(写真と本文は関係ありません)
スルガ銀行の創業家会長が辞任するとの報道がなされました。
30年間にわたりトップを務め、スルガ銀行をガバナンス不全に陥らせた責任を取るということのようです。
では、スルガ銀行は新たに生まれ変われるのでしょうか。スルガ銀行はどうなっていくのでしょうか。
今回は創業家会長の退任にかかる懸念点とスルガ銀行の今後の行方について簡単に考察しましょう。
報道内容
日経新聞がスルガ銀行の創業家会長の辞任を報じています。まずはこの記事を引用します。
スルガ銀、創業家の会長辞任へ 不適切融資で引責【イブニングスクープ】 2018年8月27日 日経新聞
スルガ銀行の岡野光喜会長(73)が辞任する意向を固めたことが27日、わかった。同行はシェアハウス向けを含む投資用不動産融資で、改ざんされた審査書類に基づく不適切な融資が横行していた。創業家出身で30年間にわたりトップを務めてきた責任は重いと判断。企業統治(ガバナンス)の欠如で不適切な融資のまん延を防げなかった経営責任を明確にする。
これが日経新聞が報じた内容です。
留意すべきデータ
前述の日経新聞記事をご覧になった読者は、これでスルガ銀行は一区切りをつけ新たな一歩を踏み出せる、生まれ変われると感じるでしょうか。
ここで、一つ留意すべきデータがあります。
それは大株主一覧です。
2018年3月末時点のスルガ銀行大株主は以下となっています。
- エス・ジー・インベストメント 5.48%
- スルガ総合保険 4.74%
- 日本トラスティ・サービス信託銀行 3.96%
- 損害保険ジャパン日本興亜 3.81%
- 日本マスタートラスト信託銀行 3.18%
- 明治安田生命保険 3.17%
- エス・ジー・アセット 2.91%
- スルガ奨学財団 2.33%
- BNPパリバ 1.66%
- 日本トラスティ・サービス信託銀行 1.66%
(出典 スルガ銀行有価証券報告書)
この一覧を見ると、創業家が関与していると思われる資産管理会社・関係会社という大株主が存在することが分かります。その議決権比率は合計15.4%となります。
スルガ銀行の時価総額は約1,400億円(2018年8月27日終値時点)ですので、200億円以上の価値の株式が創業家に握られている可能性があることになります。
(※スマートデイズの問題発覚前から比べると株価は1/4程度になっていますので、創業家の保有する株式価値も大幅に下落はしていますが)
スルガ銀行は上場企業ではあるものの、創業家が歴代トップについてきたことから分かる通り、議決権ベースでも相当な割合を創業家が占めていると思われます。
所見
スルガ銀行の不適切融資問題を調査している第三者委員会は8月末にも調査報告を提出する予定です。
先日報道されたように、調査報告の内容はスルガ銀行の経営陣の責任を厳しく問うものになるでしょう。
現在も立ち入り検査中と思われる金融庁も、創業家会長の責任を厳しく追及することになると思われますので、辞任は不可避といったところでしょう。
他の経営陣がどのようになるかは分かりませんが、当然相応の責任を取ることになります。
では、これでスルガ銀行は生まれ変われるのでしょうか。
先ほど指摘したように創業家の持株比率はかなりのものがあります(統合に反対した出光興産ほどではありませんが)。
一時期は創業家が経営から退くとしても、一段落したらモノ言う株主になるかもしれないのです。もちろん行内に創業家のメンバーが存在すれば(有価証券報告書等では存在するかは分かりません)、将来的にはトップに上りつめる可能性もあるでしょう。簡単には創業家の影響を排除することは出来ないと考えた方が良いでしょう。
会社ホームページにある沿革を見ても分かるようにスルガ銀行は岡野家の企業なのです。
(スルガ銀行ホームページ)
https://www.surugabank.co.jp/surugabank/corporate/history/#event-1887
筆者はスルガ銀行が現在の株主構成だった場合、すなわち単独で存続していく場合には、創業家の影響は完全には排除できず、そう簡単に企業風土等と変わらないと考えています。(創業家が「悪」だと言っている訳ではありません。創業家の施策を否定しづらいだろうと推測しているのです。)
そのため、金融庁は同じような問題意識を持ち、スルガ銀行を他の地銀と統合させるのではないかと予測しています。
創業家の持株比率を下げ、企業風土を変え、従来の施策を改めるには、他の銀行が主導した方が良いからです。
火中の栗を拾う地銀が出てくるかは分かりませんが、水面下で様々な動きが、今この時点でもあるのではないでしょうか。