祭り情報
祭りと伝統芸能「演劇・芝居」/ホームメイト
お祭りにはその地域で伝えられてきた独得の伝統や文化が反映されることが多く、またそれは「神楽」のような祭りの最中に行なわれる演目でも同じことが言えます。そのような伝統的な演目はまだまだ数多く存在しますが、皆様の前で演じられている、歌舞伎・芝居・人形浄瑠璃などの、演劇系の出し物もその1つです。
祭りの演劇とは
歌舞伎といえば皆さんご存知のとおり戦国時代から伝わる伝統芸能であり、時代の武将たちの物語を描いた「軍記物」、町人たちの世界を描いた「世話物」など、現代に至るまでさまざまな演目が行なわれている、日本を代表する演劇の1つです。通常このような歌舞伎や芝居などの演劇は劇場へ足を運んで見るのが一般的ですが、劇場などでプロの俳優たちが演じるこれらの歌舞伎以外にも、歌舞伎を見る手段があります。それが各地域のお祭や催事などで行なわれる、"素人歌舞伎(農民・農村歌舞伎)""地芝居"と呼ばれるその地域の人たちが行う演劇です。町の人たちによる演劇で、中には子どもたちによって行なわれるものもあります。それらの演劇の中には、各地域の歴史が色濃く反映されているものが多々あります。
演劇の裏には
素人歌舞伎や地芝居では、一般の歌舞伎や芝居で行なわれる演目はもちろん、その地域で伝えられてきた神様やお城などを題材にしたものなども上演されています。そこから地域の特色を知ることもできますが、その歌舞伎・芝居が伝えられ、演じられるようになった背景からも、地域の歴史を知ることができます。
例えば青森県の福浦という地域では、"漁村歌舞伎"が伝承されています。この地域は江戸時代に東北・北海道と京・大阪、江戸を結ぶ北前船の中継地として大いに繁栄していましたが、冬の娯楽が何もありませんでした。そこで村の人たちは地回りの役者に冬の楽しみとして歌舞伎を教えてもらい、それが郷土芸能として現代まで伝承され続けているのです。
この例の他にも、神様への奉納のために行なわれている歌舞伎もあれば、地域復興のため過去に行なわれていた素人歌舞伎を現代に蘇らせたものもあります。また舞台ではなく屋台上で行なわれるもの、雪が吹きすさぶ屋外で行なわれるものなど、多様な演出を見ることもできます。これらのように何気なく町の人が行なっているお祭りの中の歌舞伎・芝居でも、その始まりやなぜ今の形で行われているのか、ということを探れば、その祭りと地域の歴史の一片を理解することにつながります。
そしてそれは地方の祭りで行なわれている、人形浄瑠璃や能などの演劇系伝統芸能全般に共通します。今まで劇場で見るのと同じ感覚で見物していたお祭りの演劇の裏には、本家の歌舞伎にも劣らないほどの歴史が刻まれているのです。