水俣病問題については、公害健康被害の補償等に関する法律(以下「公健法」という。)、平成7年の政治解決等に基づき各種対策が講じられてきたところであるが、昨年10月の関西訴訟最高裁判決において国及び熊本県の責任が認められたことを受け、規制権限の不行使により水俣病の拡大を防止できなかったことを真摯に反省し、国として、ここにすべての水俣病被害者に対し謝罪の意を表する。
平成18年に水俣病公式確認から50年という節目の年を迎えるに当たり、平成7年の政治解決や今般の最高裁判決も踏まえ、医療対策等の一層の充実や水俣病発生地域の再生・融和(もやい直し)の促進等を行い、すべての水俣病被害者の方々が地域社会の中で安心して暮らしていけるようにするため、関係地方公共団体と協力して以下の対策を講ずるものとする。
1 判決確定原告に対する医療費の支給
関西訴訟及び熊本水俣病二次訴訟において損害賠償認容判決が確定した原告に対して、医療費(自己負担分)等の支給を行う。
2 総合対策医療事業の拡充
政治解決に基づき関係県と協力して環境保健行政の推進という観点から実施してきた総合対策医療事業について、高齢化の進展やこれまでの事業の実施上で明らかとなってきた課題等を踏まえ、以下のとおり拡充する。
[1]保健手帳
医療費(自己負担分)について、1か月の給付上限額を廃止する。また、はり・きゅう施術費及び温泉療養費について、利用回数制限(月5回)及び1回当たりの給付上限額(はり又はきゅう1回1,500円など)を廃止する。
あわせて、公健法の認定申請や裁判とは別の救済を図る道として、拡充後の保健手帳の申請受付を再開する。
[2]医療手帳
医療手帳について、通院日数月2日以上となっている療養手当の支給要件を月1日以上に緩和する。はり・きゅう施術費の利用回数制限(月5回)及び1回当たりの給付上限額(はり又はきゅう1回1,500円など)を廃止するとともに、温泉療養費を支給対象として追加する。
3 水俣病問題に関する今後の取組
最高裁判決を重く受け止め、来年の水俣病公式確認50年に向けて、水俣病被害者の団体等及び市町村からのヒアリングの結果等も踏まえ、関係地方公共団体との連携を図りつつ、例えば以下のような施策の実施について検討する。
[1]高齢化対応のための保健福祉施策の充実
水俣病被害者やその家族の高齢化に対応するため、介護予防の観点も含めた健康管理事業の充実といった施策の実施等。
[2]水俣病被害者に対する社会活動支援等
胎児性患者や水俣病被害者の生活改善・社会活動の促進を図るため、それらに関連する活動や事業に対する支援、それらを行うボランティア団体等への支援、国立水俣病研究センターによる胎児性水俣病に関する社会的研究といった施策の実施等。
[3]水俣病被害者の慰謝対策
すべての水俣病被害者を対象としたメモリアル事業等の、被害者に対して慰謝の気持ちを表す施策や水俣病発生地域の融和を図る施策の実施等。
[4]環境保全の観点等からの地域の再生・振興対策
水俣病に関係する地点を活用し、水俣地域全体をフィールドミュージアム化する等、地域の再生・振興にも寄与する施策の実施等。
[5]関係団体との連携及び国内外への情報発信の強化
国立水俣病総合研究センター及び情報センターの活用等により、関係団体との連携や水俣病に関する調査・研究及び情報の収集・保存、国内外への発信や国際協力を強化するための施策の実施等。