第13回 有明海・八代海等総合調査評価委員会 水産資源再生方策検討作業小委員会 議事録
開催日
令和6年2月14 日(水)
場所
対面方式及びWEB会議方式を併用して開催
出席者
有明海・八代海等総合調査評価委員会委員長:古米弘明委員長
小委員会委員長:鈴木敏之委員長
委員 : 内藤佳奈子委員、中島則久委員、藤井直幹委員、矢野真一郎委員、山西博幸委員
専門委員:青木美鈴委員、尾田成幸委員、岸田光代委員、堀田英一委員、松山幸彦委員、山口敦子委員、山口啓子委員、渡邉孝裕委員
(オブザーバー)
清本容子委員
(関係省庁)
農林水産省農村振興局整備部農地資源課 小松課長補佐、加藤係長、橋本係長
水産庁増殖推進部漁場資源課 吉川課長補佐、田代係長、辻係員
水産庁増殖推進部栽培養殖課 鈴木課長補佐、田畑係長、伊藤係員
水産庁増殖推進部研究指導課 中村課長補佐、天野係員
水産庁漁港漁場整備部計画課 高原課長補佐、落野計画官、山内係員
国土交通省水管理・国土保全局河川環境課 木村係長、新保係長
国土交通省九州地方整備局 河川部 上村広域水管理官
国土交通省九州地方整備局 河川部 河川環境課 辻丸流水管理係長
(事務局)
環境省水・大気環境局海洋環境課海域環境管理室長、海洋環境課海域環境管理室室長補佐
議事録
午前9時30分 開会
○川田海域環境管理室室長補佐 おはようございます。事務局でございます。
定刻となりましたので、ただいまから有明海・八代海等総合調査評価委員会、第13回水産資源再生方策検討作業小委員会を開会いたします。なお、第13回海域環境再生方策検討作業小委員会については、本日の午後に開催予定となっております。
委員の皆様におかれましては、大変お忙しい中御出席いただき、誠にありがとうございます。
本日の委員会は、会議とウェブ会議両方での開催とさせていただいております。ウェブ会議で御参加いただいております委員の皆様には、御不便をおかけいたしますが、会議中、音声が聞き取りにくいなど、不具合がございましたら、事務局までお電話、またはウェブ会議システムのチャット機能にてお知らせください。
議事中、マイク機能は会議及び発言者以外はミュートに設定させていただきます。
なお、ウェブ会議で御発言の際は、お名前横にある挙手アイコンをクリックしてください。青色に変わりますと挙手した状態になりますので、御発言の意志はこのマークで確認いたします。委員長からの御指名後、マイクのミュートを解除していただき、御発言いただきますようお願いいたします。御発言後は、挙手アイコンを忘れずにクリックし、黒になるよう操作願います。挙手アイコンは事務局でオン・オフを操作できないため、御協力よろしくお願いいたします。
通信状況や御発言者様の御声の質によっては、不明瞭な箇所が出てくる可能性がございますので、恐れ入りますが、御発言前にお名乗りいただき、少々ゆっくり大きめに御発言いただきますと幸いです。
また、会場で御参加いただいている皆様におかれましては、マイク真ん中のオン・オフのスイッチにお手を触れぬようお願いいたします。
本委員会は公開の会議となっており、環境省海洋環境課公式動画チャンネルでライブ配信を行っております。
それでは、議事に先立ちまして、環境省海域環境管理室長の木村より御挨拶を申し上げます。
○木村海域環境管理室長 おはようございます。
ただいま御紹介いただきました環境省水・大気環境局海洋環境課海域環境管理室の木村でございます。
委員の皆様には、お忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございます。
さて、本日の第13回小委員会より、昨年12月に開催した第12回合同小委員会にて決定いただきました「今後の情報の収集・整理・分析等の具体的内容」に沿って具体的な情報収集等を始めてまいります。
有明海・八代海等におきましては、アサリの資源回復の兆しが見られる一方で、貧酸素水塊や赤潮の発生、ノリの色落ち、タイラギ漁の休漁が続くなど、その再生に向けた取組が引き続き喫緊の課題となっております。
こうした課題に対して、令和8年度報告に向けた具体的な情報収集・検討の初回となる今回においては、まずは有用二枚貝を取り上げ、再生方策を実施する農林水産省や環境省、そして関係県の取組内容をお示しし、御審議いただきます。
また、海域環境再生方策検討作業小委員会でも、本日午後に開催される小委員会から具体的な情報収集・検討を開始することとしております。本日は、令和3年度の中間取りまとめにて指摘のあった新たな項目である気候変動影響、干潟生態系、社会経済情勢について検討を行うことにしております。
両小委員会の連携強化のために、海域小委の資料につきましても、本日の水産小委の資料にも添付させていただきましたので、今後の御参考としていただきますようお願いいたします。
本日は、令和8年度報告に向けた、いわゆる4項目のうちの有用二枚貝について関係機関から御報告いただいた再生方策や調査研究の成果に基づき御審議いただきまして、今後の具体的な情報の収集・整理・分析等の進め方や、問題点の原因・要因の解明に向けて御意見をいただければと思います。
委員の皆様には、忌憚のない御意見を賜りますよう、どうぞよろしくお願いいたします。
○川田海域環境管理室室長補佐 本日の委員の出席状況ですが、欠席の御連絡を外薗委員、山本委員よりいただいております。本日は、委員16名中14名が御出席ですので、有明海・八代海等総合調査評価委員会令第6条に基づく会議の定足数を満たしていることを御報告いたします。
また、本日は、古米委員長に御参加いただいております。そして、オブザーバー参加として、評価委員会からも御参加いただける予定となっております。
なお、本日は、関係省庁も出席しておりますので、御紹介いたします。
まず、農林水産省農村振興局農地資源課の小松課長補佐でございます。続きまして、水産庁漁場資源課の吉川課長補佐でございます。ほかに、水産庁の栽培養殖課、研究指導課、計画課の御担当にオンラインにて出席いただいております。
また、国土交通省から、水管理・国土保全局河川環境課、九州地方整備局河川部よりオンラインにて出席いただいております。
環境省側の出席者も紹介させていただきます。先ほど御紹介させていただきました、海域環境管理室長の木村、同室室長補佐の川口、私が川田でございます。
続きまして、資料については、事前に電子データ等で御案内しておりますが、議事次第に記載の一覧のとおりでございます。資料に不足や不備がございましたら、事務局までお知らせください。
なお、議事進行中は事務局にて画面上に資料を表示いたします。また、本日午後の海域小委員会で御審議いただく海域環境等と気候変動影響等については、資料2-4、資料2-5として添付しております。こちらにつきましては、冒頭、木村室長が申し上げたように、両小委員会において収集されたデータの共有の取組の一つとなります。
今回こちらの資料について、水産小委員会で御説明いたしませんが、今後もこうした情報共有や必要な場合には、合同での小委員会開催を検討してまいります。
それでは、議題に入ります。
議事の進行につきまして、鈴木委員長、よろしくお願いいたします。
○鈴木委員長 それでは、本日の進行を担当させていただきます鈴木でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。限られた時間の中で円滑な議事の進行に御協力をお願いいたします。
それでは、早速ですが、議事を始めさせていただきます。
本日の議題は、「有用二枚貝に関する情報収集等」となります。
それでは、議題のうち、資料2-1の「有用二枚貝に係る資料の収集・整理・分析状況」について、松山委員に御説明をお願いいたします。
○松山専門委員 おはようございます。水産技術研究所の松山です。
当所におきましては、平成24年度から、有明海・八代海勉強会を開催いたしまして、沿岸5県と協調しながら、有明海再生の取組について議論をしております。
今回は年明けの1月23日に、有用二枚貝、基本的には、アサリ、タイラギ、サルボウの3種になりますけども、これに関する資料の収集・整理・分析を実施しまして、その結果を取りまとめましたので、4県を代表して御報告いたします。
本日は、委員の皆様に、今後の情報収集等の方向性や得られた情報の整理・分析・方法、委員会報告への反映方法等に関して、是非とも御意見をいただきたいと思います。
では、資料2-1の1ページ目を御覧ください。
水産資源小委で収集すべき項目をこちらのほうに箇条書にしております。本日、勉強会として御報告する内容は、赤字で反転しております。青字に関する部分は、この後、他省庁からも御説明があると伺っております。
2ページ目をお願いします。本日の収集した資料は、大まかに三つに分けられており、今回は特に二枚貝資源の近況、変動あるいは減少要因に関する成果を中心としております。
3ページをお願いします。最初に、資源の近況について御説明します。
4ページ目です。最初に、アサリの漁獲量を2021年まで示しています。2014年以降が委員会報告以降になるのですが、2017年から2018年にかけて、僅かではあるのですが、漁獲量が増加した状況がございました。その後少し減っております。
5ページ目です。タイラギの漁獲量を示しております。こちらも前回委員会報告以降も漁獲量がゼロという状態が続いているところです。
6ページです。これはサルボウの漁獲量になります。前回委員会報告時までは漁獲量が5,000t前後維持されていたのですが、この3種の中で比較的好調だったはずなのですが、その後、急減しています。その原因・要因については、後ほど御説明いたします。
7ページは、八代海のアサリの漁獲量です。こちらも2012年以降、漁獲量が低位で推移しているという状況です。
8ページになります。こちらはタイラギの浮遊幼生、A6海域での経年的な出現状況を示しております。資源の状況を把握するためにこの図は整理されているわけですが、調査自体はまだ引き続き行われているということです。ただ、今回は図の更新ができておりませんので、随時更新していきたいと予定しております。
9ページ目です。これ以降、有明沿岸4県から御提供いただいた資料を中心に説明を行います。説明の時間が限られていますので、提供機関のお名前は資料のほうに記載して、説明のほうでは割愛させていただきます。
この図は、令和3年度中間取りまとめの図の更新ということで、有明海のタイラギ稚貝の資源量調査の最新の結果です。
2014年以降を示しているのですが、2015年に稚貝が少し出たのですけれども、それ以降、ほとんど稚貝も見られないという状況になっております。
次、10ページです。同じ調査で、今度は成貝の資源量調査を行っているのですけれども、こちらは、もうほとんど成貝が見られないということで、先ほどの漁獲量はないというところと関連している状況です。
11ページです。これはA2福岡県海域のタイラギ漁場(竹ハゼ南)という地点名になりますが、こちらで2013年以降、タイラギの生息密度の変化が継続調査されており、2021年までデータを示しておりますけども、この図を見ましても、2016年度までは比較的高めの出現が見られていましたが、近年は稚貝が少し発生して、すぐにゼロ、減耗してしまうというような状況が続いている状況です。
12ページです。こちらはA1福岡県海域のアサリ資源量と漁獲量の両方を示した図になります。先ほどの漁獲量の図でも説明しましたが、2017年から2018年にかけて資源量がかなり回復して、漁獲量も1,700tまで増加いたしました。しかし、その後、再び減少しているという状況です。ただ、直近2023年でまた資源が増えてきているという状況です。
13ページは、A1佐賀県海域のアサリの資源量調査結果です。こちらも2020年以降の豪雨で、資源量が減少していたのですが、直近の多良川河口で、稚貝を中心とした資源量が急に増加しているという状況です。
14ページです。これはA4海域の熊本県緑川河口のアサリ漁場の資源量等です。2017年に漁獲量が800t程度ありましたが、その後、減少して低迷しています。ただ、2022年に稚貝を中心に急増しているという状況です。
次、15ページですけれども、これは同じ熊本県海域ですけど、今度は菊池川河口のアサリ漁場の資源量になります。2018年以降、漁獲量が減少して低迷しています。10mm未満の稚貝は発生しているのですが、なかなか漁獲につながっていないという状況です。ただ、先ほどの緑川河口同様、2022年に稚貝を中心に急増しています。
16ページになりますけども、この図は、平成28年度委員会報告に掲載されている図で、この図では、2015年に稚貝密度が上昇したということを示しております。
先ほど説明しましたように、2017年に漁獲量800tがあったのですが、これはこの2015年の稚貝の発生によって、つながったという状況でした。
17ページです。この調査は、その後も実施されておりまして、図の凡例が違うので比較はできないのですが、過年度の調査結果も含めて、直近の調査結果でデータを更新する予定でございます。
御覧のとおり、一番右側の2022年の調査で、広域で稚貝を中心に高密度着生域が見られるという状況になっています。
18ページです。これはA1福岡県海域のサルボウの資源量・漁獲量の図になります。先ほども申しましたように、サルボウの資源量は比較的安定していたはずですが、2020年以降急減して、漁獲はほとんど見られなくなっているという状況です。
次、2番目として、資源変動と環境要因に関する資料になります。
20ページには、前回委員会報告におきまして、2001年から2014年まで緑川河口で取得されたデータを用いて、上の図が、秋に発生した稚貝の量、密度。下のほうが、それから1年後の成貝の密度という図を示しています。上と下が連動しております。ということは、秋の発生群が成貝資源の形成に貢献しているという図を前回の委員会報告で示したところです。
21ページになりますけども、前回の委員会報告では、15年間のデータを提示したのですが、今回、2000年以前のデータ9年間と、2016年以降のデータ7年間も新たに入手できました。これを加えた全31年間のデータをここに整理しております。
図を更新しましたが、傾向はほとんど変わりません。やはり秋の発生群が、親貝資源の形成に影響を与えているという状況が見えました。
次、22ページには、これも委員会報告の図になります。秋と春のアサリの浮遊幼生の調査を熊本県が実施されているのですが、この調査は、この後、行われておりません。ただ、別事業で、ほぼ同一地点での調査が継続されているということですので、現在までの状況を整理することは可能と考えています。ただ、ちょっとデータの補正が必要になりますので、本日は再掲のみとさせていただき、今後、取扱いについて御意見をいただければと思っております。
23ページは、これはアサリの親貝の肥満度、緑川河口の親貝の肥満度の図、委員会報告に掲載された図になります。
今後の情報収集等の具体的内容というところに、母貝と環境項目、餌料環境というキーワードがございました。そこで、この肥満度に着目して、少し予備的な解析を行ってみました。
次の24ページに、前回委員会報告では、上のほうの春の産卵群が加入して再生産サイクルが入るというよりは、秋の産卵群が主に資源へ加入して漁獲につながっているということを確認しております。
このことは再生方策として考えたときに、秋の産卵母貝を十分な量を確保する資源管理の取組が有効であるということを示唆しています。
ただ、実際の資源変動を見ますと、親がたくさんいたから、次の年も稚貝が発生するという連動性はあまり見られずに、どうも海域環境の影響を受けている可能性が高いと推定されました。
そこで、解析の方向性として、この秋の産卵期に影響する海域環境、特に餌料環境を解析することで資源変動要因解明、再生方策への進展への貢献が期待されると思われます。
そこで、成熟度と餌料環境に関する予備的解析を次のページ以降に行ってみました。
25ページに、先ほどの今までのデータというのは、毎月取られております。9月のデータのみを先ほど示したのですが、実際のデータを参照しますと、夏から秋にかけては環境変動が大きいためか、成熟の時期や肥満度のいずれも年変動が大きくなっていました。したがいまして、特定の月のデータのみ参照して評価するというのは困難であるため、今回は全データの偏差に着目して整理してみました。
26ページにその結果を示しております。緑川河口のアサリの肥満度、赤線は3か月の移動平均、それと産卵後に発生したと思われる10mm以下の稚貝密度、これは緑色の折れ線になっておりますけども、これを左側のほうは前年の平均ですけど、右側が春と秋の個体群に分けて整理した資料になります。
こうやって見てみますと、肥満度が高いと稚貝の発生も多いというような点で、連動性がどうも見られるということが分かりました。
次に、27ページですけれども、この成熟に直結する餌料環境を示す指標として、海域のクロロフィル濃度を示しております。これは9月のデータのみですけれども、このデータもかなり蓄積が進んでいるために、毎月毎月の偏差に着目して整理したのが次の28ページになります。
上の段が、春の産卵に影響する時期のクロロフィルの偏差。下の段が、秋の産卵に影響する時期の偏差を取ったものです。
上の春のクロロフィルに関しては、長期的変化があまり見えないという状況ですけれども、秋の産卵期を見ますと、この海域では2005年から2007年にかけて、それと2019年以降にクロロフィルが高めに推移する。その時期は肥満度も高いというような結果になっておりますので、ある程度関連性がありそうな結果になっているところです。
29ページをお願いします。こちらは平成24年12月21日に開催された第2回生物水産小委で示したアサリの連関図案を再掲しています。
海域環境と生物水産資源の連動を見る場合に、先ほどの解析のように、餌料環境の解析を進めますと、黄色の丸囲みのところと関連性がつながった、アサリとの間でつながってくるという可能性があり、こういった検討を進めることによりまして、連関図の充実にも貢献する可能性があるのではないかと考えているところです。
次、3番目の項目として、二枚貝の減少要因に関する資料を説明いたします。
31ページですけれども、こちらは中間取りまとめで、福岡県が実施したタイラギの生残・成長試験の概要図を示しております。こちらの試験では、移植方法を三つに分けて、同所的にタイラギの生残と環境項目をモニタリングした結果が示されております。
32ページに、2015年の三池島での試験結果、これは中間取りまとめに出ている図の再掲になりますけども、食害対策を行っていない直植え、この青のラインですね。これは直後から急激に減耗してしまいます。食害対策を行った被覆カゴ、これは赤のラインになりますけども、こちらは夏頃までは、高い生残率を示していたのですが、8月以降に徐々に立ち枯れへい死の様相を呈して減耗をしていくという状況でした。
一方で、海底から浮かせた状態で、なおかつ食害対策も施した緑のラインですけれども、こちらは最後まで高い生残率を示しています。そのときの溶存酸素濃度を見ても、特に貧酸素が出ていたという状況ではございませんでしたので、貧酸素以外の要因でこういった状況が分かれているということが分かります。
33ページに、中間取りまとめのほうでは、2018年まで4か年の結果が示されていたのですが、この調査は、その後も2019年以降も行われております。そのデータを2022年まで示しております。
これを見ますと、2019年、2020年では、この直植えと浮かせた試験区での差がないということが分かりました。特に2020年は豪雨の影響もあって、全ての試験区で減耗が激しかったようです。
また、2022年は、直植えのほうでも生残しているという状況でした。
2021年は、上架カゴで生残がよいという結果になっております。こうして見ますと、食害の影響も、立ち枯れへい死も年変動が大きいということが見てとれます。
34ページですけれども、2021年の大量死時、浮かせたカゴのほうで生残がよかったのですが、こちらは8月に豪雨がありまして、その後、A2海域の大部分が、左上のほうのこれは溶存酸素濃度を示しておりますけども、広域で溶存酸素飽和度が40%以下になるような、規模の大きい貧酸素が発生していましたので、どうもこの試験結果というのは貧酸素の影響を受けた可能性があります。
次、35ページですけれども、これは再びA1福岡県海域のサルボウ資源の図を示しておりますけども、2019年までは資源が比較的ありました。2022年以降、急激に減少して、漁獲がほとんど見られなくなっています。
36ページに、アメダス大牟田の降水量のデータをここに出しておりますけども、このサルボウ資源が減った原因として、2020年と2021年に2年連続の豪雨災害が発生し、A1福岡県海域のサルボウ資源に影響を与えたと判断されております。
37ページですけれども、この2020年の豪雨は、A1佐賀県海域でも影響が見られています。これは2020年夏期多良川河口のアサリ資源量を示しているのですが、7月の豪雨によって塩分10を下回る低塩分状態、これはアサリにとって致死的なレベルになりますが、これによりまして、現地では土砂の堆積と低塩分のダブルパンチで、アサリ資源がほぼ消滅してしまいました。
38ページは、A1佐賀県海域の2020年夏のサルボウ漁場付近の底層塩分分布です。2020年7月豪雨によって、長期間サルボウが生息している底層まで低塩分海水に覆われるという状況です。
39ページに、A1佐賀県海域のサルボウの推定資源量を示しています。2020年の資源量調査というのは、豪雨前の5月に実施されており、8,341tという数字が出ていましたが、その後、7月豪雨により、A1の佐賀県海域においても、ほぼ全てのサルボウ資源が消滅したという状況でした。この状態は2023年まで続いております。
40ページですけれども、A1佐賀県海域における2020年7月豪雨期を含むサルボウの浮遊幼生の出現状況のデータです。白のバーが平年の値ですが、低塩分期間が発生した時期が例年の浮遊幼生の出現ピークと重なっておりまして、黒のバーの2020年はもう浮遊幼生はほとんど出ない。下の付着稚貝もほとんど見られない。8月11日以降に塩分が回復すると、僅かに浮遊幼生と稚貝の発生が見られたということで、浮遊期から影響を受けているという状況が見られました。
41ページです。これは真崎・小野原、2009年の論文から、佐賀県海域におけるサルボウ浮遊幼生の密度と付着稚貝密度、これと海域環境の指標として海水密度との関係を整理されております。
この長期的なデータを見ましても、浮遊幼生・付着稚貝のいずれも比重が20前後に出現ピークがあり、15を下回ると急減するという関係性が見られます。このデータは、将来、気候変動に伴う豪雨の影響を評価する際に参考になるのではないかと思われます。
42ページです。A6海域のデータを示しております。これは諫早湾です、赤丸の移植場所と書いたところが、タイラギの移植海域、青丸のS1櫓と書いたところが、右下の塩分の観測場所になります。2018年のデータでは、7月に台風が接近して大雨となり、移植タイラギが全滅しておりました。恐らく低塩分の影響だと考えております。
43ページです。この2018年は、アサリ漁場でも塩分が低く推移していました。この年はアサリも大量死するという状況が発生しております。
44ページに、長崎県がこの2018年に、カゴを用いた移植試験を実施しておりました。その結果を見ますと、矢印を示した7月を中心に、大体30%から40%のアサリが低塩分で死んだという結果が出ておりました。
45ページです。その2年後の2020年にも7月豪雨がありました。このデータは、2018年と2020年の釜という地点での塩分を比較しているのですが、2020年は2018年のさらに2倍の期間、低塩分が続くという状態でした。筑後川からの距離が近い諫早湾の湾口地点ほど低塩分化していたという状況です。
このときも、46ページになりますが、カゴの移植試験を実施しておりまして、やはり低塩分期間が長かったということで、最大で70%程度、アサリの死亡が見られております。ただ、塩分が回復した後は、その後、減耗はしない、止まったという状況です。
47ページですけれども、このA6海域は低塩分だけでなく、貧酸素もアサリの生残に影響を与えることがあります。赤の矢印の期間、貧酸素が発生して、アサリ漁場で2mg/Lを下回る状況がありました。
48ページに、このときも同様に長崎県のほうでカゴ試験をやっておりまして、貧酸素化した8月で、最大60%のアサリの死亡が見られるという状況がございました。
49ページは、有明4県から提出いただいた資料を整理したものです。簡単に言いますと、単年度のイベントでも、低塩分、貧酸素あるいは土砂の堆積ということで、有用二枚貝の資源にかなりの影響を与えるということがこれで分かりました。
最後になりますけど、50ページ、ここまでは海域環境と有用二枚貝、資源変動との関係にする資料でしたけれども、最後に食害の資料です。
2017年にクロダイを用いてアサリの摂食試験を行ったところ、クロダイは、1日当たり体重の10%から20%程度、アサリを食害するということが分かりました。2018年はマガモの胃の内容物を調べたのですが、アサリは見られない。2022年はクロダイとキチヌの胃内容物を調べたところ、やはりクロダイの胃内容物から砕かれたアサリが見つかったということが分かりました。
51ページのほうに、これは28年度委員会報告において示された資料ですけれども、黄色にマーキングしたところを見てもらうと、クロダイを含む硬骨魚類の二枚貝摂餌量はほとんど影響なしとされておりますが、今回の場合は、クロダイの食害がむしろかなり大きいという結果になっておりますので、ここの知見の更新は必要だろうと考えております。
クロダイによる食害量を定量的に示すためには、現在の有明海におけるクロダイの現存量を推定する必要があるということです。
最後52ページですけれども、収集した資料は、このように3点にまとめております。駆け足での説明になりましたが、勉強会からの報告は以上になります。
ありがとうございました。
○鈴木委員長 ありがとうございました。
それでは、ただいま松山委員から説明がありました内容について、御意見、御質問等を承りたいと思います。いかがでしょうか。
では、内藤先生、お願いします。
○内藤委員 資料34ページのところで、こちらで先ほど貧酸素の影響を受けた可能性があると御説明いただいたのですが、それはどのようにこのデータについて影響していくものと読み取れるのかというところを教えていただければと思います。
○松山専門委員 このときは8月のお盆前後に非常に大雨がありました。10日間ほど大雨が降りまして、海域がかなり低塩分化するという状況がございました。
ですので、もし低塩分で死んでいるのであれば、海底付近のほうが塩分はむしろ高くて、浮かせているほうが塩分は低いという状況になるのですが、実際の結果は上のほうの赤ですね。海底から浮かせたほう、要するに海面に近くて、低塩分の影響を受けやすいところほど残っているという結果になっていますので、恐らく低塩分の影響よりは、むしろ貧酸素のほうの影響を受けたんじゃないかと判断して、そういう説明をさせていただきました。
○内藤委員 ということは、前年度までの影響とも比べてそのように読み取れるということですね。
○松山専門委員 はい。基本的には浮かせたほうが生きやすいという特徴がございますので、貧酸素の影響と、もともと浮かせたほうが生き残りやすいという両方の影響が恐らく出ているのだろうと思うのですが、この年は、途中の区間の生残状況を十分確認できていないので、どの時期からこの青のラインが死んだのかというところは、分からないというところもありまして、今のお答えには十分回答することは、このデータからは読み取れないのかなと思っております。
○内藤委員 はい、理解いたしました。
もう一つ、よろしいでしょうか。
前のページの33ページですけれども、こちらのデータの整理で直植えのデータというのが、2021年度、2022年度には示されてないのでございますけれども、こちらのほうのデータというものが、今のところはないということでしょうか、それとも整理ができてないということでしょうか。
○松山専門委員 直近の直植えデータがないのは、恐らく直植えしても、ほとんど毎回減少してしまうというのが分かっているので省略されているのではないかなと思いますけど。
もし可能でしたら、福岡県さんから、ここの直近で、直植えのデータがない理由について補足していただけると助かる状況ですけど。
○鈴木委員長 福岡県さん、もし可能でしたら、よろしくお願いします。
○尾田専門委員 福岡県の有明海研究所、尾田でございます。
直植えをしていない理由としては、以前直植えしていたときは、直植えをして上から網などを保護してやると、直接植えるよりは食害がないということで生き残ることもありましたけども、上架することと比べると、やはり上架したほうが生き残りがいいということで、もう過去にそういったデータは得られているということで省略しているところでございます。
今、浮かせた上架カゴと浮かせてないものと比較して、その差を水研さんと一緒に検証していこうとしているところでございます。
以上です。
○鈴木委員長 はい、ありがとうございます。
内藤先生、よろしいでしょうか。
○内藤委員 承知いたしました。ありがとうございました。
○鈴木委員長 はい、ありがとうございます。
それでは、ほかに御質問等がありましたら、挙手をしてお願いいたします。
では、矢野先生、お願いします。
○矢野委員 矢野です。
資料の41ページについて一つ質問があるのですが、このページの前までは塩分との関係が幾つか議論されて、ここで比重ということになっているのですが、このまとめ、結構重要かなと思ったのですが、この比重で整理された理由というのが、要するに重さの関係が重要というような意味合いがあるということなのか、それとも塩分の違いを比重として見ているだけということなのか、どちらなのでしょうか。それによって、少し意味合いが変わるのかなと思ったのでお伺いします。
○松山専門委員 私も原著論文を十分読み込んでいないところがあって、正確に答えることができないところはあるのですが、サルボウの産卵期というのは、ほぼ6月から8月いっぱいということで、毎年同じ時期に卵を産みますので、恐らく水温の変動というのは、あまりないんですね。
ということを考えると、ほとんどこれは塩分の違いを示しているという状況なのですが、塩分で示さずに比重で示した理由というところは、私も分からない状況です。基本的には、塩分で引っ張られていると思います。
○矢野委員 分かりました。では、重要なのは塩分であるということですね。
○松山専門委員 そうですね。水温は毎年そんなに大きく変わっていないので、この比重というのは、実際は塩分で数値が変わっていると見ていただいてよろしいかと思います。
○矢野委員 ありがとうございます。
もう一つ、質問じゃなくてコメント的なものなのですが、49ページの表をまとめていただいているんですけど、この表は非常に分かりやすいなと思ったのですが、特にイベントとの関係性について、非常に整理できているのですが、この表は、有明海全体の話として、丸とか、三角とか、バツがついているんですけど、これをA1とか、A2とか、いろいろ海域区分がありますけど、それごとに再整理というのができないかなと思ったのですが、そうしていただくと、ローカルにどういうところに影響が出たかまで見られるのかなと思いましたので、可能であればそういう整理をしていただくと、イベントとの関係性が非常に分かりやすくなるかなと思いました。これはコメントです。よろしくお願いします。
○松山専門委員 イベントのところに個別海域を括弧書きで入れておりまして、要するに、どのイベントがあったかという、元のデータは把握できておりますので、今のような整理は可能だと思います。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
では、ほかに質問等がありましたらお願いいたします。
では、まず山西委員からお願いいたします。
○山西委員 おはようございます。山西です。たくさんの資料のご報告ありがとうございました。
私からは、簡単な質問をさせていただきます。アサリの生息状況の幾つかの資料とグラフを見せていただいたのですが、例えば,アサリの分布密度とかは、これ全て自然発生的なものに対しての結果なのでしょうか。つまり、移植分とかを考慮しているデータとして見るべきなのかというのが、一つですね。
それと、同じアサリの話として成熟度と飼料環境の整理をされているものが非常に面白いなと思ったのですが、結論の中でその肥満度が高いものとクロロフィルの餌資源等の関係のお話が、ある程度相関が見られるというお話だったと思うのですけれど、食いつ食われつの関係を単純に考えると、少し時間的なずれが出るような、例えばロトカ・ヴォルテラの方程式の解のように4分の1周期ずれるような話があるのですけれど、そういう時期的なずれみたいなものも分かったのかどうかというのを、分かる範囲で教えてください。もう一点が、クロダイの飼育試験でアサリの捕食の試験をされていたのですけれど、1日当たり10%か、20%でしたか,食害があるような話なのですけれど、この実験では、例えばクロダイがほかの種を食べるようなものがあったときに、果たして本当にアサリが優先的に捕られるかどうかというのが少し気になりました。私はこの辺りあんまり専門ではないので、分からないのでお聞きします。
前回の報告のときには、ほとんど影響なしというのが気になったんですよね。実験として単純にアサリだけ入れて食害となっているのと、実際の現場ではいろんな種がある中だと、他の種も捕食するでしょうから、その辺り何か知見があったら教えてください。
以上3点です。
○松山専門委員 まず、1点目のアサリの稚貝の分布密度、成貝の分布密度ですけれども、基本的に熊本県海域では、移植放流等は、漁場が広大なため行われていませんので、天然発生個体群のデータを示させていただいております。
一方で、福岡県さんのほうは、発生した稚貝をかなり大規模に移植して保護したりしておりまして、これも一応天然資源という扱いでデータは整理されておりますが、福岡県さんのほうは外から持ってきておりませんが、県内で移植をされているということで、少し、そこは嵩上げがあると思ってください。
それと、餌との関係ですが、稚貝の発生とクロロフィルとの関係は、大体半年ぐらい遡った値の比較を今回しておりますので、当然リアルタイムで稚貝が発生するわけじゃなくて、半年ほどタイムラグがあります。一応ずらした状態で図を作っております。
少しアサリの生活サイクルを見ながら、どのぐらい前を見れば、環境との関係が分かってくるのかというところは、一応意識して整理をしていこうと考えているところです。
それと、クロダイですけれども、この実験は水槽実験ですので、アサリしか食べるものがないという状態で得られたデータですので、要するに、マックスの摂餌を見ているということになりますので、これをこのまま海域に持っていくと、過大評価になる可能性はございます。
ですので、一番良いのは、実際の海域にいるクロダイの胃内容物を調べて、アサリの捕食した個体数であったり、あるいは殻長の大きさを調べるというのが一番自然な解析になると思います。
実は、有明海以外の海域では、クロダイがアサリの食害生物として広く認知されておりまして、胃内容物からどのぐらい自然のクロダイがアサリを食べているかというのは、知見として多数論文等もございますので、そうした評価手法を取り入れれば、より自然の捕食圧を見ていくということも可能だと考えているところです。
○山西委員 分かりました。28年の報告の中で、今のクロダイの捕食圧は、とにかくほとんど影響ないというのは、少し過大な考え方ということですよね。
○松山専門委員 実際、アサリ漁場にクロダイが摂餌して掘った穴というのが、無数にございますし、割れたアサリの殻も散在していますので、やはり無視できないレベルではないのかなというのは、私も現地に行って実感をしているところです。
○山西委員 分かりました。ありがとうございます。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
それでは、ですけれども中島委員、お願いします。
○中島委員 佐賀県の中島でございます。
41ページのちょっと補足です。よろしいですか。
松山さんから御説明いただきましたとおり、これは比重ではなくて塩分濃度に着目した資料でございます。
何でこの資料を使っているかと申しますと、1970年代からノリ養殖業の漁業者が使われているデータということで、比重のデータがありまして、それをそのまま使っているからということでございます。
簡単ですが以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
では、ほかに御質問等がございましたらお願いします。
では山口委員、お願いいたします。
○山口(啓)専門委員 山口です。
確認ですけれども、サルボウ貝の減耗要因、今回は低塩分で御説明をいただいたのですが、貧酸素の影響はないのかということ、特にタイラギと漁獲域が少し違うのかもしれませんけども、岸よりも少し深いところにいるサルボウ貝については、貧酸素の影響というのはなくて、やはり低塩分のほうが影響は大きかったということでしょうか。
○松山専門委員 サルボウは、過去にも貧酸素によって影響を受けるということは、どうしても貧酸素の頻発海域と生息海域が重なるということもありますので、過去にも一定量の被害を受けたということはございましたけれども、2020年の場合は、もう過去に例のないような資源の減少状況ということと、実際に測定された塩分が極めて致死的だったということを考えると、今回の場合は、2020年以降の資源の減少というのは、貧酸素の影響よりも、低塩分のインパクトが大きかったと判断しているということでございます。
○山口(啓)専門委員 この近年のこの二、三年の急激な、ということですね。
○松山専門委員 そうですね。
○山口(啓)専門委員 分かりました。ありがとうございます。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
では、ほかにどなたか御質問がありましたらお願いいたします。挙手をしてください。よろしいでしょうか。
山西委員、お願いいたします。
○山西委員 先ほどお聞きすればよかったのですが、アサリの連関図でしたか、生物水産資源の上側のところの中の寄生虫だとか病気とありますよね。例えば海域小委員会のほうで、気候変動の話をされ、議論されるのでしょうけど、この辺り、何か水温とかの影響で、貝類に、二枚貝等に関わるような病気とか、寄生虫だとかとの関係というのは、何か調べられたりしているのでしょうか。
○松山専門委員 水産小委のほうでは、この過去に使ったこの連関図、アサリとタイラギとサルボウで同じ連関図を作っていて、タイラギのほうで、病気のところの文献が幾つかあったものですから、そのままアサリのところにもこの寄生虫・病気というのを残しております。
ただ、小委のメンバーの中で、この議論をしたことはあまりなくて、文献からの引用という形で資料を収集しているというような状況です。
そういった意味では、アサリの場合は、まだ有明海のほうで、パーキンサスとか、そういう影響もあるのではないかという研究者もおられるのですけれども、今のところ文献的には資源の大きな変動にこうした寄生虫とか、病気が影響しているというような状況は、関係4県と議論しても、今のところは出ていないので、濃い色を抜いているという形になっております。
○山西委員 分かりました。要は、水温が僅か0.1℃とか少し上がったとしても、いろんな生物が南方系から有明海に侵入してきたりとか、それは山口先生とかが御専門なのでしょうけれど、有明海の中にいろいろ入ってきたりとかですね、少し水温が変わるだけでも、環境的には変わるので、病気なんかも非常に影響をもたらされるような、何となく感覚的にあったのでお聞きしましたけれど、現状はそういうことですね。分かりました。
○松山専門委員 先生のおっしゃる状況は、実は気候変動の影響はいろんなところで、特に外国の研究者のほうで検討されていて、水温が上がることによって、例えばビブリオ属の細菌の活動が活発になって二枚貝資源を減らす可能性があるのではないかというような文献も出ていますので、今後そういったところが注目されてくる可能性はあると考えています。
○山西委員 ありがとうございます。
○鈴木委員長 ありがとうございました。
それでは、少し時間が押しておりますので、次の議題に移りたいと思います。
次の資料に移ります。
資料2-2、「有明海における二枚貝類の成長・生残要因の検討結果」について、環境省に説明を願いたいと思います。では、よろしくお願いいたします。
○川口海域環境管理室室長補佐 環境省の川口です。
有明海における二枚貝類の成長・生残要因の検討結果について御報告いたします。
資料2-2の1ページを御覧ください。環境省では、有明海二枚貝類の減少要因解明等調査を行っておりまして、二枚貝類の生息環境モニタリングや餌料環境の長期変化の把握に向けた検討等を実施しております。
今回は、貧酸素や浮泥などの環境要因の空間分布の把握結果と、貧酸素がタイラギ資源に与える影響を検討した結果、この二つを報告いたします。
なお、今回の報告内容は、今後の情報の収集・整理・分析等の具体的内容、ここでは水産小委のうち、以下の太字の部分、浮泥、貧酸素、海域ごとの環境特性等の関連性に該当します。
次に、2ページですが、まず浮泥と貧酸素の発生状況に関する現地観測結果について御報告いたします。
3ページを御覧ください。生息環境モニタリングといたしまして、底質については、左に示した8定点において浮泥の層厚とその有機物組成など。水質については、底層を中心に右の6定点で連続観測機器を設置し、調査項目として、水温、塩分、DO、クロロフィル蛍光、濁度を測定しております。
4ページを御覧ください。それぞれの定点における2014年以降の浮泥層厚を示しております。定点によって浮泥層厚は異なり、また年変動も異なっております。A1海域の西部及び西側のA3海域のうち、比較的沿岸に近い定点は、総じて浮泥層厚が高めで推移しており、東側のA2海域では、浮泥層厚が10mmを超えていないなど、低めに推移する傾向がありました。また、有意な減少傾向を示す定点と、有意な増加傾向を示す定点が混在しておりました。この原因としては、浅海域から沖合で堆積物の輸送が発生している可能性が示唆されています。
5ページを御覧ください。次に、2019年以降の底層溶存酸素を示しています。基本的に成層が発達する6月下旬頃から溶存酸素が低下し、7月から8月にかけて1年で最も低い溶存酸素濃度となっています。こちらの赤い実線は、2mg/Lで、この状態が48時間以上継続すると、タイラギの稚貝が死亡する濃度となり、また、青の点線は、2.74mg/Lで、この状態が96時間以上継続すると、同様に稚貝のほとんどがへい死する濃度となります。
そうしますと、西側海域の定点では、ほぼ毎年のように、稚貝にとって致死的なレベルまで溶存酸素濃度が低下していることが読みとれます。
これに対して、東側海域の定点では、多くの年でタイラギにとってぎりぎり生存可能な濃度までしか低下しておりませんが、それでも時折、致死的な濃度まで低下する期間が見られ、こちらのA2海域でも貧酸素の影響が無視できないと懸念されます。
この部分については、後ほど詳細に説明いたします。
6ページを御覧ください。底層DOが2mg/L以下の累積日数を上段に、3mg/L以下の累積日数を下段に示しております。2mg/L以下の累積日数で見ますと、東側のA2海域であるT5は短いのですが、3mg/L以下の累積日数で見ますと、T5もかなり高めで推移しております。2020年以降、貧酸素の規模が大きく推移しているところです。
7ページを御覧ください。次に、二つ目のタイラギ資源変動と貧酸素に関して、室内曝露実験と数値モデルを活用した影響評価結果について御説明いたします。
8ページを御覧ください。平成28年度委員会報告におけるタイラギ減耗と貧酸素の関連では、A1、A2、A3海域に関して以下の点が指摘されております。
A1海域においては、資源量や漁獲量のデータがないため、タイラギ減耗要因の議論は難しいという点、A2海域においては、タイラギ大量死と貧酸素、こちらは溶存酸素1から3mg/Lとの時期が全9年のうち6年で一致せず、かつ発生期間も短いという点が指摘されております。
A2海域に関しては、このカレンダーの図で示すように、黒い帯で示したタイラギ大量死の時期と、黄色い帯で示した貧酸素の時期とが、2001年、2003年、2008年では一致しておりますが、それ以外の年では一致しておりません。
9ページを御覧ください。A3海域においては、豊漁につながった2008年級群の消長が貧酸素の強弱と対応したことや、1980年代以降の底層の溶存酸素量の推定値に関する既往知見とタイラギ漁獲量の長期的減少が対応することなど、この海域では貧酸素がタイラギ資源変動に影響を与えていることが報告されております。ただし、2012年以降、稚貝密度が低いため、タイラギ減耗と貧酸素との因果関係が不明です。
2009年に貧酸素が弱かったこと、そのため、A3海域に着底した2008年級群が大量に生残、漁獲にまでつながったことが示されています。ただし、この2008年級群は、2010年夏期の貧酸素により大量死したことが報告されております。
10ページを御覧ください。以上から、有明海奥部のタイラギ減耗と貧酸素についての課題をまとめると、A1海域ではデータがなく、A2海域では大量死の時期と貧酸素発生期との対応が不明瞭であり、A3海域では貧酸素との関係が示唆されるものの、2012年以降はタイラギ稚貝密度が低いために、タイラギ減耗と貧酸素との因果関係を検証しにくいと言えます。
そのため、タイラギ減耗と溶存酸素との関係を、より定量的に評価する必要があり、相対的に野外データが少ない稚貝についても、その減耗と溶存酸素の関係を明らかにする必要があると言えます。
この課題を受けて、生活史ステージ別のタイラギの貧酸素曝露実験を実施しました。
また、底層の溶存酸素を時空間的に密に推定してタイラギ減耗との関係を整理する必要があるため、底層の溶存酸素濃度の数値モデルでこのような関係を評価しました。
11ページを御覧ください。まず、タイラギの貧酸素曝露実験について説明します。
方法は、3通りのステージ、稚貝、1歳貝、2歳貝を7通りの濃度の溶存酸素量と組み合わせて、96時間の室内曝露実験を実施し、タイラギ人工種苗の生残率の変化を記録しました。
12ページを御覧ください。この試験の概要を図で説明します。
タイラギ人工種苗の稚貝は殻長約24mm、1歳貝は殻長約94mm、2歳貝は殻長約147mmで、アンスラサイトを底に沈めたガラス瓶にそれぞれ封じ込めました。
これらの飼育容器に海水を入れ、海水を特定の溶存酸素濃度のガスで曝気しました。溶存酸素濃度の調整は、窒素ガスと酸素ガスの混合比の調整により行いました。これにより飼育海水中の溶存酸素濃度を変えて、水温25℃に保って96時間、タイラギ人工種苗を飼育し続けて、タイラギ各個体の生死を3時間ごとに記録しました。
13ページを御覧ください。試験の結果を示します。
稚貝、1歳貝、2歳貝の生残率の推移をそれぞれ上段、中段、下段のパネルに示しました。各パネルの横軸は曝露時間、縦軸は生残率です。パネル内部の折れ線は、DOに応じて色を変えてあり、例えば最も低い約0mg/L区は黒色で、逆に最も濃度の高い7mg/L区は青色で示しております。
この各パネルが示すように、各齢のタイラギの生残率は、DOに比例し、曝露時間に反比例しました。
また、生残率低下をもたらすDOは、稚貝では3.5mg/L以下の濃度、1歳貝では約0mg/L、2歳貝では2mg/L以下の濃度であり、貧酸素耐性は、稚貝、2歳貝、1歳貝の順に高まると考えられました。
既往知見では、1歳貝を用いた試験結果のみが示され、多くは1mg/L以下の濃度で、タイラギがへい死すると述べられています。
今回の結果によって、1歳貝は、確かに無酸素区のみで死亡しただけで、貧酸素耐性が強いのですが、稚貝は3.5m/Lという濃度でも影響を受けることが分かりました。
14ページを御覧ください。以上の結果を利用し、稚貝、1歳貝、2歳貝の生残率が50%以下となる曝露時間と、既往文献を参照した、タイラギ漁場で観測される底層DOの組合せを、曝露実験の結果と重ね合わせました。
紫色で囲んだ領域が西側のA3海域で観察される底層溶存酸素濃度の範囲、黄色の点線で囲んだ領域が東側のA2海域で観察される底層溶存酸素濃度の範囲となります。こちらの緑色の領域は、タイラギ稚貝が半数死亡する領域を示していますが、西側のA3海域で観察される溶存酸素の範囲とほとんど重なっており、稚貝はA3海域で生残することが難しいことを示します。
一方、オレンジ色の領域、すなわち1歳貝の生残率が50%以下になるような領域は、西側のA3海域でもぎりぎり重ならないことが多く、1歳貝は有明海の多くの海域で観察される溶存酸素濃度で生残できることを示しております。
また、こちらのグレーの領域、すなわち2歳貝の生残率が50%以下になるような領域は、稚貝と1歳貝の中間に位置しております。
このグラフから稚貝生残率は、東側のA2海域でも西側のA3海域でも50%以下になる可能性、2歳貝生残率は、A3海域で50%以下になる可能性が推定されました。一方、1歳貝生残率は、A3海域で幾分か低下する可能性が推定されました。
15ページを御覧ください。次に、数値モデルによるタイラギ生残率への貧酸素の影響評価について説明します。
右図に示した図は、2020年7月下旬に実測された底層溶存酸素濃度の分布です。このように、有明海奥部における底層DOのデータは、特定日の面的なデータあるいは数定点の連続観測データは存在しますが、生活史ステージごとのタイラギの生息環境を十分に評価するには、時空間的に密な底層DOのデータが必要であり、海域全体の評価を行うためにはデータが不足しています。
このような課題の解決方法として、数値モデルによって、観測データの欠測部分を補完することが有効であると判断し、2006年から2012年夏季のタイラギ生息海域における底層DOを数値モデルで推定し、併せて室内実験結果と重ね合わせることで、タイラギへの影響を評価しました。
16ページを御覧ください。本モデルの検討方法については記載のとおりです。なお、死亡率95%に着目した理由は、曝露実験におけるタイラギ生残曲線の接線の傾きが、死亡率95%の時点でほぼゼロになったことによります。
17ページを御覧ください。数値モデルの構成は、これらの概念図のとおりということになります。
18ページを御覧ください。モデルの推定精度を向上させる方法として、今回は水温・塩分・DOの現地実測値が豊富に得られているため、推定値の時系列を現地実測値に近づけるという同化の手法を利用しました。
19ページを御覧ください。モデルの精度を検証したところ、この右の海図で示す定点P6と定点P1のそれぞれにおいて、DOの観測値とモデル推定値は近い値を示すことが分かりました。
この左側の2枚のパネルで示すように、黒の線のDO観測値と赤い線のモデル推定値の差は、概ね1mg/L以内に収まっております。
20ページを御覧ください。ここからモデルの推定結果を示します。2006年7月から9月についての推定結果を示します。以下のスライドも同様になりますが、各パネルの赤い領域はLC95、つまり95%以上の個体が死亡するようなDOと継続時間の組合せを示し、白丸とその横の数値は、佐賀県によるタイラギ分布調査の定点とタイラギ発見個体数を示します。
パネル(a)では、稚貝のLC95と稚貝の発見個体数、パネル(b)では、1歳貝のLC95と成貝発見個体数を、パネル(c)では、2歳貝のLC95の成貝発見個体数を示します。なお、佐賀県の調査において、成貝は1から2歳貝を含む大型個体全てを指します。したがって、このスライドと以下のスライドでは、1,2歳貝のLC95に照らし合わせる成貝個体数は同一データを用いております。パネル(a)から分かるように、稚貝のLC95は、有明海奥部のほぼ全域に分布し、LC95の面積は2006年から2012年では最大でした。2006年は見かけ上、LC95マップ内に稚貝が生息しているように見えます。これは7月から9月というLC95の評価時期と、10月から11月の稚貝生息調査や浮遊幼生着底時期の違いによるものと考えられますが、2006年については浮遊幼生の調査データがないため、詳細は不明です。
一方、パネル(b)とパネル(c)から分かるように、成貝は1歳貝LC95及び2歳貝LC95のエリア外に生息しており、対応関係が見られました。
21ページは2007年、これは西部海域で貧酸素が拡大した年の推定結果となります。稚貝、1歳貝と2歳貝のいずれもLC95の外側に生息しており、底層溶存酸素の分布と対応関係が見られました。
22ページは2008年の推定結果ですが、2008年級群は、近年において比較的、大量漁獲までつながった個体群ということになります。2008年の稚貝のLC95はA3海域に分布し、見かけ上、LC95マップ内に稚貝が生息しているように見えます。8月下旬について推定した稚貝のLC95は、図(d)のようにA3海域で分布している一方で、9月下旬について推定した稚貝のLC95は、図(e)のように消えています。このことから、8月下旬以降に貧酸素が急速に終息して、9月には稚貝の生息に影響を与えないレベルに達していたことがうかがえます。
A3海域における浮遊幼生は、8月下旬から9月にかけて高密度で観測されたことが、平成28年度委員会報告で報告されていることから、図(a)、(b)、(c)における見かけ上、LC95マップ内に稚貝が生息しているように見える理由は、既に着底していたタイラギ稚貝が、8月下旬のLC95のごく外側で生残できた、もしくはタイラギの浮遊幼生がLC95の危険範囲の消滅した9月以降にA3海域に加入・成長した、これらのいずれかの理由だと考えられます。
23ページですが、こちらは2009年、この中で貧酸素が最も弱い年の推定結果になります。2009年の稚貝のLC95は、西側のA3海域に分布し、東側のA2海域では貧酸素の影響が小さかったため、タイラギ稚貝が多く着生したと推察され、対応関係が見られました。2008年級群は貧酸素が頻発する西側のA3海域に着底しましたが、2009年の夏期を通して、1歳貝にとって致命的なLC95を経ずに生残し、漁獲につながったものと考えられます。
24ページは2010年のもので、これは2006年同様、広域で貧酸素が拡大した年の推定結果となります。パネル(a)で示すように稚貝のLC95は広範囲に分布し、稚貝の生息は見かけ上、対応しておりませんでした。
また、パネル(d)と(e)にあるように、8月及び9月の稚貝のLC95は、西側のA3海域を中心に分布していること。また、A3海域では浮遊幼生が6月から9月まで観測され、東側のA2海域では浮遊幼生が6月から9月まで観測されたことが、平成28年度委員会報告でも報告されていることを考慮しても、広範囲の稚貝分布を説明できませんでした。
次に25ページは2011年、これは西側海域を中心に貧酸素が拡大した年の推定結果です。パネル(a)に示すように、稚貝のLC95は西側のA3海域に分布し、滞在稚貝はLC95のエリア外で生息するなど対応関係が見られました。パネル(b)と(c)に示すように、1歳貝及び2歳貝のLC95はほとんど見られませんが、右下の平成28年度委員会報告からの図に示すように、2011年は東側海域の広域で2010年級群の大量死、立ち枯れへい死が発生していたことを考慮すると、この年の減耗は底層溶存酸素濃度では説明できませんでした。
26ページは2012年、広域で貧酸素が発生した年の推定結果です。稚貝のLC95は広範囲に分布し、一部その分布範囲内に稚貝が見られました。前年の立ち枯れへい死もあり、成貝は確認されませんでした。
27ページを御覧ください。数値モデルの結果をまとめます。2006年から2012年の7月から9月におけるタイラギ稚貝、1歳貝、2歳貝のLC95と、佐賀県による55地点での稚貝・成貝の発見個体数の関係を評価しました。
タイラギ稚貝のLC95と稚貝の分布との間に概ね関係が見られました。2008年のLC95と稚貝、分布の不一致については、LC95の推定期間とタイラギ浮遊幼生の着生期間とのずれが原因もしくは、8月下旬のLC95の縁辺部で生残したと推定されました。2010年の不一致については説明できませんでした。
平成28年度委員会報告で示された2010年のA3海域個体群の大量死と溶存酸素濃度の関係については、2歳貝のLC95の推定結果と合致しました。
底層DOでは、致死的ではないのに東部で1歳貝が大量死する現象も2011年にみられ、溶存酸素以外の要因として、立ち枯れへい死要因が働いている可能性が考えられました。これについては、さらなる原因・要因の解明が必要と考えております。
長くなりましたが、説明は以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございました。
それでは、ただいま環境省から説明がありました内容について、御意見、御質問等を承りたいと思います。
では、よろしくお願いします。挙手をお願いいたします。
では、藤井委員、お願いいたします。
○藤井委員 よろしくお願いいたします。資料17ページに流動モデル、懸濁物輸送モデルが示されているのですが、この夏場の貧酸素水塊の発生というのは、例えば、このタイミングで植物プランクトンが発生して、それが直ちに分解されるものなのか。もしくは、有明海湾奥では、冬から春にかけて大規模な珪藻赤潮が発生したりしております。例えば、それが海底に沈降して、水温上昇期に分解されることで、貧酸素水塊が発生するのかというところ。それとノリ養殖漁場から流れたノリなんかも海底に堆積して、そのまま夏場に分解する、これも一つの原因になってくる。そこら辺というのは調べられているのでしょうか。
以上です。
○鈴木委員長 では、環境省、御回答をお願いいたします。
○川口海域環境管理室室長補佐 この計算の中に、クロロフィルの部分は入っていると聞いておりますが、ノリの部分はたしか入っていないと聞いております。
○鈴木委員長 藤井委員、よろしいでしょうか。
○藤井委員 分かりました。恐らく、ノリも計算に入れてもいいのかなというのもあるのですが、冬場、珪藻プランクトンが大規模に長期化して出るというところで、これが翌年、貧酸素の原因になるようなことがあれば、やっぱり冬場の珪藻プランクトンは問題かなというところで、もし調べることができれば、調べていただきたいなというところです。ありがとうございました。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
では、環境省さん、ただいまの藤井委員の御意見を受けて、もし可能であれば、その辺のところを調べていただければと思います。
続きまして、山西委員お願いします。
○山西委員 山西です。
スライド14ページのこの図がとても興味があって、一つの大きな成果かなと思いました。つまり、こういう根拠になるようなものがあって、数値計算との合わせ技が使えるということになるからです。その上で、私の質問は18ページの計算についてですが、モデルの精度の向上で、このデータ同化の話があったのですが、この同化のやり方がよく分からなかったのですが、要は計算を進めていく中で、観測値とのずれが大きくなったときに、パラメータ値をそれに合うように修正していくという意味だと理解したのですけど、そのパラメータ自身は、どのくらいの時間間隔で継続して使うのだとかという御説明ありましたでしょうか。こういった手法は、今、はやりのAIや僕もあまり詳しくないですけどサロゲートモデルのような、何かそういうものを使われているということなのでしょうか。
○鈴木委員長 では、環境省の説明をお願いいたします。
○川口海域環境管理室室長補佐 どのくらいの期間でというのは、今すぐには手元の資料では確認できないので、また後ほど、委員会の後にまた調べて、お知らせしたいと思います。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
山西委員、よろしいでしょうか。
○山西委員 分かりました。要はパラメータフィッティングがなかなか難しいので、合うようにするのだけれど、その継続をどのくらいするかというのも大きな課題かなと思いましたので、お聞きしました。結果を僕らは知りたくて、その結果を先ほどの14ページの有用な図などと比較することで、環境の善し悪しの判断をするんで、根拠となる計算精度自身が結構重要かなと思いましたのでお聞きしました。
分かりました。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
ほかに御意見、御質問がありましたら挙手をお願いいたします。
オブザーバーの先生、もしございましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。
それでは、時間になりましたので、次の議題に移りたいと思います。
資料の2-3、有明海沿岸4県と国が協調した有明海再生の取組について、農林水産省から説明をお願いいたします。
○小松農地資源課課長補佐 農林水産省農村振興局農地資源課の小松と申します。本日はよろしくお願いします。
農林水産省においては、平成27年度から有明海沿岸4県と協調し、水産研究・教育機構の協力の下、有明海再生の取組を進めております。
本日は、令和8年度報告に向けた1回目の御報告の場ということでございますので、いわゆる4県協調の取組の枠組みについて御紹介します。その上で、取組の柱であるアサリとタイラギに関しまして、母貝団地造成と種苗生産の取組を説明します。
それでは1ページをお開きください。平成18年度の本評価委員会の報告におきまして、二枚貝類等の生産性の回復を図り、ノリ養殖と二枚貝類等の安定的な生産を確保すべきとの再生目標が掲げられました。
その後の評価委員会におきましても、二枚貝類の資源回復をテーマに検討が進められていました。
この中で、親貝資源の減少によって、浮遊幼生の発生量と着底稚貝が減少し、資源の再生産に大きな支障が生じている可能性や浮遊幼生の加入寄与度の高い海域を特定するために、浮遊幼生の移動に関する広域な調査やシミュレーションモデルを開発する必要性があることなどが検討されていました。
さらに、この当時、現場に目を向けますと4県の漁業団体から特に二枚貝類等の資源回復に向けた調査や実証的取組の実施を強く求められておりました。
以上のように、有明海の再生において重要な役割を果たす二枚貝類の資源回復を求める声に応えていくためには、各県の枠組みを超えて広域的に調査等を実施していく必要がありました。
このため、平成27年度から、農林水産省において4県と協調し、現在の水産研究・教育機構の協力の下、有明海再生に資する二枚貝類等の資源回復に向けた取組を行っているという状況でございます。
この4県協調の取組では、平成28年度委員会報告で示されている再生目標や再生方策を基本として、漁業団体、漁業者の御意見を伺いながら順応的に取組を進めているところです。
4県協調の取組では、漁場環境の改善に関する実証や増養殖技術の開発などに関する現場の作業について、地元の漁業団体や漁業者の御協力により実施しています。この調査等の結果や取組の改善策などについて、漁業団体に説明し、また意見交換を行い、御理解を得ることが不可欠です。
このため、農林水産省の下にあります九州農政局におきまして、4県の漁業団体、4県水産部局、農林水産省及び水産研究・教育機構が構成員になっております有明海漁場環境改善連絡協議会を設置し、ここで説明や意見交換を行っています。この連絡協議会のほか、各県、あるいは各県の水産試験場を通じて、漁業団体、漁業者の御意見を伺うこともございますし、農政局のみならず本省職員が地元にお伺いをして、漁業団体、漁業者の皆様と意見交換を行っています。
また、4県協調の取組の結果につきましては、評価委員会に報告をしております。さらに、評価委員会において検討された成果を活用して、取組を進めているというようなサイクルとなっております。
2ページをお開きください。平成28年度の報告におきまして、有用二枚貝に関し、海域毎の主な減少の原因・要因及び海域間の相互関係、いわゆる浮遊幼生の輸送等のネットワークを把握した上で海域ごとの状況に応じ、浮遊幼生の量を増やす、それから着底稚貝の量を増やす、着底後の生残率を高めるとの、各ステージについて、適切な対策を講じることが重要であるという全体方策が示されております。
また、これらに関連する具体的な方策、例えば種苗生産・育成等の増養殖技術の確立、それから人工種苗の量産化及び種苗放流・移植などが示されています。
2ページの資料の中央にアサリ、タイラギの生活史がありますけれども、この生活史に対応した再生方策の取組を行うことで、再生産サイクルが形成され、資源量が回復することを目指しています。
再生方策の浮遊幼生の量を増やすことに関する取組につきましては、浮遊幼生を供給する母貝を確保するため、母貝を造成する取組を中心に進めております。また、母貝団地の場所の設定に当たりましては、浮遊幼生のネットワークを明らかにする必要があります。そのため、有明海全域で浮遊幼生や着底稚貝の調査を行いました。これに基づいて、浮遊幼生供給ネットワークに関するシミュレーションモデルを開発しております。
アサリにつきましては、天然の浮遊幼生を、網袋等を用いて採苗・育成することで、母貝を確保しております。一方で、タイラギにつきましては、天然の浮遊幼生量が少ないことから、人工種苗生産育成に関する技術開発を進めるとともに、人工貝を用いた母貝団地を造成しています。
また、資料の右側でございますけれども、着底稚貝の量を増やす、着底後の生残率を高める取組につきましては、二枚貝類の着底、生息環境を改善するための覆砂や海底耕うん、また、天敵でありますナルトビエイ等の捕獲調査等を行っています。
3ページをお開きください。4県協調の取組は、評価委員会報告で示された再生方策を基本としておりますけれども、取組の過程で明らかとなった課題へ対応するため、先ほど説明しました連絡協議会において、基本的な考え方というものを取りまとめております。
3ページにお示ししておりますのは、令和3年3月に取りまとめた、令和3年度から5年度までの取組に関するものです。
ここで、アサリとタイラギを4県協調の取組の柱、重点魚種と定めています。このほか例えばエツやアゲマキ、ウミタケやサルボウ、マガキやクルマエビなどを各県の重点魚種として定めています。
次に4ページでございますけれども、先ほど申し上げました各県の重点魚種の位置関係はこちらに参考としてお示しをいたします。
続いて、5ページをお開きください。4県協調の取組に関する基本的な考え方におきましては、関係機関とも協力して行っている各種の調査結果につきまして、漁業団体、漁業者に情報提供を行うことを定めています。
以上のように4県協調の取組におきましては、漁業団体に情報提供したり、意見交換を行いながら、順応的に取組を進めているというところでございます。
以上が4県協調の取組の枠組みの説明でした。
続いて、6ページをお願いいたします。アサリの取組について説明します。6ページでは、4県協調の取組におけるアサリの取組の進展をお示しします。4県協調の取組が始まった平成27年度から29年度までの3年間ですが、まず、浮遊幼生と着底稚貝に関する広域調査を行いました。平成30年度までの浮遊幼生調査の結果につきましては、中間取りまとめにも記載されています。また、調査結果を利用しまして、浮遊幼生のシミュレーションモデルを開発しました。シミュレーションでは、主要なアサリ漁場と産卵場、着底場が概ね一致する結果が得られました。そして、各県の地先が浮遊幼生を相互供給する広域的なネットワークが明らかになりました。これも中間取りまとめに入っています。
続いて、平成30年度から令和2年度までの3年間について説明します。平成30年度からはアサリとタイラギを4県協調の柱と位置づけ、取組を強化しております。平成30年度には、平成29年度までの結果を踏まえ、浮遊幼生ネットワークによるアサリ資源の再生産サイクルの形成に向け、母貝団地を造成する取組を開始しました。さらに、安定的な浮遊幼生供給のためには、母貝団地が相互に要請を供給してネットワークが断絶しないことが望ましいことから、浮遊幼生シミュレーションモデルを用いて、母貝団地間の相互供給関係の推定を行いました。この結果、ほとんどの母貝団地で、ほかの母貝団地から幼生の供給を受け、さらに幼生を供給しているというような重層的なネットワークが形成されていることが確認されました。
最後に令和3年度以降の取組について説明をします。令和2年度までの取組におきまして、豪雨に伴う海水の低塩分化等により、母貝が大量にへい死する事態が生じました。このため、浮遊幼生シミュレーションモデルにおいて、浮遊幼生を大量に供給していることが明らかとなった母貝団地を重要母貝団地として定め、優先的に取組を進めることとなりました。
また、豪雨災害等によって母貝が大幅に減少した場合に、他県から母貝を融通できるようにストックしておく仕組みを導入しました。
以上がアサリに関する4県協調の取組の進展でした。
7ページをお開きください。先ほど、アサリに関する取組の進展をお示ししましたけれども、ここでは、現在の4県協調の取組の概要をお示します。まず、浮遊幼生の量を増やす取組としましては、母貝団地を造成します。母貝団地に関しましては、各県の漁業調整規則に基づく漁獲制限や漁業団体による資源保護が継続的に行われている12か所を定めております。さらに、繰り返しになりますが、浮遊幼生ネットワークにおいて重要な地点を重要母貝団地として定めております。具体的な取組については、これまでの調査によってアサリ稚貝を干潟域に移植・放流をしても、食害や風浪等によって生息場から散逸し、なかなか大きくならないということが分かっております。これらの問題に対しまして、砂利などを入れた網袋を干潟域に設置するなど、保護・育成することによって、母貝を確保しております。また、網袋の中である程度大きくなったアサリにつきましては、これを干潟に設置した被覆網、写真でいいますと、中段の一番右側になりますが、被覆網の下に移植することで、食害や風浪から保護するというような取組を行っております。
以上のような母貝団地での網袋や被覆網の作業は、漁業団体や漁業者の御協力を得て取り組んでおります。また、このような網袋や被覆網の方法につきましては、地先の条件によって改良する必要がございますので、育成技術の高度化のための研究も実施しているところでございます。
次に着底稚貝の量を増やす生残率を高める取組について、平成28年度報告におきまして、覆砂、海底耕うん、浚渫、作澪等によって、生物の生息、再生産の場となる底質の改善を行うことが再生方策として示されております。このため、各地先の環境に合わせた取組を行っております。なお、福岡県では水産公共事業により広範囲に覆砂を行っていると聞いております。
このほか、アサリの天然稚貝への移植・放流を紹介いたします。先ほどの質疑の中でも、福岡県の取組として紹介がございましたが、河口域は大量に天然稚貝が発生することがございますが、一方で、豪雨被害を受けやすい場所でもございます。
このため福岡県では、このような場所に天然稚貝が大量に発生した場合には、豪雨被害を受けにくい場所に移植・放流を行う取組を行っています。
アサリについては再生方策に基づいて、以上のような取組を進めているというところでございます。
8ページをお願いいたします。8ページでは、アサリの母貝団地の取組状況、進捗状況を説明します。4県の母貝団地12か所において、令和5年10月末時点で約3万5,000袋の網袋を確保しています。
最初のほうで申し上げました連絡協議会で定めております取組の基本的な考え方におきまして、この3年間で約3万1,000袋を確保する目標を立てておりますので、これを達成しているという状況です。
続いて、9ページです。先ほども簡単に説明いたしましたけれども、令和3年度にそれまでの豪雨被害を受けて、自然災害リスクを踏まえたアサリ稚貝の融通の取組を行っております。令和元年度、2年度にアサリの母貝団地が豪雨により被災したことを受けて、令和3年度から重要母貝団地の資源量が、概ね7割以上減少した場合に、他県から母貝を融通できるよう融通用の母貝をストックするという仕組みを導入しております。
実際に令和3年8月の豪雨によりまして、長崎県の母貝団地が被災しましたけれども、令和4年5月に福岡県から当該100袋を融通した実績があります。
以上が、アサリに関する説明でございました。
10ページをお願いいたします。10ページでは、4県協調におけるタイラギの取組の進展をお示しします。
タイラギにつきましても、まず平成27年度からの浮遊幼生と着底稚貝に関する広域調査を行いました。また、タイラギにつきましても、アサリと同様に浮遊幼生と着底稚貝に関する広域調査の結果を利用しまして、シミュレーションモデルの開発に着手し、検討を続けている状況でございます。
このほか、平成27年度から29年度の3年間では、海中育成ネットの開発や食害防止ネットの効果・検証などが進展しました。
続いて、平成30年度から、タイラギが4県協調の重点魚種として取り組んでいくことになりました。また、具体的には、人工貝を用いた母貝団地の造成に向けた取組に着手をしました。
まず、水産研究・教育機構から福岡県、佐賀県、長崎県への種苗生産技術の移転が本格的に始まりました。平成27年度から29年度までの間は長崎県のみの取組でした。
このように3県が種苗生産をして、そこで生まれた人工貝を母貝団地に移植していくという、関係機関が連携して、人工種苗再生産体制を整え、人工稚貝を用いた母貝団地造成を行うという取組に平成30年度から着手しました。
最後に、令和3年度以降の取組について説明します。令和2年度までの取組におきましては、豪雨に伴う海水の低塩分化等により、母貝の大量へい死や育成中の稚貝がへい死する事態が発生しました。
このため、福岡県、佐賀県、長崎県で生産した人工稚貝の一部を、低塩分化のリスクの小さい熊本県天草海域に移送して、熊本県の水産試験場におきまして一定期間育成する仕組み預託システムを導入しました。また、よりリスクが比較的小さい場所に母貝団地を造成するため、低塩分化シミュレーションや貧酸素化シミュレーションを進めております。
以上がタイラギに関する4県協調の取組の進展でした。
続いて11ページをお願いいたします。11ページは現在のタイラギの取組の概要を示したものです。タイラギも評価委員会の再生方策に基づいて取組を進めておりますが、まず、浮遊幼生の量を増やす取組としましては、人工貝を用いて母貝を確保するという取組を行っています。現在の母貝の目標は、2万個体の確保です。また、移植するためのタイラギの人工稚貝を確保するために、人工種苗生産や中間育成を行っております。タイラギの人工種苗生産は、成貝から卵子と精子を採取し、人工授精させた受精卵を浮遊幼生、着底稚貝になるまで屋内水槽で育成する過程です。4県協調の取組におきましては、水産研究・教育機構が開発した技術を福岡県、佐賀県、長崎県の水産試験場に移転し、種苗生産の量産化・安定化に向けた取組を行っております。人工種苗生産の次の過程は中間育成となります。中間育成は殻長が2mm程度の着底稚貝を海中の母貝団地に移植できるサイズまで育成する過程となります。殻長は大体約1cmサイズとなるまでは、屋内水槽で飼育し、その後は殻長が5cm程度になるまで海中で保護・育成を行います。
4県協調の取組における人工種苗生産、中間育成の目標については、母貝団地において2万個の母貝が確保できるよう、令和3年度から令和5年度までの3年間の合計で、着底稚貝を計35万個体生産すること、また、移植用稚貝を計6万個体以上生産することとしております。
また、10ページで少し申し上げましたが、育成中の稚貝が豪雨によりへい死する事態が発生したことを受けて、豪雨に伴う低塩分化のリスクの小さい熊本県天草海域において稚貝の一部を育成する預託システムを行っております。
次に着底稚貝の量を増やす生残率を高める取組についてです。タイラギにつきましても、再生方策に基づいて底質の改善や、サルボウ貝の貝殻散布等の実証的な取組を行っております。また、水産庁においてタイラギ漁場の事業環境の改善に向けた整備を実証的に行っているところです。
続いて12ページをお願いいたします。12ページでは、中間育成において我々が預託システムと呼んでいるものについて説明をいたします。
預託システムは、屋外、海上で中間育成中の人工稚貝が、豪雨に伴う低塩分化により減耗する事態が生じたことを受けまして、福岡県、佐賀県、長崎県から、殻長5mmぐらいの稚貝を、7月、8月ぐらいに熊本県に預託をしまして、5cmぐらいまで育成し、豪雨リスクが低下した秋以降に各県に還送するという仕組みです。
なお、一部の稚貝についてはそのまま育成を続け、殻長10cm程度まで育成して、翌年度に還送するというものもございます。還送されたタイラギについては、各県において母貝団地に移植をするという仕組みとなっております。
令和4年度に各県で生産した種苗につきましては、3県から熊本県に7万5,000個体を預託しましたが、残念ながら令和4年度は大量減耗が見られ、その年には還送ができませんでした。ただ、一部生残したものにつきましては、殻長10cm程度まで育成した後、780個体を令和5年9月28日に3県に還送しております。また、令和5年度に生産した種苗につきましては、福岡県、長崎県から10万個体を預託しました。殻長5cmまで育成した稚貝につきましては、令和5年11月7日に1万200個体を3県に還送しています。なお、熊本県においては、令和5年度産の預託されたタイラギ約1万2,600個体を引き続き育成しており今年秋まで育成を続けて還送される予定でございます。
ここにはございませんが、4県協調の取組の強みとしましては、このほか佐賀県におきまして、育成中の着底稚貝の減少が生じたことから、福岡県から殻長5mm程度の稚貝1万個体を佐賀県に融通しております。こうした4県協調の強みを生かした取組を進めているというところでございます。
13ページ目をお願いいたします。13ページは、タイラギの種苗生産・中間育成及び母貝団地に関する取組目標に対する進捗状況についてです。
種苗生産については、先ほども目標を申し上げましたけれども、令和3年度から5年度までの3年間で合計35万個体以上の着底稚貝を生産する目標ですが、実績としましては、97万個体が生産されております。中間育成につきましては、同じく3年間で合計6万個体以上の移植用稚貝を生産する目標ですが、実績としては約6万9,000個体を育成しております。目標を達成し種苗生産数は増加しておりますが、安定した生産が課題と考えておりますので、中間育成も含め生残率を上げていくということが課題と考えております。
次に、母貝団地の造成につきましては、2万個体以上の母貝を確保することを目標としています。これに対して、令和5年12月末時点で2万8,000個体を超える母貝が生残している状況です。ただし、母貝の生残率を上げて、大型の個体数を増やしていくということが課題と考えております。
続きまして14ページでございますが、14ページは、水産庁において実施しておりますタイラギ漁場の餌料環境の改善に向けた実証整備でございます。この事業では文字どおり、凹凸の畝型に覆砂した凹凸畝型漁場と、その周りに砕石を用いた複雑な構造の生物機能活用型基盤を整備して、タイラギの稚貝着底や周辺環境のモニタリングを行っているというところです。
資料の右側に絵がありますが、黄色のものが覆砂するところ、灰色の部分が砕石を用いた生物機能活用型基盤ということでございます。
平成21年度から22年度、それから平成25年から26年度にかけて福岡県大牟田沖に2か所、令和5年度に佐賀県大浦沖に1か所整備しております。また、大牟田沖におきましては、平成30年度、令和元年度に、この砕石を用いた生物機能活用型基盤を整備しているというところでございます。
大牟田沖に関しましては、令和4年度においてタイラギの稚貝を確認しております。また、三池港で殻長5cmまで育成した稚貝を令和4年11月に390個体をカゴにより移植しております。この結果、昨年、令和5年12月時点で、75%が生残しているという結果でございます。また、大牟田沖に関しましては、令和5年度にも11月に120個体を移植しています。佐賀県大浦沖につきましては、令和5年度に整備を行いましたが、11月に75個体を移植しているというところでございます。
続いて、15ページをお願いいたします。アサリとタイラギの浮遊幼生の調査結果について、簡単ですが説明をいたします。
4県協調の取組では、県域を越えて広域的に調査を行うことによりまして、有明海全体の浮遊幼生ネットワークを明らかにしてまいりました。また、この浮遊幼生の調査に関しましては、母貝団地の取組などの効果を計る指標としても重要と考えているところでございます。
調査に当たりましては、4県において試料を採取し、農政局が発注した業務におきまして分析・取りまとめを行っております。アサリについては春季と秋季、タイラギについては6月から9月に調査を行っております。なお、アサリの秋季調査については、令和4年度までは9月から11月の調査期間としておりましたが、産卵期が伸びているのではないかという意見もありまして、令和5年度は12月も調査を実施しているというところでございます。
16ページをお願いいたします。アサリに関する令和5年度春季の浮遊幼生調査結果を簡単にお示しします。なお、秋季の結果につきましては、取りまとめ中でございますので、それも含めまして、改めて、こちらのほうには浮遊幼生調査の結果を報告したいと考えておりますが、令和5年度春季の浮遊幼生は、調査を開始した平成28年度から令和4年度までの平均の2.3倍となる約3万3,000個体を超える浮遊幼生を確認しました。これは4県において母貝団地造成の取組が着実に進展したということもありますし、令和4年度に母貝団地において豪雨の被害がなかったことも要因の一つと考えております。
また、次、17ページをお願いいたします。タイラギの結果につきましては、令和5年度は調査開始の平成27年度から令和4年度までの平均の2.2倍の浮遊幼生を確認しており、こちらも令和3年度は飛び抜けて多かったのですが、徐々に右肩上がりに増えていっているという状況でございます。
説明は以上でございます。
○鈴木委員長 ありがとうございました。
それでは、ただいま農林水産省から説明がありました内容について、御意見、御質問を承りたいと思います。いかがでしょうか、挙手をお願いいたします。オブザーバーの委員も、もしよろしければお願いいたします。
山西委員、お願いします。
○山西委員 山西です。御説明ありがとうございました。
興味深い、いろんなデータがあったので拝見させていただきながら御質問させていただくのですが、6ページ目のところで、浮遊幼生のネットワークの話は、以前の報告のところで今後も続けていきますよということで、その結果を見せていただいたのですが、計算で、筑後川の河口から、これは矢部川から橙色の矢印が西側から南側に向けて矢印が向いているのですが、これは湾奥のほうに行くような計算は出ないのでしょうか。最後のところのデータを見たら、佐賀県の沖合の湾奥のほうにも、浮遊幼生自身は、これはタイラギの浮遊幼生ですけど、出るような話もあったものですから。あと、湾奥の流れは反時計回りであるとよく言われるのですが、この辺りは何か浮遊幼生のネットワークとしては、全く計算上は出てこないのでしょうか。そこでアサリが生息するかどうかは、そこの底質環境に依存するかと思いますが、湾奥は泥質なので、生息場としてはあまり適していないでしょうけど、湾奥のほうにネットワークとしての浮遊幼生は出ないという計算結果なのでしょうか。
○鈴木委員長 農林水産省、御回答をお願いします。
○小松農地資源課課長補佐 左側の、平成27年度に解明した浮遊幼生供給ネットワークの図を御覧いただきますように、湾奥のほうにもネットワークがございます。潮流の反時計回りに沿って、佐賀県の地先にも浮遊幼生が行っているという計算になっております。
さらに、実際の浮遊幼生の調査結果におきましても、きちんと佐賀県の湾奥のほうでも確認がされております。
一方で、真ん中の先ほど山西先生が言及あったところ、6ページ中央の図は、母貝団地の間の浮遊幼生の供給関係に着目をして定量化したシミュレーションになっております。相互間の関係を見ているところに主眼を置いているものですから、湾奥部のところが空白になっているように見えているだけでございまして、そこにもネットワークがきちんと存在していると考えております。
○山西委員 なるほど。そうすると湾奥の西側も含めて、そこはどこから供給源が来ているとかいうのは分かるのですか。
○小松農地資源課課長補佐 6ページ左図において、非常に細かい小さい点があるのですが、小さな赤点は福岡から来たものです。緑点は熊本から来たものです。なので、シミュレーション全体では、このように、ほかの県から来ているものが出ているというところでございます。
○山西委員 なるほど、供給源としてはないようですね。
○小松農地資源課課長補佐 供給源としましても、長崎のほうに、佐賀から来た青い点があると思います。図が小さくてすみません。
○山西委員 分かりました。
あともう1点、14ページのスライドで、これも非常に興味ある試みで、ぜひ成果が出るといいなと思って聞かせていただいたのですが、この中で蒔いている稚貝が天然のものと人工のものがあるって書いてあったのですが、その辺りの天然の稚貝は生残率が高いとか、人工稚貝が多いとか何かそういうのも見えるのですか。
○吉川漁場資源課課長補佐 水産庁です。今、お話を聞いている限りあまり違いはないと聞いております。
○山西委員 ということは、人工で先ほどの今やっている預託システムでしたか。水産連合みたいなものなのでしょうけれど、それがうまく行けば、そもそも天然じゃなくても、人工の稚貝でうまく回していけるということにつながりそうですよね。
○吉川漁場資源課課長補佐 そうですね。各県のタイラギの人工種苗の技術は上がってきています。タイラギはまだ天然の種苗が少ない段階であるので、人工種苗をうまく使いながら資源を増やしていくという方向に持っていきたいなと思っています。
○山西委員 分かりました。ありがとうございます。
ぜひ、うまくいくことを強く祈念しています。
○鈴木委員長 山西委員、御質問ありがとうございました。
ほかに、どなたか御質問がありましたら挙手をお願いいたします。よろしいでしょうか。
それでは、ほぼ意見も出尽くしたと思いますので、事務局におかれましては、委員の皆様方からいただいた御意見について、関係機関と調整し、次回以降の小委員会の開催に向けて準備をお願いいたします。
また、委員の皆様におかれましては、議題2の全体を通して、後ほどお気づきの点等が出てまいりましたら、本日から1週間程度をめどに事務局まで御意見をお寄せいただければと思います。
それでは次の議題、その他ですが、事務局から何かございますでしょうか。
○川田海域環境管理室室長補佐 前の議題にて、御審議いただいたことですが、今回の小委員会より情報収集等開始したところでございますが、今後の小委員会におけるスケジュール案、こちらのほうをお示しさせていただきたいと思います。
資料3を御覧ください。この水産小委員会におきましては、参考資料1としてつけさせていただいております、令和5年2月の第10回小委員会で決定いただきました小委員会の作業分担表でございますが、こちらに記載しておりますとおり、水産小委員会におきましては水産資源、有用二枚貝、ノリ養殖等、また漁場環境、赤潮、貧酸素水塊を含む等の内容を担当しておりますが、この内容と先般第12回小委員会で決定いたしました今後の情報収集等の具体的内容、こちらを踏まえまして、次のような行程を計画しております。
まず、有用二枚貝につきましては、今回第13回と次回第14回で検討いただくこと考えております。そして、本日の第13回では、関係県による勉強会からタイラギ、アサリ、サルボウ資源の現状、減少要因の解明についてと、あと環境省から有用二枚貝にかかる情報として、タイラギの成長・生残要因の検討結果、そして農水省からタイラギ、アサリにかかる取組として4県協調の取組等についてお示しいたしました。
また、次回の第14回につきましては、有用二枚貝のほかの内容と併せて、赤潮についても御検討いただきます。
続いて、第15回では貧酸素水塊、ノリ養殖、ここでは色落ちの原因となる珪藻赤潮も含めてお示しできればと考えております。
次に第16回では、魚類についてお示しできればと考えております。そして、あわせて、この辺りで各テーマ、第13、14、15回でやってきた各テーマをまとめて総括的にお示しすることができればと考えております。
以上の内容を進めるとともに、各回にて、海域小委員会の内容を今回もこちらの参考資料につけてございますが、今後も添付していきたいと思います。
また、例えば、この第15回の貧酸素水塊、ノリ養殖については、これから内容を検討するところでございますが、内容によってはこの海域小委員会との合同開催もあり得るのではないかと考えているところでございます。また、お示しできる成果が間に合わなかったものについては、第17回でお示しできる機会を設けたいと考えているところでございます。
あわせまして、海域小委員会の計画も御説明したいと思います。
先ほどの作業方針での分担では、海域環境、汚濁負荷、水質、底質等、生物生息環境、そして生態系として、ベントス、魚類、鳥類等が入っております。この内容とあわせまして、先般の今後の情報収集の具体的な内容、こちらを踏まえまして、本日午後の第13回海域小委員会で水質、底質等の生物の生息環境といった海域環境と併せて、中間取りまとめにて御指摘を受けました新規項目である気候変動の影響、干潟生態系、社会経済情勢について扱う予定となっております。
そして、その次の第14回、こちらでは生物の生息環境に係る再生方策の取組とともに、有用二枚貝、そしてベントスについてお示しする予定でございます。
そして、その次の第15回では、第13回でどのように収集・整理していくかといった内容について御意見をいただく予定の気候変動の影響、干潟生態系、社会経済情勢について新たにまとめた内容についてお示しできればと考えております。
また、その次の第16回では、魚類等について現在、進められております環境研究総合推進費での成果、こちらも含めてお示しできればと考えているところでございます。
大括り的な内容ですが以上でございます。
○鈴木委員長 ありがとうございました。
それでは、委員の皆様から何かございましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。
本日予定されていた議題について全て終了しました。議事進行への御協力に、厚く御礼申し上げます。
それでは、進行を事務局にお返ししたいと思います。では、お願いいたします。
○川田海域環境管理室室長補佐 鈴木委員長、ありがとうございました本日の議事録ですが、後日、事務局より確認依頼を行いますのでよろしくお願いいたします。内容確認後、議事録は環境省ホームページで公開させていただきます。
今後の予定といたしまして、3月19日に今年度最後となる第53回評価委員会を予定しております。次回の小委員会につきましては先ほどの小委員会の審議スケジュールを踏まえ、今後、計画いたします。
来年度となりますが、開催日につきましては、また日程調整の上、決めさせていただきますのでよろしくお願いいたします。
それでは、以上をもちまして、第13回水産資源再生方策検討作業小委員会を閉会させていただきます。
本日はどうもお忙しいところありがとうございました。
午前11時42分 閉会