【投げ釣り&ちょい投げ入門】今日から始めるキス釣りABC

GAMAKATSU がまかつ

投げ釣り&ちょい投げ入門今日から始めるキス釣りABC

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本格タックルじゃなくても楽しめる身近なターゲット・キス

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キスの投げ釣り。もっとも身近なターゲットであり、釣りの入門にはもってこいだ。釣り場は波静かな砂浜。なかでも海水浴場になっている砂浜はキス釣りに最適なポイントのひとつである。

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「日本海、太平洋、瀬戸内海と、どこでもキスは釣れますが、とりわけ日本海側は中型キスの数釣りが楽しめるポイントです」

福井県のとある海岸。実は林も初めて釣りをする場所だという。
「ここはまったく何も知らない場所ですが、周辺では釣りをしたことがあります。日本海側の砂浜は、どこでもキスがいますし釣れると思いますよ。キスを釣るのにいい条件がそろっていますし」
特にこの砂浜がよさそうな条件はどういったところだろうか?

「まず、波静かな砂浜であること。これはその日の天気もあります。無風、微風、追い風がいいですね」

実は前日、北向きの風が強く吹いていて、向かい風となっていたため海はけっこう荒れていた。その中で釣りをしたのだがキスの食いも悪かった。
「日本海で波が2mとかは、もう高すぎますよね。うねりはキス釣りの大敵です。食いが悪いし、仕掛けが絡まって釣りになりません」
濁っているよりも澄んでいるほうがいい。
「キスは浅い海が好きなので、遠浅で200m沖でも水深が4m、5mといった方がポイントは広くなります」
ほかには、沖にシモリ・根といわれるような岩が沈んでいたり、沖合にテトラポッドが入っていたりすると魅力的だとも語ってくれた。

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「数の多さやサイズを問わなければ、こういった砂浜でキスが釣れないということはまずないので、どこがよく釣れるとかまだわからないですが、ひとまずやってみましょう」
林にとっても初めての釣り場。そんな場所をどう攻略するのだろうか。

5月から釣れ始め、夏がハイシーズン

キス釣りの格言に『キスは八十八夜から』とある。春の日差しで水があたたかくなる八十八夜(5月2日ごろ)を迎えるころから釣れ始める。そのためキャスターの間では八十八夜がシーズンインの目安となっている。ただ2022年を見てみると、いろいろな魚種で1か月ほど遅れているという話が出ていたりもする。年によって多少前後するのだが、目安として覚えておいて損はない。
今回のロケ地である福井県のキスに関しても、例年より遅れているという前情報が入っていた。地球温暖化の影響か、このような年変動が近年は目立つようになっていて、『例年』というワードが使いづらいものとなっている。

「最盛期であれば、けっこう適当に投げてもそれなりに釣れるんですよ。それこそ本格的な投げ竿じゃなく、ルアーロッドに軽いオモリのちょい投げでも釣れます。群れの密度が濃いし、波打ち際までキスが寄ってきます。ただまだ群れが本格的に入っていないシーズン初期というかシーズン前みたいな状況なので、今回はちょっと苦戦するかもしれませんよ」

ハリ数は6本を選択。

「ハリの数は少ないほど管理しやすくて飛距離が出ます。もちろん多いほど釣れるわけですが、10本バリとか初心者はやめた方がいいです。よくも悪くも5本くらいがおすすめです。釣れるだけ釣るんじゃなくて、食べきれる数をほどほどに釣ろうということです。3本でも十分ですよね」

キスに関しては地球温暖化の影響なのか、全国的に減少傾向にあり、昔ほどたくさんは釣れにくくなっている。林の場合レギュレーションではないが、根絶やしにしないためにも小指のような小さいキスを狙うのはなるべく控えているという事だった。

エサはイシゴカイ、オモリは軽めの方がキスを釣りやすいわけ

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エサはイシゴカイとアオイソメを用意している。何が違うのだろう。

「イシゴカイの方が、キスの数釣りには向いています。何が違うのかというと、細いんでその太さがちょうどいい。あと、柔らかいですね。その分、食い込みがいい」

それではイシゴカイだけでもよさそうだが、アオイソメは必要なのだろうか?

「アオイソメは大物狙いのエサとして使うほか、濁りがあるとか、時化気味のときに活躍するので、熱心な投げ釣り師は両方用意します。イシゴカイをメインにアオイソメ少々といった感じです」

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ハリは競技キスSP5号(がまかつ)。普段、林の地元である太平洋に面した静岡県遠州灘ではここまで小さいハリは使わない。どちらかといえば、大バリに大きめのエサをつけて、サイズのいいキスばかりを狙うスタイル。

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「日本海側はサイズより数釣りなのと、前情報で魚が小さいという話を聞いていたので、小さいキスまで本気で全部釣るのではなく、どうしてもかかってしまったピンギスをたまに確認できるのが5号というサイズです。もう1号大きくすると小さいキスがほとんど釣れなくなって、エサがとられた時にキスがつついたのか、ほかのエサ取りなのか判断できなくなります。また1号下げると、今度は小さいキスが掛かりすぎてしまいます。僕は小さい魚はなるべく釣りたくないので4号までは落としたくないということから5号なんです」

実は投げ釣りの大きなオモリをキスは嫌がっている真実

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オモリはウッドシンカーという木と鉛で構成された特殊なオモリを選択。

「木は水に浮くので、鉛やタングステンだけのオモリよりも、砂の上を軽く引け、オモリが底を引きずる抵抗や振動も軽減できます」

キスは繊細な魚で、オモリの存在感は少ない方が望ましい。重いよりは軽い方が影響は少ない。

「例えば真夏のハイシーズンには、それこそ波打ち際までキスがやってきます。そういう時には、ルアータックルのちょい投げでキスを釣る事が可能になりますが、そのときにはオモリを3号くらいまで落とすことが可能になります。それくらい軽くすると着水音や引きずりの影響を、通常の投げ釣りタックルと比べてあきらかに減らすことができます。ちょい投げでも釣れるんじゃなくて、ちょい投げだから釣れるキスもいるということです」

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25号を超えるような重いオモリの場合は、まず、着水音でキスを驚かせてしまうため、100m沖がポイントなら120mくらい投げてから、ゆっくり巻いてくるようにする。直接、100mのポイントを直撃すると群れが散って釣れなくなってしまうからだ。

「引きずるオモリも嫌がられるんです。だから、オモリと最初のハリの間は60㎝以上離しています」

オモリと仕掛けの間には、フロロカーボン4号が80㎝ほど入っていて、この部分を砂ずりと呼ぶ。

「群れが濃く、活性が高くて、オモリの影響が少ないようなら、砂ずりを60㎝まで短くしてハリ数を増やす時もありますし、逆にナーバスで食いが悪いようなら、100㎝以上とることもあります」

100m沖を釣るというと、ずいぶん沖を釣るような印象を受ける。
「100mくらいでいいなら、ちゃんとした投げ釣りのタックルなら初心者でも簡単に飛ばせるくらいの距離ですよ」

投げ釣りで使用されるPEラインは25mごとに色が異なる。軽いキャストで5色半、つまり130m沖に着水したとする。着水後すぐにベールを返す。
「あ、水深10mを超えるような急深な場所ならベールはそのままにして、着底するまで糸を出しますよ。ただ水深4mとか5m程度なら、オモリが着水したらすぐにベールを返します。そのほうが仕掛けは絡まないです」

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どれくらいのスピードで巻くのが一番釣れるのか

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投げ釣りというと、仕掛けを遠くに投げてほったらかすイメージの人も多いかもしれない。
「止めて待つ釣り方もありますし、キス釣りでそれをやることもあります。その場合は、障害物というか岩の周りだったり、海底の斜面が急な場所で止めておく方がいいんですが、ひとまず忘れて下さい」

砂浜におけるキス釣りでは、オモリをズルズルと引っ張って仕掛けを移動させながら釣る。そうするとオモリが着水したはるか沖から足元の波打ち際まで広く探ることができる。一か所で止めているよりも、巻き続けた方が比べ物にならないほどチャンスが増えることになる。ただし、あまりにもおおざっぱすぎるというか、砂浜の全部がポイントですといわれてしまうと、今度は膨大過ぎて手のつけようがないように思えてしまう。
「キスは群れが濃いところと薄いところがあります。それが岸から50mなのか100mなのか、それとも200mなのか。その濃い部分を集中的に狙います。キスの数釣りではどこまで効率を高めることができるかが、ひとつのテーマになります

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林はクーラーボックスに座り、竿尻を砂浜につけ、膝に竿をあてて、ゆっくりとリールを巻き始めた。時折、止めている。このリールを巻く速さは目安があるのだろうか。

「まずどこまで速く巻いて釣れるのかというところですが、活性が高ければ魚が掛かって回収する時のスピードくらいでもキスは口を使います。巻かずに、止めていても釣れます。ゼロからそれなりの速度までキスは釣れます」

では、その中でちょうどいいスピードはあるのだろうか。

「その日、そのタイミングで魚の濃いところでベストなスピードを探すのが技術のひとつです」

とはいえ、何か巻き速度を判断する基準が欲しい。目安はあるのだろうか。

「例えば5本バリの仕掛けで、オモリから一番遠いハリにだけ魚が掛かるようなら、追いつけていないということなので、スピードが速すぎるという目安になります」

この日はアリが歩くような速度でリールを巻いている。

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「シーズン序盤で本格的に群れが入ってないらしいので、まずはゆっくりめに巻いています」

ときおり、止めている。

「食いが悪い時は、止めて食わせる間を作った方が食います。リールを巻いていて巻き心地が重くなるような場所は、海底の傾斜が急な所で、そういう所は流れに変化があったり、エサが集まりやすいので、止めて様子をみたりします」

「あ、アタった。4色のライン」
4色は75~100mのライン。

「目いっぱい投げて足元までゆっくり巻くのを、毎回繰り返しても魚は釣れます。ただ、これではあまりにも効率が悪いですよね。僕の場合は2色分を探ったら回収するというのがひとつのやり方になっています」

2色分、つまり50mの区間を集中的に探るようにしているとのこと。

「何匹か乗ったと思いますよ。回収してみましょうか」
回収といっても程よい速度で巻いている。この速度にもちょうどいいスピードがありそうだ。

「オモリが底に着かず、掛かった魚が水面に飛び出さない速度。これはオモリの重さやオモリの種類でも変わりますが、キスは口が脆い魚なので無理のない一定の負荷が掛かり続けるようにしたいんです」

水面にキスが飛び出してしまうと、波などで引っ張ったりゆるんだりを繰り返すので外れやすくなってしまう

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「ちっちゃいな。でも3匹、ついてます」

4色ラインでアタリが出るとわかったので、5色半投げたところ、今度は5色と4色でアタリがあった。

「食いが悪い時や群れの薄い時は、アタリがあったら止めます。そうするとキスの群れの中に仕掛けを留めることができます」

ただし活性が高い時に止める時間が長すぎると、1匹のキスが2つ3つのハリを食べて仕掛けがこんがらがったりする。そんなときは、林は3秒ないし5秒程度止めていた。

2投目も3匹。
「釣れた魚が冷たいなぁ。水が冷たい。まだ季節が夏になっていないなぁ」

一カ所ではねばらずに釣れなくなったら即移動

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3投目はアタリが途切れたので20m移動。
「だいたい群れの中の大きい魚から食ってきて、サイズが落ちたり1匹しか掛からなくなったりしたら移動します。キス釣りの格言、キスは足で釣れですね」

漠然と20m間隔で移動し投げて探ってもいいのだろうが、砂浜を見ると岬状に突き出た場所や波に削られて切り立った崖のようになっている場所もある。
「そういった変化のある場所は、周囲よりもいいポイントである可能性はあります。ですので、重点的にチェックします」

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岬状の先端は浅く手前は複雑に波立っているため、波立ちの向こうから沖がポイントになる。逆に、崖のようにえぐられた海岸線の場所は足元から水深が深いため、岸のすぐ近くでも釣れる可能性がある。

「という可能性が高いのであって、優先度は高いけれども、絶対に釣れるというわけではないと断っておかないとダメですね」

岬状のポイントで1匹。次の1投は空振り。一見、条件はよさそうなのだが数が伸びない。
「最初にやった場所が一番よかったりしてね」
魚釣りなので、当然そういうこともある。
「地形の変化はいい場所なんですが、反応がないので移動しましょう」

次は沖に見える黒い影の周辺を探る。

「海藻とかゴミだと思うんですけど、魚が少ない時期はそういった障害物を意識していますよ。そういう所はエサが多い場所だったり、身を隠しやすかったりとキスにとってはいい場所なんです」

釣り人にとっては根掛かりのリスクもあり、釣れる時期なら敬遠したいポイントという人もいるかもしれない。
「例えば根掛かりでハリが1本切れたとしても、チチワタイプのハリを持っているとその場でハリを交換できます」

林は、なるべくサイズのいいキスを釣りたいので、こういったゴミや海藻まわりは果敢に攻める。
「地元の遠州灘では、沖合で白波が立つような場所があって、ふつう投げ釣り師は仕掛けが絡まるので、そういった波の立つ場所を敬遠するんですが、僕はむしろ積極的に狙ったりします。幹糸を太くして絡みにくくし、さらに通常よりもかなり速い速度で巻くといいですね。まぁそんな釣り方もあるんだくらいに留めておいて、初心者のうちはそんなに変わった攻め方をしなくてもキスは十分に釣れます」

渋い状況といいながらも、3匹、3匹、2匹、1匹、3匹、2匹と1投ごとに着実に数を重ね、なんだかんだで20匹ほどはすぐに釣ってしまった。

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「アタリがあって魚が掛かった時に、その場で待てば2匹、3匹と食いつく可能性があります。あるいは沖から波打ち際までじっくり巻けばチャンスは増えます。でも掛かった魚が外れるリスクもあるわけで、そこが難しい」

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5本のハリに何匹釣れたら巻き上げるか。
仕掛けをダメにしていいなら、アタリがあった場所で止めておくといいですよ。これは大会で最後の1投で何匹か追加したいという時によくやる手です。普段の釣りでも、最後の1投ではやってみてもいい作戦ですよね。釣りの際中にそれをやると仕掛けがもったいないので、2度、3度アタリがあったら巻き上げるといった風にすることが多いです」

数釣りを競う大会の戦略としては、もしも釣れる魚のサイズが小さければ、イシゴカイのシッポの方をメインで使うといった方法もあると教えてくれた。

「逆に、ふつう魚の食いが落ちるのでイシゴカイの頭の部分は切って捨てるんですが、僕は大きな魚が釣りたいので頭の部分が垂れ下がるようにセットして使います」

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移動し数を伸ばしながらもまとまって釣れる場所を探せずにいた。
「ちょっと全体的に群れが薄いというか接岸してない状態ですので、こんな感じかもしれないですね」

ここで砂浜から堤防に足場を変えてみた。

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「投げ竿を使った場合、砂浜のどこからでも100m、150mの飛距離を出す事ができるわけですが、ルアーロッドを用いたちょい投げでは、100mより遠いポイントはなかなか攻略が難しいです。そういうときに、岸から突き出た堤防から投げるのはありですよね」

砂浜からではポイントまで届かない場合には、堤防の先端に立って遠くに届かせる。やみくもに遠くに飛ばせば釣れるわけではないが、近くを探っても反応がない場合には試してみたい。

キス

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