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宮内 俊介 助教
医科と歯科の連携で、世界初の発見
私は循環器内科の医師として、また不整脈の専門家として基礎と臨床の両方の観点から研究しています。代表的な不整脈である心房細動は、脳塞や心不全になるリスクが5倍に跳ね上がる疾患。加齢や生活習慣病から、心臓(心房)の組織が線維のように固くなることで引き起こされます。私はこの心房の線維化と歯周病に相関があることを世界で初めて報告しました。それが可能になったのは、広島大学病院の医科歯科連携の強さがあったから。医科から歯科への患者紹介数は日本有数の多さを誇り、共同研究の素地も整っています。心房細動患者さんの歯周データを収集できたことが発見につながったのです。
しかし、相関関係がある理由や詳しいメカニズムはまだ解明できていません。最終的な目標は歯周病の治療が心房細動の予防に効果的であると明確に示し、患者さんに還元することですが、現状では基礎・臨床の両研究においてもっとデータを集める必要があります。
研究結果を心房細動治療に活かす体制を整備する
心房の線維化は一度起こってしまうと元に戻せないため、予防がとても重要です。歯周病はきちんと歯科に通うことで、予防や治療ができる病気。歯周病の治療が心房の線維化の予防につながると明らかにできれば、歯周病治療の徹底によって心房細動のリスクを少しでも減らせると期待できます。そうなると必要なのは、心房細動診療に歯周病の治療を組み込む、さらなる医科・歯科間の連携。私は現在、広島大学病院の「脳卒中・心臓病等総合支援センター」のコアメンバーとして、循環器疾患を医科と歯科が連携して診療する体制の整備を目指しています。目標は広島大学病院から広島県の市中病院へ、そして全国へと連携モデルを発信することです。
日常生活で大切なのは定期的な歯科検診、そして健康診断で心電図を測定すること。不整脈でも動悸などの自覚症状がない人もいるので、毎日検脈も行うと良いでしょう。スマートウォッチは着けているだけで心電図を撮ってくれたり、脈拍を測ってくれたりする優れものです。このような情報を高齢者やその家族に対して発信するのも医師の役目の一つ。ポスターや市民講座を通じ、積極的に啓発していきたいと考えています。
心房細動のカテーテル治療の様子。
臨床で生まれた問いは、研究で解明する
PROFILE みやうちしゅんすけ
- 保健管理センターに所属。
- 循環器内科の医師として臨床に立つ傍ら、不整脈を専門に研究を行う。昨年度広島大学病院に開設された「脳卒中・心臓病等総合支援センター」にも携わる。
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