2018年4月から有期労働契約の無期労働契約への転換が本格実施されます。
これは労働契約法の2018年問題と呼ばれており、企業側にも様々な対応が必要となります。
今回の記事は、有期雇用の無期雇用への転換についてみていきます。
無期労働契約転換が実施される背景
日本の雇用者に占める非正規雇用者の割合は傾向としては増加し続けており、近時では非正規雇用者の割合は37%程度となっています。
ただし、今後は人手不足を背景に正規雇用者の割合が改善していく可能性はあります。
このような環境下、同一労働同一賃金の導入による正規・非正規労働者間の待遇是正、非正規労働者のキャリアアップ推進のため、有期労働契約の無期労働契約への転換が必要とされてきたのです。
以下、厚生労働省の「有期契約労働者の円滑な無期転換のためのハンドブック」から同省の問題意識を抜粋します。
今日、有期社員の約3割が、通算5年を超えて有期労働契約を反復更新している実態にあります。
つまり、多くの会社にとって、有期社員が戦力として定着しているといえます。
とくに長期間雇用されている有期社員は、たとえば仮に「1年契約」で働いていたとしても、実質的には会社の事業運営に不可欠で恒常的な労働力であることが多く、ほぼ毎年「自動的に」更新を繰り返しているだけといえます。
このような社員を期間の定めのない労働契約の社員として位置付け直すことは、むしろ自然なことであり、実態と形式を合わせる措置といえます。
このように考えれば、無期転換は特別なことでも、また、大変なことでもなく、より適切な雇用関係にしていくための取組なのです。http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11202000-Roudoukijunkyoku-Kantokuka/0000138213.pdf
無期転換ルールの概要
無期転換ルールは、同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合、有期契約労働者(契約社員、パートタイマー、アルバイトなど)からの申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるルールのことです。
契約期間が1年の場合、5回目の更新後の1年間に、契約期間が3年の場合、1回目の更新後の3年間に無期転換の申込権が発生します。
有期契約労働者が使用者(企業)に対して無期転換の申込みをした場合、無期労働契約が成立します(企業は断ることができません)。
出典:厚生労働省HP
なお、無期転換契約への申し込みをするかどうかは 有期労働者側の自由ですので、申し込みをしないという選択肢もありえます。無期転換にかかる申込権が労働者側に発生したとしても、企業側は必ず無期雇用に転換しなくてはならないわけではありません。
スケジュールとしては、2013年4月1日に改正労働契約法が施行され、無期転換ルールにより、有期労働契約が通算5年を超えて反復更新された場合、有期契約労働者の申込みにより、 期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されることとなります。
この通算5年のカウントの対象となるのは、2013年4月1日以降に開始した有期労働契約からですが、改正労働契約法が施行されてから2018年4月1日で5年が経過し、今後、無期転換の本格的な発生が見込まれるのです。
よって、対策をしていない企業は至急対応をしていかなければなりません。
無期転換ルールの留意点
無期転換ルールによって契約期間は無期に転換されますが、労働契約の条件(仕事内容、勤務地、賃金、労働時間、休日等)は労働協約、就業規則、個別の労働契約等で別段の定めがない限り、直前の有期労働契約と同一の労働条件になります。
無期雇用転換の申込がされれば、自動的に正社員の労働条件となるわけではないのです。
特に企業側にとって留意すべきは、通常の有期労働契約には定められていない「定年」の労働条件でしょう。就業規則等で手当てをしていないと、無期転換された労働者は定年の定めがない労働条件が適用されることになります。
さらに法の改正により不合理な労働条件の禁止も規定されています。有期労働者と無期労働者との間で不合理に労働条件を相違させることが禁止されているのです。
対象となる労働条件は、賃金、労働時間だけではなく、服務規律、教育訓練、福利厚生等労働者に対する一切の待遇が含まれます。当然、通勤手当、食堂の利用、安全管理等についても労働条件を相違させることは特段の理由がない限り認められません。
まとめ
今まで述べてきた無期雇用への転換ルールの導入は、銀行員にとってもビジネスのネタとなる可能性があります。
まず、人事コンサルが可能な関係会社があれば、そのコンサル会社との連携が考えられます。この機会に、就業規則の単純な見直しのみならず、会社の人事戦略をコンサルするということです。日本の労働人口が減少していくことは間違いありませんので、今のうちから、その対応を視野に入れる必要があります。今回の無期転換はその見直しを行うきっかけとなる可能性があるのです。
また、無期転換した労働者に対しては労働契約法上で退職金や企業年金の支給・加入が義務付けられてはいませんが、今回の就業規則等の見直しにあわせて退職金・企業年金の見直しも必要かもしれません。
その点についても銀行員にとってはビジネスのネタとなるでしょう。