本公園では、活発な火山活動、過去に繰り返されてきた気候変動、海面から山頂までの1,700mの標高差、世界で最も大きな海流の一つである暖流の黒潮、山岳部では年間4,000mmとも言われる豊富な降水量などによって、多種多様な植生が分布しています。高標高地域では火山活動の影響を受けた硫気荒原(硫気環境に適応した疎生の植生)やミヤマキリシマ群落などが成立しているほか、中標高地域ではブナなどの落葉広葉樹林、モミなどの温帯針葉樹林、シイやカシなどの照葉樹林、低標高地域ではアコウなどの亜熱帯樹林など変化に富み、それを基盤とする生態系が成立しています。
溶岩の流出跡など、過去に噴火の影響を受けた場所では、噴出時代別に遷移段階が異なる植生が成立しており、生態系の変遷がみられる学術的にも貴重な場所となっています。
山頂部に広がるミヤマキリシマ群落(写真提供:鎌宮武義氏)
霧島地域では、多種多様な植物が生育し、季節を通じて様々な花を観察することができます。早春にはマンサク、ハルリンドウなど、初夏にかけてヤマフジ、オオヤマレンゲ、コイワカガミなど、夏にはナツツバキ、イワタバコなど、秋にはオミナエシ、センブリなどが見られます。
ミヤマキリシマ、キリシマミズキ、キリシマグミ、キリシマヒゴタイなど、「キリシマ」の名前を持つ植物も多数あります。
オオヤマレンゲ
キリシマミズキ(写真提供:鎌宮武義氏)
錦江湾地域においても、キイレツチトリモチやシュロソウ、ソテツ、アコウや、佐多岬のギョボク、ビロウ、開聞岳山頂付近の雲霧帯にてギボウシランやナツエビネなど、多様な植物が見られます。特に指宿地区では、ノハラクサフジやオオバショウマ、ヒゴスミレなどの北方系の種と、ソテツやグンバイヒルガオなどの南方系の種の双方を観察することができます。
アコウ