キリスト教に関するものならなんでもあり!
「いのフェス」は日本各地で開催され、東京開催は4年ぶり。教会とは接点のない筆者はドキドキしながら会場へ。
メイン会場の礼拝堂は明るいイベントスペースといった感じ。礼拝堂から続く出展者ブースでは、長机の上に並べられた手芸作品や本などが対面で売られている。同人誌などの即売会の様子と同じでなんだかホッとした。
こちらはよく車に貼ってある「赤ちゃんが乗っています」ステッカー。聖母像とこの文言があまりに自然すぎて、宗教色はあまり感じられないのが不思議。製作者ご本人にお子さんが生まれたのを機に自作したそうだ。
ドット絵を参考に製作されたアイロンビーズ作品は聖人がモチーフ。海外のアイロンビーズに同梱されている作品見本には「キリスト像」の作り方が載っているものもあるそう。欧米の子どものたちにとっては身近な題材らしい。
二頭身のかわいいマスコット。
キリスト教の図像学では、顔が違っても「〇○を持ってるから、これは誰々」と分かるようになっている。キリスト教に関連する人物はキャラ化しやすい?
聖書だってラノベ。二次創作もアリ!?
自作小説を販売していた波多野琴子さん。波多野さんは表紙イラストも自分で描いている。
「第1回聖書ラノベ新人賞」で大賞となった『17歳の牧師だけど何か質問ある?』の高山井作さんと、イラストを担当した金徳造さんのサイン会も行われた。
高山さんはクリスチャン。クリスチャンの子どもたち、特に中学生くらいからの子どもが読む本が少ないことが以前から気になっていたそう。「教会にも持っていける面白い本を作りたい」との思いでこの小説を書いたとのこと。
イラスト担当の金徳造さんは聖書に関するマンガ絵本なども描いている。「絵を描くときはクリスチャン向けだとか、ノンクリスチャン向けだとかは意識していない」と話してくれた。
ちなみに2019年1月10日まで「第2回聖書ラノベ新人賞」作品募集中。
心に沁みる音楽。でも賛美歌とかじゃない
メイン会場で行われた矢嵜風花さんのピアノ弾き語りライブ。近年、ギターを持って「生きづらいけど頑張れよ」的な歌を歌う女の子シンガーは世の中にたくさんいる。
しかし矢嵜さんの場合、歌詞の後ろに「キリスト教」があるからか、ブレがない。でも決してお説教くさい歌ではない、あくまでポップス。
「布教したくて歌っているわけではありませんが、これを聞いてくれた人の人生が少しでも良い方へ向けばいいなと思ってます」と笑顔で話す。
「教会ブログ術」、「聖書クイズ王」はキリスト教関係なくためになる!
フリーカメラマンでブロガーの松山歓己さんの「明日から役立つ教会ブログ術」はブログの開設や運営方法についての講演。
キリスト教を広めるためにブログを、という話が出てくるので布教イベントか? と思いきや、これからブログを始める人、ブログに行き詰まっている人へ、宗教関係なく有意義な内容だった。
誰でも参加の「聖書クイズ王」
イベントで特に盛り上がりを見せたのは「出張!聖書クイズ王決定戦」。問題は当然、聖書に関すること。でも○×クイズ、三択クイズなので、ノンクリ(※ノンクリスチャン。キリスト教徒ではない人)の筆者も参戦してみた。○×クイズはまぐれで突破。でも三択クイズで敗れてしまった。
Q.次の旧約聖書の人物の組み合わせのうち、双子はどれでしょう
(1)モーセとアロン
(2)エサウとヤコブ
(3)カインとアベル
皆さんはお判りだろうか?
正解は(2)エサウとヤコブでした。
勝ち進むと映像問題や筆記問題などが出題され、会場からは「簡単、簡単」「引っかけだったか!」などの声も飛び交った。
「夏目漱石の『三四郎』に出てくるセリフ“われはわがとがを知る。わが罪は常にわが前にあり”は詩編の何篇でしょうか?」など、キリスト教徒であっても難しそうな問題も……。正解は詩篇51編。
筆者も参加賞のカードブックをもらって満足。
牧師とお坊さんのガチンコ対決!
最後のイベント「お題説教×お題法話 ギョーカイ用語禁止編」。これはお坊さん側では以前から行っていたイベントで、お坊さんが即興で5分間の法話を行うもの。条件は、観客から出してもらったキーワードを話の中に入れること。
今回はここにキリスト教の牧師も加わり、お互いに仏教辞典やキリスト教辞典に掲載されている「ギョーカイ用語」を使わないのがルール。
観客から「プリキュア」のワードが出ると、牧師側が苦笑い。「あれ日曜日の午前中に放送してるんですよね? その時間、牧師は一週間で一番忙しくて」と笑いを誘った。
「寺」=「某宗教施設」、「聖書」=「世界で一番読まれている本」など、ギョーカイ用語を必死で言い換える様子に笑いが絶えず。即興で歌を歌う牧師さん、「キリスト教の幼稚園に行ってたんですよ」とカミングアウトするお坊さん。会場の座席も満員で立ち見も出るほどの盛況ぶりだった。
この説教・法話に勝ち負けはないのだが、クウジット株式会社による"笑顔計測"も行われていた。これは、話者と聴者の笑顔度やその相関度を計測するというもの。笑顔相関度(つながりや共感)の最大値をマークしたのは、陣内大蔵さんだった。また、法話や説教は会場を笑わせればよいというわけではないが、会場の笑顔度の最大値(最高瞬間笑顔度)をマークしたのは、1回目の二條和宏さんだった。
説教・法話の後、仏教、キリスト教それぞれのジャッジと解説が行われた。キリスト教では「結婚」が重要な概念として辞典に載っていたためNGだったり、一方「世界」が仏教語だったりと、思わず「へえ」な知識がいっぱいの解説に知的好奇心が刺激され、楽しめた。
ステージの一部はYouTube「いのフェスチャンネル」でも見ることができる。
https://www.youtube.com/channel/UCE8xOIS_-tn3Uu84U4__h8g
実は参加する前は「勧誘されたりするのだろうか?」という不安が少しあったのだが、このフェス中、勧誘されたことは一切なかった。
主催者によると仏教徒の方も、宗教を信じていない方々も楽しめるように工夫しているそう。フリーマーケットでは出展者の「キリスト教愛」が伝わってきたが、押し付けてくるものではない。普通のイベントとして一日楽しむことができた。
最後にいのフェス実行委員会代表の松谷信司さんに話を聞いた。
――「いのり☆フェスティバル」(以下「いのフェス」)が始まったきっかけ、目的はなんですか?
松谷さん:もともとひとつの教会だけで販売しているオリジナルグッズや、あまり日の目を見ていない手作り品などを埋もれさせておくのはもったいないので、教派や地域を超えてシェアしたいという思いがあり、有志のフリーマーケットができないかと考えていました。
また、いきなり教会の礼拝や聖書にはとっつきにくいという信者ではない方々のために、イベントならのぞいてみようと思ってもらえるのではという期待を込めて教会版の「学園祭」「コミケ」として開催したのが始まりです。
―― 実際にイベントを行ってどうでしたか?
松谷さん:宗教の違いや、キリスト教内でも教派を超えて参加してもらえたのが驚いたし、嬉しかったです。フリーマーケットもイベントも成功でした。『いのフェス』は地方で開催して欲しいというラブコールをたくさんいただいていますので、次の開催は地方になるかと思いますが、また東京でも開催したいです」