PROBLEM
日々の生活が原因で、
健康が脅かされる
水道の蛇口からはいつでもきれいな水が出てくる、自宅でトイレやシャワーを使うことができる、廃棄物は回収されて適切に処理されるというような衛生的環境に暮らすことができない人々が世界には多くいます。東南アジアや南アジアの国々では高い経済成長の陰で、こうした衛生上の対応が後回しになっているために、病気にかかりやすい、身体の不調が続くといった健康の問題が農村でも都市でも生じています。上下水道やごみ処理施設の整備を行政が進めるのを待っているだけでは、解決に至りません。自らの健康は自らが守るための行動変容が大切なのです。
日本では、トイレが無い住宅に暮らしている人はほぼいませんが、カンボジア、ベトナム、ネパールではおよそ300万人が野外で排泄を行わなければならない状況にあります。地面に穴を掘って目隠しの仕切りをつけた程度の非衛生的なトイレを使用している人々を含めるとさらに数字は大きくなります。
自宅にトイレが無い国民の数(%:総人口に占める割合)
出典: WHO/UNICEF JMP2022
トイレの有無は世帯の経済力と相関しており、低収入層ほどトイレの保有率は下がります。しかし、少ない収入ながらも工夫してトイレを設ける人々も存在します。したがって、衛生改善は経済的能力に左右されるとはいえず、トイレや手洗いなどの衛生的な生活環境づくりの大切さを低く見てしまっている人々の認識をまず改めることが肝心なのです。
保健衛生が扱う課題は、清潔の維持ばかりでなく、身の回りの危険の防止、毒物やアレルギー物質に関する認知と対処、家族計画、精神的健康など多岐にわたり、家庭、職場、学校、コミュニティーで取り組みがなされます。いずれについても一人ひとりが理解して実践することが欠かせませんが、保健衛生に関する情報や行政のサポートが乏しい開発途上国では以下の例のような状況が見られます。
これらの問題は、必ずしも経済が発展しなければ解消できないというものではありません。まず一人ひとりが正しい知識を持ち、日々の生活で実践する習慣をつけることが必要です。
FIDRはいずれの国でも保健衛生の向上を重視し、住民への情報発信と啓発を出発点に、行動変容につながる研修を行います。そのうえで、家庭や学校の衛生施設を整備するための後押しとして建築資材や技術者を提供するとともに、行政当局にはそのモニタリングや監督にあたってもらうことで将来の対応力を強化します。 また、地震や洪水などの被災地では、衛生事情が悪化するため、緊急支援物資として、石鹸や浄水剤などを、避難生活を送る人々に提供します。
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