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とある弁護士の本音のコラム

第19回 似てる言葉、厳密には違うもの

違法と不法

「違法」と「不法」は一般的な言葉としては同じような意味で使われていますが、法律家が用いるときはニュアンスに違いがあります。

「違法」は法律に違反することを指す言葉で、もっぱら暴行罪や窃盗罪など刑事罰を伴うような法律に抵触するものについて用いており、「不法」は法に合っていないという意味になり、契約違反や不法行為などの民事的な責任を伴うような行為について用いています。弁護士は「違法」と「不法」についてほとんど無意識的に使い分けているのですが、民事に関するものだから常に「不法」を使うかといえばそうではない、というのがまた複雑なところです。

民事上の「不法行為」は損害賠償等が認められることになりますが、不法行為と言えるためには、一般的に「違法性」のある行為でなければいけないと認識されており、ここでは「不法性」のある行為とは通常言いません。こうしてみると、違法というのは「行為」に着目したものであるようです。

 

検索サイトと検索エンジン

多くの方は検索サイトと検索エンジンを同じ意味で使うのではないかと思います。しかし、厳密に言えば、この両者は意味が異なっています。

Google、Yahoo! Japanのほか、Microsoft Bing、@nifty、BIGLOBE、Excite、goo、Infoseek、MSN、OCNなど色々なポータルサイトがありますが、これらには検索窓が必ず設置されており、検索窓に検索ワードを打ち込めば、検索結果を表示させ、望む情報を探すことができます。この検索サービスを提供するサイトを「検索サイト」と言います。

他方、どういうルールで、どういう情報を、どういう順番で表示するかというのを決めるのは、それを定めるアルゴリズムの問題です。そういったアルゴリズムを定めているシステムが「検索エンジン」となります。検索サイトと検索エンジンは、厳密には別のものとして扱われます。

たとえば、Google検索の検索エンジンは「Google」であり、Yahoo! Japanの検索エンジンにも「Google」が用いられていますが(なお、今後変更されることが報道されています)、Microsoft Bingは、「Bing」の検索エンジンが用いられています。

なお、同じ検索エンジンを用いている場合、一つの検索エンジンでキャッシュ削除されれば、他の検索エンジンにも削除の効果が及びます。

 

「○○命令申立」なのに「決定」

裁判には実は「判決」「決定」「命令」という3つの種類があります。

「判決」は、訴えの内容等、争いになっている事項の重要事項に対しての判断を示すものを指します。「決定」と「命令」は、訴訟の進め方や訴訟手続上の付随的事項の処理や、急いで判断する必要があることについての裁判ですが、両者の違いは誰がその判断をするかということにあり、「裁判所」によって行われるのが決定、「裁判官」によって行われるのが命令です。

しかし、「○○命令申立」をしたのに、その判断では「決定」が出されているというものを、実務上しばしば見かけます。

たとえば、私がよく使っている仮処分ですが、手続名としては「仮処分命令申立事件」ですが、その判断については「決定」が発令されます。これは、法律上「保全命令」の申立てとなっている一方、その判断に対しては「決定」を出すこととされているという建付けから来るものと思われます。

また、同じくよく使う「発信者情報開示命令事件」ですが、判断は「決定」となっています。これも法律上、「裁判所は……申立てにより、決定で……発信者情報の開示を命ずることができる」とされていることに由来するものといえそうです。ほかに、「文書提出命令」という手続きも、その判断については「決定」となっていますが、これも法律上、「裁判所は……決定で……その提出を命ずる」としていることに由来しているようです。

このように、手続きを進める段階では「裁判所が命じる」という日本語的な意味で命令という言葉が用いられている反面、判断は裁判所がするという意味で「決定」手続となっていることが見て取れます。「決定」と「命令」は異なるとされている以上、混乱を来さないように用語も統一してほしいものです(笑)。


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コラム著者プロフィール
しみず・ようへい
2010年「法律事務所アルシエン」開設。
インターネット上の問題に早くから取り組み、先例的な裁判例が多くある。
著書・共著も多数。
マンガ・ドラマ「しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~」監修を担当。