桜図鑑|公益財団法人日本花の会

桜図鑑とは

桜は古くから人に愛され、何らかの価値を見出された個体には固有名詞が与えられ代々、受け継がれてきました。
また、現在も日本各地やイギリス、アメリカ、中国などで新しい桜が発見・育成されています。
この図鑑では、それらの多彩な桜の中で、公益財団法人日本花の会 結城農場・桜見本園に収集・保存されている桜を紹介します。

当会育成品種 舞姫のご紹介

舞姫は(公財)日本花の会桜見本園で育成された八重咲品種で、種苗法に基づく農林水産省登録品種(第20923号)です。

1.舞姫の特性

桜の八重咲品種の多くは新芽の展開と開花が同時期となりますが、舞姫は開花後に新芽が伸びだすため、染井吉野と同じように樹全体が花で覆われる観賞性が高い品種です。染井吉野にやや遅れて開花する早咲きの八重咲品種の中では、生育が旺盛で花着きがよいので、苗木を植栽してから開花までの年数が短いこと、エドヒガンに属する系統なので染井吉野の名所地で問題となっているサクラ類てんぐ巣病に罹り難く、寿命も長いものと考えられることから桜の名所づくりに適した優良品種として当会の配布品種に選択し、2012年秋期から全国に苗木を提供しています。特性の概要は以下のとおりです。

  • 舞姫
  • 舞姫

舞姫(マイヒメ)Cerasus ‘Maihime’

樹形は盃状、樹高は高木性、樹幹は灰色、成葉は狭長楕円形、先端は鋭尖形、基部はくさび形、鋸歯は単鋸歯で鋭形。表面は濃緑色で毛は無い。葉裏面および葉柄は有毛、葉身基部に蜜腺がある。花序は散形状で2~3花、花の向きは横向き、八重咲で花の直径は約3.7㎝の中輪、花弁は長楕円形で約15個、蕾の色は紅色、花色は淡紅色。雌ずいは1~2本、葉化はしていない。花柱は有毛、がく筒の形は壺形、花の香りは少し有、開花後に展葉し、染井吉野よりやや遅れて開花する。なお、舞姫は種苗法に基づく登録品種なので、増殖等の利用に当っては当会の許諾が必要であり、無断増殖は処罰の対象となります。(品種登録番号第20923号)

2.舞姫の育成経過

舞姫は1998年に発芽した八重紅枝垂という枝垂れ桜の実生苗から誕生した桜です。八重紅枝垂は観賞性の高い優良品種ですが樹形が枝垂れ性なため、支柱が必要など育成管理に手間がかかることや植栽適地が限定されるなどの欠点もありました。舞姫は開花時期や開花特性は母親である八重紅枝垂れとほぼ同様ですが高木性で盃状の樹形となる点から名所づくりに適した品種として選抜しました。

3.舞姫による名所づくり

当初は皆さんに舞姫を知っていただくために上野公園(東京都台東区)、千鳥ヶ淵緑道(同千代田区)に開花株を植樹しました。現在、大きく生育していますので機会があればご覧になってください。また、宮城県仙台市は舞姫の母親である八重紅枝垂に縁があることから、2018年春に東北大学青葉山キャンパスに街路樹として約150本が植栽されて、年ごとに見事な景観となりつつあります。各地に提供した舞姫も立派に育って開花しているところもあることでしょう。皆さんからの情報提供をお待ちしています。

  • 舞姫原木(当会桜見本園・彩りの広場)舞姫原木(当会桜見本園・彩りの広場)
  • 接木後4年生苗木の開花状況 生育旺盛で花着きもよい品種です接木後4年生苗木の開花状況 生育旺盛で花着きもよい品種です
  • 街路樹として植栽された舞姫 (東北大学青葉山キャンパス)街路樹として植栽された舞姫 (東北大学青葉山キャンパス)
  • 千鳥ヶ淵緑道の開花状況千鳥ヶ淵緑道の開花状況