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現代風の歌舞伎/ホームメイト
芸と伝統を大切にしながら、常に時代に息づく進取性も持っている歌舞伎。まさに「温故知新」といえる、世界でも珍しい演劇形態です。
ここでは、そんな「温故知新」の現代の歌舞伎をご紹介します。
エンタメ歌舞伎の立役者・三代目市川猿之助
明治以降の新歌舞伎に続く現代の歌舞伎、その立役者は何といっても三代目市川猿之助(現・二代目市川猿翁)でしょう。名門の生まれながら独自の道を歩んだ歌舞伎界の風雲児。高尚な芸術になりつつあった歌舞伎を、再び庶民の娯楽に戻したいとアイデアを尽くしました。モットーは「3S」=「STORY、SPEED、SPECTACLE」、分かりやすく、テンポがよくて、視覚的に楽しい。明治以降に邪道扱いされた「ケレン」も積極的に取り入れ、早替りや宙乗りを導入、古典の復活にも力を注ぎました。その代表格が「義経千本桜」の狐忠信(きつねただのぶ)。
このスタイルをさらに進化させ産み出したのが、「スーパー歌舞伎」。「ヤマトタケル」「新・三国志」など大ヒット作を続出しました。台詞は現代語で、現代人に分かりやすい物語、最新の舞台機構を駆使してスペクタクル満載! ヒーローが空を駆け抜ける宙乗り、本水(本当の水)を使った立廻りなど、観客を大喜びさせました。照明や衣装も驚くほどの豪華さで斬新。現代的な見た目に歌舞伎の様式、400年の傾く精神を貫いた独自のスタイルで、新たなジャンルを確立。歌舞伎のファン層を大きく広げました。
若い歌舞伎ファンを生んだコクーン歌舞伎・平成中村座
そして現代の歌舞伎はこの人を抜いては語れない、故・十八代目中村勘三郎。現代演劇の才能・串田和美や長塚圭史を演出に迎え、渋谷のBunkamuraシアターコクーンで古典歌舞伎を上演。音楽に椎名林檎を起用するなど斬新なアイデアで、若い世代を劇場に呼び寄せました。続いて、野田秀樹とコラボレーションした新作歌舞伎「野田版 研辰の討たれ」「野田版 鼠小僧」は、チケットがとれないほど大ヒット。
そして、江戸の芝居小屋を現代に再現したのが「平成中村座」。江戸歌舞伎発祥の地・浅草、隅田川、大阪城公園に、時代劇に出てくるような芝居小屋を出現させました。代表作は「夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)」「法界坊(ほうかいぼう)」。役者との距離が近く、親しみやすく、とにかく楽しい。江戸時代にタイムスリップしたような楽しさが満喫できる、旧くて新しい歌舞伎の形を生みました。
「平成中村座」は、NYやベルリンでも公演し大評判になりました。
歌舞伎を心から愛し、古典の魅力をとことん追求、そして歌舞伎を現代に息づかせたいという願いをとことん追求した勘三郎、その熱い情熱は、次の世代へと引き継がれています。