ゲームクリエイターという仕事柄、定期的にゲーミングPCを新調しています。しかし仕事用、ゲーム用、日常(読書と音楽)用と、複数台のPCを使い分けるのが地味に苦痛で、何とか一本化する方法がないものか…と思っていました。
ASUS の ROG Flow Z13 は、そんな私のワガママを叶える 2in1 PCでした!本記事では Z13を詳しくレビューしながら、使用感やメリット、ゲーム性能、この機種が向いている方とそうでない方なども解説していきます。ぜひ最後までお付き合いください。
ROG Flow Z13とは?
ROG Flow Z13は、その「コンパクトさ」と「性能」で注目されたゲーミングPCです。2022年2月17日にASUSから発売されました。キーボードと本体が分離できる「デタッチャブル型」と呼ばれる 2in1 PCで、ノートPCとしてもタブレットPCとしても使える特徴を持っています。
小型で超高性能!というのはガジェットの永遠の夢ですが、もちろんそんな美味い話はありません。ROG Flow Z13 は「尖った性能と特徴を持つPC」で、使う人を選びます。それだけに刺さる人にはトコトン刺さるでしょう。追って解説していきます。
ゲーミングPCは乱暴に言えば「デカいほど高性能」。小さい本機には、コレにしかない魅力があります。使い道に適しているかどうか?を判断して購入する必要があるでしょう。
レビュー
開封レビュー
早速開封してみます。ドン!
箱の中から箱が…!そしてコレまたデザインがカッコいい。各種ロゴや文字列などがスタイリッシュに配置されたシルバーのパッケージには重厚感があります。いかにも「良いもの入ってる」感があり、開封する喜びがありますね。若干、過剰包装な気もしますけど…
さらに開けてみましょう。ドン!
・ROG Flow Z13本体
・充電器とケーブル
・取扱説明書、保証書類
外装に比べて内容物はシンプルです。
充電器がコンパクトで好印象!USB-Cによる充電器なので、いわゆるACアダプターではないのが良いですね。ほかの機器でも使いまわせるので汎用性が高いです。一方で3 ピンソケットのコンセントケーブルが太く、こちらはもう少しコンパクトにならなかったものか、と思いました。
本体レビュー
ROG Flow Z13は先に書いた通り「デタッチャブル型」、キーボードとディスプレイを分離できるタイプのPCです。普段はノートPCとして、キーボードを取り外せばタブレットとして使えるので、 2in1 PCとも呼ばれますね。
デタッチャブル型は半ば Surface Pro の寡占市場になっている感がありますが、そこにブッコんで来ましたよ、ASUS!
画面サイズは13.4インチと、ゲーミングPCとしてはかなり小ぶり!本機の魅力はここにあるといっても過言ではないでしょう。本体カラーはブラックのみの展開です。
キックスタンドを収納すると上記のようにタブレット形状になります。背面には小窓があり、PCの内部を見ることができるようになっています。そのほか、スリットやデザインパターンによってゲーミングPCっぽいテイストが付加されています。
キーボードのパームレストはサラサラしながらもグリップ感のある質感で、触っていて気持ちの良い仕上がり。キーには思ったよりもピッチがあり、しっかり「打っている感」があります。デタッチャブルタイプのキーボードとは思えない打鍵感です。
Surfaceを使い慣れていると「キーボード込みの価格」と聞いただけでおトクに感じますね…!
本体右側には電源ボタン、ボリューム調整ボタン、USB 2.0ポート、イヤホンジャックがあります。電源ボタンには指紋認証機能つき。ボタンの上に指を乗せることで、パスコード無しで Windows へログイン可能です。
本体左には USB Type-Cが1ポート。Thunderbolt 4に対応しており、最大40Gbpsでの通信が可能です。その下にはROG XG Mobile ポートが配置されています。
ROG XG Mobileポートは、別売りの eGPU(外付けGPU)を接続することができる ASUS独自の規格です。Type-Cポートとしても使うことができ、その場合は USB 3.2 Gen2 Type-C / Display ポート として機能します。
細かい話ですが、ここの保護キャップが曲者。取り外せるので、すぐに無くしてしまいそう。迷いましたが私は普段から外しておくことにしました。
キックスタンドには取っ手?ツマミ?が配置されており、展開がしやすく配慮されています。これはSurfaceシリーズも見習った方が良い!と思わされる工夫ですね。
キックスタンドを展開したら、隠れていた Micro SDカードスロットがお目見え。Surface Pro 8では廃止されましたが、7までは同様の位置にスロットがありました。
タブレット側の重さは約1.12kg、キーボードが340gで、合計1.46kgほど。タブレットPCとして見れば平均以上のウエイトですが、片手で余裕で持てますし読書用途にも許容範囲でしょう。
性能評価
私が購入したモデルはGZ301ZE-I9R3050TE。スペックは以下の通り。
型番 | GZ301ZE-I9R3050TE |
OS | Windows 11 Home 64ビット |
CPU | インテル® Core™ i9-12900H プロセッサー 動作周波数:2.5GHz/5.0GHz |
メモリ容量 | 標準:16GB (LPDDR5-5200) |
表示機能 | 13.4型ワイドTFTカラー液晶 1,920×1,200ドット (WUXGA) (120Hz) タッチパネル:搭載 |
グラフィックス機能 | NVIDIA® GeForce RTX™ 3050 Ti Laptop GPU ビデオメモリ:4GB 外部ディスプレイ出力:最大7,680x4,320ドット |
記憶装置 | SSD:1TB (PCI Express 4.0 x4接続) |
バッテリー駆動時間 | 約6.6時間 |
サイズ | タブレット:幅302×奥行き204×高さ14.5 キーボード:幅302.8×奥行き220.72×高さ5.6 |
質量 | タブレット:約1.18kg デタッチャブルキーボード:約340g |
第12世代 Core i9 と GeForce RTX 3050Ti 搭載のタブレットPC、という時点で相当に魅力的なわけですが、これを使いこなすには「3つのモード」を使いこなす必要があります。
ARMOURY CRATEというツールから、Z13のパフォーマンスを調整することができます。どれぐらいマシンパワーを発揮するか?を任意で設定できる訳です。
モードは「サイレント/パフォーマンス/Turbo」の3種から選択でき、手動での調整も可能です。Turboが高性能&高消費な状態で、サイレントはその逆。パフォーマンスは良いとこ取り、といったところでしょうか。
FF14 のベンチマークソフトで計測してみます。
TurboではデスクトップPCモードでプレイしても「快適」評価が得られるほどの性能。タブレットPCという立ち位置で考えれば、この性能は驚異的。パフォーマンスモードだとかなりスコアが目減りし、サイレントモードと大差が無くなります。
ドラクエXのベンチマークではあまり差が出ませんでした。高いグラフィクス処理能力が要求されないソフトであれば、パフォーマンスモードでも十分に遊べそうです。
試しに手持ちのゲーム「ボーダーランズ3」をプレイ。1920×1200のフルスクリーン、画質ウルトラでも60fpsで安定して遊べました。パフォーマンスモードでも50fps程度でFF14 の結果ほど差がなく、思った以上に快適に遊べます。パフォーマンスモードは計測値よりも優秀な印象で、ファンの音も小さいので意外と使い出がありそうです。
4kモニターを接続してのプレイでは、Turboなら解像度2Kは45fps程度。4K画質はちょっとしんどい感じでしたが、75%設定まで落とせば30fpsを前後でプレイ可能でした。
Turboモードなら「最新ゲームも画質を少し落とせば快適」、パフォーマンスモードは「ゲームによっては十分遊べる」というところ。大きさから考えればかなり健闘しています。
Turboモードの高負荷状態でもCPU温度が上がりすぎることはなく、コアの温度は70℃を下回るぐらいで安定。Turboモードにするとファンが高速回転し、それなりに音がします。ARMOURY CRATEによると 36dB ほど。
ノートPCはデスクトップPCに比べると使用者の間近にあるので、比較的ファンの音は気になるもの。本機も御多分に漏れず Turboモードでは少し気になりますが、並のゲーミングPCで高負荷がかかった時と同程度。パフォーマンスモードで遊ぶと「結構静かだな」と感じるので、小型ゲーミングノートとしては優秀な部類でしょう。
最近のCore i7、i9は爆熱と聞いてましたが、Z13が高温で処理落ち!ということはありませんでした。小型でありながら排熱設計がかなり優秀です。
ここまでの条件を見れば、高負荷のゲームをプレイするならTurboモード…なわけですが、少し問題があります。Turboモードへの切り替えには条件があるのです。
それは本体が純正の充電器で充電中でなければいけないという点。Turboモードにしたいなら、純正充電器も併せて持ち運ぶ必要があるのです。手持ちの100W対応充電器(他社製)では60Wにクランプされてしまったので、100W充電は純正の充電器でしかできないようです。
パフォーマンスモードでしばらくゲームを遊んでいたら、60Wで充電していてもバッテリーが減っていました。Turboモードだと100Wで充電しないとバッテリーがすぐに枯渇するからこういう仕様なのでしょう。
しかしそれでもいいから、Turboモードに自由に切り替えたかったというのが本音です。惜しい…!
使用感レビュー
タブレットPCとしては超高性能で、ゲーミングPCとしてはかなり小型。特にキーボードを外したときの専有面積の小ささは類を見ないレベル。それでいて大きさからは考えられない性能を持っています。
一方で視点を逆転させれば、タブレットPCとしてはやや重く、ゲーミングPCとしてはやや非力。うまく使えばオールマイティに活躍しますが、自分のスタイルにマッチしなければ器用貧乏になる可能性を秘めています。「人を選ぶ」と先に書いたのはそういった理由からです。
本体が小さいので、外部機器の接続・配置は自由度が高いです。ワイヤレスキーボードとの親和性は特に高く、構成だけでなく見た目もスッキリとさせられます。シーンに合わせてレイアウトを変えられるフットワークの軽さは、まさに 2in1 の利点です。
使用感は Surface Proシリーズを使ったことがある方には馴染み深いでしょう。Surface Pro 7と比較すると、ほぼ同じ使い心地でグラフィクス性能が大きく向上し、少し重くなったような使用感です。
Core i9入りで熱問題もクリア。RTX 3050 Tiを積み、単体でゲームを駆動させられるタブレットPCは唯一無二です。メイン機に、サブ機に、ホビー用になんでもこなせるパワーがあるので、私が持っていた3台のPCは無事に Z13へ置き換えることができました。
本機はゲーミングPCの位置づけですが、動画編集やRAWデータの現像、テレワークなどグラフィクスパフォーマンスが要求される用途の方が向いているように思えてなりません。それらに加え、ネットや読書もできるPCとしては最強に近いと思います。すべてがZ13一台で完結します。
1TBという大容量のSSDに加え micro SDカードでストレージの拡張も容易なので、容量で困ることもありません。
ゲーミングPCとしてゴリゴリに動かすには少し厳しい。RTX 3050 TiはミドルクラスのGPUで「最新のゲームでも負荷を落とせばイケる」ぐらいの性能で、ゲーム中心の利用を考えている方の単独利用は難しいと思います。
逆に言えば、ゲームは嗜む程度なのであれば単体でも問題なし。少し画質を落とすなりすればパフォーマンスモードでもちゃんと動きます。もっと快適に使いたいなら、専用のeGPU、ROG XG Mobileを追加購入すればさらにパワーアップします。こちらは RTX 3080搭載なので、2022年時点の最新ゲームでも快適に動くでしょう。
ASUSの提案としては、ROG XG Mobileも含めて一つのソリューションなのでしょう。普段使いには i9とRTX 3050 Ti でサクサク、最新ゲームをするときは ROG XG Mobile と接続して快適にプレイするのが理想的な運用スタイルです。
ROG XG Mobileが専用端子だったのが気に入らず、私は自前のeGPUを使用中。Thunderbolt 4端子搭載なのでアイデア次第でさらに便利に、長く使うことができます。
背面の窓からは内部が見えますが、こちら実は七色に光ります。デタッチャブルキーボードもゲーミング調(?)に光りますし、ARMOURY CRATEから光り方も調整が可能で、自分好みのカスタマイズが可能です。
こういった遊び心にも抜かりがなく、欲しいものをギュウギュウに詰め込んだ、個性的でワクワクするPCに仕上がっています。自宅でも出先でも仕事でも平均以上のパフォーマンスで活躍する、私にとってはまさにオールマイティな一台になりました。
それだけに充電器問題が惜しい!PD充電器を持ち歩けばどこでもゲームできる!になっていれば本当に神機でした。アップデートとかで何とかならないスかね…
苦肉の策として、持ち歩き用に純正充電器を買い足しました。Amazonで6000円チョイ。20cmの短い3ピンケーブルと組み合わせて、少しコンパクトになりました。
おわりに
第一印象は「ちょっと高くね?」と思いましたが、この小ささでこの性能、Thunderbolt端子付きのPCが市場に全然ありません。まさにZ13が唯一無二。安価なThunderbolt付きPC+eGPUという組み合わせは魅力的ですが、今はGPU自体の価格が高騰しているので結局高くつきます。コスト的にも落としどころなんだな…と思い知りました。
ROG Flow Z13には4つのグレードがあり、本機は 上から2つ目のモデルです。しかし本グレードが一番おすすめです。上位機種は4Kになる代わりにリフレッシュレートが落ちるので、価格差の割に恩恵を感じにくい。下位グレードは CPU/GPU/SSD容量ともに落ちるのに対し価格差が小さい。GZ301ZE-I9R3050TE が一番コスパが良いです。
さらに予算があるなら ROG XG Mobile で最新ゲームも快適に遊べます。RTX 3070搭載モデルと3080搭載モデルがありますが、当然3080モデルがおすすめ。しばらくは最新のゲームがサクサク遊べて、まさに全方位にスキが無くなります。
ROG XG Mobile は、AMD Radeon RX 6850M XTモバイル・グラフィックスの新製品が 2022年5月下旬に発売予定。価格もやや下がって狙い目です。購入を検討している方は公式HPをチェック!
本日はこれにて。最後までお読みいただきありがとうございました。