限界アラサーOLの部屋に無理やり飾り棚を作ったら。 | 平安伸銅工業

暮らすがえジャーナル

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限界アラサーOLの部屋に無理やり飾り棚を作ったら。

こんにちは、暮らすがえジャーナルです。

今回は、筆者の体験談を二回にわたって記事にしたいと思います。
忙しくて家の中には逆に何もないという人の家に、飾り棚をつけると、何が起こったのか。
DIYとは、暮らすがえとは、決して何かを片付け、整理するだけでは無いのだと思ったエピソードです。

学生時代の友人が一人暮らしを始めたというので、家に遊びに行った。

彼女は30代の会社員で、関西のとある地方企業で働いている。
真面目で、猪突猛進な性格が気持ちよく、学生時代から仲良くしていたのだが、ここ最近はあまり連絡が取れていなかった。

聞けば、引っ越したはいいものの、部署異動が発生して仕事が忙しくなり、土日も接待や組合活動でなかなか時間が取れないのだという。
「最近、限界社畜OLだわ、私。なんか枯れてる。」
という彼女が気になったのもあり、たまには時間を取ってゆっくり話そうよ、とスケジュールを空けてもらい、自宅に招待してもらったのだ。

散らかってはいない、けれど、「良い部屋」ではなかった?

彼女の家の第一印象は「散らかっていないキレイな家だな」だった。

1LDKのマンション。
ダイニングにはダイニングテーブルとテレビ、リビングエリアにはローテーブルに座椅子。
引き戸で地続きになっている部屋にはベッドとちょっとしたラック、最低限の設備だ。

仕事を終えて帰ってきたら座椅子に座ってテレビで好きなスポーツを観戦するのが楽しみなのだそう。
物は少なく、どこも散らかっていない。こまめに片付けも掃除も家事もしているように思える。

良い部屋だねというと「そうでもない」と彼女は言った。

「最近は家に帰ってくるのが遅くて…。仕事から帰ってきたらテレビをちょっと見て寝るだけだから、逆に散らかりようが無いの。
 休日も家を空けることが多いし、家事も最低限。最近は自炊もあんまりしていないかな…。」

「そんなに忙しいんだね、今…。それでも荷物が散らかっていないのは凄いよ、収納が上手なんだね。」

「そんなことないよ。むしろ収納は全然足りていなくて…もうこれ以上荷物を増やせないんだよね。」

彼女はそう言うが、まだまだ部屋には余裕があるし、クローゼットもそんなに小さなものではなさそう。
なのにどうして?と尋ねると、彼女はクローゼットをあけてくれた。

「例えばこういうの…」と中から出てきたのは収納ケースにおさめられた大量のコスメたち。
ブランド物のアイシャドウ、ネイル…いわゆる「デパコス」と呼ばれるものだ。

「・・・すごい。めちゃくちゃ大量にあるね。アイシャドウだけで何個あるのこれ。」

「デパコス集めは元々趣味だったんだけど、ストレスが溜まるとついつい買い過ぎちゃうんだよね…最近は、特に衝動買いが増えていて…買い物がストレス発散になっているのかも。」

「ストレスまじで重症じゃん。」

「いやほんとそうかもしれない。残業続きで自由な時間が少ないのが本当にストレスでさ…」

「え、にしてもさ、この化粧品、毎朝化粧のたびにいちいち取り出して使ってるの??」

「いや、全然使ってない…朝からアイシャドウの色を選んでる余裕なんてないよ。
 それに、会社の規則で派手なネイルも化粧もできないし…普段使いの化粧品は別のところにあるよ。」

「平日に使えないのにこんなに化粧品持ってるの?ネイルも塗れないのに?指は10本しかないのに??」

「いいじゃん!色が可愛いネイルを集めて眺めるのも癒しなの!!」

「ごめんよ…確かに、趣味は人それぞれだよね。」

部屋に置く荷物は増やしたくない!それでも…

発言は反省しつつも「眺めるのが好き」というのにケースに入れてクローゼットの奥に仕舞われているのは気になった。
衝動買いをするのもクローゼットの中に眠らせて、今ある化粧品が何か分からなくなっているのもあるのではないか。

「そしたらさ、ネイルだけでもこの収納方法じゃなくて、色が見えるようにした方がいいんじゃない??例えば鏡台とか買ってさ。外に飾って愛でられるようにしたら?結構かわいいと思うよ?」

と提案してみたら、あまり乗り気ではなさそうな返事が返ってきた。

「いや、あんまり部屋に荷物増やしたくないんだよね、なんか散らって見えるし、掃除も大変じゃん。」


そういえば、と部屋を見渡すと、本当に彼女の家は荷物が外に出ていない。

学生時代は読書家だったはずなのに、家の中に本棚も見当たらない。
本棚を置くと部屋が圧迫されるからと、最低限の本がテレビ台のスキマに入れられていた。

「いや、なんか愛でられるような空間があった方が絶対いいと思うよ。このテレビ台に入れっぱなしの画集だって飾った方が可愛くない?
 衝動買いも減るかもしれないしさ…騙されたと思ってまずは小さな棚から作ってみない??壁に取り付けるやつなら邪魔にならないし、原状回復もすぐできるよ。」

と壁に取り付けるタイプの棚をいくつかスマホで見せる。

「うーん、確かに。小さいやつなら、いいかも。そういえば、家を借りた頃は北欧っぽい感じのインテリアに憧れてたんだよね。」

「いいじゃん!そしたらこれは?木は好きなものをホームセンターで選べばいいよ。可愛い感じになると思う。」

「あ、これいいね、試しにつけてみようかな。」

彼女が目をとめたのは、ラブリコのトライアングルフレームだ。


「お、まじで?じゃあ、また今度材料集めて取り付けに来るよ。」

「いや、せっかくだし今から買いに行こう!つけるの手伝って!」

「え、今から??」

「ホームセンターすぐそこにあるし!」

こうと決めたら猪突猛進で、行動力がとんでもないのは学生から変わってないな…

限界OL、初めてのDIY。

彼女が運転する車に乗せられ、1時間後には、材料が一式揃っていた。

「ホームセンターって木材カットもしてくれるんだね!機械めっちゃデカかったよね?」とホームセンターで初めて木材を買った彼女はすっかりテンションが上がっていた。

せっかくなので、横でアドバイスを送りながら、取り付けはすべて彼女にお願いした。
「DIYなんて初めて。家具の組み立てくらいしかやったことない。」という彼女のような人がどんな工程でつまづくのかも確認したかったし、なにより、自分で作った方が愛着も沸くかもしれないと思ったのだ。

「水平ってどうやってとるの??」「iPhoneのアプリが便利だよ。」

「まってピンが固い刺さらない!!」「小銭で押し込んでみて。指も痛くないよ。」

ぎゃーぎゃー言いながら、1時間もしないうちにで小さな棚が一つ完成した。

「できた!!え、めっちゃいいじゃん」

「かわいいじゃん、白いから棚自体が主張しすぎなくていいね。」

早速なにか飾ろうよ、というと、「色がお菓子のポイフルみたいで並べると可愛いなと思ったから、この夏にテンション上げるために塗ろうと思って買った」というシャネルのネイル4本と、大好きで集めているというミッフィーのぬいぐるみを持ってきた。

「これで普段も仕事から帰ってきてお気に入りを眺められるじゃん。」

「ありがとう、少しは癒しができたわ。この棚もう少し増やしたいな、さらに可愛くなりそう…。」

また追加でパーツ買って今度は自分でつけてみるね。と彼女は笑う。

限界OLのダイニング、広くて真っ白な壁に、ちょこんとつけられた飾り棚。

家の間取りが変わった訳でも、インテリアが大きく変わった訳でもない。
部屋が特別オシャレになった訳でもないし、何か問題が解決したわけでもない。

ただ、嬉しそうに完成した棚を撮っている彼女を見て、この先疲れて仕事から帰ってきても、少しでも幸せな気分になってもらえたらいいなと思った。


そんなことがあった数か月後、彼女からとある連絡が来た。
(次回に続く)

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