鹿肉のレモン・キーマ | ジビエが地域を元気にする 日本ジビエ振興協会
ジビエ料理のレシピ紹介

鹿肉のレモン・キーマ

★第6回ジビエ料理コンテスト 一般社団法人大日本猟友会会長賞★
安藤 まどか 様(料理研究家・東京都杉並区)

レシピのポイント・開発者のコメント

■鹿肉について
 鳥獣被害に悩む地域の取り組みに、都市部など遠隔地からできることは何か。旅行や外食の制約も多い昨今、通販でジビエ肉を取り寄せ調理してみることで、知ること、気づくことがいろいろありました。ひとりでも多くの方にそんな体験をしていただけるよう、このレシピでは、鹿ひき肉を失敗なく楽しめる、手軽な下処理と下味、煮込み方を提案します。

 鹿ひき肉は、解凍や加熱に失敗して独特の臭みが出たり、ボソボソになったりすることがあります。
様々な方法を試した中で、鹿ひき肉のマスキングには、牛乳で洗いマヨネーズで和えるのが手軽なうえ効果的でした。
 また、ハンバーグ状に焼いてから煮込み、盛り付ける直前に崩すことで、肉から水分が抜けずジューシーに仕上げることができました。あくまで崩す前提なので、材料も手順もハンバーグよりずっとシンプルです。

■ジビエの普及について
 ジビエは「クセが強そう」というイメージがまだ一般にあります。レモン風味ときけば「さっぱり目かな?」と少しハードルが下がるのではないか。初めて食べてみるきっかけになればと願ってレモン・キーマと名づけました。
実のところ、上質な鹿肉はクセどころかあっさりした味わいで、レモンとの相性の良さは鶏肉以上ではないかと感じます。
 昨今の「レモン」ブームで、カレーにもレモン味の商品が登場しています。酸味の強いカレーはどちらかというと夏向けですが、このレシピではたっぷりの生姜を加え、鹿の猟期に合わせて冬仕立てにしたところがポイントです。

 もうひとつ、ジビエの普及において見逃せないトレンドはクラフトジンのブームです。ジンといえばジュニパーベリーというスパイスの香りが特徴の蒸留酒ですが、欧米では、ジュニパーベリーは鹿肉をはじめとするジビエ料理に加える定番のスパイスでもあるからです。かといって日本では、ジュニパーベリーの独特の風味に慣れない人が多いのも現実です。試作を重ねた末、料理に多用するよりドリンクとしてペアリングするのが今のところはちょうどよい距離感ではないかと考えました。

 ちなみに、他にジンの香り付けによく使われるボタニカルとして、各種の柑橘、コリアンダー、キャラウェイ等があります。このレシピでは、柑橘をカレーのレモン風味に、コリアンダーとキャラウェイの香りをライスに仕込んでいます。

 カジュアルな一皿ではありますが、「ジビエでもできる」ではなく「ジビエだからこそ」の存在感を追究しました。鹿(ジビエ)がつなぐカレーとジン。ダイニングバーで、あるいは家呑みで、食中酒としてのジンに一番合う「締めのカレー」になってくれると思います。

材料・分量(4人分)

《鹿肉のレモン・キーマ》  
鹿肉(ひき肉) 250g
牛乳(手順2、下ごしらえ用) 150㏄
サラダ油(手順3、下焼き用) 小さじ1
水(手順4、煮込み用) 300㏄
《下味》  
マヨネーズ 大さじ1
クミンパウダー 小さじ1
片栗粉 小さじ1
重曹 小さじ1/4
《玉ねぎベース》  
玉ねぎ(すりおろし) 500g
にんにく(すりおろし) 20g
しょうが(みじん切り) 10g
ピーマン(みじん切り) 70g
トマト缶 70g
ヨーグルト 70g
サラダ油 100㏄
《スパイス》  
A コリアンダーパウダー 小さじ4
  クミンパウダー 小さじ1
  ナツメグパウダー 小さじ1/4
  シナモンパウダー 小さじ1/4
  ベイリーフ 2枚
  八角 全形を袋果8個に分解し、袋果2個分
  ターメリック 小さじ2/3
  レッドペッパー 小さじ1/2
  塩 小さじ2
《仕上げ》  
ブラックペッパー 小さじ1/8
レモン汁 大さじ1~2
レモンの皮(千切り) 小さじ2
紅生姜(みじん切り) 小さじ1
《添える香味野菜》  
玉ねぎ(輪切り 10g
緑のハーブ         (香菜、クレソン、パセリなど) 10g
レモン 1/2個
《キャラウェイライス》  
2合
ジン(省略可) 小さじ1
かぼちゃ(1.5cm角) 100g
小さじ2/3
砂糖 小さじ1/2
サラダ油 小さじ1/2
B 水 500cc
  コリアンダーシード 小さじ2(山盛り)
キャラウェイシード 小さじ1(山盛り)

作り方

鹿肉のレモン・キーマ
《手順 1・玉ねぎベース》
①鍋にサラダ油を温め、玉ねぎを入れ飴色になるまで炒める(中火で 30 分以上)。
②にんにく、しょうが、ピーマン、トマト缶、ヨーグルトを加えてさらに炒め(中火で 10 分以上)、トマトの匂いが消え、水分が十分煮詰まって赤い油が浮いてきたら火を止める。

《手順 2・肉の下ごしらえ》
①ボウルに鹿ひき肉と牛乳をいれ、肉にかたまりがあればそっとほぐすようにまぜる。
② 3 分浸けたらざるにあけて牛乳を流す。鹿ひき肉に下味用のマヨネーズ、クミンパウダー、片栗粉、重曹を加えて混ぜる。

《手順 3》
①フライパンにサラダ油 ( 下焼き用 ) をひいて火にかける。温まったら《手順 2》の鹿ひき肉をスプーンに山盛りすくって、ハンバーグ状のかたまりになるようフライパンにのせていく。サイズは好みでよいが、目安はひき肉の 1/8 量ずつ、8 個ほどにすると扱いやすい。
②表面だけに軽く焼き目がつくよう、やや強めの中火で両面を 1分ずつ焼く。この時点で中まで火を通す必要はなく、焼きすぎや余熱に注意しながら、フライ返しで持ち上げても崩れない程度まで加熱する。

《手順 4》
①玉ねぎベース《手順 1》をふたたび中火にかけ、温まったら Aのスパイスを加えてさっと混ぜる。
②続いて、焼いた鹿ひき肉《手順 3》と水を加え、沸いたら火を弱める。
③ふたを少しずらして湯気を逃しながら、弱火で 1 時間ほど煮込む。(表面がやわらかくフツフツする火加減で、IH なら 150 ~160 度くらい。圧力鍋は肉汁が抜けて味気なくなるので不可。)
④カレーの表面に茶色い油がじんわり浮き、肉のかたまりが半分見えるほど水分をしっかり煮詰めたら火を止める。

《手順 5・仕上げ》
①ブラックペッパーとレモン汁を加えてさっと混ぜてから、ひき肉のかたまりをザクザクと割り、親指の先ほどの粒にする。目安は 1/8 量の肉のかたまりなら 6 分割する程度。ひき肉のカレーなので、崩し方はざっとでよく、そぼろになる部分もあって構わない。
②盛り付けてから、カレーの上にレモンの皮をたっぷりトッピングし、紅生姜を散らす。香味野菜(玉ねぎ、緑のハーブ、レモン輪切り)などを添えるとよい。

キャラウェイライス
①コリアンダー茶を作る。鍋に B の水とコリアンダーシードをいれて火にかけ、沸いたら火を弱め、3 分煮て火を止める。常温まで冷まし、茶漉しでコリアンダーシードを除く。
②炊飯器に米とジンを入れ、2 合の目盛りまで①のコリアンダー茶を注ぐ。水加減は好みで調整し、足りなければ水を加える。かぼちゃ、塩、砂糖、サラダ油を入れ炊く。
③盛り付ける直前に、小さなフライパンを弱めの中火にかけ、キャラウェイシードを炒る。1 分ほどかきまぜ続け、白い煙があがりパチッとはぜる音がし始めたら手早く皿にあけて粗熱を取る
②で炊きあがった米に混ぜる。