１．	日時	平成１５年６月３０日（火）１４：３０～１６：２０
２．	場所	経済産業省別館　１０２８号会議室
３．	出席者
	（小委員長）	岩槻　邦男
	（委員）	阿部　　永	大塚　　直		加藤　順子
		小寺　　彰	山岸　　哲		鷲谷いづみ
	（専門委員）	太田　英利	大矢　秀臣		小林　正勝
	（環境省）	黒田野生生物課長、	渡邊鳥獣保護業務室長
		河本野生生物課長補佐
４．	議事概要

○	定着している移入種の防除の在り方について資料により説明

• 防除は、「撲滅」、「封じ込め」と同じレベルの対応措置だと思うが、管理と防除という概念をどのように区別しているのか。
  

【事務局】影響を減少、防止させるための措置全般ということで、管理とほぼ同様と考えている。


• 必要を認めた者が主体となって計画を策定し事業を実施するとあるが、この主体は行政だけなのか。移入種が問題を起こす事態には、大量利用が原因になっていることが多く、その利用によって便益を受けている人がいるはずである。汚染の問題だと、汚染者がその汚染を取り除くことに関して責任を果たすというのが一般的になっていると思うが、外来種の場合はそういうことは考えないのか。
  

【事務局】防除の主体については必ずしも行政だけとは考えておらず、ＮＧＯ、ＮＰＯで主体的に行いたいということであれば、主体となる仕組みがあって然るべきと考えている。
　また、原因者の責任追及は、当然明らかであれば、その人たちに一定の責任を持っていただくということはわかるが、生物多様性への被害を金銭的に換算するというのが非常に難しい中で、どこまで可能か、問題提起をさせていただいた。


• 生物多様性への影響を金銭に換算することは難しいが、対策には費用がかかる。対策もどのぐらい続くかということで、費用の計算も難しい面があるかもしれないが、それが生物多様性への影響の費用と考え、金銭への換算は可能と思う。
  
  
• ＥＵの環境損害についての指令案では、生物多様性の破壊が環境損害の２つのうちの１つとして挙げられている。移入種もそれに入ると思うが、原因者の責任をその対策費用について追及できることが考えられている。無過失責任ということが出てくるので、日本で可能かどうかはわからないが、考え方としては十分ある。現在も、民法の過失責任（709条）でいけると思うが、過失があったと言えるかどうかというと、証明が難しい。
  
  
• 防除に一番困っているのは、お金がないことだと思う。そこを放っておいて、主体を考えた者がやるというのでは進まない。
  

【事務局】カルタヘナ法では、例えば遺伝子組換え体を工場のタンクで使っている人が、何かの不手際で漏らしてしまったというとき、回収を命ずることができると規定している。移入種の場合、観念的には一緒だろうと思うが、実際に生じている現実を考えると、地域、行政が関わるということも具体的に考えていく必要があると思っている。


• 防除で罰則規定は難しいかもしれないが、少なくとも過失責任の認められた者に対しては、それに要した費用を負担させないとしり抜けになってしまい、議論をしている意味がない。
  
  
• 原因者の責任追及は、過去なのか、これからなのかの区分が必要である。過去において野放しだったものを、急に賠償という話にすると非常に大きな問題になる。
  
  
• 賠償と罰金は違い、罰金は基本的にはそんなに大した額にはならないが、対策費用を払わせる賠償になれば、相当な額になる。もし、法律ができれば、施行された後、その法律が適用されるということで、それまでにその行為をした人は適用がないというのが一般的な考え方である。
  
• 行政代執行の条文がカルタヘナ法に入っていないのはどうしてか。移入種の場合、同じようなことが問題になると思うので、経緯を教えてほしい。
  

【事務局】後日、調べて報告したい。


• 私人が賠償を請求するというのは、財産損害に対して行うのであって、生物多様性という法益に則して請求するわけではなくなる。生物多様性という法益侵害とその対策費用を持たせる場合、現行の民法の過失責任で対応するというのは極めて不確かであり、きちんと法制化し対応することが必要。
  
  
• 何らかの外来種が生物多様性保全上重大な問題であると最初に気付くのは、研究者や地域の自然をよく見ている方である。行政にすぐに伝わり、取り組んでいただければ一番いいと思うが、必ずしもそうではない。時間がかかっているうちに、根絶はおろか、防除もしにくい状態になってしまうということもある。ある程度科学的な根拠を持って、その影響があることを保証できるようなＮＰＯなりが早期にアクションを起こせるようにはしておかないと手遅れになる。
  
  
• 民間、ＮＰＯ、ＮＧＯが主体で動くと、必要なものでＮＰＯ、ＮＧＯの動きに乗らないものが出てきたとき、行政の反応まで鈍くなってしまうのが怖い。例えば沖縄のネコ・マングースの問題は、かわいそうだからと皆やりたがらないが、研究者から見れば、これほど重大な影響を及ぼしているものはない。予算も含めて、行政主体でやって、その中で名乗りを上げてくるＮＰＯ、ＮＧＯがあれば手伝ってもらうという形に整理しておく必要がある。
  
  
• 駆除の在り方の問題は、動物愛護が絡んできて非常に難しい。ノネコは非常に大きな重要な問題だが、ネコを飼っている方たちは狂信的な部分があるので、対応をどうしていくか、理論的に済ませておく必要がある。
  
  
• 合意形成して計画をつくるということであるが、その合意形成に時間がかかる可能性もあり、片方では早急に対策をとらなければならないという、問題がある。また、調査も自らがやるとなると、その調査費用もかかる。行政が責任を持ったような枠組みにしておかないと、先へ進まない。
  
  
• 隣の県は防除して、そちらにどんどん侵入していくということになりかねず、防除の必要性は全国レベルで議論していかないといけない。
  
  
• 基本的に外来を規制するということをまずやってから、既に入っているものを規制していかないと、手遅れになる部分が多い。合意形成の問題も、早急にできるシステムをつくらないと、議論している間にも、どんどん広がり手おくれになる。多少強引でもやらないと、多様性保護はとてもできない。

○	重要管理地域の管理の在り方について資料により説明

• 環境破壊が開発で生じるものに限られる場合には、重要管理地域を集中的にということはかなり効果があると思うが、生物はどんどん広がっていく。例えば西表島ではオオヒキガエル対策を一生懸命やっているが、石垣島を何とかしないとどうにもならない状態である。管理地域とそれに隣接したところ、物流もおさえた上で移入生物が持ち込まれるもとになりそうなエリアも含めた徹底した管理ということが必要である。
  
  
• 生物が自力で分散していくことも考慮が必要である。島嶼は、海に隔てられているからいいかもしれないが、本土は連続帯であり、周辺の管理をやらないと抜け穴がある。
  
  
• 重要管理地域として例示されているような所ばかりだと、縄文時代以来継承されてきた、自然にかかわる日本の文化というのは、あきらめるということになる。里地、里山地域でも、探せばまだ外来種の影響が余りない場所というのはある。そういうようなところを積極的にやるという考え方も必要。
  
  
• 島のように境界がはっきりしている場合には、こういう地域を設けても、ある程度は管理ができるが、例えば原生自然環境保全地域だけを守るということは、まず不可能。
  
  
• この問題を議論していくときには、国土交通省、農水省とも早急に議論し、トータルで早急に手を打たなければ、解決は難しい。
  
  
• 種の保存法の中の生息地等保護区の管理地区について、移入種に関しての規制の規定があり、自然環境保全法、自然公園法、鳥獣保護法にも規制があると思うが、既存制度との関係の整理が必要。
  
  
• 具体的な例として挙げられているところが、余りにも狭い。もっと広げていかないといけない。管理の実現可能性については工夫が必要。
  
  【事務局】例えば種の保存法の生息地等保護区の管理地区で、影響のある種を持ち込んではいけないとなっているが、基本的には同じような発想。自然公園法の特別保護地区や生息地等保護区その線引きに限られてしまうので、もう少し安全側に立って対策を考えていくべきと考えている。
  
  
• これまでの保護地の線引きとは全く違った発想だと思うが、そのことが移入種によって脅かされている在来種の保全にどう結びつくのか。そういう保護地の設定というのがあり得るのかどうかという検討が必要。
  
  
• 生物多様性の国家戦略のときに、環境省がイニシアチブをとり、各省庁に生物多様性についてどういうことができるのかということを聞き、かなり省庁がまじめにやっている。移入種問題についても何ができるか、どうするつもりかというようなことを問いかけるということも重要。
  
  

○	修正資料と補足資料について説明

• precautionaryを「予防的」と訳し、prevention、preventiveは「防止」と訳すことが多く、その方が分かりがいい。
  
  
• 「国外在来種」について、意味はよくわかるが言葉としてはあまりよくない。
  
  
• ペットの販売に関わる基準があるので、それもぜひ見てもらった方がいい。

以上