一問一答! ローカル5Gと高精度位置測位 : 富士通

一問一答!
ローカル5Gと高精度位置測位~DXを後押しする注目のテクノロジー

今、さまざまな企業や団体がDX(デジタルトランスフォーメーション)や働き方改革、そして持続可能な社会の実現に取り組んでいるが、これらを推進するにはデジタルテクノロジーの活用が不可欠である。今回は、数ある先端テクノロジーのなかから、高速大容量通信が可能な第5世代移動通信システム(5G)を占有できる「ローカル5G」と、高精細映像からミリメートル単位で人やモノの位置を検出できる「高精度位置測位ソリューション」について、Q&A形式でお届けする。

「ローカル5G」のメリットや現状、新機能などに関するQ&A

「高速大容量」「低遅延」「多数同時接続」という特長を持つ5G。ニーズに応じて企業や自治体などが、自らの建物や敷地内で柔軟に5G環境を構築し利用することができるのが「ローカル5G」である。日本では2019年12月に制度化され、富士通ではこれまで多くの企業や自治体のローカル5G導入支援を行ってきた。その経験をもとに、ローカル5Gに関する素朴な疑問について、導入経験が豊富な担当者が回答する。

ローカル5Gはどのような活用方法が多いですか? 傾向をお聞かせください。
大容量のデータを低遅延で伝送できるので、高精細映像伝送などを活用して、遠隔からの作業支援や教育、機器の制御、AI分析と組み合わせた異常検知などに利用されています。また、ローカル5Gは工場の敷地全体など広いエリアをカバーすることができるので、Wi-Fiや有線のネットワークでは難しいとされる工場内の柔軟なレイアウト変更も可能となり、活用が期待されています。
徐々にローカル5Gに対応したデバイスの種類や、その特性を活かすアプリケーションも増えてきており、さまざまな業種業態での活用が増えてきています。
ローカル5Gを活用している企業や団体の例を教えてください。
非常に多岐にわたっています。製造、建設、港湾、社会インフラなどは実証や実用化が進んでいます。これらに共通した目的は、人手不足の解消や効率化によるコスト構造の見直しなどです。ローカル5GとAIなどを組み合わせて活用し、省人化や業務の自動化を進めることで、人だけに依存しない企業体質にしていくのです。
これまで製造業では、「現場」で仕事をすることが常識でしたが、ローカル5Gを活用して熟練者が遠隔指導を行ったり、医療の現場では、例えば離島などの専門医がいない病院から高精細な映像を大学病院へ送ることで、人の顔色や医療機器の表示などを診ながら、専門医が遠隔地から診療するということも行われ始めています。現場の状況を詳細に知ることができることによって、場所に依存せず業務を遂行できるようになるので、さまざまな社会課題の解決につながっていきます。
企業や団体がローカル5Gに期待することはどのようなことでしょうか?
大きく4つあります。1つ目は、5G環境を自社で占有して利用できること。2つ目は、企業のセキュリティポリシーを遵守しつつ大容量通信ができること。3つ目は、Wi-Fiや有線のネットワークでは実現が難しい広いエリアでのモビリティの活用が可能になること。4つ目は、通信の安定性の確保です。5Gについては通信キャリアのネットワークを使うという選択肢もありますが、通信障害や災害、大規模イベントによる輻輳によって通信しづらくなる可能性もあるため、ミッションクリティカルな業務に利用することは難しく、そのため自社で5G環境を占有し自由に活用できるローカル5Gに注目が集まっています。
ローカル5Gを導入または導入検討している企業からはどのような声があがっていますか?
発展途上にあるテクノロジーですので、ネガティブな評価もあります。目的によっては、ローカル5G対応の端末がないという話をよく聞きます。コスト面でも、Wi-Fiと比較した場合に初期費用が高いという声もお聞きします。ですが、端末のバリエーションは徐々に増えてきています。またコストについては、例えば、広大なエリアをWi-Fiでカバーしようとするとローカル5G環境を構築するよりもコストが高くなってしまう場合もあるので、利用目的を明確にして適切なネットワークを選ぶことが重要です。
一方、導入された方からのポジティブな評価は、やはり高速大容量通信のパフォーマンスです。「使ってみた結果、やっぱりすごい。期待した以上の結果を得られている。」という声が多いです。「従来のネットワークでは遅延があって断念した取り組みも、ローカル5Gを活用することで実現が可能になった。」などの声もいただいています。特に映像伝送とAI分析のリアルタイム性については驚かれます。
ローカル5Gの導入検討時によくお客様から質問されることについて教えてください。
ローカル5Gを運用する上で、異常な電波を発していないかなどの管理を行う必要があるため、「第三級陸上特殊無線技士」もしくはそれよりも上位の資格所有者を登録しなければならず、「自分たちにできるのか」といった声を聞きます。富士通では導入後の運用支援も行っていますので、ご相談いただければと思います。
ローカル5Gの新機能「準同期」とはどのようなものでしょうか?
まず、全国通信キャリア5Gもローカル5Gも時刻信号に従い、同じタイミングで動作しています。開始タイミングと上り下りの通信帯域の比率が同じ場合を「同期」と呼びます。一方、開始タイミングは合わせ、上りの通信帯域の比率を増やすことができる電波の使い方を「準同期」と呼び、ローカル5Gだけに許された使い方となります。準同期の利用シーンとしては、カメラ側からの高精細映像伝送など、上りの通信比率を多くすることが考えられます。すると、同じ設備でより大量のデータを現場から送信できるようになるのです。
「準同期」のメリットはどのようなものがありますか?
やはり現場から大量のデータを送信するシーンでメリットが大きいです。例えば、従来では7~8台の4Kカメラからしか映像伝送できなかったものが、準同期を導入すると20台近くの4Kカメラから映像伝送が可能になります(注1)。工場内などで多くのカメラを設置し、リアルタイムに現場の詳細な状況を把握・管理することができるようになります。
  • (注1)
    利用帯域幅100MHzの例。カメラ台数は通信環境によって変化します。

ローカル5Gとの親和性が高い
「高精度位置測位ソリューション」に関するQ&A

「高精度位置測位ソリューション」は、部屋の天井などに設置したカメラからの高精細映像をローカル5Gなどのネットワークを介してエッジサーバに伝送し、それをAIで分析して現場の人やモノの位置を高精度に検出するソリューションである。ミリメートル単位での測位が可能な高精度位置測位ソリューションに関する疑問について、開発に携わった担当者が回答する。

高精度位置測位ソリューションのメリットについて教えてください。
現場の状況を正確かつリアルタイムに把握できるのが一番のメリットです。位置情報をデジタル化できることで、AGF(注2)による自動運搬や現場の見える化を実現し、業務の自動化や効率化に役立てることができます。広範囲の現場をカメラの映像でとらえて測位するので、ロボットや現場で働く人にセンサをつける必要がないというのもメリットです。測位の範囲を広げたい場合はカメラ台数を増やすなど、柔軟に対応が可能です。
  • (注2)
    Automated Guided Forklift
高精度位置測位ソリューションの開発背景を教えてください。
ローカル5Gの活用方法を検討していた時に、ローカル5Gは大容量データを遅延揺らぎが少なく扱えるので、高精細映像の活用に向いていると考えました。映像から得られる情報は非常に多く、高精細であればあるほど細かな粒度まで分析することができ、人・モノの位置や状況を正確に把握することができます。GPSやRFID、ビーコンといった測位技術もありますが、それらは現場にある金属などの影響を受けてしまうため、ある現場ではビーコンを活用して人の稼働状況をみようとしたら誤差大きくて正確な位置を認識できず、違う作業場所にいたと誤認識してしまう、といった課題もありました。映像から測位するのであれば金属の影響を受けないので、位置情報がズレることもありません。ローカル5Gと高精細映像の活用はさまざまな業種の課題解決につながると期待し、ソリューションの開発が始まりました。
ミリメートル単位の測位を追求してきた背景はどのようなものだったのでしょうか?
現場の状況の可視化や人の動きの認識といった目的であれば、ミリメートル単位の精度は必要ないかもしれません。しかし、AGFやロボットなどを精密に制御し、業務の自動化や効率化を実現するにはミリメートル単位の精度が必要だと考え、精度にこだわりました。
これまで、お客様からはどのような反響やお問い合わせがありましたか?
「位置測位をしたいが、既存技術では精度が低かったり不安定だったりするので、高精度位置測位ソリューションについて詳しく聞きたい。」といったお問い合わせを多くいただいています。マーカレスで自動搬送機を使いたいというニーズや、倉庫内状況の正確な把握を実現したいといったニーズがあり、いくつかのプロジェクトが進行しています。
また、屋内で動くロボットの誘導など、リアルタイムな機器制御のニーズもあります。ロボットに装着したカメラやセンサだけの情報では、通路の曲がり角の先から向かってくる人やロボットを事前にとらえることはできません。天井から撮影した映像であればそれもリアルタイムにわかるので、よりスムーズで安全な誘導が可能になります。
ほかにも、製造現場や建設現場で人がどのように稼働しているか、製品が滞留していないかなど、現場状況を見える化した情報をデジタルツインに取り込むことで最適化や効率化を図りたいというニーズもありました。
ローカル5Gと高精度位置測位ソリューションを組み合わせるメリットを教えてください。
高精細映像を活用してリアルタイムに正確な分析や機器などの制御を行うためには、大容量の映像を遅延なくエッジサーバに伝送してAIで分析する必要があり、そのためには安定した高速通信が必要となります。複数台のカメラを広範囲に設置して現場を見える化したいとなると、Wi-Fiよりローカル5Gの方が適しています。ここに準同期機能を組み合わせることで、多数のカメラからのデータ伝送がよりスムーズに行えるので、高精度位置測位ソリューションの利便性がより高まると考えています。

今回は、DXや働き方改革の実現を後押しする2つのテクノロジーについてQ&A形式でお届けしてきた。「テクノロジーやソリューション活用に興味がある!」という方は、ぜひお気軽にお問い合わせいただきたい。


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