パーム油の環境・社会問題
ポテトチップ、クッキー、インスタント麺、アイスクリーム、石けん、シャンプー、塗料などに共通して使われている原材料はなんでしょうか? それは「パーム油」です。パーム油は、アブラヤシという熱帯に生えるヤシの実と種から取れる油で、現在世界で最も安価で、最も多く使われている植物油です。パーム油は日本でも近年使用量が増加し、食用だけで約60万トンが毎年消費されています。一人当たり平均で年5キログラムも食べている計算になりますが、原材料名としては「植物油脂」と標記されているため、消費者がパーム油を食べていると認識することは少ないかもしれません。
パーム油が普及するまで
アブラヤシは西アフリカ原産の植物で1970年代から東南アジアのマレーシアとインドネシアで急速に面積が拡大し、熱帯林が伐採される例も増えて行きました。プランテーションは、基本的に大面積に単一作物栽培で効率化を図ること、アブラヤシは20年以上も収穫が続けられることから、農地に転換された森が元に戻ることはありません。またほとんどの生物は生息できず、地域住民の森林利用も不可能になってしまいます。このため、アブラヤシ農園の拡大は木材生産を上回る深刻な影響を熱帯林に及ぼすと言われています。
農園開発による影響
アブラヤシ農園開発による環境への影響には、熱帯林の減少の他、地球温暖化の促進、生物多様性の減少があります。アブラヤシ農園が開発される場所の中には、非常に多くの炭素を地下に埋蔵する「泥炭湿地(ピートランド)」が含まれています。泥炭湿地は水分を抜いて乾燥させてから農園化する工程で、メタンガスを含む大量の温室効果ガスを大気中に放出さします。また熱帯林の大規模な転換は、陸上の生物種の半分を保持すると言われる、熱帯林の生物多様性に壊滅的な影響を及ぼしています。
またアブラヤシ農園の開発を巡り、開発事業者や政府と地域のコミュニティ等との紛争が起きる例が、インドネシア、マレーシアそれぞれ数百件という規模で発生しています。政府と企業の癒着や不正・汚職といった問題を背景に、土地や森林に関するガバナンスの課題は、東南アジアに広く見られますが、大資本が絡むアブラヤシ農園に関しても例外ではありません。さらに農園が開発された後には、労働者の人権に関する問題が多く発生しています。パーム農園は機械化があまり進んでいない労働集約的な産業ですが、特に日本がパーム油のほとんどを調達しているマレーシアでは、パーム農園労働者の85パーセントを外国人労働者が占めています。外国人労働者とその子どもに対する医療、教育等の不足や、強制労働・児童労働といった問題が報告されるなど、アブラヤシ農園には関連する多様な環境・社会問題が存在しています。
プランテーション・ウォッチ
地球・人間環境フォーラムでは、2010年頃に熱帯林の問題に関わる他の環境NGO5団体と協力し、プランテーション・ウォッチというネットワークを立ち上げて、生産国現地の調査や現地のNGO、団体とのネットワークによる情報収集を行い、パーム油のユーザー企業や小売企業、政府に対し、パーム油生産の問題について伝えるとともに、持続可能な調達を呼び掛ける活動を続けています。
詳しくは、以下のサイトをご参照ください。
あぶない油のWEBサイト(消費者向け)
パーム油調達ガイドのWEBサイト(ユーザー企業向け)
作成日:2017年02月01日 11時41分
更新日:2017年02月15日 22時50分