本公園の生態系は、火山性ガスが噴気する硫気荒原のほか、山麓部に広がる樹林、野焼きや採草により維持されている草原の大きく3つに区分されます。
硫気荒原は過酷な環境に適応した動植物による特異な生物相が成立し、樹林は二次林や自然林など様々なタイプの森が多様な動植物を育んでいます。草原は、人の利用や管理によって植生が異なり、野焼き・採草などを続けることでススキなどが優占する長草型の植生や、放牧の牛馬による採食でシバなどが優占する短草型の植生などが見られ、それぞれ特徴的な動植物を育む生態系を有しています。
採草利用している草原(長草型)
放牧利用している草原(短草型)
火山の周辺では、火山性ガスの影響により、ミヤマキリシマやコケモモなどの特徴的な植物が群落を形成しており、独特の景観を呈しています。
山麓に広がる草原地帯は、永年にわたり放牧、野焼き、採草などの行為によって樹林化が抑えられてきました。優占種はススキですが、草原のまま維持されているからこそ絶滅が心配されているヒゴタイ、キスミレ、エヒメアヤメなどの希少種が、多く残されており、たいへん重要な生育地となっています。そのほか、タデ原などの湿原には、サワギキョウやヌマガヤなどが群生する学術的に貴重な植生が発達しています。
ミヤマキリシマ群落(高岳)
ヒゴタイ