公園の特長_吉野熊野国立公園_環境省
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吉野熊野国立公園の写真

公園の特長

幽玄の山々、深い渓谷、黒潮流れる南海
~森川海のつながりと悠久の歴史・文化に出会う~
指定:昭和11年2月1日
面積(陸域のみ):61,604ha
三重県、奈良県、和歌山県
吉野熊野国立公園は、山岳、河川、海岸から成る変化に富んだ国立公園で、近畿の屋根とも称される半島の中央部を南北に走る大峰山脈とその東側に位置する大台ヶ原、大杉谷、また、これらの山岳を源とし、激しく侵蝕しながら熊野灘に注ぐ熊野川、北山川の中・下流域、熊野灘から枯木灘にかけての多様な海岸地形が見られる海岸線、熊野信仰の古い歴史によって守られてきた那智山等から成っています。
また、国立公園の一部地域が「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界文化遺産に、北部の一部地域が生態系の保全と持続可能な利用活用の調和を目的としたユネスコエコパークに登録されており、さらに、和歌山県と奈良県の南紀熊野地域が日本ジオパークに認定されています。

地形・景観

切り立つ山々の写真

切り立つ山々

山岳地域
大峰山脈は、標高1,915mの八経ヶ岳を最高峰に、稲村ヶ岳、山上ヶ岳、大普賢岳、行者還岳、弥山、仏生嶽、釈迦ヶ岳、大日岳、天狗山などの標高約1,900~1,500mの山々が連なる関西を代表する山岳地域です。
大台ヶ原随一の絶景(大蛇嵓からの展望)の写真

大台ヶ原随一の絶景(大蛇嵓からの展望)

大台ヶ原は、古生層、中生層の堆積岩からなり、標高1,500m前後に広大な平坦面をもつが我が国ではまれな非火山性の隆起準平原です。地区内を流れる東ノ川が深いV字渓谷をつくり、滝や岩壁が連なっています。
七ツ釜滝(大杉谷)(版権者:森正裕)

七ツ釜滝(大杉谷)(版権者:森正裕)

大台ヶ原の東側に位置する大杉谷は近畿の秘境とも呼ばれ、黒部渓谷や清津峡と並ぶ日本最大峡谷の一つに挙げられています。深いV字谷を流れるエメラルドグリーンの沢、手付かずの原生林と大小100に達する滝や淵が訪れる人を魅了します。
瀞峡の写真

瀞峡

河川地域
我が国有数の多雨地帯である大峰、大台ヶ原の豊富な水を集め、熊野灘に注ぐ熊野川及び支流の北山川の中・下流域では、激しい浸食作用によりほぼ全域にわたり深いV字谷となっています。
北山川の中流に当たる瀞峡は、大峰山脈や大台ヶ原を源とする熊野川の支流である北山川下流域の峡谷で、上流から奥瀞・上瀞・下瀞に分かれ、そのうち下瀞が「瀞八丁(どろはっちょう)」とも呼ばれています。マグマで硬くなった地層が浸食されて垂直に切り立った絶壁や奇岩、深い淵が連なる変化に富んだ景勝地で、ウォータージェット船などで類いまれなる渓谷美を探勝することができます。
那智大滝の写真

那智大滝

那智山地域
妙法山、烏帽子岳等から成る壮年期の山地で、第三紀層に貫入した花崗斑岩が周囲に比べ侵蝕が遅いため取り残されてできたものです。133mと高さ日本一を誇る名瀑である那智大滝は、この両地層の境の急崖を流れ落ちるものです。
楯ヶ崎の写真

楯ヶ崎

海岸地域
平坦地に乏しく、壮年期の急峻な山地が海まで迫り、海岸には熊野灘の激しい波浪を受けた海食崖がよく発達しています。
海岸線は、沈降と隆起の繰り返しにより、複雑で変化に富み、沈水海岸・礫浜・海岸段丘等、様々な海岸地形を見ることができます。
王子ヶ浜の写真

王子ヶ浜

尾鷲から鬼ヶ城にかけては、志摩半島から続く典型的な複雑な海岸で大小の湾入が続いています。これに対し、鬼ヶ城から新宮市にかけて続く七里御浜と王子ヶ浜は、直線的な隆起海岸で、海沿いに平坦地が続く海浜です。
勝浦周辺から、浦神半島に至る海岸線は、また、複雑な海岸となり、屈曲に富み複雑な景観を見せています。
橋杭岩(版権者:串本町)の写真

橋杭岩(版権者:串本町)

本州最南端の潮岬は陸繋島で、海食台地の平坦地が広がり、海岸段丘が見られます。この東側に浮かぶ大島にも海岸段丘がみられ、海岸線は潮岬とともに、特に南側が屈曲に富み、海食崖がよく発達しています。

植物

大台ヶ原の西部(通称:西大台地区)には、隆起準平原上に広大なブナ林が残されています。この林は、現存する表日本型ブナ林としては、我国有数のもので、学術的にも貴重です。また、日出ヶ岳等稜線部には、大峰山脈と同様、我が国の南限とされるトウヒ林が見られます。
林床の写真
大峰山脈では、八経ヶ岳山頂付近にシラビソ純林やコメツガ林、トウヒ林が広がり、一部は天然記念物に指定されています。 この地域は黒潮などの影響を受け、暖地性のラン、シダがよく繁茂し、北限とされるユノミネシダのほか、オオタニワタリ、ハチジョウシダ、グンバイヒルガオ、ハマユウ、ノアサガオなどの暖地性植物が、海岸地域などに生育します。
ハマユウの写真

ハマユウ

動物

大台ヶ原、大杉谷、大峰山脈の山腹に広がる自然林は、哺乳類を始め、鳥類、昆虫類の格好の生息地となっています。特に哺乳類ではニホンジカ、ニホンカモシカ、ツキノワグマなどの大型獣、ニホンザル、キツネ、ホンドリス、ノウサギ、イタチ、タヌキなどの中・小型獣が生息し、我が国に生息する哺乳類のほとんどを見ることができます。
ルリセンチコガネの写真

オオセンチコガネ(ルリ型。通称ルリセンチコガネ)

また、海岸地域には海鳥類が豊富で、熊野灘沿岸の大小の島々、岬部などに、アオサギ、クロサギ、アマツバメなどの繁殖地がみられます。この地域は黒潮に近く、イシサンゴ類や熱帯魚などが生息し、とくに潮岬周辺や二木島付近では特異な海中景観を見ることができます。
テーブルサンゴ群集(版権者:串本海中公園センター)の写真

テーブルサンゴ群集(版権者:串本海中公園センター)

文化

今なお大峯山寺への拝登が続く(山上ヶ岳)の写真

大峯山寺(山上ヶ岳)

大門坂石畳の写真

大門坂石畳

木々に取り囲まれる社殿(水分神社)の写真

水分神社(吉野山)

吉野熊野国立公園は、中世から近世にかけて栄えた大峰修験と熊野信仰という宗教上の聖地を区域内に含み、これに関わる史跡や遺跡が多く見られます。
この拠点であった吉野山、洞川 、山上ヶ岳、前鬼及び熊野三山と呼ばれる那智山、本宮、新宮には古社寺が残り伝統を伝えています。
特に、大峰山脈の北端に位置する吉野山は、多くの史跡、社寺が残っています。"花の吉野"として名高い吉野山のサクラ林も、当初は宗教に由来して植林され、成立したものです。
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