不動産売却で贈与税はかかる?発生するケースや計算方法を解説 - よくわかる!不動産売却【ホームズ】

不動産売却で贈与税はかかる?発生するケースや計算方法を解説

一般的に、不動産を売却し、利益が出た場合には譲渡所得税が発生します。しかし、場合によっては贈与税が発生することもあります。

不動産売却に贈与税が課税されるのはどのようなケースなのでしょうか?

この記事では、不動産売却で贈与税が発生する具体的なケースや贈与税を抑える方法などについて解説します。

この記事で分かること

  • 不動産売却における贈与税
  • 不動産売却で贈与税が発生する3つのケース
  • 不動産売却で贈与とみなされる可能性がある3つのケース
  • 不動産売却で贈与税が課されない2つのケース
  • 不動産売却における贈与税の計算方法
  • 不動産売却で贈与税をなるべく安く抑えるポイント
  • 不動産売却の贈与税に関するよくある質問

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もくじ

そもそも不動産売却における贈与税とは

最初に、そもそも贈与税とは何かを以下の2つの観点から解説します。

  • 贈与と譲渡の違い
  • 個人と法人における贈与の違い

贈与と譲渡の違い

贈与と譲渡の違いは以下のとおりです。

  • 贈与:代金を受け取らずに権利を譲ること
  • 譲渡(売買):代金を受け取って権利を譲ること

贈与か譲渡かは、代金の授受が発生するかどうかによって決まります。

また、贈与か譲渡かによって課税される税金についても違いもあるため注意が必要です。贈与は受け取った側(受贈者)に「贈与税」が課されますが、贈与した側(贈与者)は非課税となります。

一方で、譲渡の場合は代金を支払った側(買主)は非課税ですが、代金を受け取った側(売主)に「譲渡所得税」が課されます。なお、譲渡所得税が課されるのは売却で利益が出た場合のみです。

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個人と法人における贈与の違い

不動産の贈与は個人間だけでなく個人と法人や法人間でも行われます。

しかし、贈与税はあくまでも個人間の贈与に課されることになっています。それぞれの取引で発生する税金は以下のとおりです。

贈与の形式 贈与者 受贈者
個人から個人 非課税 贈与税
個人から法人 みなし譲渡所得税 法人税
法人から個人 法人税 所得税
法人から法人 法人税 法人税

詳しくは後述しますが、個人名義の不動産を法人名義に変更する場合、個人と法人の両方で税金が課されるため注意が必要です。

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不動産売却で贈与税が発生する3つのケース

贈与税の基礎知識が理解できたところで、不動産売却で贈与税が発生する以下の3つのケースについて解説します。

  • 金銭の授受なく不動産の名義を変更したケース
  • 時価と比較して売買価格が著しく低いケース
  • 借金の免除を受けたケース

金銭の授受なく不動産の名義を変更したケース

金銭の授受なく不動産の名義を変更した場合、贈与税が課されます。

たとえば、親が所有している不動産を無償で子の名義に変更する場合などが該当します。

不動産の名義は必要書類や実印が揃っていれば金銭の授受がなくとも変更することができます。しかし、無償の譲渡が非課税で成立してしまうと、相続税対策で多くの方が生前贈与を実施することが予想されます。こうした相続税逃れを防ぐために、金銭の授受がない名義変更には贈与税が課されているのです。

なお、金銭の授受なく名義を変更した場合は、時価(相場価格)で贈与税が課されるため、受贈者は高額な税金を納める必要があります。たとえば、時価4,000万円の不動産を無償で贈与した場合、4,000万円に対して税金が課されることになります。

時価と比較して売買価格が著しく低いケース

金銭の授受が発生していれば贈与ではなく譲渡に該当します。しかし、売買価格が時価と比較して著しく低い場合は、贈与税が課されることになります。

たとえば、時価3,000万円の不動産を親から子に300万円で売却した場合などが該当します。このように著しく時価よりも低い売買価格での譲渡が認められてしまうと、やはり相続税逃れに利用されることが予想されるからです。

そのため、譲渡の場合であっても売買価格が著しく低い場合は、相場価格で取引されたとみなされて贈与税が課される(みなし贈与税)ので注意しましょう。

上記の例の場合、時価3,000万円に対して売買価格が300万円であるため、差額の2,700万円に対して贈与税が課されます。

なお、売買価格が著しく低いと判断するのは税務署であり、明確な基準は定められていません。しかし、売買価格が時価の80%を下回る場合は、みなし贈与と判断される傾向にあると言われています。

借金の免除を受けたケース

不動産の譲渡で借金の免除を受けた場合も、贈与税が課される可能性があるため注意しましょう。

たとえば、借金の額と不動産の時価がかけ離れている場合です。先述した「時価と比較して売買価格が著しく低いケース」と同様に、300万円の借金を返済するために3,000万円の不動産を譲渡するといった場合、2,700万円の差額が生じます。

「借金の免除」という建前であっても、みなし贈与と判断される可能性があるので注意が必要です。

不動産売却で贈与とみなされる可能性がある3つのケース

不動産売却では譲渡の場合でも贈与とみなされる「みなし贈与」という制度があります。

ここでは、みなし贈与と判断される可能性が高い以下の3つの取引について解説します。

  • 親族間取引
  • 関連会社間取引
  • 代表者と法人間取引

親族間取引

親族間取引とは親子や兄弟、親戚同士での取引を指します。第三者との取引と比べ、親族間取引は価格の調整をしやすい点が特徴です。

たとえば、本来4,000万円する不動産であっても、親子間であれば金額調整などのコミュニケーションが取りやすいケースが多いと考えられるため、10万円で売るといったこともしやすいと考えられます。

こうした取引は「時価と比較して売買価格が著しく低いケース」に該当し、贈与税が課されます。そのため、親族間取引は税務署からチェックされやすいと考えておいた方が良いでしょう。

関連会社間取引

関連会社間取引とは、親会社と子会社や、グループ会社との取引を指します。

関連会社間取引は法人における親族間取引のようなもので、価格調整もしやすいため税務署からマークされていると考えましょう。

法人間の取引において贈与税は課されませんが、法人税が課されます。

  • 売却した法人:時価で譲渡したとして法人税が課される
  • 購入した法人:財産を時価で買ったことになり受贈益に法人税が課される

関連会社間の取引では価格を安く抑えることで、売主も買主も税金を抑えられます。しかし、時価より明らかに低い価格の場合はみなし贈与と判断されるため注意しましょう。

代表者と法人間取引

代表者と法人間取引とは、法人の代表(社長)が個人名義で所有している不動産を自分の法人名義に変更する場合や、その逆の取引を指します。

大企業ではあまり見かけませんが、中小企業や一人社長の会社であれば散見される取引です。

法人を設立する場合、社長個人の資産と法人の資産は明確に分けられるため、資産の移動は必要な手続きを踏まなければいけません。

しかし、自分と自分の会社の取引であり、価格などを決定するのは本人です。自由な価格設定ができる分、税務署から厳しくチェックされると考えた方が良いでしょう。

不動産売却で贈与税が課されない2つのケース

前章までで贈与税が課されるケースを解説しましたが、不動産売却では贈与税が課されない取引もあることを覚えておきましょう。具体的には以下の2つです。

  • 離婚時の財産分与
  • 時価が110万円以下の不動産贈与

離婚時の財産分与

離婚による財産分与で不動産を贈与する際には、原則として贈与税は課されません。

離婚による財産分与は夫婦間の財産関係の清算や離婚後の生活保障といった意味合いがあるためです。

しかし、贈与税や相続税を不当に免れるための離婚である場合や、財産分与の贈与としては金額が過大な場合は贈与税が課されます。

時価が110万円以下の不動産贈与

時価が110万円以下の不動産を贈与する際には、贈与税がかかりません。贈与税には基礎控除という仕組みがあり、年間110万円までであれば非課税で贈与できます。

しかし、1年間で110万円以下の不動産を複数贈与して、合計金額が110万円を超えた場合は、110万円を超えた部分に対して贈与税が課されます。

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不動産売却における贈与税の計算方法を事例で解説

不動産売却で贈与税が課されるケース、課されないケースが分かったところで、実際の税金の計算方法についても見ていきましょう。

  • 暦年課税
  • 相続時精算課税

上記2点における、計算方法の違いを解説します。

暦年課税

暦年課税とは、1月1日〜12月31日までに受け取った財産の合計額に贈与税が課される制度で、計算式は以下のとおりです。

  • 贈与税額=(1年間の贈与額-基礎控除110万円)×税率-控除額

なお、贈与税の税率は一般贈与財産と特別贈与財産に区分されます。

  • 一般贈与財産:兄弟、夫婦、親子間の贈与で子が未成年者の場合
  • 特別贈与財産:直系尊属からの贈与で受贈者が成人(その年の1月1日の時点で18歳以上)の場合

それぞれの税率は以下のとおりです。

【一般贈与財産】

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% -
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超え 55% 400万円

【特別贈与財産】

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% -
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超え 55% 640万円

参考:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)(国税庁)

たとえば、父から子(成人)へ年間で1,000万円の不動産が贈与された場合の贈与税は以下のようになります。

  • (1,000万円-110万円)×30%-90万円=177万円

相続時精算課税

相続時精算課税とは、1月1日〜12月31日までに受け取った財産の合計額から2,500万円を控除する制度で、計算式は以下のとおりです。

  • 贈与税額=(1年間の贈与額-特別控除額2,500万円)×20%(一律)

仮に3,000万円の不動産が贈与された場合の贈与税は以下のとおりです。

  • (3,000万円-2,500万円)×20%=100万円

相続時精算課税は暦年課税よりも控除額が大きいものの、相続が発生した際には相続時精算課税を利用して受贈した財産を相続財産に加えて計算する必要があります。つまり、税金の先送りという側面があることを認識しておきましょう。

相続時精算課税は、贈与の対象不動産が将来的に値上がりするかどうかや、将来受取る相続財産の額を踏まえて判断する必要があります。

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不動産売却で贈与税をなるべく安く抑えるためのポイント

不動産売却で贈与税をなるべく安く抑えるためのポイントとしては以下が挙げられます。

  • 不動産を現金化して年間110万円以内の贈与に抑える
  • 適正価格で売却する 相続時精算課税制度を利用する 夫婦の間で居住用不動産を贈与したときの配偶者控除を利用する

不動産を現金化して年間110万円以内の贈与に抑える

贈与税を抑えるための方法として、不動産を現金化して年間110万円以内の贈与に抑えるという方法が挙げられます。

年間110万円以内の贈与であれば、基礎控除の範囲内であるため税金が課されません。長期間にわたって毎年贈与する必要がありますが、最も現実的な方法といえるでしょう。

しかし、不動産を小分けにして贈与するのは不可能なので、まずは不動産を売却して現金化する必要があります。不動産そのものを贈与したいのか、もしくは不動産と同等のお金を贈与したいのかによっても取るべき手段が異なるため、まずは目的を明確にしましょう。

適正価格で売却する

贈与税を抑えるためには、適正価格で売却しましょう。

贈与税は無償の贈与や時価と比較して売買価格が著しく低い譲渡に対して課されますが、適正価格で取引されている場合には課されません。

贈与という認識がなく贈与税を申告していなかったことが判明すると、延滞税が課されることに加え、悪質な場合は最大40%もの税金を追加で納税する必要があります。

多くの税金が課されることを避けるためにも、親族間取引や関連会社間取引であっても、最初から適正価格で売却すると良いでしょう。

相続時精算課税制度を利用する

前述の通り、相続時精算課税制度は1年間の贈与額のうち2,500万円分が非課税になる制度です。

この制度が適用されるのは、60歳以上の父母もしくは祖父母から、18歳以上の子もしくは孫に生前贈与をする場合です。

家や土地などの不動産を贈与する場合、不動産の評価額の値上がりが確実に見込まれるのであれば、この制度の適用は効果的といえるでしょう。

近隣地域の再開発などで将来不動産の評価額が値上がりしても、相続時精算課税制度を適用していれば贈与時の評価額で相続税を算出するため、課税遺産総額を大きく抑えられる可能性があります。

しかし、前述の通り、相続時精算課税制度を適用すると、相続が発生した際の相続財産にこの制度の利用で得た財産を加えて計算する必要があります。

また、一度この制度を適用すると、通常の暦年課税制度に変更できません。これらの注意点を把握し、専門家のアドバイスを受けながら制度の適用を検討しましょう。

※参考:No.4103 相続時精算課税の選択|国税庁

夫婦の間で居住用不動産を贈与したときの配偶者控除を利用する

夫婦間で居住用不動産を贈与する場合、配偶者控除の活用で税金を軽減できる可能性があります。

この控除は、婚姻期間が20年以上の夫婦に適用され、基礎控除110万円に加え最高2,000万円まで配偶者控除を受けることができます。

この制度を適用するメリットとして、贈与の対象になる居住用不動産の評価額から一定額が控除される点が挙げられます。評価額が減少した分贈与税額も軽減されるため、贈与額を安く抑えられる場合があります。

配偶者控除の要件の1つは、贈与された者が贈与で得た居住用不動産に贈与された翌年の3月15日までに実際に住んでおり、その後も引き続き住む予定であることです。

また、同じ配偶者からの贈与に対しては、一生に一度のみ配偶者控除を適用できます。

そのほかにも、配偶者控除にはさまざまな要件や手続きが必要です。控除の適用を考えている人は、専門家のアドバイスを受けながら控除の適用を検討しましょう。

※参考:No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除|国税庁

不動産売却における贈与税に関するよくある質問

最後に不動産売却の贈与税に関するよくある質問を3つ紹介します。

  • 贈与後すぐに売却するとどうなる?
  • 土地は贈与税がかかる?
  • 土地を安く売った場合も贈与税はかかる?

贈与後すぐに売却するとどうなる?

贈与後すぐに売却したとしても特に不都合はありません。

しかし、受贈した不動産を売却して利益が出た場合は譲渡所得税が課されます。譲渡所得税の計算式は以下のとおりです。

  • 課税譲渡所得金額=収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
  • 譲渡所得税=課税譲渡所得金額×税率

なお、税率は所有期間によって異なります。

  • 短期譲渡所得(所有期間5年以下):39.63%
  • 長期譲渡所得(所有期間5年超え):20.315%

受贈した不動産の場合、贈与者がその不動産を購入した時の購入代金や購入手数料を取得費に組み込むことができます。また、所有期間も引き継がれるため、売却を検討する場合は購入時の資料や所有期間を確認しておきましょう。

土地の贈与にも贈与税がかかる?

土地・建物に関わらず贈与税はかかります。

贈与税は個人単位で課税されるため、財産をくれた相手が親の場合だけでなく、配偶者であっても課税の対象です。

土地を安く売った場合も贈与税はかかる?

社会通念上著しく安い価格での売却(低額譲渡・低廉譲渡)は、贈与とみなされます。

しかし、早急に売却したいといった事情から、相場とかけ離れた価格で取引されるといったケースもよくあります。みなし贈与に明確な基準はありませんが、第三者との取引であれば贈与税がかかるケースは少ないといえるでしょう。

先述のとおり、親族間取引や関連会社間取引の場合は注意が必要です。

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不動産売却で贈与税を回避するためには時価を把握しよう

この記事では不動産売却で贈与税がかかるケースや計算方法を解説しました。

不動産売却で贈与税がかかるのは、無償で贈与した場合か時価と比較して売買価格が著しく低い場合です。

金銭の授受が発生する譲渡であっても、みなし贈与と判断される可能性があるので注意しましょう。とくに親族間取引や関連会社間取引は、取引の自由度が高いという理由から常に税務署にマークされています。

延滞税などで余計な税金を課されないようにするためにも、適正価格での取引を心がけましょう。

しかし、不動産の適正価格を算出するには専門的な知識が必要なため、価格を算出する際には不動産会社への査定依頼がおすすめです。

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また、物件情報の入力後に不動産会社の社員画像や店舗画像、強みなど、お客様の物件の査定を依頼できる不動産会社の詳細情報を一覧で見て選べるのが特徴です。不動産の売却を検討している方は、ぜひご活用ください。

記事監修

岡﨑 渉(おかざき わたる)

国立大学卒業後新卒で大手不動産仲介会社に入社。約3年間勤務した後に独立。現在はフリーランスのWebライターとして活動中。不動産営業時代は、実需・投資用の幅広い物件を扱っていた経験から、Webライターとして主に不動産・投資系の記事を扱う。さまざまなメディアにて多数の執筆実績あり。宅地建物取引士の資格を保有。