譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年を超える | 15% | 基準所得税額の2.1%(=0.315%) | 15.315% |
短期譲渡所得 | 譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年以下 | 30% | 基準所得税額の2.1%(=0.63%) | 30.63% |
※参考1:長期譲渡所得の税額の計算|国税庁
※参考2:短期譲渡所得の税額の計算|国税庁
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住民税を支払うタイミング
不動産所得に対する住民税を支払うタイミングは、一般的に翌年の6月以降となります。
特別徴収義務者である給与所得者(会社員など)は、6月以降の給与から徴収(天引き)されます。個人事業主など普通徴収の場合は、6月に納付書が届くので年4回(6月・8月・10月・翌年1月)に分けて支払います。一括で支払うと多少割引になる自治体もあるので、状況に応じて選択しましょう。
なお、住民税の納付先は都道府県及び市区町村です。所得税と同じように、売却した不動産の所有期間によって住民税の税率は異なります。前述した計算式で算出した課税譲渡所得に、所有期間に応じた税率をかけて算出します。
所有期間 | 住民税 | |
長期譲渡所得 | 譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年を超える | 5% |
短期譲渡所得 | 譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年以下 | 9% |
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不動産売却にかかる税金の節税方法
不動産売却にかかる税金は、特例や控除などを利用することで節税できる場合があります。
- 購入当時の金額が分かる資料を用意する
- 適用可能な控除や特例がないか調べる
- ふるさと納税を利用する
- 売買契約書を1通に減らして印紙税を節約する
ここでは、上記4点の節税方法を解説します。
購入当時の金額が分かる資料を用意する
譲渡所得税は、不動産の売却価格から購入したときの金額(取得費)を差し引いて算出します。売買契約書や領収書などが確定申告のときに証拠として必要になるので、売却を検討する場合は、事前に各種書類を用意しておきましょう。
購入時の書類がなくても確定申告はできますが、取得費は売買価格の5%(概算法)となってしまいます。たとえば、3,000万円の不動産の取得費は150万円になるので、購入当時の資料は探しておいた方が良いでしょう。
収入金額-( 取得費+譲渡費用)-特別控除額=課税譲渡所得
また、譲渡にかかった費用も経費として譲渡所得から差し引けるので、経費の根拠となる書類もあわせて探しておきましょう。なお、譲渡費用となるのは以下の通りです。
- 不動産を売るために不動産会社へ支払った仲介手数料
- 売却時に売買契約書に貼った印紙代
- 土地として売却するために建物を壊した場合は、その解体費用とその建物の損失額
- 貸家だった場合で、賃借人に明け渡してもらうために支払った立ち退き料
また、取得費も売買価格から差し引くことができ、購入金額以外の主な取得費として以下のようなものが挙げられます。
- 不動産を購入した時に納めた登録免許税・不動産取得税・印紙税
- 埋め立てや地ならしなどの土地の造成費
- 土地の取得に際して支払った土地の測量費
- 建物付きの土地を購入したときの建物の解体費用(おおむね購入から1年以内に解体)
※参考1:譲渡費用となるもの|国税庁
※参考2:取得費となるもの|国税庁
適用可能な控除や特例がないか調べる
不動産を売却した際に、控除や特例の適用条件を確認しましょう。また、いずれも自動的には適用されないため、翌年に確定申告を行う必要が挙げられます。
不動産売却時に利用できる特例は、主に以下の通りです。
不動産売却時に利用できる特例 | 内容 |
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例 | ・マイホームを売ったときに所有期間に関係なく譲渡所得から最大3,000万円まで控除可能 |
特定の居住用財産の買換えの特例 | ・マイホームを買い換えた場合、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べられる ・非課税ではなく先送りの扱いとなる |
被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例 | ・相続などにより取得した空き家を売却した場合に適用される ・一定の要件を満たせば最大3,000万円まで譲渡所得金額から控除できる |
マイホームを売ったときの軽減税率の特例 | ・不動産の所有期間が10年超の場合で一定の要件を満たす場合に適用される ・6,000万円以下は長期譲渡所得の税額を通常よりも低い税率で計算できる |
※参考1:マイホームを売ったときの特例|国税庁
※参考2:特定のマイホームを買い換えたときの特例|国税庁
※参考3:被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁
※参考4:マイホームを売ったときの軽減税率の特例|国税庁
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ふるさと納税を利用する
ふるさと納税とは、自分の好きな自治体へ寄付することによって、2,000円を超える部分は所得税の還付や住民税の控除が受けられる制度です。
その上、地域によってはお礼として特産品を受取ることができます。2,000円で返礼品がもらえるのであれば多く寄付したくなりますが、寄付できる金額には上限があり、その年の所得によって決まります。
不動産を売却して利益(譲渡所得)が発生した場合は、所得が増えるため上限額が高くなります。一方で、利益が発生していない場合は、上限額には影響しません。
ふるさと納税は、不動産を売却した年の12月31までに寄付する必要があります。限度額は、シミュレーションできるサイトなどを利用して、あらかじめ上限額を確認しましょう。
※参考:寄附金控除(ふるさと納税など)を受けられる方へ|国税庁
売買契約書を1通に減らして印紙税を節約する方法も
あまりおすすめできませんが、通常2通作成する売買契約書を1通のみ作成して、印紙税を節約する方法もあります。
不動産売買契約書は課税文書であり、売買契約締結時には印紙税を納める必要があります。売買価格によって印紙税も異なり、5,000万円を超える場合は軽減税率が適用されても3万円です。
1通のみの場合、一方は契約書の原本、もう一方はコピーを所持することになるでしょう。当事者に対して、人数分の契約書を作成しなければならないなどのルールはありませんが、コピーだけでは万が一のトラブルを招くリスクがあります。
したがって、売買契約書はなるべく人数分用意することが望ましいといえます。
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不動産売却の税金に関する相談先
ここでは、不動産売却の税金について相談できる窓口をいくつか紹介します。
不動産売却にかかる税金や特例には細かい要件などがあり、自分の判断が正しいのか不安になる人も多いでしょう。
- 管轄の税務署
- 役所が行なっている無料税務相談会
- 不動産会社の顧問税理士
- ファイナンシャルプランナーなど
上記4点について見ていきましょう。
管轄の税務署
確定申告の有無にかかわらず、多くの場合、管轄する税務署では税金の相談を無料で受け付けています。
また、電話だけでなく対面で相談できる時間を設けている場合もあります。まずは、税務署のホームページなどで確認してみましょう。
確定申告の前や期間中は混雑が予想されるため、なるべく早めに相談することをおすすめします。
※参考:国税局・税務署を調べる|国税庁
役所が行なっている無料税務相談会
お住いの自治体の役所で税金の無料相談会を開催している場合があります。多くの場合、地域の税理士が対応しています。
通常予約が必要になるので、役所へ無料相談会の有無や予約状況も相談してみましょう。
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不動産会社の顧問税理士
不動産会社によっては、顧問税理士による税務相談会を行なっているケースがあります。
また経験豊富な不動産会社であれば、一般的な相談はできることがほとんどです。不動産売却に伴う税金に関連して不安を感じた場合は、まずは不動産会社へ相談してみ流のも選択肢の一つになるでしょう。
ファイナンシャルプランナー
お金の専門家である、ファイナンシャルプランナーに相談する方法もあります。
金融機関に所属するファイナンシャルプランナーは無料の場合がありますが、独立系のファイナンシャルプランナーに相談する場合は有料になることが多いでしょう。
ファイナンシャルプランナーへの相談は税金だけではなく、ライフプランについても相談できるというメリットがあります。
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不動産売却の税金に関するよくある質問
最後に、不動産売却の税金に関するよくある質問を紹介します。
- 相続した土地の売却にかかる税金は?
- マンション売却で税金はかからない?
順番に見ていきましょう。
相続した土地の売却にかかる税金は?
相続した土地を売却する場合、利益(所得)が発生すれば譲渡所得税がかかります。
被相続人が住んでいた居住用財産であれば『居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除』や『被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例』が使える可能性があります。ただし、元々更地の場合は利用できません。
譲渡所得税は所有期間に応じて税率が異なるので、購入時期を確認しましょう。譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年を超える場合は、長期譲渡所得になります。
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マンション売却で税金はかからない?
マンションを売却して利益(所得)が発生した場合は、譲渡所得税がかかります。
しかし、居住用財産であれば『居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除』が使える可能性があり、その場合は譲渡所得から3,000万円が控除されます。
また、たとえば購入時の価格が4,500万円、売却時の金額が2,500万円であればそもそも税金はかかりません。マンションは売買価格に占める土地の割合が少ないため、エリアやその時の相場によって異なるものの、3,000万円以上値上がりするのはレアなケースです。
したがって、自宅マンションの売却であれば税金はかからない可能性が高いでしょう。
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不動産売却にかかる税金はそれぞれスケジュールをしっかり把握しよう
不動産売却にかかる税金は、それぞれ支払うタイミングが異なります。
とくに、譲渡所得税は数百万円単位で支払うケースも考えられるので、不動産の売却を検討する場合は、事前に試算しておいた方が良いでしょう。不動産売却を検討する場合は、まず不動産の資産価値を正しく把握することが重要です。
また、所有期間によって税金が大きく異なる場合もあるので、まずは経験豊富な不動産会社に査定依頼することで、税金についても相談しましょう。
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記事監修
桜木 理恵(さくらぎ りえ)
私鉄系不動産会社にて売買仲介営業として約8年従事。積水ハウスリフォーム株式会社にてリフォームアドバイザー(営業)として5年従事。公益財団法人日本英語検定協会にて英語検定の普及活動(営業)として1年半従事。三井住友信託銀行にて不動産事務などを経験。22年4月からwebライターとして活動中。